「ブルーローズ」で 縁故を活用、報酬を伏線にしちゃえ

案内

TRPG専門Web雑誌月刊TRPG.NETの記事です。

関連リンク

「ブルーローズ」で 縁故を活用、報酬を伏線にしちゃえ



鍼原神無〔はりはら・かんな〕

報酬としての名声・悪名

 セッションで、PC≒プレイヤーがもらえる一番の報酬ってなんでしょうね。
 PCに与えられた報酬が、数量的な効果以外でも、プレイヤーの勲章にもなるようだと、嬉しさもひとしおと思うんですけど。

 「TORG」のルールにあった「偉業」とか、きっとキャンペーン中に達成できると嬉しいんだろうな。
 「TORG」の「偉業」は、確か「伝説として語り伝えられるに充分な達成」だったと思います。名声の一種ですよね。

 「偉業」のように、キャラのイメージ膨らませてくれるなら“悪名”もいいと思います。
 例えば、『三国志演義』の、「父親(義父)殺しの呂布」みたいな“悪名”。

 悪名や、「偉業」みたいな名声は、物語面で“キャラをたてる”効果があります。大ネタ、小ネタを併せ、キャンペーン後続のセッションで、プレイヤーもGMも楽しめるはず。
 ゲーム面でも、悪名って使いようで有利に使えるし。名声を、GMにとって有利に使うよう工夫したりもできますよね。工夫のしがいがあって、好きだなぁ。

 NPCに「まさか、あなたのような(名声をお持ちの)方が、この事態を見過ごしにされるとは思っておりません」とか言わせてみたいプレイヤーさんて、いますよねー。(笑)

 こんなふうに、「報酬」を、先々のセッションで活用してくのって、おもしろいと思います。

オーパーツを渡すなら縁故も配布

 さて、例によって現代冒険TRPG「ブルーローズ」での事例です。
 「ブルーローズ」の題材は、現代を背景に、超常パワーを秘めるオーパーツを対象にしたトレジャー・ハンティングです。

 シナリオ想定外の達成でPCがオーパーツをゲットしたら、もれなく縁故を配布しましょう。お勧めです。

 「縁故」というのは、キャラごとに上限総量を持つ数値でして。対象が確定してない未使用縁故量が「現在の心のゆとりを意味する」と、ルール規定されています。

 対象が確定してる縁故の方は、例えば「愛用の剣へ2点」の縁故が、「剣への現在の愛着の強さ」を表現する感じになります。
 「愛剣よ頼りにしてるぞ」とかロールプレイすれば、判定達成値に+2の修正点を得ます。同時に2×2=4点の活動力を消費。
 また、「愛剣を捨てなければ脱出できない狭い穴から逃げよう」とすると、GMから目標値を通常より+2した意志判定を命じられるでしょう。(こちらでは、活動力消費はありません)

 ちなみに、ほぼ同様のシステム・ユニットは、同じ作者の「深淵」にも組み込まれてます。(「深淵」では活動力消費がない、など細かな違いはあります)

 PCがミッションとの絡みで、シナリオ想定外にオーパーツを確保したときは、PC組織内で名声あがるように演出してあげたいところです。
 でも、名声だけでは一時のことですし、エクストラ経験点をあげても、使ってしまえば、普通の経験点と区別がつかなくなります。
 そこで、セッション中、オーパーツのゲットが確定しそうなタイミングでは、関連縁故をプレゼントしましょう。縁故を活用してくと、先々、おもしろい展開を導けますので。

 実際遊んだセッションでの事例を書いてみます。ただ、同じシナリオをGMすると思うんで、ボカして書きますね。
 ポケット・ユニバースに潜んでた超古代遺跡が自壊する展開を、クライマックスに想定したシナリオです。
 自壊する遺跡からの脱出を、最後のアクションにする予定。

 同じシナリオを何度めかにGMしたとき、先読みの鋭いプレイヤーさんがいまして。
 遺跡崩壊の可能性を察知したプレイヤーさんの頑張りで、セッションは想定外の展開に。

・プレイヤーさんの読みは鋭かったし、申告にともなって提示された行動方針も、とてもよく考えられたものでした。
・当のPCは、セッションのかなり早めの時期から、遺跡保全と超古代遺物の証拠確保に積極性を示してもいました。

 ――こうした理由で、プレイヤーさんの申告行動の判定は、比較的プレイヤー側有利になるようマスタリング。
 この判定が決定打になって、超古代遺跡は崩壊せず。PCは財団にポケット・ユニバース(へのワープ・ゲート)の所在を報告できたのでした。めでたし、めでたし。

 遺跡崩壊回避のきっかけをもたらしたPCは、遺跡を密かに護ってたNPCの一族からもその行動を評価されました。
 一族は、感謝の意味も込めて、ポケット・ユニバースに通じるゲートを開閉する、鍵の役目のアイテムをPCに譲る展開に。

