天羅万象掛け合い:暴走編 LOG 016

天羅万象掛け合い所:暴走編の1999年06月22日から1999年07月06日までのログです。


99年07月06日:09時31分32秒
翌日以降の彼の話 / ジョーカー
 以下は後日談である。
 
 直樹への見舞いを終えた翌日。いつものように誠一郎が登校すると
 やや皆の視線がよそよそしいように感じた。
 
 (?)
 
 怪訝に思いながら席に着くと珍しく遅刻しなかったらしい、腕を三角巾でつった健司が近寄ってくる。
 
 「おはよう、健司」
 
 「あ、ああおはよう誠一郎。あのさ」
 
 やや歯切れが悪い口調で彼は言った。
 
 「何?」
 
 「昨日、商店街で軍服来てねり歩いていたって本当か?」
 
 内容がなんであれそれでも誠一郎に直接聞く辺りが健司の真っ直ぐな性格故だろう。
 それはともかく、誠一郎は一瞬で全て合点がいった。
 
 (ああ、やぱしこう来たか。……社会戦だ)
 
 で有るならば、対応を間違えると噂に信憑性が付いてしまう。
 その辺は間違えなかった。
 
 「事実無根だ」
 
 きっぱり。また強行に否定する事も裏付けと成りうる。
 
 「僕は昨日、高城の見舞いに行っていたからね。なんならこまちに聞いてみると良い。
 どうせ、サバ研(サバイバル研究会)の奴らか家達でも見間違えたんじゃないか?」
 
 噂を否定する状況証拠を提出し、更にもっともらしい説明を付け加える。
 人はそうすれば納得する物だ。根拠が怪しいから怪情報と言うのだから。
 
 「他にも色々有るんだが」
 
 言葉を濁す健司。
 
 「じゃあ、面倒だから今ここで(人目のある処で)言ってくれ」
 
 噂の伝播力という物は凄まじい。もとよりこの手の話に詳しくない健司が
 知っているぐらいに。それに対抗するにはこちらからも噂を利用するしかない。
 「あの噂はデマだったらしい」と言う噂をだ。これが相手が違えば噂の発生源を締め上げて
 白状させる手も使えるのだが、さすがにこまちにそれは出来ない。下手すると
 これ以上にこまちが孤立しかねない。
 
 (ま、これがこまちなりの『責任の取らせ方』なんだろう。
 …と言うか八つ当たりに近いが。反論ぐらいはさせて貰うぞ)
 
 「ええと、お前が同性愛者だとか」
 
 「僕は至極真っ当なノーマルだ。その上健全な、ね。気になる女の子だっているし
 初恋の相手だって女の子だったぞ」
 
 実は『気になる女の子』と『初恋の相手』は同義だったりするのだが。
 それはそれとして教室は噂そっちのけでこっちの怪情報に沸き立つ。
 
 「氷室の初恋の相手って誰だと思う?」
 「2−Bの藤本さんじゃない?」
 「いや彼女は転校生だ。時期的に違うだろう。むしろ俺はDの林さんじゃないかと思うが」
 「確かに小学校が同じね。でも所詮は終わった話よね。それよりも気になる女の子って
 誰だと思う?私はひょっとしたら委員長(綾坂皐月)じゃないかと思うんだけど」
 「(ちっちっちと指を振る)古いなお前の情報は」
 「綾坂が好きなのは別の奴だって事は確実だ。知り合いの図書委員が
 確かな情報を流してくれたからな」
 「えっ?誰々、誰なの?」
 
 云々。話は脱線までしている。
 それはそれとして
 
 「お前が家で夜な夜な怪しげな実験してるとか」
 
 「化学部部長の岩井と一緒にしないでくれ。こう見えても苦学生なのは知っているだろう?
 余分な薬品や機材まで買う余裕なんて無いよ」
 
 「どう思う?」
 「違うんじゃない?ええとつまり氷室君の言うとおりなんじゃないかって。
 だって岩井君って化学の先生よりも薬品臭するし。もしそうなら
 氷室君もその筈じゃない」
 「確かにそうだな。あいつのアレだけは勘弁して欲しいからなぁ」
 「全くだ」
 
 等々
 
 「家では生肉を喰らってるとか。何でも肉屋で十キロを超える量を買ったとか」
 
 「生肉は食べないけどね。こないだ燻製を作るのにだいぶ買い込んだ記憶はある。それじゃない?」
 
 「あいつ、滅茶苦茶料理巧いんだよな」
 「うんうん、家庭科の調理実習の時美味しいもんね」
 「昔から自炊してるらしいからな。自宅で…」
 「ちょっと…気の毒ね。だからいつもお弁当自分で作ってるのよね。
 (だからお弁当作って上げるっていう必殺技が使えないのよね)」
 「以前摘ませてもらった事があったが、学食よりずっと旨かった」
 「あ、いいなー。あたしも氷室君のおべんと食べたーい」
 
 とかとか
 
 そんなやり取りが続き噂の大半がHR(ホームルーム)までに駆逐された。
 なんと言っても情報は只流すだけではなく、如何にもっともらしい噂にするか
 それが重要なのだ。そして言っては何だがそれは誠一郎の十八番である。対処も手慣れた物だ。
 だが二時間目が終わると別方面から攻勢が掛かってきた。
 
 「おい、こないだの数学小テスト、氷室このクラスで二番、学年で六番だってよ」
 「へぇ凄いじゃない。でも一番じゃないのね」
 「俺知ってる。あいつ確か二分で終わらせてまるっきり別のことやってた」
 「よく見てるわね」
 「いやだってさぁカンニングしようとしたら完璧にブロックされるんだもんな。
 あいつ背中に眼でも付いてるんじゃないのか?」
 「あんたね〜」
 「そう、怒るなよ。悪かったって思ってるって」
 「ったく…ま、いいわ。氷室君に聞きに行こうっと。次の数学の課題やってなかったのよね♪」
 「あ、あ、あああずっずりぃ!俺も俺も」
 
 どうも何ら痛痒を与えなかったらしい。只次の時間開始まで何人もの人間に
 課題の解き方を教えねばならず中休みは動けないままであった。あるいは
 此処までがこまちの計算だったのかもしれない。
 
 昼休み。誠一郎は珍しくパンを買うために購買に向かっていた。昨日ちょっと色々あって忙しく
 弁当を作っている暇が無かったのだ。
 
 (……何にするかな。いつもあいつが食ってる焼きそばパンにしてみるか?)
 
