ジジイの戯言「TRPGの報酬とは?」

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ジジイの戯言「TRPGの報酬とは?」



 TRPG暦10年以上は堅い4人の匿名座談会です。
 例に挙げられるシステムが古めなのはごかんべん。

PCにとっての報酬

<爺A> 今回の「ジジイの戯言」お題は「報酬」です。
<爺B> 来たぞ
<爺A> うむ。と言っても、別に話の枕があるわけじゃねーんだけど(笑)
<爺B> まあ、お題に見合うような経験はあんまりないのだけども、報酬ってのは大きければいいってもんじゃないよね
<爺A> そーねー。でかすぎる報酬は、キャンペーンならその後のプレイに影響するし
<爺C> あんまり大きいとどうしたらいいのかと。
<爺A> コンベンションだと、モチベーションが通り越してちょっと萎えることも。
<爺B> つーかね、これは原体験に近いのだけれども
<爺A> はいはい
<爺B> 学校のサークルにいたころにパワープレイ(旧版)*1 でキャンペーンやってたのよ
<爺A> おー。パワープレイ
<爺B> まああれ自体、成長が報酬みたいなシステムだったけどもw
<爺A> w
<爺B> まあ学生のころにたがわずちきちきやってたわけですよ
<爺A> 学生はなあ。いいよなあ。時間あって。
<爺C> 報酬=成長ってのも考えとしてありだねえ
<爺A> 経験点は原初的な報酬やけんな。
<爺B> んでね
<爺A> はいな
<爺B> 小人種族(忘れた)PCやってて、ミッションの終わりに他のPCがまあ店の主人からもらうわけですよ。報酬
<爺A> 冒険者の店つーか、そういう店の?
<爺B> うろ覚えだけどもそんな感じだったはず
<爺A> はいはい
<爺B> んでまあ、ちきちきと「報酬くれ報酬報酬」とか言ったら、GMが出来た人で「主人が『おまえさんには焼きたての旨いパンをやろう』と言ったよ」と来た
<爺A> わはは
<爺C> ははぁ
<爺A> うまいね。外すね。そのPL以外は笑える(笑)
<爺B> しかしまあ、ちきちきとやってた時代の目からみると目からうろこで「ああ報酬というのは金や経験点だけではないのだなぁ」と
<爺A> あー、 わりとこう 目を開かされる一瞬。
<爺B> まあ今言っても当たり前のように聞こえますが
<爺A> いやー、そうでもないでしょう。
<爺B> 意外と忘れがちな「PCにとっての報酬」という考え方。
<爺A> そうね。「ゲームシステム的な報酬」と「PCにとってのフレーバーとしての報酬」つーのは違うと。違う事もある、が正しいのか。
<爺C> 両方兼ねちゃってるというケースもありそうだね。PC的に重要なものがシステム的な報酬として存在する。という場合。
<爺D> APA(アドバンスド・ファンタズム・アドベンチャー)*2 が兼ねている感じでしたね
<爺A> ほぅ
<爺D> 個人目標があって、それを達成すると、経験値がもらえるんですが
  快楽(飲む、打つ、買う)
  富の所有(規定金額以上の装飾品を身につける)
  平和主義(戦闘を避ける)、戦闘(戦闘を行う)とかでぶつかったりもしました
  10コあって、PC全員分満たすのはGMにとって苦行というか困難でした
<爺A> まあ、ムリだよね(笑)
<爺C> プレイヤーが自力でがんばれという感じでしたな。たしか、2つぐらい選べたんでどっちかは簡単なのをえらぶのがコツ
<爺A> 昨今は経験点も変わってきたしなあ。1点で何か1個の技能、とかって流れはどこで出てきたんだろうか。
<爺B> どこだろう

*1/パワープレイ(旧版): 人間、妖精、ネコミミやトカゲ人間などなど、バラエティ溢れる種族で遊べるTRPG。固有の世界を持たないのも特徴。続編に〜プログレスがある。
*2/APA(アドバンスド・ファンタズム・アドベンチャー): 人間型の種族だけでなく、スライムからマンティコアといった怪物まで遊べるRPG。魔法に加え機械文明も合わさった独特の世界感に根強い人気がある。

