[KATARIBE 21134] [HA06P] 『ヒトガタ』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 19 Dec 2000 16:20:33 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21134] [HA06P] 『ヒトガタ』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200012190720.QAA99424@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21134

2000年12月19日:16時20分33秒
Sub:[HA06P]『ヒトガタ』:
From:久志


 久志です。
ちと、おもいつきで流してみる。

 まー葬儀準備うんぬんは付け焼刃な知識なんでツッコミどころ満載やもしれず。
********************************************************************** 
『ヒトガタ』
===========

 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
     :本宮和久の兄、葬儀社勤務。妙に霊感のある軟派にーちゃん。

会場設営
-----------

「……本当に急なことで……」

 一報。
 予想があたるってことはまあ悪いことじゃない。先が読めていた方がなにか
と対処しやすいし、こっちが先を決められない以上はそれをいかに正確に予測
して準備を整えるかがこの仕事のキモだ。仏壇だって坊主だってピザ屋の出前
みてえに即座に揃えられるもんじゃねえ。

 当たったからって気分いいとはいえねーけどな。

「ユキさん、こっち準備終わりましたー」
「おう」

 今時仏壇も便利になったもんだ、組むのもバラすのも楽で釘一本いらねえ。
三人ほどのバイト連中の手にかかればものの三十分とかからない。あとは病院
から仏さんが到着すれば準備は完璧ってトコだ。この分なら通夜までにはまだ
時間がある、他に見落とすもんがねぇかざっと見とく事にする。

「おい」
「なんすか、ユキさん」
「白い紙とかねえか」
「え?何に使うんすか」
「アレだ」

 あごをしゃくる。
 仏壇の間から移された棚、もらいものか知らなねえが小奇麗なフランス人形
が飾ってある。

「人形がどうかしたんですか?」
「よくねえ」
「え?」
「まあなんつうか、人形とかぬいぐるみというか、そーいうのはよくねえ」
「何でですか?」
「……まーアレだ。想いがこもる」
「はあ」
「別に霊媒師みてえなこと言うわけじゃねえけど。ま、現場のオマジナイみた
いなもんだ。人の死に場所ではそーいうモンは隠せ」
「えっと、わかりました」
「あまった紙あるだろ、あとテープ持って来い」
「おいっす、わかりました」

 まあ、オマジナイなんだけどな。
 そのまま青い目の人形をじっと見る。

「ってワケだ」

 ぱちり、と人形が一つまたばきした。

「……そう」
「迷わず逝けよ」
「うん」

 もう一度、まばたきすると。ことん、と人形の腕が落ちた。

「ユキさーん、紙とテープもってきましたー」
「おう、ご苦労さん」


解説 
----- 
 人形には想いが宿る。葬儀業者の仕事の合間、人形を見る幸久。
********************************************************************** 
いじょ




    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage