[KATARIBE 30020] [HA06P]エピソード:『一緒に帰る』

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Date: Tue, 18 Jul 2006 01:02:37 +0900
From: "Toyolina and or Toyolili" <toyolina@gmail.com>
Subject: [KATARIBE 30020] [HA06P]エピソード:『一緒に帰る』
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30000/30020.html

先日のキャラチャより。
http://kataribe.com/IRC/HA06-01/2006/07/20060716.html#210000
整形&描写書き足し&伏線?

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エピソード:一緒に帰る
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登場人物
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 御厨正樹(みくりや・まさき) http://kataribe.com/HA/06/C/0534/
         創作部部長。マッド科学者。爆発常習者。

 蒼雅 紫(そうが・ゆかり)  http://kataribe.com/HA/06/C/0573/
         創作部副部長。いろいろと純粋無垢でドジ。

 品咲 渚(しなざき・みぎわ) http://kataribe.com/HA/06/C/0636/
         創作部書記。うるさい関西人。


無理です
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 正樹     :「し、品咲さん〜」
 渚      :「またジャイウワァンにいじめられたのかい、まさ太くん」

 どら焼きか何かを食べるまねをしながら応える渚。

 正樹     :「筋肉馬鹿には爆弾でもくれてやるさ……そうじゃなくて」
 渚      :「なんやった?」
 正樹     :「部活から離れてたら、しゃべれそうにないぃ〜」

 本当に無理です、勘弁してください。
 情けない口調で言う正樹に、部長としてのカリスマやらは感じられない。
 もっとも、カリスマだのなんだの言うのも渚だけなので、この感想は渚個人
の私的なものである。

 渚      :「……そりゃ難儀な話やなあ……扇子、昨日の今日やし、
        :まだ渡してないんやろ?」
 正樹     :「渡してない……いや、無理だってっ。部室以外で女の子
        :と会話するなんて」
 渚      :「いや、廊下でも出来てるやん……」

 先日、廊下で紫の誤解を解いていたときのことを言っているようだ。
 正樹がそういうことを言っているのではない。それをわかっていてあえてツッ
コんでいるのだ。

 正樹     :「いやほら、それは部長として部員に話しかけてるだけだ
        :からっ」
 渚      :「『一緒に帰ろう、帰り道に扇子の使い方教える』、それ
        :もあかんのかー」
 正樹     :「えーと、い、一緒に帰ろうなんてそんな事……」

 初めての行動に踏み出すときは、勇気が要るものだ。
 そしてそれは踏み出してしまえばどうというものでもないのだが……踏み出
す前はやっぱり足がすくむものだ。


練習しよう
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 渚      :「まあ、いきなり本番とかきついかー。誰か練習台探さん
        :と」
 正樹     :「練習ですか」
 渚      :「うちをゆかりんやと思って言ってみ」
 正樹     :「……」

 いっしょにかえろう、まどうせんのつかいかたおしえるから
 そう言いたかったらしい。
 なにやら、ぱくぱくと口が動いているが、渚は読唇術を心得ているわけでも
なく。そして、正樹の口の動きは、声にならなかったわけではなかった。

 正樹     :「はーっ、はーっ」
 渚      :「……重傷やなあ」
 正樹     :「自慢じゃないが、まっとうに女の子と話したのは創作部
        :に来てからだ」
 渚      :「そっか、まあそれはおいといて、んじゃ、とりあえず一
        :緒に帰ろう言ったことにして」
 正樹     :「おう」
 渚      :「仮想ゆかりんの返事。『はいっ、まさきさま』」

 あまり似ているとは言えないが、ご丁寧に口調をまねる。
 いや、それよりも。
 そこを素っ飛ばしては意味がないのだが、少々混乱している正樹は気づいて
いないようだった。