 ところが。何故か購買には一本も残っていなかった。
 
 「あれ、おばさん焼きそばパン一個も無いの?」
 「あれ、氷室君。珍しいじゃないのパンを買おうとするなんて」
 「いや弁当作るの忘れちゃって」
 「なんか今日はやけにいつもより焼きそばパン売れるのが早くってね。
 悪いねぇもう一個も無いんだよ」
 
 眉間に手を当てて俯くこと二秒。
 
 「じゃ、カツサンドで良いです」
 
 妥協が成立したらしい。
 
 こんな事が暫く続いた。
 中には親切心で噂の根っ子を教えてくれた生徒もいたが
 哀れ、彼も同じ運命を辿った。
 
 (まーだ、怒ってるんだなぁ。仕方ない)
 
 とある日、いつものように屋上で
 
 「俺が悪かった。全面的に非を認めるから直接関係ない人間にまで
 累を及ぼすのは勘弁してくれないか」
 
 と、誠一郎が謝ったという噂が流れ、それに関して誠一郎は謹んで沈黙を守った。
 
 一学期も初めの頃の話だったという。
99年07月06日:07時23分14秒
それはそれとして放課後の話、仮定としての彼の対応 / ジョーカー
 (あ゛、耐えやがった。まず。爆発させた方がよかったか)
 
 至極冷静に(表面上は)こまちが
 
「そうね。あたしの方が不注意だったわね。
  それじゃあ、放課後に行きましょ。高城くんのお見舞い」

 
 と返したように誠一郎も同じように(あるいはそれ以上に)七割冷静にそんな事を考えた。
 仮にこまちの心の叫びが聞こえたならきっとこう答えただろう。
 
 「と言われても僕は高城じゃないからなぁ。同じ反応しろと言われても困る。
 奇抜な反応だってのを認めるにやぶさかではないけど。…なんだと思ってるって?
 今までの僕の態度から判断してくれ―と言いたい処だけどまぁ大切な女性だと思ってるよ」
 
 と平静かつ真面目腐って、照れもせず。だが過去視の能力が無いのと同様に
 読心術の心得も無いので(読唇術は出来るという噂もある)
 如何ともしがたいのだった。
 
 「ああ、授業が終わったら行こう」
 
 校門前に何時という言い方もあるがどうせ同じくラスなのだから
 これでも結局は変わんないのだ。それはそれとして表面上は冷たい怒りに満ちた
 (内部は灼熱の怒りに満ちている)こまちの瞳を見つめているとこれから
 何が起こるのかを思って胃がしくしくと痛む…様な柔な性格は残念ながらしていなかった。
 
 (いかんな、此処はお約束に従って顔を赤くし、狼狽して弁当を落とした方が良かったのか)
 
 やろうと思えば意図的に顔を赤く出来る辺り只者ではない。
 だがなんにせよその異常さがお約束に従うことを拒否したのであった。
 
 (なーにやってくんのかなぁ。直接的な暴力で発散されなかった以上
 やってくる事は…大体想像が付くかな)
 
 その日の放課後まで平静に過ごしながらもちょっと冷や汗の流れる誠一郎だった。
 
 誠一郎  こまちに向かって
99年07月06日:02時22分08秒
「因果応報、というよりは八つ当たり。その原因と経過」 / みだれかわ枕
(三人称単数)
 
 
 しましまぱんつは誠一郎の電撃的行動により、速やかにスカートの中にきえた。
 
 身構える誠一郎。
 だが、予想された反撃はなかった。
 もとよりこまちは、物理的攻撃を得意としていないのだ。
 では、こまちはどうしたのか?
 
「氷室……」
 怒りをこらえている。
 というか、いまここでの爆発を我慢している。
 臨界点を突破する直前の原子炉は、きっとこんな感じだろう。
 
 そしてこまちは耐えきった。
 非常に冷静に、彼女はこう言ったのである。
 
「そうね。あたしの方が不注意だったわね」

 
 さらにこう続けた。
 
「それじゃあ、放課後に行きましょ。高城くんのお見舞い」

 
 その時こまちの心の中が覗けたとしたら。
 こんなカンジである。
 
『氷室の馬鹿ァッ! 高城くんはそんな変な反応しなかったわよォ! あんたはあたしをなんだと思ってんのぉ!』

 
 その翌日から、誠一郎の身辺で彼自身に関する怪情報が飛び交ったり、テストの点数が(別にばれても恥ずかしい成績ではなかったが)漏洩したり、購買に行って焼きそばパンが買えなかったりしたのだが、それはまた別の話。いつか語られることもあるだろう。
 その首謀者が大町こまちであることは、とある生徒の非公式コメントによって明らかにされた。
 ところが今度はその生徒が同じ目にあったという。
 こまちはやはり、怒りを抑えきれなかったのである。
 
 
 こまちから、誠一郎へ。
99年07月05日:20時36分08秒
火事(1) / tomy
「あの、春香さん…、どこへ向かってるんですか…?」
私は助手席に座りながら、運転席の春香さんに尋ねる。

「ん…、瑠璃ちゃんのアパート」
言葉少なに答える春香さん。
ただ送ってくれる、ってわけじゃなさそう。

…何か、あるんだろうか。
写真のこと…じゃなさそうだし。
…何だろう?
「着いたわ」
「えっ…」
しばらく考えこんでいた私は、春香さんの言葉に正気付き…、
(ここ、どこ?)
しばらくの間混乱を続けていた。

黒っぽい建物…、

きな臭いにおい…、

泥水に覆われた地面

全て私の見覚えのないものだった。

…でも、

それはまぎれもなく、

無惨にも焼け落ちてた私のアパートだった。


tomy:ずいぶんと遅くなって、ごめんです。
忙しいというのも理由の一つなのですが、それ以上に、この話しなんだかとっても難易度高くて、なかなかまとまりませんでした。
今回もホントは明たちのマンションにまで話しを進めたかったのに、そこまで進められませんでした〜(;;)。
99年07月05日:07時44分27秒
扶美 / RWAK
「用ねえ………都合良く二人きりだね、こういうシチュエーションだと用も限定されてくるよね」
どっき〜ん!!
心臓がばくばく言い出す。
なんとなく、顔が赤くなってるのは気のせいではあるまい。
「お嬢ちゃん……いや扶美」
ぎゅっと手を握られて明に迫られる。
心拍、なおも加速中(笑)
「せめてあともうひとサイズぐらいは大きくした方がいいと思うぞ」
「な・・・・・」
さらに顔が赤くなる。
ただし今度は怒りで、だ(笑)

「まあまあ、おちつきなさい」
かといっておとなしくなる扶美ではない。
結局、おとなしくなるのにしばらく費やした。

「おどおどしてるぐらいならそっちの方がいいぞ、こっちが小さいってだけでかさに掛かる連中多いし、目を伏せるとますます調子に乗らせるし」
(え・・・・・?)
明がぽんと頭に手を置き軽く撫でる。
「下向いて歩くんじゃないぞ、あの手の連中正面から睨み返されたら目を逸らす、その程度の根性しかないもんだ……じゃ、そういうことで用事は終わったんで帰るから」
「わかっったですぅ。」
ちょっとだけ、明を見直した。
「せめてあともうひとサイズぐらいは大きくした方がいいと思うぞ」
前言撤回。
再び怒りに染まる扶美の顔。
「こら〜〜!時之〜!!!」
そのとき、すでに明はいなかった。
99年07月05日:01時23分30秒
彼と彼は好対照 / ジョーカー
 「んで、お見舞いには、二人で行くの? それとも、オプションつき?」
 
 やや大袈裟な身振りでこまちが聞き返してくる。
 
 「オプション付きだ。今日の春夏秋冬は店長が…」
 
 二日酔いで臨時休業なんで、暇そうだったから…。と誠一郎は続けようとしていたが
 ハプニングがそれを断ち切った。気持ちの良い風が屋上に吹き寄せ
 それはついこの間と同じようにこまちのスカートを舞い上げる。
 
「あ゛」

 と声を上げたのはこまち。では誠一郎はと言うと?
 