フェイクも報酬か

<爺D> D&D*3でこんな話。雪の女王というキャンペーンで、敵から武器を奪って戦力アップしたパーティ。
 PL「金は出なかったけどアイテムが充実したなぁ」
 DM「女王を倒したら、敵の武器は溶けて水になったよ」
 ちょっと怒られました。
<爺C> うはははは
<爺A> w
<爺B> わはは、座布団1枚だな
<爺C> でも、マスターしているとやりたくなるね。
<爺A> んなもん身に付けてたら凍る凍る(笑)
<爺B> クロちゃんの千夜一夜に出てきそうな話だ
<爺A> なつかしー。でもアリだ(笑)>クロちゃん
<爺B> +6の剣をなまくらにするために武器を+2にする穴を出した、とかいう話もあったね
<爺C> まあ、一発限りの魔剣は昔だしたなあ。あれは中国のが元ネタだっけ?
<爺A> 中国で魔剣言うと、何だろうか。一発限り……んー、憶えがない。
<爺C> 破山剣だったかな
<爺A> 結果として、使いどころを探しきれなくて、最後まで使わなかったりするんだ。
<爺C> まあ、たまたま見つけた剣を高く買ってくれる商人がいると聞いて、じゃあどんなんだろうと振ってみたら凄い切れ味だったが、その剣は一回切ったら終わりだったという。 そういう話。
<爺A> ありゃー(笑)
<爺B> キャンペーンだと強力なアイテムはいかにも伏線っぽく思える
<爺A> 思えるねえ。
<爺B> ということ自体がフェイクだという場合もあるけど
<爺C> そうだね、インテンジェントソード*1 とか。狂言回しに出したことがある
<爺A> マスターが大した事ねえと思って出したアイテムが意外と強かったりとか。報酬そのものがストーリー上のフェイクだったりとか
<爺C> プレイヤーが妙に思いいれをしてしまって凄いことにとか
<爺B> ああ
<爺A> 狂言回しのインテリジェントソードなんてのは、フェイクの典型だよなあ(笑)
<爺C> まあ、楽なんだけどね。うさんくさいことを言っても許されるから。
<爺A> 許されるねえ。「東へ行くんだ」(by 剣)
 「ほんとだろうな」「我輩は130年生きておる(125年は岩にささっていた)」
<爺B> 相場より高い報酬はまず疑ってかかったね。特にサイバーパンク系w
<爺A> サイバーパンク系で、高い報酬なんてのは120%ウソだよ(笑)
<爺B> まああと、報酬はちゃんともらったけど、後味が悪いという場合もあるね
<爺D> 後味といえばTORG*5 でアーディネイ女王*6 からチーズケーキ貰った。
 元がイエローケーキ*6 で、呪文が解ける前に食べ終わらないと被爆するやつ。
<爺A> 食べ終わっても被爆するんじゃねえか。それ。
<爺B> そいつは舌までとろけそうですのぅ

*3/D&D:ここではクラシックD&Dと呼ばれる版の物を指す。現在のTRPGとは違い洗練されていないが、いわばマンガ肉のような魅力がある。
*4/インテンリジェントソード:知性化された意思ある魔剣。ある程度のコミュニケーション能力もつことが多い。
*5/TORG:「可能性の力」を奪うためにやって来た異次元の侵略から地球を解放するために戦うRPG。
*6/アーディネイ女王:ベラ・アーディネイ。TORGの剣と魔法の世界、アイルの支配者。異世界からの来訪者の中で唯一親地球派。TORG世界においてハイロードと呼ばれる、世界最強NPCの一人。
*7/イエローケーキ:ウラン精鉱ともいい、掘り出したウラン鉱石を化学処理(製練)した結果出来る6価ウランの俗称。食べた場合、舌がとろけるかどうかはともかく、被爆は避けられないだろう。

悲劇に終わるシナリオの報酬

<爺A> まあ置いといて。情緒系というか、悲劇に終わるシナリオの報酬なんてのは
 こう、どうしていいかっつー気分になるもんです。
<爺B> 刺身のツマだねぇ <悲劇シナリオの報酬
<爺A> TRPGじゃないんだけど、「ミノタウロスの皿」*8 とか思い出しちゃってさあ。
  切なさとかやりきれなさとか

*8/『ミノタウロスの皿』小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉:藤子・F・不二雄のシニカルでブラックな面を前面にだした短編コミック集。

