[KATARIBE 30024] [HA06P]エピソード:『好き理論』前編

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Date: Wed, 19 Jul 2006 21:20:19 +0900
From: "Toyolina and or Toyolili" <toyolina@gmail.com>
Subject: [KATARIBE 30024] [HA06P]エピソード:『好き理論』前編
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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エピソード:『一緒に帰る』の前日あたりのお話。
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30000/30020.html
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エピソード:『好き理論』前編
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 だらだらログ切ってたら200行超えてたorz
 原因はみぎーがダラダラしゃべるからなんです。

登場人物
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 御厨正樹(みくりや・まさき) http://kataribe.com/HA/06/C/0534/
         創作部部長。マッド科学者。爆発常習者。

 蒼雅 紫(そうが・ゆかり)  http://kataribe.com/HA/06/C/0573/
         創作部副部長。いろいろと純粋無垢でドジ。

 品咲 渚(しなざき・みぎわ) http://kataribe.com/HA/06/C/0636/
         創作部書記。うるさい関西人。


訛ってないよ
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 どうにか、魔導扇を完成させた日の放課後。
 いつものように、誰よりも早く正樹は創作部室を訪れていた。
 そのつもりだった。
 珍しく、渚が先に着いていて、窓際で携帯をぽちぽちいじっている。
 いつになったら何か創作するんだろうと思ったが、今日はそれどころでは
なかった。
 いよう、ちーっす、といつものように砕けた挨拶を交わして、正樹はいつ
の間にか、自分専用と化している机に向かう。

 正樹     :「あ、使い方書いた紙を書くの忘れた」

 いそいそと、ボールペンとノートを鞄から取り出す正樹。

 正樹     :「ただでさえ、めんどくさい仕様にしちゃったのに口頭で
        :説明できるわけ無いじゃないか……」

 なにやらぶつくさと独りごちているが、それを聞いているのは渚だけ。

 正樹     :「えーと……全部開いた状態が防御用で……」
 渚      :「懇切丁寧に心を込めてお書きなさい」
 正樹     :「俺はいつでも丁寧だよ」

 ふと、渚の何気ない一言、たぶんボケ、が気になって、正樹は筆を止める。

 正樹     :「……間違っても防御効果が発揮されていないときに面で
        :受け止めないこと……っと……あれ? いま言葉に訛りが
        :無かったこと無い?」
 渚      :「別に標準語しゃべろう思たら話せます」
 正樹     :「あぁ、そうなんだ。そりゃそうだよな。うんうん」

 説得力はまるでないのだが、関西弁以外の日本語も話せるようだ。

 渚      :「すごい心の準備が必要なんやけどな」
 正樹     :「それはまたどうして」
 渚      :「いやー、うちきたらわかるけど、うち家族全員関西弁な
        :ん。お隣さんもそうなん」
 正樹     :「まぁ、このあたりだと本来それが普通なんだが」
 渚      :「うん、まあふつうなんやけどな。テレビつけても、関西
        :弁ばっかりやし。 まあ、そーいうわけです」
 正樹     :「納得」

 本当に納得しているのかどうか。
 言わんとするところはきっと、外国語を話すつもりになれば、標準語も話せ
る。そんなところか。

 渚      :「さっきはちょっと、書道の先生になったつもりやったか
        :ら標準語になった」
 正樹     :「そういうことね」


蒼雅さんの考えてる事
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 このあたりになると、完全に聞き流している。
 正樹もある程度なれてきたというか、心得てきたというか。
 説明書きを一通り書き終えて、顔を上げて。

 正樹     :「そういや、魔導扇で思い出したけど……蒼雅さんの考え
        :てる事ってよくわからんなぁ……」
 渚      :「そう? 後ろでみてるとなんとなくわかるけどなあ」
 正樹     :「いや、俺は当事者なんで後ろから見る事は不可能なんだ
        :が……」
 渚      :「うちも言うてからそう思った。よくわからんって何考え
        :てるかわからんてこと?」
 正樹     :「このあいだ、じっと見てる理由について聞いてみたんだよ」
 渚      :「んで、じっとみてる理由はなんて言ってたん?」
 正樹     :「ん?あぁ……なんでも安心するとか、そんな感じ」
 渚      :「それはええほめ言葉やなあ……安心するかー……」

 によー、ともまた違う笑い方。
 これはどちらかというと、好意的に言えばいたずらっぽい、悪意を持って言
えば、何か企んでいるのを隠そうとしない笑い方。

 正樹     :「なんだよ、気味悪い笑い方して……」
 渚      :「だってさあ? すごく心開いてるってことやんね?」
 正樹     :「……そうかぁ?ただ単に懐かれてるだけなんじゃないの?」
 渚      :「心閉じてなついてるなんてありえへんやろー?」
 正樹     :「そりゃまぁそうだが」
 渚      :「そうやなあ、安心か……なんかわかるなあ(うふふ」
 正樹     :「……なんだよ、一人で納得するなよ……」
 渚      :「あー、ごめん、心当たりあったもんで」

 また昔語りモードか、と正樹は少し身構えたのだが、渚はさらっと流した。

 渚      :「まー、なんや、一つはっきり言えるのはやなー」
 正樹     :「おう」
 渚      :「ゆかりんはまさきさまのことが嫌いじゃないっていうか
        :好き。どういう好きかはしらん」
 正樹     :「……なんとも微妙な回答だなぁ」

 確かに、断言する割には、あまり実のある回答とは言えない。

 渚      :「だって憶測でしかないしなー。んじゃもうちょっと主観
        :的に言うとですね」
 正樹     :「主観的に言うと?」
 渚      :「ちょっと待ってな、整理するでな……よし」

 少しの間。うーんとか腕組みしながら考えて、口を開く。

 渚      :「たぶんなあ、友達よりはきっと好き度が上やと思う」
 正樹     :「兄とかそう言うんじゃ無くてか」
 渚      :「違うと思うなあ。いくら何でも、お兄ちゃんと区別つく
        :やろ」
 正樹     :「いや、蒼雅さんだし」

 二人してひどい言いぐさである。

 渚      :「いくらゆかりんでも、こう……たぶん違ってるはずやね
        :ん。それを理解してるかどうかはさておき」
 正樹     :「ふむ……」
 渚      :「まさきさま兄弟は?」
 正樹     :「居ないなぁ」
 渚      :「うちも一人っ子なんやけどなー。同じ人でも、幼稚園の
        :ときと、中学高校のときやと、感じ方違うことない?」
 正樹     :「それが……」

 言葉に詰まる正樹。顔に縦線が入っているように見える。
 空気がかすかによどんだのを敏感に察知した渚は、慌てて取り繕うように。

 渚      :「う、うちの場合やとな、それがあってな」
 正樹     :「な、なるほど」
 渚      :「うん、たぶんそっちなんちゃうかなーと」
 正樹     :「よ、よく分からんがそう言う事もあるんだろう……」

 渚の、今ひとつ信憑性に欠ける好き理論に無理矢理納得したところで。
 正樹の脳裏に、少しひっかかるものがあった。
 (蒼雅さんはともかく……俺はどうなんだ……?)
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後編に続く
Toyolina
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