 (なんかこないだもこんな事有ったよな)
 
 と呑気な事を考えていた。此処までで0.2秒。
 その状態でも半自動的に事態を収拾しようと手が動く。
 
 (青、白のストライプ)
 
 と、みょーに冷静に判断しながら舞い上がったスカートの生地を上から柔らかく
 押さえ込み、定位置まで押し下げる。中身が隠れる代わりに見えたのは
 真っ赤に染まったこまちの顔。
 
 (お、可愛い)
 
 などと多少不謹慎な事を思い浮かべる。
 
 「悪い、ばっちり見えた。不可抗力の上に、抑えるのを手伝った事だし
 少しは考慮してくれ。責任取らないとは言わないからさ」
 
 と、やや苦笑しながら常軌を逸した反応をする誠一郎。こまちを襲ったのは
 『お約束』の嵐だったが誠一郎という個性は『お約束』に追従するには
 あまりにも風変わりであるようだった。奇しくもあの時こまちが想像したように
 とんでもない反応である。その意味ではこまちの期待通り…と言えなくも無いのかもしれない。
 
 (取り敢えず飛んでくるのは蹴りか拳か?)
 
 無意識の内に身構えてしまう誠一郎だった。
 
 誠一郎  こまちに向かって
99年07月04日:21時49分05秒
「再び鷲は舞い上がった」 / みだれかわ枕
(三人称単数)
 
 
「それにしてもそっちこそ、今日は何かちらちらと僕を見て。
 何か聞きたい事か言いたい事でもあるんじゃないのか?」
 
「まあね。聞きたいことはいっぱいあるけど……まあ、それはおいおい聞かせてもらうわ」
 紙パックに入ったコーヒー牛乳を飲み干し、こまちは立ち上がった。
「んで、お見舞いには、二人で行くの? それとも、オプションつき?」
 腰に手を当て、胸を張る。
 こまちなりの、照れ隠しは続いていた。
 
 だが『お約束』という名の容赦なき牙が、再びこまちに向かって牙をむいた。
 
 ひゅう。
 さわやかな風。
 春というよりは、初夏のそれといった感じの風。
 
 ……
 そしてこまちのスカートは再び舞い上がった。
 
「あ゛」

 
 
 こまちから、誠一郎へ(なお今日のこまちは白と水色のしましま)
 
 ★ ★ ★
 
 直樹と誠一郎の条件を同じにしておきましょう(笑)
99年07月03日:22時43分02秒
疑問、そして切り返し / ジョーカー
 「な、なによ、唐突に!」
 
 声を掛けてみると過剰な反応。
 
 (…何で顔が赤くなるんだ?)
 
 疑問が沸き上がる。さすがに誠一郎にも過去視の能力は無い。此処でこまちと直樹の間に
 何があったのかは分からない。何かがあったことは分かるのだが。
 
 「ひ、氷室にしちゃ、出張な……じゃない、シュショウな心がけじゃない?
 いったい何を企んでるのよ?」
 
 ややどもりながらこまちが言い返してくる。どうやら何か動揺しているらしい。
 この攻撃的な口調は多分、それを隠すための物だろう。
 
 「企んでいるとは心外だな」
 
 実際は企んでいる訳だが。その辺は平然とした物である。
 
 「花見を楽しみにしていた高城が熱出して寝込んで、しかもその翌日まで
 引きずっているのならば見舞いに行っても罰は当たらないだろう?」
 
 所詮は口実である。真の狙いは美亜に誠一郎やハロルド以外の知人、友人を作らせることである。
 だがまるっきりの嘘という訳でもない。気の毒に思うのは事実だし、なにせ縁もある事だし。
 
 「彼とは…いや、いいか」
 
 因縁もある事だしね。と続けようとしたのだが途中でお茶を濁した。
 突っ込まれたら何故の因縁かを話さないといけない羽目になるからだ。
 
 「それにしてもそっちこそ、今日は何かちらちらと僕を見て。
 何か聞きたい事か言いたい事でもあるんじゃないのか?」
 
 相手の突っ込みを封じるにはこちらから疑問を提示する事である。だがその行為により
 彼は地雷原に突入したことに……あまり気が付いてなかった。不覚である。
 
 (まさかなぁ…)
 
 甘い。甘々であった。
 
 誠一郎  こまちに向かって
99年07月03日:19時26分22秒
「ちょっと待って、プレイバック」 / みだれかわ枕
(一人称単数)
 
 
 あたしは、屋上で焼きそばパンを食べていた。
 すぐそばには、お手製のお弁当を食べる氷室。
 
 ちらっと、氷室の顔を見る。
 
 う〜ん……
 何か、怪しい……
 
 言うまでもない、昨日の時之の電話のことが、どうしても気になるあたしだったりする。
 氷室は
『なにも隠し事なんてしてませんよ』
 って顔をしてる。
 まあ、平気でそういう顔して隠し事出来るヤツだから、油断は出来ない。
 やっぱり、聞いてみるべきかなぁ……
 
 これで『あちこち』から、時之がいってたことについて、情報を集めてみたんだけど。
 どうも、一番事情を知ってるのが、時之らしい。
 ってことになると、これ以上知るには、本人に聞くしかない……ってことに。
『氷室! あんた、女の子を飼ってるの?』

 ……
 聞けない!
 んなこと絶対聞けない!
 
 そんなわけで、あたしはちらちらと氷室の顔を見ているってワケ。
 
 
「あのさ、こまち。今日、高城が熱出して休んでいただろう?
 どうも昨日もそれで来なかったらしいんだが、放課後一緒に見舞いにでも行かないか?」
 
 唐突に、氷室がこっち向いて話しかける。
 びっくりして、焼きそばパンの紅しょうが、落っことしちゃった。
「な、なによ、唐突に!」
 しかも、高城くんのお見舞い!?
 あたしの脳裏に『パンチラ大サービスの上、泣いたところを高城くんに見られたシーン』がplay backする。
 そーいえば、あれってちょうどこの位置だっけか……
 わわ。
 顔が赤くなる!
「ひ、氷室にしちゃ、出張な……じゃない、シュショウな心がけじゃない?
 いったい何を企んでるのよ?」
 顔の火照りを誤魔化すために、あたしは必要以上に挑戦的に、氷室に聞き返した。
 
 高城くんのお見舞いかぁ……
 うん。いいかな?
 
