[KATARIBE 28173] [HA06N] 小説:『空中衝突』

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Date: Tue, 11 Jan 2005 01:13:47 +0900
From: 瑠奈(るな) <luna-web@jcom.home.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28173] [HA06N] 小説:『空中衝突』
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28100/28173.html

ども、瑠奈です。
キャラチャをベースに小説化してみました。
文章的におかしいところもあるかもしれませんが……よろしくお願いします。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
小説:『空中衝突』
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主な登場人物
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 紺野おぺら
   歌唱自慢の小学生。サイレンなので空を飛べる。
 白神知佳
   体力自慢の小学生。天使の羽で空を飛べる。


予感
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 三学期になって初めての体育の授業。
 この時期は二月の末にある全校マラソン大会の練習も兼ねて、長距離走をす
ることになっている。
 私たち4年3組も他のクラスと同じように長距離走の練習をしていた。
 今日は、体育館の上を周回するように設けられているランニングコース(一
周200m)を2周して400mの記録を測る日だった。
 私、紺野おぺらは走るのにはあまり自身がない。どちらかというと走るのは
遅いほうだから。でも、頑張って走ろうと思う。
 測定は、準備運動の後軽く走り、そして実際に記録を測る……予定だった。
 でも、1回目に走った知佳ちゃんが、走っている途中に倒れてしまった。軽
い貧血で幸い頭などは打たなかったようで、そのまま日向君が保健室に連れて
行ったけど、クラスで一番背の高い知佳ちゃんを運ぶのは大変そうだった。

 ……あれ?

 ふと、知佳ちゃんが倒れていたあたりに白いほこり……のようなものが目に
入った。
 クラスメートや先生は知佳ちゃんのほうを見ていて気がつかないようだった
ので、思わず手にとって見た。

 ……白い…………羽毛?

 ほとんどの人にはただの毛の塊にしか見えないであろう。でも私にはそれが
羽毛であるという確証を持つことができた。どうしてかは……言えないけど。

 ふと見上げる。
 体育館の屋根。
 鳥なんて飛んでいるわけがない。

 ……どうしてこんなものが落ちているんだろう……

 ほんの少しだけ嫌な予感がして、その羽毛をポケットにこっそりしまった。

 そうしている間に、日向君が戻ってきた。
 日向君の話だと、保健室の先生がいなかったので、知佳ちゃんは保健室でし
ばらく休むことになったらしい。
 そんな事情もあって、結局、測定は次の体育の時間に持ち越しになった。


#以上、小説『白い覚醒』を参照してください
#http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/28000/28095.html


森
--
 三学期になってはじめての連休。
 って言っても、三学期がはじまって最初の休みが連休っていうのは、ちょっ
とだけ冬休みの延長の気分。

 そして、休みの日の夕方になると決まって行くところがある。
 静かな森。
 森、といっても公園というわけでも、かといって私有地というわけでもない。
 人の手の付けられていない場所、というのが一番しっくりくるだろう。
 冬の夕方にもなると周りは暗くなる。街灯も何もないので散歩するにしても
懐中電灯は必要だろう。

 そんな森なのに──いや、そんな森だからこそ私が行く場所なのだ。

 いつものようにけもの道をかき分けて森の奥に進んでいく。なるべく物音を
立てないように注意はしながら。


人魚
----
 しばらく歩くと開けた場所に出た。
 大きな池。
 ちょっとした水浴びくらいならできるだろう。
 いつものように池のそばの大きな岩陰で服を脱いで丁寧にたたむ。

 下着まで全て脱いだその姿で一呼吸し……池に飛び込む。

 指先から水に入り……頭……胸……と水に浸かっていく。
 水の冷たさが身体に染み入ると同時に別の感覚が下半身にも伝わっていく。
 足の感覚が変わっていく。
 脚がくっついたまま離れない。
 足の甲が大きくなっていく。
 おへそや腰のあたりから足首までうろこが生えて……脚が大きな魚のように
変化していく。

 人魚。

 私のもう一つの姿。
 水の中でも呼吸ができる。寒さにも耐えられる。そして歌も歌える。
 私はいつものように歌を歌いながら泳ぐ。

 「たまには、変身の練習もしないと、だめよ?」
 「うまく変身できなくなるし……元に戻れなくなるから」

 おかあさんやおねえさんの言葉を思い出す。
 どの姿が「元の姿」なのかはよくわからない。
 でもおかあさんやおねえさんと同じ姿でいたい。
 おかあさんやおねえさんと一緒の舞台で歌いたい。
 だから……だから……

 確かに、こうやって休みのたびに人目につかないところで変身の練習をして
いるおかげ(?)で、水泳の授業でも人魚に変身しないで泳ぐことができる。
 それどころか水泳だけは体育の中でも得意分野になった。
 球技とかは指や手を痛めるからあまりやらないんだけど。

 泳ぎの練習も一通り終わったところで池から上がる。
 上がるときにはもちろん足は元に戻す。
 水に入ると同時に人魚になり、上がると同時に元に戻る。
 これも練習の成果……なのかな。


