Shadowrunにおける“急所に刃物等殺傷武器を突きつけられている”状況下でのルール的処理例

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Shadowrunにおける“急所に刃物等殺傷武器を突きつけられている”状況下でのルール的処理例



Prof.M/森合亭あらため森藍亭

 敵対者が,人質を取り首にナイフを突きつけている,といった光景はアク ション映画等でよく使われるものです。同様のケースは,RPGのセッショ ンでも(シナリオに設定されている、いないに係わらず)十分あり得、この ときの処理について、一部の人から問題提起される事が多々発生します。い わゆる「首ナイフ」問題と言われるものですね。
 ここでは上記の状況において,ルールに沿った形で処理出来ないか,いく つかの仮定の下に検討してみましょう。
 なお,これはあくまで思考遊戯の範疇をでないものであり,絶対的なもの ではないことは勿論,あくまで適用例の例示にすぎない,ということは心に 留めていただきたく思います。

 この記事は、#TRPGにおいて話されたものを元に書いています。 当時の参 加者の方々に敬意と感謝を。

1.検討の前に:ルール解説

 Shadowrunにおけるダメージ処理について簡単に説明します。
 Shadowrunでは,ダメージは数値ではなく,ダメージコード,という段階で 示されます。
 キャラクターには、10個のマスが,精神,肉体,両方のダメージについ て設定され,ダメージコードに応じて,マスが埋められます。ダメージコー ドは,軽いものからLMSDの4段階あり、最も軽いダメージコードのLで はマス1個,もっとも重いDでは10個のマスが埋められます。
 マス10個がすべて埋まると,昏倒(精神の場合)あるいは瀕死(肉体の 場合)となります。これを超えるダメージは,強靱力(能力値の一つ)から 差し引かれ,強靱力を超えると死亡となります。
 ダメージコードは,個々の武器によって異なった固有の値が決められてい ます。が,これは基本値にすぎず,実際には,攻撃側の成功数と防御側のダ メージに対する成功数の差が二つある毎に1段階上昇,あるいは下降します。
 では,成功数の差による操作の結果,ダメージコードDに達してなお成功 数が余った場合はどうなるのでしょうか。その場合の処理については,第2 版(日本語訳)では,未訳サプリメントに追加ルールとして,第3版(未訳) では基本ルールの中に記述があります。 簡単に言えば,ダメージコードDに達して成功数が残っている場合,2つ毎 に追加ダメージポイントが与えられる,というものです。Dダメージを受け た時点で,10個あったマスは既に埋められているわけですから,この追加 ダメージポイントは強靱力から差し引かれる,ということになります。

2.基本前提

 状況:ギャングメンバーA(筋力:5,武器戦闘:4)が一般人B(強靱力3)
    を拘束,首にナイフ(基本ダメージ:[筋力]L)を突きつけて,PC
    相手に「動いたら殺す」と脅している。

 この状況下では,
   ・ギャングメンバーAは,一般人Bを拘束していることにより,Bに対し
   「有利な位置にいる」と同時に,Bはダメージ回避の行動が出来ない状態
   にある(防御集中のオプションをとれない)。
   ・AはPCに対し,「動いたら殺す」と宣言していることから,「PCが
   動いた事」をトリガーとして「Bを攻撃する」という行動を待機している,
   待機行動状態にある。
   ・アーマーの類の効果はない。 と判断出来ます。
 他に,
  a)既に急所に武器をあてているのだから,「急所狙い」の必要はない。
  b)既に急所に武器をあてているのだから,命中判定は必要ない(既に命中し,
  ダメージの適用を待っている状態にある)。 という解釈も成り立ちますが,とりあえずは先に挙げた2点の仮定を元に考えを 進めます。

3.適用

 まず,PCが行動を行った時点で,Aの待機行動が解決されます。
 接近戦闘の目標値は4,AはBに対し「有利な位置」にいますので最終目標値 は3となります。Aが目標値3に対して8個のダイスを振り(技能分:4,ダイ スプール分:4)ロールを行った場合の成功数の期待値は,5〜6個と見込まれ ます。
 状況から,Bは接近戦闘のテストが出来ないとしてもいいですし,元々一般人 には【接近戦闘】の技能がありませんので,能力値で判定(目標値にペナルティ がある)しても能力値が3であることから,接近戦闘のロールの成功数は0と見 込まれます。実際の成功の度合いは,攻撃側の成功数と防御側の成功数の差です ので,Aの成功数がそのまま適用されます。
 次にダメージの適用です。ナイフのダメージは[筋力]Lですから,Bがダメ
ージ軽減のロールを行う際の目標値は5となります。Bの強靱力は3ですから, 期待される成功数は1個,となります。となると,Aは少なくともS(重傷)の ダメージを,最大D(致命傷)のダメージをBに与えることまで期待出来るよう です。即死とまではいかないものの,早急に医師の手当てが必要な状態にはなり ますね。
 待機行動の処理が終わった所で,イニシアティブによる通常の処理が行われま す。哀れなギャングメンバーAは,十中八九原形をとどめていないでしょう……。

 さて,1.において後回しにした二つの解釈を取り入れた場合ですが,解釈a) では,「急所狙い」によるダメージコードの上昇が自動的に適用され,ナイフの 持つ基本ダメージコードはLではなく1段階上のMとなります。ここで先ほどの 成功数を当てはめてみると,一般人Bは,D(致命傷)ダメージを受けるだけで なく,追加ダメージポイントによって強靱力まで差し引かれ,即死あるいは何ら かの延命処置を受けない限り速やかに死に至る状況に陥ります。 解釈b)の場合は,少し処理が異なります。既に命中しているものと考えますので, ファンブルの確認をかねて目標値2のロールを行い,成功数をカウントします。
「1のルール」に従い,1の目は自動的失敗ですから,Aが振った8個のダイス の内2以上の目がでる数は,7個となります。ダメージへの抵抗ロールの成功数 は,先ほどのように1個ですから,やはり,一般人BがD(致命傷)ダメージを 受け,瀕死の状態になることは避けられません。

4.結論

 上記の例で登場したギャングメンバーAのデータは,第2版に掲載されている もので,武器戦闘の腕も平均的なものです。これが,筋力が強いあるいは武器戦 闘技能の高いキャラクターだった場合,最初の仮定の条件下であっても,あっさ り一般人を昇天させるでしょうし,逆に非力あるいは技能が低いキャラクターだ った場合は,薄皮1枚切った程度に終わる,という結果もあり得ます(第2版, 第3版問わず)。現実においても,これらの結果が生ずることは十分あり得るこ とですので,ルール適用上,その場で特殊ルールを設定することが必要になる状 況にはならないと考えます。
 よって,いわゆる「首ナイフ」問題は発生しないと私は結論します。

 今回は,ナイフを突きつけている状況を元に検討を加えましたが,ナイフをカ タナや,銃器(拳銃)に換えると問題はさらに簡単になります。自分で確認して みてください。

追記:

 この「首ナイフ」の話題,根っこをたどれば,

「自分に不利な状況・行動に対して,ごねてセッション進行を阻害する人への対 処法は?」

という所に落ち着くのではないでしょうか?

さいごに

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月刊TRPG.NET 2005年06月号

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