 
 こまちから、誠一郎へ
99年07月03日:02時34分07秒
そしていつもの日常、僅かな変化 / ジョーカー
 花見の翌日。いつものように学校は始まり生徒達が登校する。
 ただ、その中に直樹の姿は無かった。だが、一人が欠けたところで
 無情に学校の時間はいつも通りに流れていく。そして昼休み。
 屋上に誠一郎とこまちの姿があった。
 
 購買で買ってきたパンをぱくつくこまちと自分で拵えてきた手弁当を食べる誠一郎。
 それは一種好対照とも言える光景だった。
 
 (それにしてもこまちはどうしたんだ?どうも今日は妙な目で見られているような)
 
 さすがに誠一郎にこまちが昨夜明の情報を元にどのような推理を展開したかまでは
 分からない。分かるようだったらそれは変態である。(笑)
 だが、悩んでいたところで話は始まらない。意を決して誠一郎は話を持ちかける。
 
 「あのさ、こまち。今日、高城が熱出して休んでいただろう?
 どうも昨日もそれで来なかったらしいんだが、放課後一緒に見舞いにでも行かないか?」
 
 誠一郎  こまちに向かって
99年07月03日:02時17分15秒
今日の終わり、そして明日の始まり / ジョーカー
 地図を覚え込んでいる美亜をぼんやりと眺めながら誠一郎は思う。
 
 (そうだ、こまちにも声を掛けるか。時間は……)
 
 手首に目をやるともう随分と遅い時間だ。
 
 (学校で話をするか。寝てるのを叩き起こして機嫌を損ねるのも何だしな)
 
 その辺は心得てる。長い付き合いだ。やむを得ないときは仕方ないが
 それほど差し迫った事でもない。むしろ機嫌云々ならば美亜が同行することの方が
 問題かもしれない。それは重々承知だった。なにせ二人は今日、あれだけの
 戦いをやってのけたのだから。だがそれでも
 
 (ひょっとしたら長い付き合いになるかもしれない。そんな予感がする)
 
 食器類を片付けながらただなんとなくそう思う。
 
 (それなら知り合い、友人は多い方が良い。親しい人間が僕とハリーだけというのは
 些か侘びしい物があるからね)
 
 多少無理に見舞いに誘ったのもそれが本当の理由。家と春夏秋冬を往復するだけの生活では
 彼女が何から逃げてきたのかは知らないが、ろくな物ではあるまい。
 反感から始まる関係だってある。
 
 (できるならこまちと友達にでもなって欲しい物だが)
 
 これは美亜だけでなく双方のために、誠一郎はそう思った。
 
 (あいつ親しい友達、少ないからなぁ)
 
 嘆息。もっとも誠一郎も真に親しい友人はそう多いわけではないのだが。
 
 それから暫くして、今日の後片付けも明日の用意も全てが終わり、風呂にも入り
 後は寝るばかりである。
 
 「今日は昼間に飲んだからもう飲む必要は無いな……」
 
 少しばかり嬉しそうに彼は言う。
 
 「それに楽しい一日だったから、良い夢が見れそうだ…」
 
 それを最後に彼の一日は終わりを告げた。そして何を夢に見たのか。
 それは彼だけが知っている……
99年07月03日:01時35分37秒
敗北の味? / Karma
 注意深く何度も頭の中で確認するようにして地図を見る。
 迷って困るのは自分だから。
 
 「じゃ、そういう事で」
 「は〜い」
 あまり気のない返事で返す。
99年07月03日:01時29分12秒
勝利はいつでも虚しい / ジョーカー
 「決まりだね。じゃあ明日の三時半頃、煌輝西高の校門前で……って道が分からないか」
 
 そもそも道に不慣れとたった今言ったばかりではないか。
 
 「それじゃあねぇ…」
 
 席を立ち、キャビネットをごそごそと漁る。持ち出してきたのはここらの周辺地図だ。
 
 「いいかい、此処が春夏秋冬。此処がこの家」
 
 サインペンで地図に印を付けていく。
 
 「で、ここが煌輝西高。今日会った奴らの大半が―当然僕もだけど―
 通っている学校。春夏秋冬からそんなに離れてないから多分すぐ分かると思うけど
 分からなかったら道行く人に聞けばいい。多分教えてくれるはずだよ。
 神坂さん可愛いからね」
 
 にこりと笑ってさらりと言う。
 
 「まぁそれでも不安なようだったら…シーザー?」
 
 喚ぶと隣室からシーザーが駆け込んでくる。
 そのまま足下で首を傾げる。何の用?と言う事だろう。
 
 「明日、神坂さんを学校まで送ってってくれる?道分からないってさ」
 
 「ウォン!」
 
 元気一杯の返事が返ってくる。意訳すれば任せておけ!と言う処だろうか。
 
 「じゃ、そういう事で」
99年07月03日:00時50分04秒
諦めが肝心? / Karma
「買い物?でも大丈夫だよ、学校終わってから行くんだけどそんなに長居はしないから」
 そりゃそうだ。見舞い、ってものは普通は長居するものじゃない。
 もっとも見まいだけの場合だが。
 
 「それにまだこの街のこと良く知らないでしょう?見舞いの後なら
 買い物に付き合ってあげられるよ。何買うのかは知らないけれど」
 考えてみると、まだこの街には不慣れである。
 家の周りと春夏秋冬の周りだけは迷わなくなったが、もともと道を覚えるのが得意な質ではない。
 
 
 しばらく考える。
 
 
 「・・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします」
 どうやらあきらめたようだ。
 別にとって食われるわけじゃないってのにその不安そうな顔はなんなんだか(苦笑)
99年07月03日:00時41分46秒
全ては徒労に終わる / ジョーカー
 「買い物?でも大丈夫だよ、学校終わってから行くんだけどそんなに長居はしないから」
 
 さすがに連日で夕食をご馳走になる気はしない。家は違うが。
 
 「それにまだこの街のこと良く知らないでしょう?見舞いの後なら
 買い物に付き合ってあげられるよ。何買うのかは知らないけれど」
99年07月03日:00時33分36秒
ささやかな抵抗 / Karma
 「それでね、明日のことなんだけど春夏秋冬が休みになるのは確実なんだ」
 「そうなの?」
 思わず聞き返す。そりゃハリーが今ごろ何をやっていて明日は二日酔いで動けない、なんてことを知ってるわけないのだから。
 
