時節ネタからの連想によるシナリオ構築

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時節ネタからの連想によるシナリオ構築



Writer:Fish <lemon@s18.xrea.com>

[序]

 ネタに困ったときに時節イベントを組み込むのは、よく聞くお話。けれど、ワールドにそのイベントがないからと断念してしまっていませんか? ちょっと変えれば、取り込むのは案外簡単なものです。そんな主旨のもと、今回はクリスマスをテーマにシナリオを考えてみたいと思います。
 なおワールドとして、クリスマスのなさそうな「多神教のライトなファンタジーRPG世界」(ソードワールドやGURPSルナルなど)を想定しておきます。

[由来を考えてみる]

 クリスマスといえば、言わずと知れたキリストの誕生日。それに因んで、とある神さまの誕生日としてみる? いや、それは難しいでしょう。神さまの誕生日がわかっているなら、その日は世界中で一大イベントになっていておかしくありませんから。そしてそういう設定があるのなら、あえてクリスマスを持ち出すまでもありません。
 そこで、「神さまが(その村に)加護をくださった日」としてみます。これならある意味「その村にとっての」神さまの誕生日であり、かつ他の村で祝われていない説明にもなりますね。
 では、どんな加護をくださったのでしょう? 記念日になるくらいですから、よほどの大事のはずです。「かつて滅亡寸前だった村を神さまが助けてくれた」としてみましょうか。神さまが直接降臨した、とすると、今度は大事になりすぎますから、「その神さまの信者が助けてくれた」くらいが無難なところでしょう。悪役は、ソードワールドなら魔神、ルナルなら<悪魔>など、適切な存在がいますね。
 まとめると、次のようになります。
『この村は、昔《悪役》によって滅亡に瀕していた。そこに《勇者》が訪れ、《悪役》を退治してくれた。それ以来、村はその日を《勇者》と《勇者の信じる神》とを祭る日とした』

["らしく"してみる]

 これだけでは、クリスマスらしさが出てきませんね。もう少し装飾してみましょう。
 クリスマスといえば、サンタさんが子供たちにプレゼントをくれる日でもあります。これを採り入れるとすると、《勇者》がプレゼントをくれたため、それが以後慣習となった、というあたりでしょうか。そのプレゼントは、《悪役》が貯め込んでいた財宝の一部、とすればそれほどおかしくはありません。さらに「《勇者》は赤い服を好んで身につけていた」と付け加えておくとばっちりです。
 クリスマスはまた、いつもにも増して恋人たちが甘いひとときを過ごす日でもあります。これは、祭られる神を「恋愛(や慈愛)を司る神」とすればすんなりいきそうです。神さまが村を救ってくれた日だから、その日に結婚すると、他の日よりもより神さまが守護してくれる。そんな言い伝えが生まれるのも、不自然ではないでしょう。
 さらには、勇者がその日に結婚式を挙げた、というのも付け加えてみましょうか。おとぎ話では「お姫さまを救った勇者はお姫さまと結婚して幸せに暮らしました」という王道もあることですし。このとき、村で一番育った大きな木の下で式を執り行ったことにすれば、その木をクリスマスツリーのように見立てることもできますね。
 これくらいあれば、クリスマスらしさを演出するのも難しくないでしょう。まとめます。
『《勇者》が《悪役》から《財宝》を取り戻してくれたことから、プレゼントをあげる慣習がある』
『《勇者の信じる神》の神官は、《勇者》に因んで赤を基調とした服をまとい、プレゼントを配る』
『《勇者の信じる神》が加護を授けてくれた記念日のため、その日に式を挙げると幸せになれるという言い伝えがある』
『《勇者》は村一番の大きな木の下で式を挙げた。その木は村人たちに愛され、守られている』

[シナリオにするには?]

 これまでに決まった内容がすんなりいけば、問題はありません。シナリオにするには、すんなりいかないようにしてしまうだけのことです。
 たとえば……
「あげるつもりのプレゼントが盗まれた!」
「神官が一斉にいなくなってしまった!」
「式を執り行ってくれる神官長が謎の病に!」
「村名物の木が不自然な枯れ方をしてしまった!」
「勇者さまの遺品が盗難にあった!」
 などなど。もちろん複合させても構いません。
 敵役としては、お約束をふまえるのなら、「かつて《勇者》に倒された《悪役》」あたりでしょうか。長年かけて復活したとか、実は倒せなかったから封印したのだがその封印が解けてしまったとか、理由付けは難しくないでしょう。村長は《勇者》が遺した「赤いコート」を貸してくれる、などのオプションもありですね。マジックアイテムで、特殊な防御効果(冷気に強いなど)をつけておきましょう。
 起きる事件と倒すべき敵が決まれば、あとはその中間を埋めていくことになります。ここについては、今回は触れませんが。
 事件が解決したら、最後はクリスマスらしい描写で締めくくりましょう。赤い服を着たPCは子供たちにいろいろせがまれる、NPCと恋仲に落ちたPCはプレゼントをもらえる(もしくはあげる)、吟遊詩人はキャンドルライトを手に神さまをたたえる歌を唄う、帰り道の途中で初雪がちらつく、などなど、いろんな光景が連想できるはずです。

[結]

 クリスマスに絞って話を進めてきましたが、流れなどは他の時節イベントにも流用できるでしょう。シナリオ作成に困ったとき、参考資料の一つにでもなれば幸いです。

さいごに

感想・執筆宣言は一行掲示板001へどうぞ。

月刊TRPG.NET 2003年12月号

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