[KATARIBE 29252] [HA06L]チャットログ:『無明の天使:その力は愛する者のために』

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Date: Sun, 25 Sep 2005 00:40:50 +0900
From: 瑠奈(るな) <luna-web@jcom.home.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29252] [HA06L]チャットログ:『無明の天使:その力は愛する者のために』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/L/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29252.html

ども、瑠奈です。
久しぶりのログ切りです。
エピソードのようにも見えますがほぼ原文どおりです。
元ログ(http://kataribe.com/IRC/HA06-01/2005/07/20050728.html#220000)

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[HA06L]チャットログ:『無明の天使:その力は愛する者のために』
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登場キャラクター
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 岡啓介(おか・けいすけ)
     :氷川美琴の恋人で、癒しの力を持つ人狼。
 氷川美琴(ひかわ・みこと)
     :岡啓介の恋人で、狐狗狸の力(第三の目)を持つ女子高生。


今晩もデート
−−−−−−

 待ち合わせ場所。
 女の子を待たせてはいけない、といつも思っている啓介は、待ち合わせ15分
前には指定の場所に着くようにしている。
 この日も、その習慣に従い、18分前に待ち合わせの場所に到着していた。

            **

 啓介がその場所に到着してから7分が過ぎた頃。
 ふと、遠くの空を見上げると、白い羽の少女が見える。

 啓介     :「……あれ? 知佳ちゃんかな?」
        :「……でも、おかしいなぁ?」

 啓介の頭に浮かんだのは、知り合いの羽を持つ少女、白神知佳だった。しか
し、彼女は決して街中で羽根を使うことはなかったはずだ。
 啓介     :「……まあいいや、こんど智也に会ったら聞いてみるか」
 その場は、特に深く考える理由もなかったのである。

            **

 それから10分が過ぎた頃。

 啓介     :「……おかしいなぁ」

待ち合わせの相手、氷川美琴も、そう時間にルーズな少女ではない。待ち合
わせ時間の数分前にはいつも待ち合わせ場所に到着するはずである。
1分、2分、3分……時間が経過しても、彼女が現れる様子がない。

 啓介     :「何かあったのかな……?」

 不審に思った啓介は、美琴に電話を入れてみる。

 SE      :「Trrr……Trrr……」

 啓介の耳には、機械的で、規則的な呼び出し音が何度も流れるだけ。
 いつもならばその向こうから聞こえるはずの彼女の声は、一向に聞こえる気
配はない。
 啓介の胸に響いたのは、言いようのない不安感。

 啓介     :「何か、事故にでも巻き込まれたんじゃ……」

 そう思った啓介は、他の事を考える間もなく走り出していた。
 向かう先は、氷川家。
 もしかしたら、啓介は、無駄に体力を消耗しているのかもしれない。走る必
要などないのかもしれない。
 むしろ、啓介自身は、そのような結末になることを望んでいるのだろう。
 だが、その希望は、わずかな時の経過とともに儚く消え去った。

 啓介     :「み……美琴ちゃん!!」

 月の光に照らされた美琴の身体ははかなく壊れそうで。
 眠り姫。そんな雰囲気さえ漂わせている。

 啓介     :「美琴ちゃん! しっかり! しっかりして!!」

 大切な人にそう呼びかけられても声を出すことも目を開くこともなく。

 啓介     :「(くそっ……)」
        :「(とにかく、どこかで介抱しないと……!)」

 啓介は、今にも壊れそうな美琴の体を抱え上げる。壊さないように細心の注
意を払いながら。
 助けなければ……その感情だけが、今の啓介を支配していた。


啓介の自宅にて
−−−−−−−

 ごく普通の街中、ごく普通のアパート。そして、そこに住むごく普通の青年。
しかし、その青年は、どう考えても普通とはいえない力を持っていた。

 啓介     :「(美琴ちゃん……目を……覚ましてくれ……!)」

 普通の青年の体から、普通とは言い難い体毛が姿を現す。
 それを皮切りに、普通の青年の体が、異形のモノへと変化していく。
 かつては、蔑視・奇異の目の対象としかならなかった、啓介のもうひとつの
姿。
 しかし、今は違う。
 人を助けることのできるこの力……今の啓介は、この力を誇りとしているの
だ。
 異形のモノから発せられる強大な力……しかし、その姿形とは裏腹に、「力」
は優しさに溢れている。

 啓介     :「(オレの内に眠る力……頼む……!)」
        :「(大切な人を助けるために……!)」

 やがて。
 「力」を使い果たした啓介は、その姿を小さな狼へと変え、その場に崩れ落
ちてしまった。

            **

 ……

 …………とくん

 わずかな鼓動。
 それがきっかけで。

 美琴 :「…………ぁ」

 わずかに目を開く。
 天井。

 美琴     :「……ここは……?」
:「しらない天井……?」
:「……たしか、わたし……」

 身に起こったことを思い出す美琴。
 啓介さんとのデートに出掛けて、羽根の人に邪魔されて、そして。

 美琴     :「……啓介さん、待っているかなぁ……ってあっ」

 もう一度天井を見る。
 ここはたしか……

 美琴     :「……啓介さんの……家?」

 まだ目覚め切っていない頭で考える。

 美琴     :「……啓介さんは……?」

 ふと横を見る。
 おおかみさんがいっぴき。

 美琴     :「おおかみの、啓介さん、だ……」
 啓介狼    :(のびてる)