 「でも、神坂さんは暇でしょう?」
 「ん、まぁそれだと暇にはなるけど・・・・・・」
 まぁね。他にやらなきゃならない事がある訳じゃ無し。
 
 「丸一日寝ているとか、適当に散歩でもするというのでも良いけど
 良かったら知り合いの見舞いにでも一緒に行かない?」
 「あたしも?」
 ちょっとびっくり。誠一郎の知り合いとはいえ直接の面識がないのだから。
 (なんか客寄せパンダ?)
 一瞬妙な考えになる。
 
 「明日何か用事があるのならそっちを優先させても構わないけど」
 「明日は・・・・・・」
 何とかして用事をひねりだそうと考える。もっともそう簡単に出てくるものでもないのだが。
 
 「明日はちょっと買い物に行きたいんだけど・・・・・」
99年07月03日:00時21分37秒
波乱のお誘い / ジョーカー
 食事も終わる頃になって誠一郎が口火を切る。
 
 「それでね、明日のことなんだけど春夏秋冬が休みになるのは確実なんだ」
 
 困った話だ。
 
 「でも、神坂さんは暇でしょう?」
 
 春夏秋冬は彼女の職場である。故にそこが閉まっているとやる事は無い。
 
 「丸一日寝ているとか、適当に散歩でもするというのでも良いけど
 良かったら知り合いの見舞いにでも一緒に行かない?」
 
 花見の話が持ち上がった時に参加を表明しておいて、当日来なかった人間がいる。
 もっとも来るとも言わずに何故か来ていた人間もいたのだが。誰とは言わないが約二名。
 それはともかく
 その後確認したところどうやら熱でも出して寝込んでしまったとの話だった。
 目下の処、誠一郎は彼―高城直樹―を恋敵と見なしているのだが来れなかったのは
 それはそれとして気の毒だ。見舞いに行ったところで罰は当たるまい。
 
 「明日何か用事があるのならそっちを優先させても構わないけど」
99年07月03日:00時01分06秒
軽いお食事 / Karma
 「そぉ?あたしそんなに飲んでたっけ?」
 どうやらすっぱりと記憶から抜け落ちているらしい。
 まぁ、覚えてたら覚えてたで、それはそれでひと騒動だが。
 
 そうこうしているうちに食事が始まる。
 「それじゃ、いただきます」
 何はともあれ食事が始まった。
 あとに何が待ってるかは謎なんだけど。
99年07月02日:23時54分31秒
蘇る記憶と堪え切れぬ笑い / ジョーカー
 「ま、ね。でも少し疲れちゃった。あーいう雰囲気ってあたし苦手だから」
 
 それを聞いて誠一郎の肩が震える。泣いている…筈がない。笑っているのだ。
 
 「そ、そう?僕は結構好きなんだけどな。でも多少なりとも楽しんで貰えたようで良かったよ」
 
 声が震える。まだ笑っているから。笑いながら会話しながらも手元はテキパキと動き
 簡単な夕食を作っていく。
 
 「ただ、君がどの程度飲めるのかは知らないけど潰れるまで飲むのは
 良くないと思うな。酒は百薬の長と言うけれど過度の飲酒はさすがに身体に悪い」
 
 あの珍騒動が脳裏に映し出される。笑いが止まらない。あれを彼女は覚えていないのだろうか?
 そうこうする内に食事が出来上がる。
 
 「はい、出来たよ。さ、食べようか」
 
 運んできた料理は二人分。美亜の分は確かに軽くだが誠一郎の物も似たような物。
 元々夕食は済ませてしまった訳だが、それでも付き合う気らしい。
 何にせよ、一人の食事は寂しい物だ。それを誠一郎は良く知っている。
99年07月02日:23時31分52秒
何気ない会話(重要分岐?(爆)) / Karma
 「ただいま。遅れて御免ね、ちょっと用が長引いちゃってさ。
 食欲はあるかい?今から夕飯作っちゃうから」
  「ん〜、軽くでいいよ。それほど食欲無いから」
 少しぼんやりした感じで応える。
 まだ半分眠っているのか、それとも他の理由なのか定かではないが、声が少々弱い。
 
 「今日の花見はどうだった?楽しんで貰えたかい?」
  「ま、ね。でも少し疲れちゃった。あーいう雰囲気ってあたし苦手だから。」
 ソファにもたれかかって答える。
 疲れた本当の理由は実は別の理由によるものなのだが、それを彼女が覚えているかどうか・・・・・・
 
 
 教訓
 酔っぱらって運動はしないようにしましょう(笑)
99年07月02日:12時48分44秒
直樹と由希による、朝の会話 / 少年が1番!!
・・・目が覚めた。
僕はぼーっとしたまま、上半身を起こし・・・辺りを見回す。

(誰もいない・・・当たり前か)
やっぱり、あれは夢だったんだろう、たぶん。

(まさか由希姉がずっと手を握ってくれるわけないし・・・)
でも。
何となく、手には暖かい温もりが残っているような気がして。
僕は手を握ったり、開いたりしていた。何やってるんだろう、
と思いながら・・・。

「おはよう、直樹」
「由希姉・・・」
部屋を出て下まで降りてきた僕は、思わず恨めしい目で由希姉
を見つめていた。
「何で起こしてくれないのさ。もう授業が始まっちゃってるよ」
「お前はすぐに体調を崩し、しかもそれが長引く。親父も容認
しているから、今日は寝ていろ」
由希姉は黙々と食事を取りつつ、そう言った。確かに姉さんの
言う通りなので、僕は言い返せず、向かいの席に座る。
「・・・僕の分は?」
「ない。自分で作れ」
「そんなあ」
まあ、予想していたことではあった。由希姉は決して家事が
苦手とか、そういうことはないのだけれど、恐ろしいくらいに
手間を省く人だ。きっと名古屋の方ではインスタントな食事で
日々を過ごしているんだろう。
一方、僕の方はちょっとした食事なら何とかなる。父さんは
そうそう休めない職業だし、姉さんは薄情と来たら自分で
作るしかない。
・・・とはいっても、作れるのはお粥などに代表される滋養の
いいものばかり、というのが何とも・・・。

「由希姉、いつ出るの?」
「それなんだがーー」
珍しく、姉さんの言葉に淀みが生まれた。

「直樹。お前、悩んでることとかある?」
「ゆ、由希姉!?」
僕は驚いて、一瞬腰を浮かしかけた。自慢じゃないけど、僕は
姉さんに心配されたことは一度もない。というか、「大人なら
悩み事くらい自分で解決しろ」が姉さんの口癖だ。それなのに
・・・。

「どう?」
「悩み事って言っても・・・」
それは、ないわけがない。でもまさか姉さんに尋ねるわけ
にはいかないじゃないか。
大町さんにうまく謝る方法はないか、なんて・・・。
「べ、別に・・・ないよ」
「本当に?」
「本当だよ。嘘ついたって仕方ないし」
僕がそう答えると、姉さんは小さく息をついた。
何だか見透かされてる気がする・・・。
「なら、いいんだけどね」
それっきり、姉さんは黙ったままだった。

