TRPG.NET > 月刊TRPG.NET / 2005年02月号 >
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大きな単車に女性が二人乗りしている。単車を操っているほうは上はジェットヘルから下はブーツに至るまで黒色で統一、どういう訳か太股と臍が剥き出しである。その剥き出しの腹部に背後からしがみついている高校生のほうが、ぶつぶつと呟き続けている――
理緒 「ストリートファイター、ビューエルXB12はアメリカ製である。ハーレーダビットソン由来のエンジンが絞り出す暴力的な加速によって、後部座席に乗る者の心と精神を強く揺さぶり続け……ええとええとっ」
菊乃 「なにトンチンカンな事を言い続けてる。ペース落とすぅ?」
理緒 「ペース落としてたらコンベンションに間に合わなーいっ」
理緒の言葉と同時に、さらに加速する単車。
菊乃 「……間に合ったら、特別料金だよ」
菊乃 「コンベンションって、今日、市民会館で何のイベントがある」
理緒 「希望者が集まってTRPGを遊ぶんですってばっ。説明しなかったかしらっ」
大声を出す理緒。
菊乃 「興味がない事は耳を素通りする口でね」
時折、背後に目線を送る菊乃。
菊乃 「私はバイクしか興味無くて、知り合いだってバイクがらみの奴らしかいない。そうでなくても仲間内のしがらみがややこしいんで、その事以外のことは考える気もしないな」
菊乃 「……望んで諍い起こすような奴も混じってるし」
理緒 「なんだか難しい状況みたいですね」
菊乃 「チームのいざこざとか、ぱっ」
バイクを右に切り返す菊乃。
菊乃 「……と把握して、さっ」
バイクを左に切り返す菊乃。
菊乃 「……と解決するような、解り易い方法があるなら教えて欲しいもんだ、と思うよ」
理緒 「なんだか難しい状況をぱっと把握してさっと解決したいと思うなら、60年の実績を誇る『日シナのマスタリング講座』がお勧めよ」
菊乃 「講座? マスタリング?」
首を傾げる菊乃。
理緒 「『日シナのマスタリング講座』なら、実績のある先生方が、考え得る状況をスムーズに導き出すノウハウを懇切ていねいに指導してくださるのよ」
理緒 「バインダー式のテキストと、実用新案のマスタリング練習機があれば、その時々の状況に応じて、あらかじめ定めた目標に沿える解決策を見出す訓練も、納得いくまで繰り返すことができるわ」
菊乃 「知り合いが喧嘩別れしそうだとして、それを仲裁する練習にも使える、のかな」
理緒 「もちろん」
理緒 「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級の合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
菊乃 「目指すべき目標と、そこに至るための道順が明確なのは、ちょっと良いかもな」
室内。菊乃に連れられた理緒の前にテーブルがあり、既に3人が着座している。
菊乃 「……立てなくなるなんて情けない。追加料金取るよ」
3人 「やっと来た、って、誰だよそれ」
理緒 「ええとね、こちらは駆堂菊乃さん。で、この方たちは右から――」
理緒 「寝たふりやトイレ中座を乱用し、マスターの忠告を聞かないふりして自分の望む展開をゴリ押しするゴリ田さん。コンピューターRPG感覚で他のキャラ全部をNPC扱いする傍若無人さで悪名高い若柵さん。それと、ルールの理解を拒み続けて早や3年、エターナル初心者という二つ名で知られる犀頭ちゃん」
菊乃 「……TRPGの経験はないけど、どうにもろくでもない連中ばかりだな」
理緒 「言われてみると、そうね。マスターするの気が重いな」
三人 「TRPG経験ないやつは帰れ、帰れ、帰れっ」
菊乃に息を巻く、問題プレーヤー3人。
理緒 「助けると思って、初心者枠で参加してってくれませんか」
菊乃 「……いいけど、料金に上乗せして貰うよ」
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