 ちいさなおおかみの頭をそっとなでる。

 美琴     :「啓介さん……」

 そうつぶやきながら。
 返事はない。かわりに聞こえるのは、疲れ切った狼の寝息。

 美琴     :「……ごめんなさい」

 そういう美琴の声はよわよわしい。

 美琴     :「もう、おおかみさんの声、聞こえないの……」

 美琴の目から一筋の涙が落ちる。

 啓介狼    :「……?」

 涙に反応したのか、それとも偶然か。ともかく、子狼となった啓介が目を覚
ました。

 美琴     :「……啓介さん……」
 啓介狼    :「美琴……ちゃん……」

 まだ意識は朦朧としている。しかし、啓介には、美琴の声がはっきりと聞こ
えた。

 美琴     :「……啓介さんっ」(ひしっと抱きしめる)
 啓介狼    :「……!!」

 突然の美琴の行動に、頭がついていかない啓介。

 美琴     :「ごめんなさいっごめんなさいっごめんなさいっ」
        :(ひしっ)

 泣きながらただ謝る美琴。
 啓介は、今までに起こったことを頭の中で整理している。
 そこで、ようやく、美琴がこのように涙を流している理由を理解した。

 啓介狼    :「み、美琴ちゃん、ちょっと……苦しい……」(汗
 美琴     :「ごめんなさいっごめんなさいっごめんなさいっ」
        :(それでも抱きしめるのをやめない)


 今の啓介の体は、美琴よりもはるかに小さい。
 強く抱きしめられるのは、物理的に苦しいのである。

 啓介狼    :「と、とりあえず……一回、離して……」
 美琴     :「う、うん……」


 そっと腕をはなす。しかし涙は止まらない。
 開放された啓介は、そのまま床に着地……しないで、美琴の肩の上に上る。

 美琴     :「あっ」

 啓介の動きに少しとまどう美琴。

 啓介狼    :(美琴の頬、涙の跡をそっと舐める)
 啓介狼    :「とにかく、無事に目を覚ましてくれて……本当に良かっ
        :た……」
 美琴     :「け、啓介さんっ」

 涙は止まったが頬がみるみるうちに赤くなっていく。

 啓介狼    :「本当に……本当に……良かったよ……」(ぺろぺろ)
 美琴     :「ごめんなさい……わたし、わたし……」
 啓介狼    :「本当に嬉しいんだ……美琴ちゃんが無事で……だから、
        :泣かないでよ」

            **

 普通の青年の姿に戻った啓介。しかし、その顔は真っ赤に紅潮していた。

 啓介     :「………」(大赤面)
 美琴     :「…………」(つられて大赤面)

 冷静に考えれば、泣いている美琴を慰めるためとはいえ、あまりにもこっぱ
ずかしい行為をしたもんである。

 啓介     :「と、とりあえず……家まで、送っていこうか」

 平静を装おうとするが、顔の赤さはまったく変わっていない。

 美琴     :「……ううん」
 美琴     :「今は……帰りたくない……」
 啓介     :「……」
 美琴     :「……怖いの……」
 啓介     :「……え」

 さっきの出来事を思い出して身体が震える。

 啓介     :「怖い……?」
 美琴     :「うん……」

 何があったのか、と聞こうとして口をつぐむ啓介。語らせることで、恐怖を
思い出させるようなことにはしたくなかったのである。
 美琴もまた、自分から言うことはできなかった。言葉に出すことで恐怖を思
い出すことはしたくなかったのである。
 しかし、親兄弟と同居している美琴を、このまま自分の家に置いておくこと
もできない。

 啓介     :「美琴ちゃん……親御さんが心配するよ……」
 美琴     :「……それは……わかっています……でも……今は……こ
        :うしていたい……」
 啓介     :「……」

 狐狗狸の霊、第三の目を奪われた空白を埋めるかのように啓介に身を預ける
美琴。
 そんな美琴に、啓介も、それ以上強く言うことはできなかった。
 これ以上大切なモノをなくしたくない。だから離れたくない。
 そして……啓介さんを巻き込みたくない。
 そう思えば思うほど美琴の身体は啓介との距離を縮めていく。

 啓介     :「(オレ、確実に美琴ちゃんの両親やお兄さんになんか言
        :われるな……)」

 と思いつつも、そんな美琴を拒むような選択肢は、啓介の頭の中にはなかっ
た。


時系列と舞台
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 美琴が天使憑きに襲われた直後。
(http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28900/28972.html)
 美琴の襲撃現場から啓介の自宅へ。

関連リンク
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狭間06Wiki:無明の天使
http://hiki.kataribe.jp/HA06/?HA06P_DarkAngel
長編エピソード『無明の天使』シリーズのtopic速報サイト。

解説
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 大切な恋人を傷つけられた人狼はその力を恋人のために使う……

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恐るべしらヴぱわー……(ぱた

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