私的オンラインセッション留意点集

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私的オンラインセッション留意点集



 今月はオンラインセッション特集です。
 オンラインセッションとは、チャットを通じてTRPGのセッションを行うものです。 その手段としては、IRCやWebChat、それに専用のチャットソフト等があります。
 そんなオンラインセッションは、もちろんオフラインで行う通常のセッションとは 大きく異なったものになり、独自の利点と欠点を併せ持ちます。そして、その違いに ついて私なりに考えてみたことをまとめましたのが、今回の記事となります。

オンラインセッションの利点

 オンラインセッションの利点として私が挙げるのは、以下の四点です。

(1) 場所と時間の拘束がオフラインのセッションに比べて格段に緩い

 人が一箇所に集まらねばならないオフラインのセッションと比べ、オンラインセッ ションは時間と場所をかなり自由に設定することができます。場所ならばネットワー ク上には幾らでも自由に使えるスペースがありますし、時間にしても暇さえあれば24 時間いつでも参加することができます。
 また、自宅から参加することができるためわざわざ会場に移動する手間と費用が省 ける上に、相手が遠く離れていても(そう、たとえ太平洋の向こう側だったとして も!)同じ場所に接続しさえすれば一緒に遊ぶことができることも、大きな利点の一 つです。

(2) 気楽に演技することができる

 テーブルを囲んで他の人と顔をつき合わせながら遊んでいると、どうしても自分の 姿格好や口調、声色、それに羞恥心などで演技の幅が狭められてしまいます。或い は、演技をしても盛り上がりが欠けてしまったり、自分の意図する結果とは全く異な る受け取られ方をしてしまうかも知れません。例えば、ゴツイ男性がかわいい女の子 の演技をして、いかにも「らしい」台詞を言っていたとしたら……彼がシリアスを目 指していたとしても、これではギャグにしかなりません。
 然し、オンラインセッションでは相手の顔が見えないため視線が気になることはあ りませんし、声色や口調による影響も声が実際に届かないために消えてしまいます。 従って「シリアスな演技を行う時の抵抗を減らせる」「プレイできるキャラクタの幅 が広がる」などの利点があります。

(3) ログが残るため、過去の情報の検索ができる

 セッション中、描写や証拠などの過去の情報を忘れてしまうということがしばしば 起こります。メモを取ってあれば大丈夫なのですが、それも忘れているとシナリオを 進めるための手がかりが消えてしまって、大変に後味の悪いことになってしまいま す。
 然し、オンラインセッションではログを取っておくことができるため、簡単に過去 の情報に手を伸ばすことができるようになります。勿論、シナリオの謎解きに使うよ うな重要な情報はメモを取っておくべきですが、それ以外の些細な情報までも確認す ることができるのは大きな利点です。

(4) 大量のダイスを用いるシステムでも処理に困らない

 様々なシステムの中には、ダイスを大量に振る必要があるものがあります。オフラ インでのセッションだと、ダイスの目を数え上げるのが面倒だったり、テーブルから 落ちてしまったりと、色々と面倒になります。
 然しながら、オンラインセッションではダイスを振るという操作を何らかのプログ ラムを用いて処理するため、高速かつ簡潔に結果を手に入れることができます。ま た、ダイス目に対する四則演算などの煩雑な処理もコンピュータに任せることができ るため、負担が大きく減ります。

オンラインセッションの欠点

 勿論、欠点もあります。その多くが、コミュニケーション手段が限定されることに よるものです。

(1) 時間がとても掛かる

 オンラインセッションはオフラインでのセッションに比べ、非常に時間が掛かりま す――経験的には、最低でもオフラインでの3倍程度の時間が必要になります。図を 用いた説明もジェスチャーも使うことができず、字を打ち込む時間が必要なこともあ り、説明や意思表示に時間が掛かってしまうのです。
 そのため、長いシナリオは途中で一旦打ち切って次回以降となりがちで、こうなる とPLもGMもモチベーションを維持するのが困難になってしまい、立ち消えの危険すら 発生します。演技の自由度が上がる代わりに、シナリオの自由度は多少下がっている のです。

(2) 複雑なダンジョンはプレイしにくい

 普通、ダンジョンに潜る時は必ず誰かが図を描きながら進んでいきます。然し、オ ンラインでのセッションでは図を扱いにくいために、ダンジョンアタック系のシナリ オはかなりの工夫を必要とされるようになります(地下4階まであるダンジョンの構 造を、一々文字に打ち直して伝えなければならない時の様子を思い浮かべてくださ い――貴方はそんなことをする気になれますか?)。
 マップを扱うことのできるチャットソフトもありますが、やはり使い勝手という点 から見ると後一歩、という感は否めません。

(3) 打鍵速度が要求される

 円滑にオンラインセッションを行うにあたって、GMやPLの打鍵速度は非常に重要な 要素になります。台詞、描写、宣言、説明、全てをキーボードを叩いて行わなければ ならないため、それなりに慣れておかないと進行に支障をきたしてしまいます。特に IRCなどの高速チャットを用いたセッションですと、その影響は如実に現れます。
 このため、キーボードにあまり慣れていないうちは中々参加しづらい所があると思 われます。