 
99年07月02日:09時16分58秒
いくらか遅れたいつもの風景 / ジョーカー
 「ただいま。遅れて御免ね、ちょっと用が長引いちゃってさ。
 食欲はあるかい?今から夕飯作っちゃうから」
 
 手早くエプロンを身につけて誠一郎は厨房に立つ。手際よく料理をしながら彼は背中で問うた。
 
 「今日の花見はどうだった?楽しんで貰えたかい?」
 
 誠一郎  美亜に向かって
99年07月02日:01時14分12秒
寝ぼけ眼のお姫様(ってほど上品じゃないけどさ(苦笑)) / Karma
 夢を見ていた
 たいがい夢を見ている、という事は自覚しない物だが、そう何回も似たような夢を見ているといい加減自覚するものだ。
 だから、これが夢だってのは判る。
 どうせ、それを起きた後まで覚えてない、って事も・・・・・・・・・・
 
 

 扉
 鍵の付いた扉
 鍵穴のある扉
 手に入る物は鍵穴から覗ける世界だけ
 外に出る事はかなわない
 何度切望しても
 何度こじ開けようとしても
 それでも鍵はかかったまま
 
 音がする
 鍵を開けるような音
 今までの夢では聞こえなかった音
 解放の時を待ち焦がれてあたしは扉の前に駆け寄る
 鍵がはずれ
 扉がゆっくりと軋みを上げて・・・・・・・
 
 

 
 目が覚めた
 
 「ただいま〜。神崎さん起きてる?」
 
 (あーあ、ようやく変化があったとおもったのになぁ・・・・・・)
 遠くの声を聞きながら半覚醒の状態で、ぼんやりと思考する。
 
 「まだ、寝ているのかい?」
 抑えられた声がこちらにむけて放たれる。
 「ん、今おきたとこ」
 少し不機嫌そうな、物足りないような奇妙な感じの声で返事をしながらソファに座り直す。
 「おかえり。」
 あまり気の無いような返事をする。
 奇妙な感情に戸惑い、それを隠したまま・・・・・
99年07月02日:00時59分58秒
そして彼が帰る処 / ジョーカー
 「神坂さんはどうしているかな?」
 
 大町家からの帰り、あの後聖に夫である聡との出会いの話を拝聴し―それはそれで色々と参考になった―
 勧めてくる物も断れず、夕食をご馳走になってから自宅に帰る途中、ふと誠一郎はそんな事を漏らした。
 
 「……悪い事したな」
 
 多少の罪悪感が誠一郎の胸を刺す。今、彼女はあの広い家に一人でいるのだ。
 孤独はある意味、誠一郎が今までの人生空気のように付き合ってきた物だ。
 それだけにその辛さも良く知っている。だが、本来の氷室家の人員が全て揃って
 いた以上、帰る口実も見つからなかったのだ。聖の押しの強さに押し切られたとも言う。
 
 「………」
 
 ただ、それは、家族の団らんと言う物は誠一郎が遠い昔に無くしてしまった物。
 それだけに誠一郎は一分でも一秒でもその雰囲気を―所詮は部外者だとしても―
 長く味わっていたかった。それが帰れなかった、否、帰らなかった本当の理由。
 
 「でも、だからってそれはただの我が儘だよな」
 
 嘆息を供に苦い声が夜道に響く。自覚しているだけに、胸が重く感じる。
 隣を歩く二人の同居人達は誠一郎の心中を察しているのだろうか。いつもの賑やかさも
 絶え、ただその鼻面を誠一郎にこすりつける。
 
 「くぅん…」「みゃあ」
 
 それは生憎言葉ではなかったけれど、長い付き合い何を言いたいかぐらいは朧気に分かる。
 
 「有り難う。……そうだな、悩んでいても仕方ないか。
 取り敢えず家まで走るぞ!」
 
 それを契機に一人と二匹の軽やかに路面を走る音が夜の街に木霊した。
 
  --------------------------------------------------------------------------------
 「起きてるかな?」
 
 あれから暫くして、彼ら三人の姿は氷室家の玄関のドアの前にあった。
 鍛えてるだけあって誠一郎は息も切らしていない。シーザーは元より
 体力の桁が人間とは違う。そしてジュリアは…途中から横着して誠一郎に
 しがみ付いていたから息を切らす筈もない。そもそもそこまで遠いわけでも無いのだが。
 
 それはともかくドアに付いている重厚なノッカーを鳴らしみる。
 その作りに相応しい重々しい音が響く…が返事は無い。
 今度はインターフォンの呼び鈴を押してみる。ノッカーとは
 うって変わって軽やかな音がする……が以下同文。
 
 「寝てるみたいだな」
 
 仕方なく無造作にドアノブを捻ってみるが当然途中で金属音を立てて止まってしまう。
 
 「まぁ当然だね」
 
 今度はポケットを探る。鍵を取り出そうとしているのか。
 だがその表情が微妙に固まる。鍵が無い事に気が付いたのだろう。
 
 「あれ、どこかで落としたかな。…………って待てよ」
 
 そこで思い出す。花見の終わり際にハリーに鍵を渡したことを。
 
 「ハリーはそもそも此処の合い鍵持っているんだから鍵なんて渡す必要ないじゃないか」
 
 自分で言って愕然とする。そこまで判断力を失うほど酔っていたのだろうかと。
 実際は酔いと言うより眠気が主原因だったが。
 
 「…誰かに勘付かれたかな」
 
 勘の良い者で誠一郎を知っている者。この二つの条件を備えた者なら事実に気付く可能性がある。
 もっとも危険だったこまちは前後不覚だったから覚えてはいまい。その意味では最悪の事態は
 免れたと言える。その他に該当する者は…春香、藤寺、芳の三人は事情を話してあるために
 さほど問題は無い。だが、問題はこれを除いた人間。明、そして斜六。
 この二人は気付いた可能性がある。
 
 「拙いな……」
 
 実際は誠一郎の倫理観からすれば窮鳥を匿っているだけの事。疚しくも何とも無い。
 だが、同時にそれがばれたら拙いと思う気持ちも存在する。学校側に…では無い。
 ある『特定の個人』に、だ。それがどういう感情から端を発するか、は何となく分かっていた。
 それだけに
 
