[KATARIBE 30902] [HA21P] 虚脱

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Date: Wed, 14 Mar 2007 10:50:20 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30902] [HA21P] 虚脱
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年03月14日:10時50分20秒
Sub:[HA21P] 虚脱:
From:Toyolina


[HA21P] 虚脱
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登場人物
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 片桐壮平   零課刑事。淡蒲萄とは親子のような相棒のような関係
 白橡     吸血鬼。淡蒲萄の妹。
 淡蒲萄    吸血鬼。


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 淡蒲萄が、大沢那琴と共に、妹を連れてやってきたのは、昨晩のこと。
 夜九時をゆうに過ぎている時間だったが、片桐は何も言わずに、彼女の妹を
一時預かることにした。珍しく、彼女の顔に疲労が色濃かったからだ。
 憔悴しながらも、申し訳なさそうな彼女の様子から、何事か大変な出来事が
あったのは、容易に想像できた。

 預けた当人である淡蒲萄は、夜明けとともに起き出して、医院の片付けに出て
行った。白橡が眠ってから、大沢那琴を送って戻ってきて、それから数時間、
仮眠程度に休んでまた出て行ったのだ。
 そのうち事情をきちんと話す、と言った淡蒲萄に片桐は、存分にやってこい、
と応えて送り出した。こういう状況では、じっとしているよりは体を動かして
いる方が、結果的にも楽になる。


 こたつに窮屈そうに収まって、片桐はこれまでの資料をまとめていた。
 視界の隅で、ベッドの上の布団がもぞもぞと動く。
 淡蒲萄の妹──白橡(しろつるばみ)が目を覚ましたらしい。

 片桐     :「おう、起きたか」

 寝起きなせいで、今ひとつ目の焦点が合っていない様子で、ぼんやりとして
いる。まぶたは今にもまた閉じられそうだが、ぐらぐらと揺れながら白橡は挨
拶を返した。

 白橡     :「……オハヨウゴザイマス」
 片桐     :「なんぞ、飲むか」
 白橡     :「……あ、うん……ここ何処?」
 片桐     :「ここか?」

 簡単に、状況を説明する。
 ここは自分の住処であり、住所はどこそこ、そして、淡蒲萄に頼まれたのだ
ということ。

 片桐     :「ワシは片桐壮平、まあ、うっちゃんとは……半分親子みたい
        :なもんじゃ」
 白橡     :「淡蒲萄姉は?」

 ゆっくりと顔を左右に振って、状況を確かめようとしているのか。まだ視線
にも、意識にも霞がかかっているようだ。

 片桐     :「ああ、ちっと片付けとかがあってな」
        :「……ちょっと出とる」
 白橡     :「片付け……親子……半分……ちょっと」

 頭に入った単語を、でたらめな順番で言い直して、把握しようとする。

 片桐     :「あれこれ考えすぎると疲れるぞ、まあ、茶でも飲んで
        :落ち着け」

 とくとく、とペットボトルからグラスにウーロン茶が注がれていく。
 心地いい筈のその音に、白橡はおびえていた。
 水が滴る音。壁をたたく音。その音とともに、姉だったモノは白橡を襲い、
彼女の心を引き裂いた。
 身震いする白橡。
 刑事としての感覚がそうさせたのか、片桐が振り向いた。

 片桐     :「……どうした?」
 白橡     :「な、なんでもない……」
 片桐     :「……まあ、飲んどき」

 おびえた様子の白橡に、グラスを渡す。
 昨晩の淡蒲萄の様子からも、何か嫌なことがあったのだろう、くらいは容易に
察しがつく。今、それを詮索してもしょうがないし、聞くつもりもなかった。

 白橡     :「う、うん……頂きます……」

 グラスを両手にもって、もそもそと、ベッドの隅に座り直す。
 しばらく、隅っこでちびちびとウーロン茶を飲んでいて、飲み終わってから
も、十分以上、体育座りのままでぼーっとしていた。

 片桐     :「少なくとも、ここは安全じゃ」

 ようやく身動きしたのは、グラスを返そうとしたときだった。
 片桐は、白橡の頭に、軽く手を置いて、そのままくしゃっと撫でる。

 白橡     :「……うん、信じる……」
 片桐     :「おう、ワシが責任もって預かる。うっちゃんに約束した
        :からのう」
 白橡     :「……うん……」

 よくわからないまま、よくわからない場所に一人で居る。
 状況と環境の変化が激しすぎて、殆ど把握出来ていない様子の白橡だったが、
片桐の言葉から、淡蒲萄との信頼関係を感じ取ったのだろうか。頷いて、また
部屋の隅っこにそろそろと戻っていった。
 しばらくは、家にいた方がいい、たとえ不慣れでも。
 片桐はそう考えた。

 片桐     :「慣れるのも……まだ時間かかるじゃろ、な」

 ぽつり。小さく呟いて。
 どこを見るでもなく、ぼんやりとしている白橡を視界の隅に入れながら、片
桐は再び資料を整理し始める。
 白橡はただ、ぼんやりと座り続けていた。


時系列と舞台
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2007年3月中旬。

『水』にまつわる一つの悲劇1
 http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30889.html
『水』にまつわる一つの悲劇2
 http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30890.html
『水』にまつわる一つの悲劇3
 http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30891.html
『水』にまつわる一つの悲劇Epilogue
 http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30892.html

の翌日。


解説
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事件の翌日。虚脱状態の白橡。

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Toyolina 


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