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クリスマス間近、飾り付けが目立つ街路。歩きながら携帯電話で連絡を取っている理緒。
竜洞「すぐに隣町のコンベンション会場に向かって欲しいの」
理緒「GMをしろとかなら協力してもいいけど、『富山ころころ』の片棒担げっていうのなら願い下げよ」
竜洞「……。今回の敵はサンタクロースなの」
竜洞「未発表の新作を会場で一斉配布して、マイナーな作品の卓をつぶすつもりなのよ」
理緒「サンタの意図なんかに関心ないってば」
竜洞「今までとは違うの。『富山ころころ』の活動自体を妨害しようとする敵が動き始めたのだわ」
理緒「それは大変なことだけど、私にどうにかできるものでもないから。聞いてる? 竜洞さん」
竜洞「彼の活動を阻止できるのは、『フォーリナー』を護る宿命の戦士こと……椎名理緒、貴方しか、いないのよっ」
理緒「だから、私の立場や行動を決め打ちされても困るって言ってるのにっ」
竜洞「状況は掴めたわね。今から迎えに行くから、60年の実績がある『日シナのマスタリング講座』で鍛えた技術で事態を打破するために全力を尽くしてちょうだい。じゃあね、がちゃん」
理緒「……口で『がちゃん』って言ってから切るなーっ! ああ、些細なネタでも頭にくる……ん?」
顔をあげる理緒。歩いてくる竜洞。
早足で移動しながら、相手の顔を見ないで会話を進める竜洞と理緒。
理緒「こっちはお年玉を用意して、プレイ後に配る。新しいゲームの情報だけ聞けたら、無難に自分がよく知っているシステムで遊びたいという参加者の取り込みに力を注ぐのよ」
竜洞「皆が使いたがるシステムに合わせたシナリオを、今から作れるの?」
理緒「『日シナのマスタリング講座』なら、縛りや制限が多い状況からシナリオを手早く作成する方法を、経験豊富な先生方が生徒のペースに合わせて親切ていねいに指導して下さるのよ」
理緒「バインダー式のテキストと実用新案のマスタリング練習器を使えば、使うシステムの長所を活かした気楽でシンプルなシナリオを、急場でも間に合うように作ることが、誰にでも出来るようになるわ」
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
竜洞「今までで一番、貴方が頼もしく見えるわ、『フォーリナー』を護る戦士」
隣町のコンベンション会場に到着した竜洞と理緒。
サンタ「ずいぶん遅かったじゃないか、富山ころころ」
理緒「貴方、まさか……」
ひるむ理緒。エントランスで立ちはだかる、赤い服の太った男。
竜洞「私たちを待ち受けるなんて、ずいぶん余裕があるじゃないの」
サンタ「ふっふっふ。細工は隆々、仕上げは上々といった所だ」
サンタ「私がサンタだという事を計算に入れなかったようだな、富山ころころ。ここで使われるべき新システムは、昨日の晩のうちに各参加者の家庭に配布済みだ。あとはただ卓を立てて回るだけの話だよ、ふはははは」
理緒「ここまで来て、情報が間違ってたなんて」
走り出すサンタ。追う理緒
竜洞「ちっ、出遅れたのか。いいでしょう、決着をつけるのはコンベンション本番よ、とうっ!」
最後尾に、変身して走り出す竜洞。
両脇を腕章をつけた男性に固められて、エントランスに戻ってくるサンタと竜洞。
会場スタッフ「……当コンベンションはコスプレ厳禁です。お引き取り下さい」
理緒「ゲストだけじゃなくて、オチまでパクリなのか」
呆れる理緒。
小説『富山ころころ』
マンガ「日シナの理緒ちゃん」+「富山ころころ」
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