 渚      :「OKだそうです」
 正樹     :「……え、えーと。それじゃあいこうか」

 誰か見ていたら、この二人が一緒に帰る約束をしたように見えたかも。
 しかし、幸か不幸か、創作部室には二人しかいなかったので、誤解のされよ
うもなかった。

 渚      :「全然楽勝やん」
 正樹     :「いや、最初の一言が……」

 少し言葉に詰まって、正樹が続ける。

 正樹     :「やっぱ、無理だよ。蒼雅さんと一緒に帰るなんて……こ
        :う、色々と無理」
 渚      :「いろいろって何が無理やのん。家帰る方向が違うとか言っ
        :たらしばくで?」
 正樹     :「そういうんじゃなくて、恥ずかしいじゃん女の子と帰る
        :なんて」
 渚      :「そんなん最初だけやって。そのうち平気になって、その
        :うち一緒に帰りたくてうずうずしてくるもんです」
 正樹     :「……うぅむ……まぁ、一度だけならがんばってみるけど」

 途中から説明が怪しくなっているが、それにも気づいていないようだった。
 なんとなくボケをスルーされたようで、少し切なくなった渚だった。
 それでも、正樹が少しやる気になったというか、自信を持てたようにも見え
たので、渚は切ない気分を忘れることにした。
 そこに、ちょうどよく、扉を開ける音が響く。


渦中の人
--------

 正樹     :(びくっ)
 紫      :「あ、正樹さま、渚さま。まだ残っていらしたんですか?」

 ひょこっと顔を出したのは、渦中の人、紫。長い髪がつられて動いている。

 渚      :「お、ゆかりん、ちょうどええところに」
 紫      :「はい?」
 正樹     :「え!?あ、あぁうん……ほらほら俺って部長だし……」

 まだ残っている、に律儀に返答する正樹。しかし紫の興味は、渚の一言に向
いたようで、手招きしているわけでもないのに、てこてこと近づいていった。
 ごにょごにょと耳打ちする渚。まさきさまとか、一緒とか、会話の断片が、
なぜか正樹の耳に届く。

 紫      :「え?一緒に……?」

 にっこりうなずいて、そして、とても嬉しそうに微笑む紫。

 紫      :「はい、是非」
 正樹     :「あ、あのー……一体何を……」

 日頃の行いからか、渚がまた悪だくみ、もしくは不要なことを吹き込んでい
るのではないかと、疑念を抱かずにはいられない。
 ちらちらと正樹を見ながら耳打ちしていた渚が、正樹をまっすぐ見て。

 渚      :「さあ、まさきさまどうぞ」

 なんとも言えない表情で笑うのだった。
 本人は「によー」と表現しているが、生ぬるそうで、それでいて何か裏でた
くらんでいそうな、素直に受け止めるには危険な表情。
 戸惑いながら、少し焦っている正樹を見て、紫は少しだけ首をかしげた。

 紫      :「え?一緒に帰宅するのでは……?」
 正樹     :「え?あ、あぁ、うんうん」

 どうやら話をつけてくれていたらしい。
 お節介なのか、業を煮やしたのかはしらないが。
 渚を見ると、すごくいい笑顔で親指を立てていた。
 その隣では、紫が一点の曇りもない笑顔で……これは渚と違って、素直に受
け止めてかまわない……にこにこしているのだった。

 正樹     :「じゃあ、一緒に帰ろうか。……品咲さん鍵閉めよろしく」

 じとっと、渚を軽く睨んで、正樹が鞄を手にした。

 渚      :「はーい」

 いってらっしゃい、と部室を出て行く二人を見送る渚。

 いやあ、いい仕事をした。
 達成感に満ちあふれる一日だった。

 この日は、そう思っていたのだ。


時系列
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 2006年7月頃 放課後で17時過ぎてるかも。

解説
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 純粋な行為に戸惑う正樹と、面白がりつつお膳立てをする渚。
 もしかしたら心境の変化があるかもしれないのですが、それは後の話。
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Toyolina
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