半人半鳥
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 ……寒いっ(ぶるぶる)

 池から上がれば冬の寒い北風が身体にあたる。
 服を着ていない上、池から出たばかりで冷水が身体をぬらしている。

 ……寒いっ(ぶるぶる)

 鳥肌が立つ。

 ……早く……身体を……温めないと……

 身体が大きく震える。
 全身にさっきとは別の感覚が伝わっていく。
 鳥のような毛が全身に生えて身体を温めていく。
 羽毛。
 しかしこの間体育館でみた白い羽毛ではない。
 灰色の羽毛。
 腕と頭に大きな羽根が生え、足は鳥のような爪を持つ。
 
 半人半鳥……鳥人間……紺野おぺらの顔をした鳥……
 周りからみれば明らかに異形の者だろう。
 天使のような神々しさなんてこれっぽっちもない。

 サイレン。
 二つの姿を持つ怪物。
 それが私の姿。
 ……思わず地面を蹴って飛ぶ。
 頭と腕の羽根とをはためかせて。


空中衝突
--------
 私は夢中で飛んでいた。
 日も暮れようとしている冬空を。
 空を飛んでも大きな鳥にしか見えないだろう……顔以外は。
 だから……周りなんて見えていなかった……

 「……えっ!?」 

 不意に人の声がした。

 「……はっ!?」 

 前方からなにか近づいて……避けられないっ!

 「あわわわわわっ」(ききききききーっ 
 「きゃぁぁぁぁぁっ」(ばさばさばさーっ 

 どうやら鳥とぶつかってしまった……え?……鳥、じゃない??

 「あいたたた……」
 私は頭の羽で飛びつづけながら手で頭を押さえた。

 「いたーい」
 相手も痛がっている。
 
 「えっと……あっと……大丈夫、ですか?」 
 「うん、だいじょうぶです……」

 相手がこちらを向いた。

 ……み、見られちゃうっ……? でも……わからない、よね……多分……
 そう思った刹那。

 「……あれ?」 
 「……え?」 

 どこかで聞いた声。

 「あーっ、やっぱりおぺらちゃん」 
 「その声は……知佳ちゃん?」 

 知佳ちゃんだった。

 「その声……って、みえないの?」 
 「夜はちょっとね……鳥目だから……それに、知佳ちゃんが空飛んでいるな
 んて思ってもなかったしーっ」

 嘘だった。
 白い羽根の知佳ちゃん。神々しくてちゃんと見ていられなかったから。

 「こっちだって、おぺらちゃんが空飛んでるなんて思いもしなかった
しーっ」 
 「こ、こんなところで立ち(?)話もあれだから、ちょっと降りよっか」 
 「あ、うん、いいよ」 

 知佳ちゃんと一緒に池の近くに下りた。
 知佳ちゃんは着地と同時に羽をしまっている。
 私は……そんなことはできなかった。

 「羽根、しまえるんだー」 
 「うん」 
 「そっかー」 
 「おぺらちゃんも、飛ぶ練習?」 
 「う……うんっ……」(ちょっともじもじ) 
 「…どしたの?」 
 「……やっぱり、恥ずかしいよぉ」

 私は羽毛がなければ裸。
 そう思うと改めて恥ずかしくなって、あわてて腕の羽根で身体を隠した。
 一方の知佳ちゃんは、というと羽根をしまっても服を着ている。
 ……ちょっとうらやましいと思った。

 「……あ……(洋服、着られないんだ)……あう、えっと」 

 どうやら事情を飲み込んでもらえたらしい。

 「ふ、服、そこにあるんだ……」

 岩陰のほうを指差す。

 「あ、う、うん」

 知佳ちゃんが私の洋服を持ってきてくれた。

 「はいっ」 
 「あ、ありがとっ」

 洋服を受け取る。
 そんなやさしい知佳ちゃんの姿をみて少しだけ嬉しくなった。
 
 「ちょっと着替えてくるねっ♪」 
 「うんっ」 

 木の陰に隠れて変身を解いて着替える。いつもと同じように急いで着替える。
 
 「おまたせっ♪」 
 「はやかったねっ」 
 「知佳ちゃんを待たせてもいけないしねっ」 


またあした
----------
 「そしたら、もう遅いからおうちに帰ろうか?」 
 「えっと……あっと……」(もじもじ) 
 「……? こんどは、どうしたの?」 
 「……今日のこと、他の人には……」 
 「うん、ないしょねっ」 
 「うん、ありがとうっ」 
 「それじゃ、もりの出口まで行くから、背中にのってっ」 
 「あ、ありがとうっ」 
 「いっくよー」 
 「うんっ♪」 

 知佳ちゃんの背中にまた白くて大きな羽根が生える。
 その背中に私はしがみついた。
 そして知佳ちゃんは翼をはためかせて空を飛んだ。
 私はちょっと知佳ちゃんがうらやましいと思った。


時系列と舞台
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 2005年1月。吹利の森にて。

解説
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 クラスメートのサイレンと天使が空中衝突。

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