 「う〜ん、どうしよう……」
 
 と悩む羽目になる。だが長い間悩んでいるのは状況が許さなかった。
 取り敢えず現世に立ち戻れとばかりにシーザーが誠一郎の袖を引く。
 
 「何?今悩んでいるんだから……って、ああ」
 
 何はともあれ家に入る事が最優先であるとようやく気付く誠一郎。
 だが入ろうにも鍵が無い。嘆息。
 
 「何で自分の家の鍵をこじ開けないといけないんだろう」
 
 隠しから金属製の道具を幾つか取り出し、鍵穴に突っ込みピッキングする事数十秒。
 鍵穴から確かな金属音がする。
 
 「やれやれ。ロックスミスって自宅の鍵を開ける技術じゃないと思うんだが」
 
 ぼやきながらドアノブを回し、家に入る。
 
 「ただいま〜。神崎さん起きてる?」
 
 暗闇の中迷うことなく歩き、居間に辿り着く。
 手が蛍光灯のスイッチに伸びるが、中に人の気配を感じ取り手を止める。
 
 「まだ、寝ているのかい?」
 
 美亜を気遣うようにその声は抑えられ、小さな物だった。
 
 誠一郎  美亜に向かって
99年07月01日:21時57分38秒
「灰色の脳細胞(花見のあとの電話)」 / みだれかわ枕
(三人称単数)
 
 
「んにゃあ? 電話〜?」
 半分寝ていたこまちが目を覚ましたのは、明からの電話を取り次いだ聖に起こされたからだった。
「そぉよ。男の子。時之って、言ったかしらぁ」
 もぞもぞと起き出し、こまちは電話をとった。
「もしもしぃ?」
 こまちは寝起きが悪い。
 寝ていたところを起こされると、非常に機嫌が悪いのだ。
 誠一郎が細心の注意を払って、彼女を家まで送ったのも、理解できる。
 電話の向こうの明は、こまちの声で、状況を理解したようだ。
 すなわち、ちょっとばかりタイミングが悪かったのだ。
 
 
「まあ、そう言うわけなんでじゃあ、おやすみなさい」
「あ、そ」
 そう言って、こまちはさっさと電話を切った。
 明の話はしどろもどろだったが、ある程度は理解できた。
 
 事実1.氷室は最近、新しく何か飼い始めた。
 事実2.それは鍵を使えるような生物である。
 事実3.しかも『責任をとる』必要もある。
 事実4.その事をこまちは知る権利がある。
 事実5.大したことじゃないし、気にならないならそれでいいが、それでもこまちは知らなければならなかった。
 
「……わ、わけわかんない」
 わかれ、と言う方が酷だったかも知れない。
 だがこのときすでに、祖父譲りの灰色の脳細胞が働き始めていたのだ。
 
 事実1に対する推理1.犬や猫というわけではないだろう。なぜなら、
 事実2に対する推理2.鍵を扱えるくらい器用で、知恵もある生物だから。犬や猫では、ちょっと無理。敢えて挙げるならば、類人猿だろう。
 事実3に対する推理3.わざわざそう断りを入れなければならないくらいだから、その生物は想像以上に世話を焼く必要がある。
 事実4に対する推理4.別に知る必要はないと思うのだが、こまちにも関わる重要なことなのかも知れない。
 事実5に対する推理5.要するに時之はこまちにこのことを言いたかったのだ。
 
「ますますわけわかんなくなった……」
 要するに氷室は何か新しく飼い始めた。類人猿ぐらい器用で賢い生き物で、飼うのに手間がかかる。で、あたしはその事を知る権利と義務がある、と。
 そこまで考えて、こまちはぴたりと止まった。
「類人猿? 氷室ならネアンデルタール人ぐらい飼っていても不思議じゃないなぁ……ん? もしかして、人間飼っていたりして。『おまえは僕のペットだ! これからはご主人様と呼べッ!』なあんて……まさかね、あははははは」
 
 灰色の脳細胞は、すでに暴走していた。
 
 最終的推理1.氷室は可愛い女の子にメイドのコスプレをさせて、公言するのがはばかられるような『あんなコトやこんなコト』をするように『調教』している。
 
「ま、まさかぁ……」
 あわてて『頭の中のすごい映像』を打ち消し、考え直す。
 
 最終的推理1の修正1.氷室の家には女の子がいる。よくわかんないが、いるのだ。しかもその理由はちょっと人には言えない(っていうか、理由がなくても言えんだろう)。
 
「あはははは……はは、ははは……面白すぎるよ、それ……あはは……」
 
 なかなかいい線いっているのだが、こまちは必至になってそれをうち消そうとした。
 面白いなら、それをネタにからかえばいいのに。
 なぜ否定しようとしたのか。
 こまちには、よくわからなかった。
 
 こまち。
99年07月01日:14時23分29秒
明(花見後の電話) / 月夢
 花見の終わった夜、ひとつ重要な話の終わった後、明は電話を前にしてじっと考え込んでいた。
「ああ、なんつーかあんまりなあ、こういうのもねえ」
 精神的に疲労していることもあってさっさと寝てしまいたいところではあるのだが、
「やっぱりなあ・・・こまち先輩には知る権利あるよなあ」
 明はのろのろと電話をとって大町家に電話をかける。
「あ、もしもし、夜分遅く申し訳ありません、大町さんのお宅ですか?あ、時之です、
こまち先輩もう目が覚めていらっしゃいますか?あ、すみませんじゃあお願いできますか?
・・・ああ、それからもしかして誠一郎先輩その辺に転がっていません?帰った?あ、
ならいいんです、いやこっちのことでちょっとぶらっくめんに盗聴されているかもしれ
ないので詳しいことは・・・いやもう色々ありまして・・はい、はい、お願いします」
 訳のわからんことをいいながらもしばしまつとこまちにつながる、何となくあんま り歓迎されてない気がするのは気のせいだろうか?
「あ、こまち先輩ですか?明です、いや、べつにどうしたって訳じゃないのですが、いや、
なんつーか、まあ、あの、この、それ、あれ」
 わからんぞ。
「いや、やましいこととかはないですが・・・・えーとまあ、些細なことなんですが、誠
一郎先輩新しくなにか飼い始めました?いえジュリアとシーザーじゃなくて、何というか自
力で鍵使って開けるようなそんな生き物を・・・他意というか深い意味は多分ないと思うの
ですが・・・・春の陽気に誘われてそんな泡沫の幻を見たような気が・・・・いや、大した
ことじゃないんですけど、ええまあ、責任とれれば何しようがそれは個人の自由だし」
 ほんとに大したことないのか?
「いや、気にならないならどうでもいいというか一応こまち先輩には伝えておこうかなあと
 こまち先輩には知る権利はあると思ったので」
 あやふやと言うか余計な想像力の及びそうな説明をする明。
「まあ、そう言うわけなんでじゃあ、おやすみなさい」
 ぷつ、つーつーつー・・・・。
「まあ・・・・一応義務は果たしたということで」
99年06月30日:11時08分13秒
/ 月夢
「時之、ようって何ですぅ?」
 目尻に涙を浮かべて…それでもぐっとこらえているのだろう…扶美が聞いてくる、多少声がまだ震えているようだが明は気づかないことにする。
「用ねえ………都合良く二人きりだね、こういうシチュエーションだと用も限定されてくるよね」
 一歩間違うとめちゃめちゃやばい発言だがそこはあえて気にせず、つかんでいた手を握り直し。
「お嬢ちゃん……いや扶美」
 じっと見つめ………どこかでこのパターンなかったか?
「実は前から言おうと思っていたんだけど………もうちょっと栄養とった方がいいと思うぞ、いろんなとこに栄養行き渡ってないし」
 …………懲りるという言葉をしらんのか、己は。
「というささやかな冗談はおいといて」
 それでも多少の学習はしたのか、相手が立ち直って切れる前に間髪入れずにさらっと話題を流し。
「まあまあ、おちつきなさい」
 ちゃんと両手も掴んでいるあたり周到である。なんか人に見られるとまずそうな状況であるが。
 しばらく扶美の文句とじたばた暴れるのをいなした後、明はタイミングを見計らって手を離し軽く一歩下がる。
「それだけ元気なら大丈夫か」
 結局いつもの光景である。
「おどおどしてるぐらいならそっちの方がいいぞ、こっちが小さいってだけでかさに掛かる連中多いし、目を伏せるとますます調子に乗らせるし」
 ぽんと頭に手を置き軽く撫でる。
「下向いて歩くんじゃないぞ、あの手の連中正面から睨み返されたら目を逸らす、その程度の根性しかないもんだ……じゃ、そういうことで用事は終わったんで帰るから」
 言うこと言ってから扶美に背を向けて歩いていく。
「授業には遅れないように、ああ、それから」
 少しだけ立ち止まって、
「せめてあともうひとサイズぐらいは大きくした方がいいと思うぞ」
 なにをだ、というようなつっこみを受ける前に鮮やかに消える明だった。
 
