[KATARIBE 31463] [HA06N] ふたりの 2

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Date: Sun, 16 Dec 2007 23:39:42 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31463] [HA06N] ふたりの 2
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[HA06N] ふたりの 2
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登場人物
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 蒼雅 紫
 蒼雅 渚

前回
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http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31400/31451.html


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 とくん、とくん。
 何回打ったか覚えていないし、なにより数えるつもりもなかった。
 ただ、紫に身を預けて重ねた唇だけを意識していた。
 いつしか、お互い背中に両腕を回していた。

「渚さま……」

 じっと見つめてくる紫。その目は少し潤んで、据わっていた。少なからず、
お酒が入っているせいだろう。紫の赤い唇がゆっくりと動く。

「渚さまは……その……悩んでるときの渚さまのことが、嫌いなのかもしれま
せん」
「うん……」
「でも私は……そんな渚さまが……その、すごく……愛しくて……それで……」
「紫……ほんまに……? 愛しいって……」
「はいっ。渚さまは、本当は、たいへん繊細な方だって、私わかってます!」

 抱きしめたままの背中で、拳を握る感触が伝わってくる。

「それに、いつも真剣で、ちゃんと自分で答えを出そうとしてらっしゃって……
尊敬してますし、愛してます……だから」

 渚は紫の視線と言葉に集中している。

「渚さまは……渚さまのことは、私がお守りします……渚さまが、私をずっと、
そうしてくださってるように……だから、安心してください……」
「……うん……紫、紫、紫……ありがとう、ほんまに……うち、こんなに好きっ
て言われたの初めて……めっちゃ嬉しい……」
「渚さま……がまんしなくてもいいですから。でも、無理もなさらなくても、
私はずっと側に……こうしていますから」
「ん……」

 ちょうど渚の力が抜けたところで、紫が強く抱きしめる。そのまま、二人し
てソファに倒れ込む。真正面に、紫の顔があった。覗き込むように、渚を見つ
めている。渚は、紫の顔にかかっている髪をそっと撫でて、邪魔にならないよ
うに背中に流す。

「渚さま……渚さまは……本当に、可愛くて……それを知ってるのは……私だ
け、です」
「紫……うちは、紫の……奥さんになるんやもん。うちのこと、全部知ってて、
知ってていいのは紫だけ。紫のこと知ってるのも……うちだけ」
「はい、渚さま……好きです」
「紫、愛してる……」
 渚が抱き寄せようとするよりも先に、紫が身を重ねてきていた。


「今のうち、だいぶ素直になってきてるかな?」
「あら、渚さまは、いつでも素直ですよ。素直というより……だいぶ自然体で
……いらっしゃるように思えます」

 ありがとう、と微笑んで、渚はいつものように続ける。渚は、自身が誉めら
れることは、全て紫のおかげだと思っているからだ。

「紫が、すぐ側にいてくれるおかげよ。紫も、なんていうか……だいぶ落ち着
いたっていうか……おしとやかになってるよね」
「あら、そうですか……なんだか、面はゆいです」
「うん、ホントおしとやかって感じ。でも凛々しかったり、元気やったりして
るし、それに、すごく綺麗になってる」
「そ、そうでしょうか……」
「うん、ホントホント。可愛くて綺麗でおしとやかで、うちの自慢やもん」
「そんな、渚さまこそ、私の自慢です」
「ありがと、紫。でも、これ言い出すと終わらんね……好きな子の話、好きな
子としてるんやから、終わるわけないんやけど」
「本当ですね……でも、楽しいです。嬉しいです」

 口元で両手を合わせる仕草が、本当に可愛いと思う。
 その姿勢のまま、少しだけ上目遣いで紫が見つめてくる。
 運転しながらだから、ちゃんと目を見てあげられないのが申し訳ない。渚が
そんなことを思っていると、ふと紫が口を開いた。

「渚さま」
「うん、何?」
「その……一つだけ、気にかかっていることがありまして」
「え、うちのことで?」
「はい。あの……私、渚さまを、お義母さまにいただくと……あの時そう申し
あげましたが……」

 酒の力を借りたとはいえ、ずいぶんな決断をしたものだと思った。結果、そ
れが事態をいい方向に動かしたのだが。

「うん、うちが奥さんよね」
「はい、それに不満があるわけではなくて、むしろ、大変嬉しくて、毎日が楽
しくて……お母様もお父様も、喜んでくださっているのですが、その」

 わがままですが、と前おく。

「……その……こ、こうしているときは……渚さまも……私のことを、その、
奥さんだと……いえ、時々、で結構ですから」

 両手を合わせたままの紫の言葉は、なんとも可愛らしい要求に思えた。渚も
少し驚いたが、すぐに言わんとするところを察する。強く、凛々しく、頼れる
存在になった紫だが、そうなるまでの自分を捨てたわけではない。そして、渚
が最初に好きになったのは、爛漫さの裏に見え隠れしていた、女の子としての
紫なのだ。

「……運転してるときだけでええの?」
「い、いえ、その……ええと……ぐ、具体的には言いづらいのですが……その」
「紫。うちが好きなのは紫の全部やけど……最初にすきになったのは、女の子
の紫なん。そやから」

 ちら、と視線を紫に向ける。相変わらず上目遣いで、少し赤くなっていた。
 ああそうだ。
 この表情に、最初にやられたんだ。紫のことが好きで好きでたまらない。そ
う思うようになったんだ。そして、改めて思い知った。自分が紫のすべてを愛
しているように、紫も自分のすべてを愛している。同様に、そうあってほしい
と思っているということに。

「うん、紫、うちは紫のこと、好き。全部。かっこいい紫も、今みたいに可愛
い紫も」
「はい、私も渚さまのことが大好きです。繊細な渚さまも、かっこいい渚さま
も、同じように好きです」
「うん、ありがとう。じゃあまず今日は……可愛い奥様を、思い出の場所に、
エスコートするね」
「はい……渚さま」

 渚が差し出した右手を、紫がそっと取る。そのまま、指を絡めてインターを
降りるまで。二人は手を握っていた。



時系列と舞台
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12月中旬。
またルミナリエに行く途中。


解説
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ドライブしながら思い出したりしながらなんとかかんとか。
全編いちゃついてらっしゃる百合ップル


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Toyolina
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