Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Tue, 24 May 2005 00:19:24 +0900
From: "Sakurai.Catshop" <zoa73007@po.across.or.jp>
Subject: [KATARIBE 28802] [HA06N] 小説 『魔性の寝顔』
To: Kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <4291F47C.6080204@po.across.or.jp>
X-Mail-Count: 28802
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28800/28802.html
こんばんは、Catshop/桜井@猫丸屋です。
六華ちゃんと達大の攻防戦、第二段です。
Hisasiさんとmimimiさんに、イラストをつけてもらいました。いぇいっ。
でも引き続き挿絵、募集中(笑)。
ではでは。
#====================================================================#
[HA06N] 魔性の寝顔
==================
登場人物
--------
桜木達大 (さくらぎ・たつひろ):http://kataribe.com/HA/06/C/0365/
しがないシステム管理者なサラリーマン。
オオカミになりきれないヨコシマさが売り。──弱い。
六華 (りっか):http://kataribe.com/HA/06/C/0481/
元冬女。さらにその前は花魁。
無邪気な笑顔とは裏腹に、男心を転がす手管が売り。──寝起きが悪い。
豊川火狐 (とよかわ・かのこ):http://kataribe.com/HA/06/C/0452/
達大の姪っ子。
無邪気な笑顔で達大と六華を振り回す。──今回は枕代わり。
魔性の寝顔
----------
白い蛍光灯に照らされた台所のシンク。
洗い物もほぼ片付いて、銀色の地金に朧に達大の顔が映りこむ。
じゃーっ、きゅっ。
蛇口を閉めて作業終わり。
傍らに置いたウィスキーグラスを片手に振り返れば、六華と火狐が仲良く
並んでテレビを見ている。
仲良きことは美しき哉。
うんうん、と一人頷いてグラスから焼酎をちびり。
連れ子を抱えて新しい奥さんを迎える父親、というわけではないが、半ば
それに近い心配をしていた達大である。
こういう風景を見ると素直に安心できる。
未だに、大した訳もなく駄々をこねた火狐が、六華に遠慮させることがある
けれど、それも最近は少しずつ減ってきた。
お気に入りの焼酎もことさら美味いというものだ。
「──って、あれ?」
喉を降っていく酩酊を味わい、まじまじと見直してみれば。
ブラウン管に映っているのはニュース番組。それもスポーツニュースで今日
の野球の試合の結果を伝えている。二人には少なからず退屈な内容のハズだ。
グラスを片手に近づいて様子をうかがう。
「すぅ──すぅ──」
「──すぅ」
二人はお互いにもたれあうように眠っていた。
六華の右肩に火狐の赤みがかったツインテール。それをさらりと覆う六華の
黒絹の髪。
若い母と子というよりは年の離れた姉妹のような二人の、その寝顔の安らか
なことと言ったら。
「ふは」
思わず笑みがこぼれた。
とは言え、このまま朝まで寝かせておけば筋が強張るは、身体を冷やすわで
良い事はない。可愛そうだが揺り起こして寝室に連れていくべきだろう。
「もうちょっと見ていたい気もするけどな」
グラスをソファセットのテーブルに置いて、向き合う。
ぱちり。
不意に目を覚ました六華と目があった。
「──ん?」
寝ぼけまなこを、手の甲のつけねでこすりつつ達大を見る。
「おはようございます」
「──んー」
眠気にとろけきった六華の返事。
くすりと笑って見守る達大の前で、六華は肩に寄りかかる火狐をそっと抱く
ようにして膝枕する。それで今度は自分の枕がなくなって、きょろきょろと
変わりを探すけれど半開きの寝ぼけまなこでは見つからない。
しょうがないな、と達大は六華の足元に落ちていたソファを拾い上げた。
軽くはらって差し出す。
「どうぞ」
「────えーっと」
クッションを受け取り抱えて六華、さらに達大を手招く。
「まだなにか?」
「──まくら」
苦笑いとも照れ笑いともつかぬ顔で達大が隣に座れば、六華は花咲く笑顔。
達大は、この笑顔にめっぽう弱い。
そのまま、六華は達大の肩に背を預けるようにもたれかかった。
「はいはい」
達大は、やはり照れ笑い。
布越しに伝わる湯上りのしっとりして柔らかい肌の温度。それから洗い髪の
甘く清潔な香り。
ぷちぷちと、理性の手綱の立てる音が耳の奥で聞こえる──なんて、余裕
ぶって言ってる場合でもない。このまま寝かせておけば、とはさっき思った
ばかりである。
十代の少年でもあるまいし、この程度で理性切れてちゃ情けない。
「六華さん──」
と、声かけて起こそうと顔を覗き込めば。
「すぅ──」
穏やかな寝息。心から安らかな寝顔。
ふぅ、と達大はためいき。そして天井を見上げて思う。
──ま、適当なところでベッドに連れて行くか。
三人そろってソファで目を覚ましたのは、翌朝のことである。
時系列と舞台
------------
『若旦那、ころころ』から数日後。
やはり里見マンション、達大の部屋にて。
※ 『若旦那、ころころ』の時系列と舞台では『吹利マンション』と記載
してましたがこれは誤記です。
正しくは『里見マンション』となります。
解説
----
ヨコシマだけどオオカミになりきれない達大と、無邪気な寝顔で男心を
転がす六華の、ある夜の攻防戦。
関連リンク
----------
2005年05月17日 01:00頃、HA06-01のログから。
http://kataribe.com/IRC/HA06-02/2005/05/20050517.html#010000
[HA06N] 小説『若旦那、ころころ』(リライト版)
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28700/28781.html
イラスト 若旦那と六華さん
http://kataribe.com/HA/06/G/200505/0032/
--
#====================================================================#
Sakurai.Catshop / 桜井@猫丸屋
e-mail : zoa73007@po.across.or.jp
blog : http://www.mypress.jp/v2_writers/sakurai/
---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28800/28802.html