[KATARIBE 27967] [HA06N] 『日陰の恋』

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Date: Mon, 27 Dec 2004 19:08:55 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 27967] [HA06N] 『日陰の恋』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200412271008.TAA22797@www.mahoroba.ne.jp>
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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2004年12月27日:19時08分54秒
Sub:[HA06N] 『日陰の恋』:
From:久志


ちは、久志です。

 続きEPより先にできてしまった為こっちを流します。
軟派な葬儀屋さん本宮幸久のお話です。

かなり自己キャラ固めフルスロットルですが、
忘れてる人知らない人のため(書いた本人も忘れている)
登場したEPなどの一覧です。

http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21000/21092.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21000/21095.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21100/21119.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21100/21134.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21100/21152.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21200/21268.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/21800/21804.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/22100/22133.html
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/24600/24634.html

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説:『日陰の恋』
====================

登場キャラクター 
---------------- 
 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
     :葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。
     :女でいつもイイ目を見ない人。
 彼女  :幸久がメロってるらしい人。実は……

地味な待ち合わせ
-----------------

 16時03分。
 普段から五分進めてある俺仕様時計なんで、あと2分ほど時間がある。
どっちにしてもあいつが待ち合わせ時間どうりにきたためしなんざねえんだが。

 16時15分。
 夕暮れ時の吹利駅前は買い物に出る主婦やら帰宅の学生やらでそれなりに混
み合ってる。まあ、黒スーツ黒タイに薄サングラスという、へたすりゃヤクザ
の三下に間違えられかねないいでたちの俺は遠巻きに避けられてるっぽいが。

 16時25分。
 胸ポケットの携帯が鳴った。メールの差出人はあいつ。

『遅れてごめん、もう駅?このまま行くから駐車場でまちあわせしよ』

 携帯を胸ポケットに放り込んで歩き出す。
 歩きながら、なんとなくわかった。
 俺との待ち合わせに遅れることより、待ち合わせが誰かにバレる事のほうが
あいつにとってはずっと怖いことなんだろうな、ということが。

 駅から歩いて十分弱、安さだけがとりえの野ざらし月極駐車場。
 メタリックグレーのセダンの脇であいつが待っている。

「よお」
「ごめん、幸久。ちょっと出がけにバタバタしちゃって」
「ああ、いい。乗れよ」
「うん」

 助手席に乗り込んだやつがシートベルトを締めるのを確認して車をスタート
させる。肩に届くか届かないほどの髪からかすかにいい香りがした。
 普段では着ないと言っている、茶系のロングタイトに白のタートル。けど、
俺はこいつが普段は着ないといってる服装しか見たことがない。

 なんでこんなこそこそとした待ち合わせをしなきゃならねえのか。

「どこいく?」
「霞山かな」
「了解」

 ちらっと時計を見てハンドルを切る。

「今日は、何時?」
「ん」

 かすかに動揺した空気。

「10時には、帰らないと」
「わかった」

 最初の頃は、俺もなんの疑いもしなかった。


出会いは
----------

 俺がやつと会ったのは飲み会の席。
 ぶっちゃけ合コンで出会ったというやつだ。

 そん時は俺は風邪で潰れたやつに頼まれて、やつはドタキャンが出た友人に
頼まれてという。お互い数合わせで参加しただけのことだった。

 そんだけのはずだったんだが。
 いつの間にやら、二人で抜け出した奴やら潰れていった奴らが消えていき、
俺とあいつだけが空が白んでくるまで、二人で飲んでいた。

 誘った奴らがどうとか、好きな音楽がどうとか、そんな大層な会話をしてた
わけじゃねえけど。なんというか、こう通じるものというか、似たような匂い
というか、お互いどっかで通じるような、そんな感覚が妙で楽しかった。


 それが何がどう狂ってこうなったのか。
 今でも俺にはわからない。


門限
-----

 別に問題は門限の是非どうこうとかいう話じゃあない。

 20時49分。
 霞山山道中腹、少しだけ道を外れた位置から吹利市を一望できる。
 別段きらびやかなイルミネーションが見れるわけでもないが、街の灯と星の
明かりはそれなりに満足できる景観ではある。

 肩にのっかっている重み。
 心持ち体重を預けてぼんやりとフロントガラスの向こうを見つめている。
鼻先に掠めるのは、車に乗ったときにも感じた少し甘い香り。

「なんか、つけてんのか」
「ん?」
「香水とか」
「んー別に、シャンプーの香りじゃないかな」
「そ、か」

 肩にまわした腕に少し力を入れる。やつの額に唇があたった。

「そろそろ、帰らなきゃ」
「そう、だな」

 21時09分。
 冷水を浴びせるように、さらりと、断ち切る。

 帰らせねえ、と、言える勇気も。
 ふざけんな、と、言える潔さも。

 俺には足りない。


実は
-----

 合コンの後、実にあっさりと事実を聞かされた。

「あの子、彼氏いるんだよ」

 自爆、だった。


帰り際
--------

 吹利駅を過ぎて少し先にある赤レンガ風な色調のマンション。
 だが、俺はその前まで行ったことはない。

 21時47分。
 二百メートルほど離れた裏道で車を停める。

「ありがと」
「じゃな」
「今日楽しかったよ」
「ああ」

 やつが軽く首をかしげて俺の目を見た。

 卑怯だ。
 自分の手は一切汚さずに俺にイニシアチブをとらせてる。


 長いようで短い、間。


「タバコ臭い」
「知るか」

 小さく手を振って、小走りで遠ざかっていった。

 魂が抜けたように、ハンドルに寄りかかる。

 なにやってんだ、俺。


時系列と舞台
------------
 2004年秋、吹利市にて。

解説
----
 どうやら浮気で横恋慕中な幸久。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
とりあえず、切る。

見直しなんてしないぜフゥーハハァ

一応、失恋するまで続きます。たぶん。
おそらく泣くでしょう(幸久が)

山云々の地方的な話はものすごく適当なので、突込みどころがあったら
てけとうに修正します。



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