[KATARIBE 31470] [HA06N] 2007年のクリスマスの情景 2

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Date: Sun, 23 Dec 2007 21:30:07 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31470] [HA06N] 2007年のクリスマスの情景 2
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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[HA06N] 2007年のクリスマスの情景 2
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登場人物
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 蒼雅 譲   蒼雅分家の家長。紫の父。
 蒼雅 渚   譲の義娘。
 蒼雅 紫   渚の旦那様(女子)。

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 最愛の紫が、まだサンタクロースの存在を信じている。それを知ったのは、
つい先日、義父に熱燗と浅漬けを持って行った夜のことだった。ご相伴に預か
りながらの義父の告白に、少しだけ驚きながら、ときめいた。

「あの子は信じているんです」

 こう切り出した義父・譲の脳裏に、幼い日の紫との思い出が浮かんでいた。

「サンタさんにお願いはあるかな?」
「はい、ええと欲しいものは……」

 小さな手を口元にあてて、一生懸命考えて、そして大きな身振り手振りで。
 それを聞いた譲は、紫になぜか短冊と筆を手渡す。

「わかった、ちゃんと伝えておこうね、紫」
「はい、お父さま!」

 そしてクリスマスの朝。枕元に置かれているプレゼント。

「お父さま! みてください! サンタさまが!!
「そうかそうか、よかったな、紫」

 大喜びの愛娘に、目を細める譲。
 それが何年も何年も、去年まで繰り返されてきた。紫が大きくなるにつれ、
露見しないための苦労も、どんどん大きくなっていた筈だが、今も目を細めて
いる譲からは、苦労はまったく感じられない。少なくとも渚には。
 ここでうがった見方をするなら、譲自身楽しんでいたのではないかと思った
かもしれないが、渚にはそんな見方は出来なかった。自分も同じ立場ならそう
していただろうと思う。紫のために何でもしてあげたい。その気持ちは自分も
同じなのだ。

「お願いします……あの子に感づかれないよう……夢を……壊さないであげて
ほしいのです」
「任せてください。お義父さま。紫の純真は、うちが引き継いで守ってみせま
す!」

 握り拳で、少し乗り出して誓う渚。
 蒼雅の嫁として、自覚も芽生えてきた義娘に、譲は安堵を覚えていた。

(初めて、紫が紹介してくれたときは、まだ普通の娘だったが……今じゃどう
だ。私の意をしっかり汲んでくれている。棗とも仲良くやっているようだし、
熱燗もいい案配だ。なによりこの浅漬け……見事な塩加減じゃないか)

 ぽりぽりと薄切りの大根をかじりながら、うんうん、と譲は頷いた。


 その日の晩。お茶と一緒に雪見まんじゅうをつまみながら、渚のリサーチが
始まった。

「ねえ紫、もうサンタさんにお願い事した?」
「お願いですか……」

 お揃いの半纏を着込んで火鉢に当たりながら、紫が想像している。このとき
の紫の表情は、ちょっと緩くて無防備で、なんとも可愛らしいと思う。

「……渚さまと一緒に使えるひざ掛け……とか」

 一緒に使えるひざ掛け。その三つの単語の組み合わせで、渚の胸は高鳴った。
一緒に使える、ということは、二人でくっついて、二人の身を包んでくれると
いうことだ。そしてひざ掛けと言ったのは、膝に古傷を抱える渚を思いやって
の選択。そして、一緒に紫のお気に入りのドラマを見るのだ。

「いいね、それ。うちもそれがいい。サンタさんにメールしとこ」

 とか言いながら携帯にメモっておく。紫は疑いもせず、はい、と笑って雪見
まんじゅうを小さくちぎって口にしている。

「でもちょっと意外。ケメコさんの新しいDVDかなって思ってた」
「それは、自分で買おうかな……と」

 紫のケメコさん好きはハンパなものではない。大学でも、文学部一回生の間
で、一級ケメストと認定されているほどだ。
 そんな紫の次の言葉で、渚の動悸速度がさらに一段階高まるのだった。

「それで、一緒にみたいなって」
「うん、一緒に見よね。じゃ、うちは二人で座れるソファとかお願いしよっか
な」

 ドキドキしながら、再び携帯に向かって、今度はメールする。相手は渚の実
母である、彩友だった。渚の実家である、品咲家──家とはいっても、普通の
3DKのマンションだ──で使うものだから、ママにおねだりしよう、と考え
たのだ。
 返信はすぐに着た。たった三文字、アホか、とだけ書かれたメールが。

「……うち専属のサンタさん、それは重くてかさばるからイヤやって」
「……まあ、サンタさんもお年を召してますから……」

 信じて疑っていない紫の口調に、渚はますます奮い立つ。

(そうや、紫は凛々しくて格好いい女の子やけど、純真で幼いところがあるの。
それを、守ったげるのが、うちの役目。誰にも譲られへん、うちだけが出来る
ことやねん。紫の奥さんのうちが……奥さん……)

 隣で握り拳のまま、デレている渚に紫がそっと身を預ける。

「クリスマス、楽しみですね、渚さま……」
「うん……」



時系列と舞台
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12月中旬


解説
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1  http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31400/31469.html
Wiki http://hiki.kataribe.jp/HA06/?Xmas2007

愛しすぎてもまだまだ愛せるゆかりんの為に、みぎーが専属サンタになること
を誓いました。

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Toyolina
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