[KATARIBE 21152] [HA06P] 『イブの電話』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 25 Dec 2000 02:45:20 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21152] [HA06P] 『イブの電話』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200012241745.CAA74574@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21152

2000年12月25日:02時45分19秒
Sub:[HA06P]『イブの電話』:
From:久志


 久志です。
ちろっとだけクリスマスネタを……

ってーか即書き即流しなので勢いのみの話ですが(^^;

 幸久にーちゃんのお話です。振り回されまくってます。
**********************************************************************
『イブの電話』
==================

 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
     :本宮和久の兄、葬儀社勤務。妙に霊感のある軟派にーちゃん。
     :どーやら今年はシングルらしい。
 美絵子(みえこ)
     :幸久の知り合い、らしい。

今年は……
-----------

 今日はクリスマスイブ。
 だからってどーなるもんでもねえのが俺の仕事っちゃ仕事なんだが。

 仕事帰り、もらいものの酒が入ってるおかげでそう寒くもない。
 まー心はサムイんだが。

 今年は一人。まー去年は一応いたんだが、なんだかんだで結局うまくはいか
なかった。自分、もちっと器用な方だとは思ってるだが。どーにも、こればっ
かは思うようにはならねぇようだ。
 兄貴は婚約者と毎度のデートを決めこんでるし、両親は二人で食事、あまつ
さえオクテの弟の奴まで可愛い彼女とパーティーときてる。

 幸久     :「あーちっきしょー」

 蹴っ飛ばした空缶が、カラカラ音をたてて転がっていく。

 と、胸ポケットの携帯が鳴った。

 幸久     :「本宮です」
 美絵子    :「はろっ、ユキ。ひさしぶり」

 一瞬、目の前が白くなった。

 幸久     :「美絵子……って、なんでお前なんだよ!」
 美絵子    :「なんかヒマだからかけてみたんだけど、あ、ひょっとし
        :てお邪魔だった?」
 幸久     :「……嫌がらせかコノヤロウ。てめぇ俺が一人だって知っ
        :てんだろが」
 美絵子    :「そーんな、怒らないでよ。ねぇヒマ?」
 幸久     :「まぁーな」
 美絵子    :「ふーん、まだ辛気臭いバイトしてるの?」
 幸久     :「今年正社員になったっつの」
 美絵子    :「うわぁ、ホントの葬儀屋さんになっちゃったんだ」
 幸久     :「……てめぇはさっきから何が言いてぇんだよ」
 美絵子    :「ね」
 幸久     :「なんだよ」
 美絵子    :「ヒマならお茶でも相手したげよっか?」
 幸久     :「どーいう風の吹き回しだ」
 美絵子    :「なんとなくヒマだし」
 幸久     :「……ざけんなコラ」

 どーにもこの女は人を振り回さずにはいられねえ性分らしい。
 美絵子……こいつと別れたのは前の彼女の前の……色々長いつき合いになる
のだが、こういう所にはいつまでたっても慣れない。というか長いつき合いで
なければこいつの唐突な物言いに対応できねえんだが。

 美絵子    :「じゃ、駅前のサン・ジュストで待ってるから」
 幸久     :「ちょっと待てや、おい」

 電話は一方的に切られた。


せっかくだから
---------------

 アナクロといわれようと、相手に振り回されるより相手がついて来てくれる
ほうが俺としては好みなんだが。

 美絵子    :「やほっ、ちゃんと来たじゃない」
 幸久     :「……テメエが来いって言ったからだろが」
 美絵子    :「ねぇねぇ、このクリスマス特別メニューのツインチョコ
        :ケーキ食べたくない?」

 人の話なんざ聞いちゃいねえ。

 幸久     :「……勝手に頼めよ」
 美絵子    :「二人用なんだよ、一緒に食べない?」
 幸久     :「甘いもんは苦手だ」
 美絵子    :「クリスマスくらいケーキ食べようよ」
 幸久     :「なら、甘いもん食える奴呼べよ」
 美絵子    :「なんとなく久しぶりにユキと話したかったし」

 ってなあ、おい。気ぃもたせる発言すな。

 幸久     :「で、言いたいことはなんだ」
 美絵子    :「……おこんないの?」
 幸久     :「通り越して呆れた」

 どーにもこーにも、遠距離恋愛してる男の話を延々聞かされるほうにもなっ
てくれ。

 美絵子    :「尚道くん……どーしてるかなぁ、と思って」
 幸久     :「最初からそー言えよ」
 美絵子    :「だって、今年戻れないって言うんだもん」
 幸久     :「俺の知ったことじゃねえ」
 美絵子    :「冷たいなぁ」

 来るんじゃなかった。
 しみじみ思った。どうやら通算三回目の後悔をする羽目になりそうだ。

 もとい、現在進行形で後悔している。

 美絵子    :「なんか、さ、もうだめかなーって気もするのよ」
 幸久     :「へぇへぇ」
 美絵子    :「だーって、絶対空けてくれるって言ってたのに」
 幸久     :「しょうがねえだろ、責任者なんだろ?そいつ」
 美絵子    :「そーなんだけどさぁ、もう……」

 三十分経過、まだ話題はつきねえらしい。
 いーかげん相槌うつのもおざなりになってきた。

 幸久     :「で、どーすんだよ」
 美絵子    :「やっぱ…………会いたいなーって」
 幸久     :「結局それかよ」

 とどのつまり、彼氏に会えねえ愚痴を聞いて欲しいだけだろが。
 もうダマされねーぞ、チキショウ。

 美絵子    :「ねえ、ユキ」
 幸久     :「なんだよ」
 美絵子    :「ありがとね」
 幸久     :「ああ」
 美絵子    :「久しぶりにさ、話せて楽しかったよ」
 幸久     :「…………帰るぞ」

 ああ、この、チキショウ。
 くそっ、完全に使われてねえか、おい。

 女って、マジわけわかんねえ。


解説
-----
 一人のイブ、知り合いの女の子に呼び出される幸久。
 悪い気はしていないっぽい。
********************************************************************** 
いじょ

 なんか、すごい悪い女だな……(--;


    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage