[KATARIBE 28203] Re: [HA06N]小説『なぎのうみ』

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Date: Wed, 12 Jan 2005 02:23:25 +0900
From: "hotaru" <CBL32377@nifty.com>
Subject: [KATARIBE 28203] Re: [HA06N]小説『なぎのうみ』
To: <kataribe-ml@trpg.net>
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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----- Original Message ----- 
From: "tuboyama" <tuboyama@wg7.so-net.ne.jp>
To: <kataribe-ml@trpg.net>
Sent: Tuesday, January 11, 2005 11:32 PM
Subject: [KATARIBE 28195] [HA06N]小説『なぎのうみ』


> Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
> Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28100/28195.html
>
> ども、渚女です。
> 空帆ちゃんの小説をちょろちょろと書き。
> 渚女の分身ということで、こんな過去を付けてみました。
> いやほんと、でっかくてぼけっとしてると狙われるのよ(何
>
> -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
> 小説『なぎのうみ』
> ===============
>
> 登場キャラクター
> ----------------
> 由良木空帆:さめつかいの少女。今回は海に出てる。実は……。
> なぎさめ:空帆の使い魔。鮫なので海は好き。フォロー担当。
> ----------------
>
>  ぱたぱたぱた。
> 「あ〜……」
>  力無くはためくセールを見ながら、わたしはひっそりと息をつく。
>  海が凪いで五分くらい。まだ、風はやってこない。
>  風がこなければ、風で動く乗り物は動かないわけで。
> 「はぁぁ」
>  わたしの乗ったヨットも、海の中にぽつりんと取り残されていた。
>  空を見ると、おっきな雲が、しっかり太陽を包んでる。
>  その雲も、あんまし動いてないし。
>  冬の海っていうのはかなり寒いものなんだけど、ドライスーツを着たわたし
> にはあんまり関係ない。
>  ただ、むきだしの顔、とくに鼻の頭は冷たくて痛くて、ちょっといやぁな気
> 持ち。
>  こんな時は、いっそ海に飛び込んで泳いでいったほうがいい気もするけど、
> 間の悪い事に、ハーバーまではかなり遠かった。
>  外海らしく少し粗い波にヨットが揺られ、わたしの頭もくらくら揺れる。
>  まあ、これくらいの揺れでへばるような体はしてないけど。
>  それにしても、暇。なので。
> 「なぎさめ〜」
> 「なんだぁ、お嬢」
>  わたしの問い掛けに、海の中から声が聞こえた。
>  普通なら、海の中から音なんて聞こえない。でも、なぎさめの声は不思議と
> はっきり聞こえてきた。
>  ちなみに、なぎさめはヨットの周りを悠々泳いでる。彼(?)には水が冷た
> いとかは関係ないだろう、だって。
>  ザパァ。
>  水音と共に突き出した背びれ。時折見える背中はざらざらしてる。
> 「いいなぁ、鮫って」
> 「はぁ?」
> 「だって、いつでも泳げるじゃん」
>  わたしの呟きに、なぎさめは、何いってんだこいつ、って感じに背びれを揺
> らすと、海中に潜ってしまった。あ〜あ、暇つぶしができなくなっちゃった。
>  ひま〜、と呟きつつ、わたしは、視線を頭上の雲に向ける。こんなときは、
> 考え事でもして過ごそう。
>  最初になぎさめと会ったのは、まだわたしが小学生のころ。海に遊びにきて
> たわたしが砂浜で見つけたのが、なぎさめが封じてあった腕輪だった。
>  なぎさめと契約した最初は、なぎさめの姿の消し方がわからなくて、隠すの
> が大変だったのを覚えてる。両親に抱き枕と言い張ってたのは、今思えばすご
> い無謀なことだよね。
>  なぎさめの隠し方を覚えてからは、いつも連れて歩くことにした。見えない
> 誰かと話すわたしを、クラスメイトは変な目でみてたけど、でも、元から人付
> き合いの悪かったわたしは、そんなこと気にしなかった。
> 「中学校のときは、無茶したなぁ」
> 「ま、それも人生なんじゃないか」
>  そう、こうやってなぎさめはいつもフォローを入れてくれる。ま、ほとんど
> ツッコミなんだけど。
>  でも、中学生のときは大変だった。誰がって、両親が。
>  背ばっかり高くて、でも、ボケボケな駄目っ子だったわたしは、かっこうな
> イジメの標的になった。クラスから廃絶されたわたしは、いつからか学校に行
> かなくなり、市民プールで泳いでばかりいた。だって、水とか海が大好きだ
> し、なぎさめと一緒に泳げるから。
>  見るに見かねた両親が、気分転換に海に連れて行ってくれたときに、わたし
> の人生はもう一度変わった。
>  ハーバーのおじさんが乗せてくれたヨット。それは、とっても楽しくて、わ
> たし、すぐにその虜になった。
>  ハーバーまではかなり遠かったんだけど、両親に頼み込んで、何度も連れて
> 行ってもらった。最初は上手く出来なかった操作も、ちょっぴり慣れてきた。
>  高校は、一応受験して、奇跡みたいな確立で吹利学校高等部に受かっちゃっ
> た。本当は県外の海のある高校に行きたかったけど、それはさすがに両親に反
> 対されちゃった。
>  高校生活は、イジメられないこと以外、中学校と同じだった。多分、わたし
> が人との関わり方を忘れちゃったからかもしれないけど。
> 「でも、最近はちゃんと話してるじゃねぇか」
> 「一年もたてば、慣れてくるよ」
>  でも、まだわたしは人が怖い。今まで親しく話してた友達が、いつ突然傷つ
> けてくるか怖くて。
>  でも。
> 「こうやって海の中にいると、そんなのは勘違いだ、って言われてる感じがす
> るよ」
> 「海ってのは、大らかだからな」
>  そう、海は全てを包み込んでくれる。だから、わたしは海が好き。
>  ほっ、と息を吐いたわたしの頬に、冷たい風があたった。
> 「来たね」
> 「結構強ぇぞ」
>  なぎさめの声を聞きつつ、体に緊張を走らせる。海は、時に暴竜になる、だ
> から、海の上では気を抜いちゃいけない。
>  ハーバーのおじさんから言われたその一言を心に秘めて、わたしは右手にシ
> ートを、左手にティラーを握る。
>  荒れが大きくなってきた波に揺られつつ、セールを思いっきり広げ、
> 風を取り込む。ヨットが動き出したら、ティラーを操作して方向を定める。よ
> り、風を取り込み、そして、目的地に近い場所へ。
> 「なぎさめ、付いて来て」
> 「おぅよっ」
>  すでにヨットはそこそこの速さで走り始めてる。でも、まだ最高速じゃな
> い。
>  風の来る方向の四十五度、それが、セールを広げる角度。
>  ザァァァァァァッ。
>  波を切る音が心地いい。シートを引っ張る風の力が気持ちいい。
>  自分が、自分の手で、大海原を突っ切ってる感覚。
>  わたしは、それが大好きだ。
>
> END
>
> 時系列と舞台
> ------------
> 冬のとある日。海の上。
>
> 解説
> ----
> 冬の真っ只中ヨットに乗る空帆。凪の海で回想する。
> ちなみに、ドライスーツとは水の侵入をシャットダウンできるウェア。
> 冬の海では必需品だが、着たり脱いだりは結構大変。
> ……だったはず、です(うろ覚え)
> -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
>
> ヨット技能、もうちょっと上げた方がいいかも(w
> ということで、でわ
> “小説量産機”渚女悠歩
>
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