D&Dであれこれ: 迷惑な報酬

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D&Dであれこれ: 迷惑な報酬

Introduction

 D&Dのキャンペーンに於いて、ダンジョンマスタ(DM)とプレイヤ(PL)というのは明確な対立関係で結ばれる事が多々あります。TRPGはマスタとプレイヤが勝負するものではない、とよく言われますが、ことD&Dでは両者の対立は明白です。更に言うならば、僕がDMを行なっているキャンペーンで、PLというのは敢然とDMの前に立ちはだかる巨悪に他ならないのです。

 そんな中でDMにとって、キャラクタ(PC)に与える報酬というのは大きな悩み事となります。競争相手であるPL(の駒となるPC)を増強したくはありません。従って世の多くのDMはPCに対する報酬を少なくしたいと考えます。しかしD&Dでは、障害の大きさに比例する報酬というものが厳密に定められているので、それ未満の報酬しか与えないのでは、吝嗇という不名誉なレッテルを張られ、末代まで侮辱・軽蔑されてしまうのです。これは芳しくありません。あくまで蔑視される事なくキャンペーンを続け、ルールを正しく運用するDMとして名を馳せつつ、あたなう限り極限までPLを苛め続けるのがDMの本懐なのですから。

 では、私達DMはデーモンロード・アークデヴィルもかくや、という程恐しいPLを相手に、どのようなイカサマ方法を用いて、PCを増強せず且つ納得させられる報酬を与えれば良いのでしょうか。

Honor ―― Priceless

 Honor――つまり名誉です。社会的な地位と言い換えても良いかもしれません。この場合注意しなければいけないのは、できるだけ実質的な権力を持たない名誉職のような地位を与える事です。また、可能な限りPCでは頭角を表わし難い地位だと良いでしょう。間違っても、蛮族の族長というような力が全ての世界で地位を与えてはいけません。悪鬼羅刹の如きPC達は、そのような社会では瞬く間に地位を向上させて行く事でしょう。

 むしろ逆にPCの行動を束縛・制限するような地位を与えると良いでしょう。例えば、確固とした法を持つ国家の騎士階級(つまり最も下っ端の貴族)であるとか。

Connection ―― Priceless

 Connection――つまりコネです。コネというと大抵の人は便利な存在と考えるでしょうし、それは多くの場合事実です。故にDMとしては、暗い情熱を持って、その便利さを減じなければなりません。例えば、知恵はあれど天邪鬼な賢者とか、有能だけれど世界中を旅していて中々連絡が取れない傭兵というようなコネが良いでしょう。あるいは、政治家としては優秀だけれど国民から嫌われている国家元首のような、そのコネを持つ事自体がある種の不利を招きかねないものも使いでがあります。

Artifact ―― Priceless

 単純な報酬として、金銭や物品というものが考えられます。D&Dの文脈で価値ある物品といえば、すべからくマジックアイテムの事に相違ありません。しかし、流通のルールが明示され、マジックアイテムの殆どに価格が設定されている以上、どんなに役に立たないマジックアイテムでも、PCは即座に現金に変換する事が可能です。PCの資産の増大は忌むべき事です、なんとしても避けなければいけません。

 そこで登場するのがArtifact(アーティファクト)です。アーティファクトというのは、神やデーモンロード、アークデビル、そして妻のような力ある存在が作成した、強力なマジックアイテムの事です。重要な事にアーティファクトには価格が設定されていません。従って通常の方法で売却する事は不可能です。更にアーティファクトの多くは取り扱いが面倒で、中には危険を伴なう物もあります(Sphere of AnnihilationやDeck of Many Thingsなど)。加えて、このような強力なアイテムを持っていると、力ある存在(デーモンロードやアークデビル、邪神といったDMの味方)から注目されやすいというオマケもあるのです。

Colligation

 つまる所、DMにとって望ましい報酬の形態というのは、priceless(金銭には換えがたい程貴重な)価値があると言い張る事ができながらも、実はless price(価値の少ない)な報酬だと言えます。これは現実世界にも応用できる、大変有用な示唆です。クリスマスに彼氏(夫)や彼女(妻)にプレゼントする「報酬」も、このような物を選択すると良いのではないでしょうか。……その場合互いの関係までは保証しません。あくまでat your own riskでお願いします。

さいごに

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月刊TRPG.NET 2004年12月号

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