 ここ、GMとしても気になるとこだったので、まずNPCからPCに尋ねさせたんです。

 NPC「長老は、遺跡は壊れるだろうと漏らしてた。いったい、門の向こうで何があったのだ? 我らの(遺跡の秘密を護る)使命はどうなるのだ」
 PC「向こうの世界で何があったかを語ることはできない。ただ、長老は勇敢な死を迎えた。使命は、我々が長老から引き継いだ。君たちは、使命から解放されたのだ。(それは)長老も望んでいたことだ」
 GM「(素で)カッコイイ!(笑)」

 ここまで言ってくれたら、もうアイテムあげちゃいますよ♪
 ここで、アイテムへの縁故を2点もあげるマスタリングが、お勧め。
 なんだったら、「アイテムへの縁故2点、譲ってくれた一族への縁故1点」計3点くらいあげちゃえ。

 今回、考えてるのは、こんなふうに「報酬」にあたるアイテムに、縁故も配布して付加価値を高めてく手法です。

報酬を次のシナリオの布石に使おう

 もんだいのアイテムは、シナリオの都合もあってでてきた言わば小道具的な物で。ミッションの焦点になるオーパーツ自体ではありませんでした。
 でも、シナリオ想定外の展開になったおかげで、ポケット・ユニバースへ通じる門の“鍵”が託された、って意味が生じちゃったんですね。遺跡が崩壊してれば、門も“鍵”も意味を失う予定でした。

 結局、PCたちは、ポケット・ユニバースへのゲートを一旦閉じ、財団にかなり確度の高い報告書を提出。
 この決着、キャンペーンの先々への影響を考えると、あれこれ気になる点はあるんですけど。置いておきます。
 話題のゲート・ウェイ開閉用アイテムも、ちゃんとセッション後ブリーフィングで、報告の添付資料として財団に提出されました。

 せっかくPCが活躍してくれたんですから、先のシナリオでは、同アイテムを使うと何事かがおこるオーパーツを出したいと思います。

 すぐに思いつくアイディアは、同じような作りのゲート・ウェイ(通った先には、一度遊んだシナリオと別種の状況を準備)を出す。
 で、冒険の途中で、当のPCが財団から取り寄せるようにゾディアックでも使ってもらうか、途中報告を受けた財団の方から、出先のPCに届けるか……。
 
 この辺、シナリオ処理やマスタリングに工夫が要りそうですけど。ともかく、先をおもしろくしてく布石として、縁故をあげておこう、って話です。
 縁故を2点にしてるのも、次の成長作業時の縁故調整で、プレイヤーさんが1点削るかもしれないから、なのでした。

 なお、一旦提出されたアイテムの所有は、形式上は財団にあるとして、次回は、財団から当のPCに貸与される形にすればいいと思います。
 次にアイテムを出したセッションがうまくいけば、縁故も増えるでしょうから。そしたら、無期限貸与にしちゃえばいいでしょう。

[Tips!]

 唐突ですが、ここでGMさん向けのTipsをひとつ。
 「ブルーローズ」では、PCの成長作業、次回セッションの冒頭で「予告編」を聞いてから処理することになってます。
 これ、新たな冒険にそなえて、PCを成長させてくいいルールだと思います。

 ただ、成長の一環として増減できる縁故には条件があるので、前回使用した縁故の記憶が曖昧化してると、作業に手間取ります。
 そこで、セッション後ブリーフィングにて、プレイヤーさんに「今回使用した縁故」「下げるとしたらどの縁故を希望するか」それぞれ区別したマークをつけてもらうようにしましょう。

 実際に縁故増減の処理をするのは、ルール通り次セッション冒頭で、とします。

実は「新たな秘密」や「さらなるパワー」があッ

 報酬と縁故の話に戻ります。
 キャンペーンの先のセッションで、もんだいのPCが再度アイテムを使用するよう誘導してくシナリオを、考えてるわけですけど。
 できたら、アイテム使用をきっかけに、「新たに明かされる秘話」や、「秘められてたオーパーツ・パワー」も出したいですねー。
 伝奇っぽい物語や、ヒーローものなんかによくある展開ではないですか。(笑)

 アタシの狙ってるプランは次のようなのです。
 将来、「実は」と、アイテムに追加する超常パワーには、カスタムで「アイテム対象の縁故が最低3点ないと、発動判定にも挑めない」パワーを設定。

 この、「要最低縁故」ってパワー設定の事例は、ルールブックに見当たらないと思いますけど。
 限定情報に記述のある、超常パワーとアストラル・システムの関係を踏まえれば、そう無理のある設定でもないでしょう。
 ちなみに、縁故3点が初期設定のオーパーツ事例は、<剣>や、サードアイなどいくつかあります。