(4) 意図が伝わりにくい

 (1)、(2)でも触れましたが、オンラインセッションでは相手に情報を伝える のに使うことのできる手段は、基本的にキーボードから打ち込まれる文字だけになり ます。従って、相手に自分の意図(特に、感情)を正しく伝えるためには大変な苦労 を強いられます。逆に自分が理解する立場になってもまた、同じような困難が生じる でしょう。

(5) ルールブックは必須

 オフラインのセッションですと、ルールブックを持っていないPLが居ても、他のPL やGMに見せてもらうなどしてプレイすることができます。然しオンラインセッション では、そのような事をすればセッションの進行に重大な支障をきたします。
 他のPLの持っているルールブックは覗き見ることすら出来ません。相手から逐一説 明を受けるとしても、(4)で触れたような困難が生じる上に、時間も余計に掛かっ てしまいます。これでは緊張を維持するのは難しいでしょう。
 オンラインセッションに参加するのであれば、ルールブックは必須と言えるでしょ う。

(6) 寝落ちと接続障害の恐怖

 オフラインでのセッションではあまり考えられないことですが、深夜のオンライン セッションではセッション中に参加者が寝てしまう「寝落ち」が頻発します。また、 ネットワークの障害によって参加者が突然姿を消してしまうこともあります。
 これら両者は共にオンラインセッションにつき物のアクシデントであって、GMを始 めとする参加者は前もってそれなりの対策を講じておかなければなりません。例えば
「シナリオを短めにする」「時間の掛かる戦闘は出来るだけ盛り込まない」「セッ ション開催時間を起きていられる時間までずらす」「カフェインを取る」などです。

欠点をカバーするための工夫

 さて、以上のような長所と短所を持つオンラインセッションは、果たして有用なの か、それとも不便な間に合わせに過ぎないのか?
 私の答えは、前者です。
 確かに時間や経験の困難は大きなものです。然しながら、時間的・空間的な自由度 の大きさはそれを補ってあまりあるものであり、ある程度システムとシナリオを選ん でちょっとした工夫を施せば、オフラインでのセッションに劣らない環境と興奮を得 ることができるでしょう。
 では、その工夫とは何か?
 欠点の所に書いたことをまとめながら私なりに答えるとすれば、以下のようになり ます。

(1) シナリオは短めに、簡潔に

 ただでさえ時間の掛かるオンラインセッションで、長いストーリーを一気に展開す るのは時間的にも体力的にも困難です。そのため、大抵の場合は途中で中断し、後に 再開するという形になるようですが、これには大きなリスクが伴います。
 先ず、いくら自由度が高いといっても予定は予定ですから、ある程度の不確定要素 は残ってしまいます。急な出張、PCの故障など、こうした逆らいがたい障害は無数に 存在するのです。
 また、間隔が開いてしまうために緊張感や臨場感が薄れ、前回の記憶などが曖昧に なった状態で再開することになります。これはセッションの進行に大きなマイナスと して作用します。
 更には、上記二つの困難が重なると、「次回」そのものが立ち消えになってしまう 可能性もあります。前回のセッションが一ヶ月前が経ち、未だにメンバーの都合が合 う見込みが無いとしたら?……誰もセッションの続きを、とは言わなくなってしまう でしょう。
 こうした危険を避けるためにも、ある程度シナリオは短く、簡潔にまとめる必要が あります。

(2) 日時、場所、システム、それにシナリオの傾向を明確に指定する

 オフラインでのセッションでも重要ですが、これらの事項は人と人の繋がりが緩や かなオンラインセッションでは更に重要性を増します。
 予定日時と場所を前もって明確にすることで、メンバーはより予定を合わせやすく なります。また、使用するシステムと、シナリオの傾向を明確にしておけば、PLの負 担も減るでしょうしセッションもスムーズに進むでしょう……話がこじれてしまう と、意図が伝わりにくいために流れを取り戻すのが非常に難しくなります。

(3) ヒントは多すぎるぐらいで丁度良い

 情報伝達がかなり限定されるオンラインセッションでは、GMの想像以上にPLは状況 処理に悩むものです。
 特に謎解きが必要な場合などは、大変な労力を要します。スムーズに進行させるた めにも、GMは多すぎると思うぐらいのヒントを出すべきでしょう(それでも、オフラ インと比べればうまく伝わっていない事が殆どです!)。

その他にも工夫を探そう

 以上の注意は、本当に小さなものです。何時ものプレイを、ほんのちょっと変える だけで良いのです。
 さあ、皆さんも張り切ってオンラインセッションに参加しましょう!

 なお、当然のことですが、私が書いたもの以外にも様々なノウハウがあります。こ の文をお読みになっている皆様は、そちらにもどうか目をお通しください。私の意見 の何処が間違っているか、何処が受け入れるべきなのかが、よりはっきりすると思い ます。

 今回もまとまりませんが、この辺りで失礼させていただきます。

さいごに

感想・執筆宣言は一行掲示板001へどうぞ。

月刊TRPG.NET 2003年10月号

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