ゲーム内だけではない報酬

<爺B> 知人がこないだ言ってた話なんだけども
<爺B> 曰く「プレイヤー経験点システムのあるRPGは、困ったプレイヤーがいても比較的我慢できる」と。
<爺C> 無報酬による罰則?
<爺C> ああ。
<爺A> あー、プレイヤー経験点。実に厄介なシロモノですなあ(笑)
<爺D> なるほど、確かにそうですね
<爺B> 「なぜなら、『今日はバイトなんだ。この12点持って別の卓に行けば1レベルになる』と自分を納得させる」んだそうでw
<爺A> わはははは。ひでー。
<爺B> いやほら、経験がキャラクターに紐付けされてるシステムではこーは行かないわけで。
<爺C> プレイヤーへのというのが味噌か
<爺A> マスター経験点も同じか。
<爺C> マスター的にはなんかしらの形で、評価して欲しいというのはあるから
<爺B> しかしだ
<爺A> ある……んだろうな。形になるとまあ嬉しかったりするか。
<爺C> そのへんはまだまだ試行錯誤が必要なんでしょうね
<爺B> 成長に意味があるタイプのワールドでないと、用意しても意味を成さないんだよね <プレイヤー経験点システム
<爺A> 昔、某コンベンションでマスター評価つけてたが、嬉しかったやらキツかったやら(笑)
あれ、無記名なのよかったな。評価が実にシビアだった。
<爺C> んで、グラフで俺のマスタリングのバランス評価はーという
<爺A> そうそう。
<爺C> 個性があふれててよかった。
<爺A> 「あ、これ失敗したな」と思ったところは、容赦なく低いんだよ。すげー楽しかった(笑)
<爺B> しかし、発展途上の人の芽を摘んでしまいかねないという両刃の剣かなぁとも思えなくもないかなと
<爺C> うん。実際、マスターやる人は後半大分限られちゃってたね
<爺B> 毎回ボロカスの評価だったとして、それでも続けられる人は両極端な人だけ
<爺A> それはないとは言えないなあ。
  まあ、ある意味で恐ろしくマスターの質が高いコンベンションではあった。是非はともかく。
<爺B> んまあ、プレイヤーからのよい評価はGMにとっての報酬、とは言えるわけですが
<爺A> こうして見ると、TRPGの報酬ってのはゲーム内だけじゃないですなあ。
<爺B> こー、 はっきりいって
 経験点がちゃんと機能してて、それ払えば済むシステムってのはやっぱ楽なんですよ
<爺C> うむ。
<爺A> うむ。
<爺D> 確かに
<爺A> で、適度に貰えると適度に次へのモチベーションになる。ゲーム内外問わず。
<爺B> これが、経験だの金銭的報酬だのでごまかせないシステムだとちゃんと話を組むほかないというw
<爺D> まぁ、プレイするたびに関わるものですし。モンティホール*9 だって、普通の辞書にも載ってますし(^^;

*9/モンティホール:元はアメリカのクイズ番組「モンティ・ホール」より。TRPG的な解釈では、番組で与えられる商品の気前のよさから、次々に強力な報酬を安易に与えてしまうマスタリングをさす。

報酬の意味

<爺A> ゲーム内の報酬はPCが嬉しい。PCがたくましく(強く、のみならず)なればPLも楽しいし、それが適度ならTRPGを続けるモチベーションになる。 たまには目先の変わった報酬を用意してみたりするのも、マンネリ化を防ぐ意味でいいし
<爺B> うむ
<爺A> あと、マスタリングとかを評価してあげるのも、実は報酬なんだねぇ。 よくTRPGに誘うとか続けるとかの話で、つまづきにどう対応するかってことが話題になる時があるけど。
  どう誘うか、どうプレイするかもそうだけど、どのように「報酬」を与えるかってのも割と重要なんじゃないかと思った次第であります。
<爺A> まとまってねーけど(笑)
<爺B> TRPGというのは勝利条件が複数の要素から成り立っている変わったゲームだから
<爺A> うん
<爺B> 社会的地位だとか恋心だとか魔法のスクロールだとか
<爺A> 卓の雰囲気や友人関係なんかも
<爺B> ささやかな幸せだとか過去の古代文明の秘密だとか、 そういう方向性の違う勝利条件とその報酬、という考え方ができるよね
<爺A> できるね。それもまたTRPGの特徴なんだろうねえ。
<爺B> マンネリなんてのはそこに目を向ければ起きにくくなるだろうし
<爺A> うん。
<爺C> 僕としては報酬は次のプレイを想像するためのキッカケかな。成長した能力やストーリーに絡むもの、人物関係、情報、それをどう使うかと想像するための。
<爺B> ここが面白いところ。次プレイにつながらない単発セッションだったとしても 「後日談」を想像で構築できるというのは、物語メディアの特徴かなと。
<爺A> ですなあ。報酬、なかなか深い。
<爺B> それも報酬の一部。TRPGというメディアにおいては。
<爺C> を。綺麗に纏めたね。
<爺B> いやほら、 せっしょんぶちこわしたら、もらえないわけじゃん。その報酬。
<爺A> というわけで、 今回の「ジジイの戯言」、この辺でお開き(笑)
<爺C> 今回って、次回もあるの?

さいごに

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月刊TRPG.NET 2004年12月号

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