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Date: Fri, 29 Jul 2005 21:11:59 +0900 (JST)
From: Makoto KURUWANO <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28983] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使』(編集版)
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2005年07月29日:21時11分59秒
Sub:Re: [HA06P] エピソード『無明の天使』(編集版):
From:Makoto KURUWANO
真琴です。
無明の天使、響パートいってみます。
もともと一発起こしですが、どうにも響っぽくなかったので加筆修正。
……ますます剣呑とかゆーなー(汗
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[HA06P] エピソード『無明の天使:斑の羽』
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登場人物
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遠野響 (とおの・ひびき):http://kataribe.com/HA/06/C/0438/
出雲の出の風来坊。へビィスモーカーの巫女。気随かつ剣呑。
玉藻御前の係累であり、発火能力者でもある。
無明の天使(むみょう・の・天使)
不明。すでに喰らった獲物は3つ。技も力も手に入れ、もはや
V3を超えた。
ぼやく気随
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破れた屋根から覗く月というのは、何故にこれほどまでに綺麗なのだろう。
青白く浮かぶ半月から漏れ落ちる光をスポットライト代わりに、彼女はおんぼろのベッドに寝転がり。
月光のシルエットに浮かぶその顔は、瞠目しているようにも、虚脱しているようにも見える。
……しかし。しかし部屋の空気はそれにしては張り詰めすぎて。気分がよろしいものではない。
響 :「……祝詞なんかいっくらつぶやいても。やっぱ探さなき
:ゃ見つかるものも見つからないか。伴天連の連中は日本語
:わからんのかもしれんしなぁ」
ふ、と目をあけて口ごちる。それまで呟いていた言葉を、祝詞をやめて。
張り詰めた空気がしぼむように消える。気が抜けた、とでもいうのか、響の表情には諦念の色が薄く浮かぶ。
気に入らない、ただそれだけの理由ではじめた天使憑き討伐。きっかけがそもそもいい加減なのだ。案の定、多少調べた程度じゃろくな情報もありはしない。
だいたい、風来坊の響にはこの街にろくな知り合いも情報源もないのだ。そっちの筋は最初からあきらめている。
となればほかに手もなく。
響 :「なんか異能とか霊力とか食うらしいから、これみよがし
:な祝詞ぶつぶつつぶやいてみたってーのに。無駄?無駄
:足?むしろイカれた美人っぽい?……はぁぁぁぁ」
盛大なため息。
はなから期待していたわけではない、が、細い糸が一本ぷっつりと切れたのを自覚しないわけにはいかない。
響 :「いっそこぉ、いますぐ屋根ぶちやぶって降ってきてくれ
:ないかなー。楽なのになー」
いかにも乱暴。いかにも気随。いかにも剣呑。
だが。そんな気随者の言葉を聞き入れる神も――あるいは気随なのかもしれない。
応じる憤怒
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響 :「……ん?」
そんな響の呟きに呼応するように、外の風が強くなる。
まるで、廃屋を吹き飛ばそうとするほどの強烈な大風となり、そして気紛れな大風はぴたり、と一瞬でその息吹を止め。
声 :「ならば、その軽口を一生後悔するが良い」
幼き声と、天井が四角く切り取られるのは、ほぼ同時だった。
しかし、その声にも慌てる様子のない地上の響。どちらが脅威なのだかわかりゃしない。
響 :「(くんくん)臭う、臭うよ?伴天連のいやーな臭いがするなぁ。きたかなぁ?」
どすっ、と落下した天井の一角より降臨するのは、一人の少女。
天井が一気に崩壊する。しかし、それを意にも介さない美女一人。はっきりいって、怖い。
降臨した少女を警戒もせず、それどころか胸元からシガリロまでとりだしつつ。性悪狐はニヤニヤ笑う。爽やかに。爽やかに。
響 :「んで、なんて呼んだらいい?天使憑き。……天使にしち
:ゃあ、ちょっぴし羽が変な気もするけどそーゆーのトレン
:ド?」
……刹那で張り詰めた空気の中、飄々とした美女と無表情な美少女は対峙する。
少女 :「これから滅する者に、名乗る名などない」
響 :「同感。あたしも名乗りたくないし。……これから滅する異教の徒になんか」
少女 :「黙れ! 滅するのは私だ!」
無表情だった少女の顔に浮かぶのは、ただ純粋なる憤怒。まるで、その感情だけを抽出されたような、その顔。