 人によって、あるいは、関わりや運命によって発動したりしなかったりするパワーって、オーパーツっぽいでしょう。
 それに、縁故が3点もあると、直観系判定を使っていろんな予兆を演出してくマスタリングでも便利ですし。

 次のシナリオでは、まずアイテムとして、使ってもらうよう誘導して。
 使ってもらったときに、追加縁故を配布。都合3点になったとこで、ババーンと、「あなたのPCと3点の縁故で結ばれたので、はじめてわかったんだけど」「実は、すごいパワーを眠らせていたオーパーツだったのだぁッ!」と、もってきたいなぁ。
 盛り上がると思うんですよね♪

 こんな感じで、報酬のアイテムや名声に付加価値を付け、先のセッションで活用してくのって、盛り上がって楽しいと思うわけです。

 縁故云々は、「ブルーローズ」固有のシステムに依存した手法ですけど。
 他のシステムでも、システム特性活かす工夫をすれば、きっと、報酬の付加価値を高めて、物語的にもゲーム的にもいろんな処理を導き易いように仕立ててけるだろう、と思います。

おまけ:PCの動機設定にも縁故は便利

 アタシのマスタリングは、「ブルーローズ」でも、縁故の運用を重視してる方だと思います。
 キャンペーン・プランをあれこれ考えてたら、こういうマスタリングになったんで。自分では、そう変わったことしてる気はしてないのですが。

 えー、おまけとして、GMしてて気づいた縁故関連のお話を少々。

 GMさんは、はじめて「ブルーローズ」プレイする人には、最初のセッションの事前ブリーフィングで、財団や《ブルーローズ》の設定を説明しますよね。
 何人ものプレイヤーさんから、「一体、このPCは、何を考えてこんな職業についたんでしょう?」的な相談されることがありました。

 経験論だと、その手の戸惑いが出るのは、運命絡みの初期縁故にオーパーツや陰謀組織関連の縁故設定がないキャラです。
 テンプレでいうと、「退役軍人」や「便利屋」、「くすんだ才能」。
 逆に「学者の娘」や「<剣>を継ぐ者」「感応者の少女」のプレイヤーさんから、そうした相談を受けたことないです。

 これって、「ブルーローズ」で、縁故が目立たない割りには、システム上かなり大事な役割を担ってるってことの旁証なんだと思います。

 上のような相談を受けたとき、アタシは次のように応対してます。

 「そうですね、あなたのPCは、オーパーツや、超古代文明について、世間一般なみの理解やイメージしかないのに、なぜか《ブルーローズ》に加わっちゃったとこからはじめましょう。
 『なぜか』の中味は、今、無理に決めなくてもいいです。

 とりあえず、今回を含めてセッション3回くらいのうちには、オーパーツ、超古代文明、《シャドウ・ウォー》などに対するPCの態度を、方向性だけでも定めるつもりで遊んでください。
(ちなみに、GMの方は、3回の間に、なにかの追加縁故をPCにあたえるよう心がけるといいと思います。陰謀組織NPCへのライバル的縁故でも構いません)

 今回は、あなたのPCは、オーパーツや超古代文明について、『常識的にそんなものが実在するとは、で思ってなかった』や、『なんとなく、そういうこともあるかもしれない程度に思ってた』あるいは、『まったく考えたこともなかった』のあたりを推奨しておきます。
 ブリーフィングで説明した程度の知識は、PCも初ミッション前に、財団の研修でガイダンスされたことにしときましょう。
 だから、『今はまだ、話半分程度にも信じてない』って方針でもいいですよ(笑)」

 この応対で、いろいろ楽しいプレイに出会えました。
 例えば、とある退役軍人さんの事例――
 「このPCは『戦争のスリル』の縁故を持ってるんですけど、『戦闘のスリル』って感じで使ってもいいですかね?
 構わないですか。じゃぁ、彼は、戦闘のスリルが好きで傭兵やってたんですけど、意に添わない作戦に従事するのが嫌になっちゃったことにします。

 で、ローズ財団で学者のボディ・ガードするくらいなら、手ごろな戦闘のスリル楽しめるかな、とか思って就職。
 とりあえず今は、『いやぁ、なんかよくわかんない業界に脚突っ込んじゃったかなぁ(笑)』くらいのとこから」

 この人のプレイ、少し地味めでしたけど、要所要所で光る楽しいものでしたよん♪

さいごに

感想・執筆宣言は一行掲示板001もしくは irc.trpg.netの #openTRPG へどうぞ。

月刊TRPG.NET 2004年12月号

本記事の掲載月号のリスト

月刊TRPG.NET

TRPG専門Web雑誌


TRPG.NETホームページ / Web管理者連絡先 / Copyright(C) 1996,1998-2003 TRPG.NET All Rights Reserved. / 提供:電網工房・匠 / 検索 / サイト・マップ / 利用規約