対峙する響の表情は、酷笑。目の前の少女がおかしくて仕方がないとでもいうように。
……いや。きっと本当に本音で本気に、おかしくて仕方ないのだろう。
響 :「むりむり。絶対無理。こんなのも見切れてないんじゃ」
瞬間。
少女の背後に聞こえるのは風切り音。一つ、二つ、三つ、四つ。憤怒の貌の、その裏へ。
少女 :「……フフッ」
少女にそれは見えない。ただし、少女は感じられる。なぜなら。
少女 :「あの男の奇跡、なかなかに使えるな」
……鈍く光るナイフ。それが少女の背中にささって、
響 :「……はれ?」
――と見えた直前、少女は動く。まるで、高速で飛来するナイフの軌道が“視えて”いるかのように。
一つ避け、二つ避け、三つかすめて、四つ目は突き刺さる。
ただし、最後のナイフが突き刺さったのは、その異形の翼。
少女 :「貰ったものは、返すぞ」
響 :「なんで一本しかあたんないのさー。ちぇ。いいけど」
愚痴る女を睨みつけ、少女は翼を一振りする。
銀色に光るソレは、宣言通り返され。
……鈍く光るナイフ。それが響の顔にささって、
響 :「あんがと」
――と見えた直前、投げ返されたそれを苦もなく左手一本で捕まえる。
まるで剣呑なキャッチボール。憤怒と気随のその間で。
ふ、と笑い一つ。くわえたシガリロにその炎を宿して。
響 :「――んで。そろそろ滅してもいい?」
少女 :「それは我のセリフだと言っておるだろうに」
響 :「ご冗談。吐普加身依身多女……ん?」
少女 :「今すぐ、魔は――あぁっ」
両手一杯の果物
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その変化は、唐突に訪れる。
憤怒の形相が崩れ、その後に現れるのは、それまで抑えられていた諸々の表情。そして、ひぃ、という掠れた音。
少女 :「わ、わ、わた――我は、我だ!」
再びその顔が憤怒に塗り潰された時、少女の体は空に舞い上がろうとしていた。
響 :「二面?……いや、多重、重なりきれない異物……めんど
:くさいっ!両方潰すっ!」
少女 :「我は、我は我は我は我は我は!」
まるで、呪文のようにそのセリフのみを唱えつつ、少女は天井の穴へと昇っていく。
響 :「ええいっ、自己崩壊してないでとっとと降りてきやがれ
:こんの、白黒天使がぁ」
響は吼える。知ってしまった、いや、わかってしまったことを吼え潰すように。
しかし、その怒りの声は、もはや少女には届かず。
あとに残されたのは、中に舞う羽根のみ。
ヤサシサは誰の為に
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響 :「逃げた……つっまんねー」
ただ口ごもる。震えを隠し切れない足のために。
……そのまま対峙すればどうなっていたかわからない、自分の読みの甘さと相手の更なる詰めの甘さを吐き捨てるがごとく。
響 :「にしても、黒の羽に白の羽に。……ほっといても自壊す :るかな、ありゃ」
響の目に映った少女は、今にも千切れそうで。
物を詰め込みすぎていまにも壊れそうなおもちゃ箱のそれで。
表へでて、愛機にまたがりながら一つため息。
響 :「……ほっとくと寝覚めわるいかなー、あれは」
つぶやく顔は、いつもよりほんの少しだけ、優しい。
……しかし。
響 :「でもなぁ」
エンジンをかけた瞬間、その表情は一変する。ふてぶてしい、爽やかな笑顔。
――猫回しに「剣呑」と評させたその表情に。
響 :「あたしゃ、やられっぱなしって嫌いなんだよねぇ。勝ち
:逃げとかもっと許せないんだよねぇ」
響は想う。少女はこのままいけば遠からず崩壊するだろう。
……壊れてしまうのなら。
『コワレルマエニ、アタシガ、コワス』
……アクセル一発。ドゥカティは爆音を立てて疾走を開始する。闇へ。
時系列と舞台
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津海希が交渉に失敗した直後。
吹利市内の響のねぐらにて。
関連リンク
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『無明の天使』(2005年07月27日 23:40頃までの総集編)
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28900/28967.html
『無明の天使』猫回しの弟子
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28900/28973.html
津海希ちゃん危機一髪編。あるいはいかにして猫回しは交渉役たる自認を
捨てるに至ったのか。
狭間06Wiki:無明の天使
http://hiki.kataribe.jp/HA06/?HA06P_DarkAngel
長編エピソード『無明の天使』シリーズのtopic速報サイト。
解説
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無明の天使と対峙する響。
逃がしたあと、彼女の胸に去来するものは。
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