99年06月30日:07時36分49秒
扶美 / RWAK

扶美はある意味追い詰められていた。
誤解なのはよくわかっているが、こっちにしゃべらせてくれない。
時折「何か言いなさいよ!」とか言うものの扶美は完全に萎縮してしまってはっきりと伝えることが出来ないときてる。
で、それがまた相手の誤解を深める。
堂々巡りだ

助けの手は唐突に現れた。
「お嬢ちゃん。
 なーにやってるかな、探したぞ」
相手は意外にも、時之明。
「あら、話し中でしたか。
 すいません、ちと約束事があるので急な用事じゃないのでしたら、これお借りしたいのですけど、よろしいですか?」
あいも変わらず人畜無害そうな笑みを浮かべている。
が、扶美にはちょっとだけその笑みが天使のものに見えた。
「急な用事なら代わってお話お聞きしますけど」
「ふ、ふん。まあいいわ。
 今度抜け駆けしたらただじゃすまないからね!」
さすがに急に他人が出てきてばつが悪かったのだろう、とっとと捨て台詞を残していってしまう。

そして、その場に残される扶美と明。
「う・・・・」
安心したためか、涙が出そうになる。

−ほら、大人は泣かない−

入学式当日の明の言葉が不意に思い出された。
ぐっと涙をこらえる。

「時之、ようって何ですぅ?」
精一杯強がって見せた。


#扶美から、明へ
99年06月29日:19時27分30秒
「そして変わらないあたしとあなた」 / みだれかわ枕
(一人称単数)
 
 
 悪くない、かな?
 なあんて思って、ポーズをとったその瞬間。
「悪くないだろう?」
 
 びっく〜ん!
 
 し、心臓に悪いッ!
 あたしが振り向くと、もうそこにあいつはいなかった。
 いつの間にかあたしと鏡の間に立っている。
「人は変わるよ。身体も変わるし、内面も変わる。
 昔に比べてこまちが軽く感じたように
 昔なら似合わなかった物が似合うようになる」
「か、軽いって……」
 別に体重のこと言いたいわけじゃないってのは、分かる。
 頭では分かってんだけど……
 何か、とても恥ずかしい台詞を聞くんじゃないかって予感がして、誤魔化そうとする。
「だから試しもしないで決めつけるのはやめよう、こまち。
 それは損しているのと同じだし新しい発見にも出会えない。
 ……少なくとも今回はそうだっただろう?」
 こ、これは……恥ずかしい台詞だわ。
 むちゃくちゃ恥ずかしい。
 こんな台詞言えるなんて、さすが……
 変なこと言ってんじゃないわよって、氷室の頭を叩こうと思った、そのとき。
 
 氷室は、笑った。
 
 あ……
 わ、わ、わ。
 な、なんで。顔が……火照る……
 別に、単に、ただ、氷室が鏡越しに、笑っただけじゃない。
 あたしに向かって……
 
 どきどきどきどきどきどき
 
「聖さんもそう思いませんか?」
「そぉねぇ。決め付けは良くないわねぇ。そのサクラ、よく似合ってると思うわぁ」
 
 どっき〜ん!
 
「か、母さん、いつの間にッ!?」
「ついさっきよぉ。寂しいから、こまちちゃんのところに遊びに来たのぉ♪」
「さ、寂しいって……」
 わかんないッ!
 氷室のこともわかんないけど、この母親が世界で一番わかんないッ!
「ご飯が出来たしぃ、なんか食べる? まこと君も良かったらどぉぞ。
 せっかくだから、面白いお話も聞かせてあげるわねぇ。
 わたしとぉ、聡さん……お父さんが、結婚した頃のお話ぃ♪」
 
 で、あたしと氷室は母さんに連行されるようにして、下へ降りていった。
 このとき母さんが話してくれたのは、ちょっと意外なお話だったんだけど、それはまあ、あたしのノートに書き留めておくことにしよ。
 
 
 こまち。
 
 ★ ★ ★
 
『このときの話』というのは、要するに聖さんと聡(影が薄いですが、こまちの父親です)の馴れ初めという、非常に恥ずかしいストーリーです(笑)
 ただの眼鏡屋さんをしている聡と五ヶ国語を自在に操りながらボケボケの聖さん、この二人がどーして結婚するに至ったのか……
 乞う御期待ッ(笑)
99年06月29日:18時35分48秒
/ 月夢
「はーて、なんだったかな?」
 一歩、二歩、散歩・・・もとい三歩ほどもどって見直すとあからさまに人気のない校舎裏にちょうど消えていく4人の女生徒が窓越しに見えた。
「うーーん、どこかでみたようなあのサイズは………グレイじゃないとするとやっぱりあれなんだろうなあ」
 国防総省の人間もこんなところにはやってこないだろう。
 しばし考えた後、窓を開けると明はひょいと外に出る、ちゃんと靴ぐらい履き替えるように。
「時間最優先」
 誰にともなく言い訳すると人影が消えたほうに走っていって校舎の影からこっそりと覗く。
(ああ、やっぱりお嬢ちゃんか、なーにやってんのかね、あんま友好的じゃなさそうだけど)
 そのままの姿勢で耳を傾ける……までもなく明らかに上級生と思われる3人組のほうは大分気持ちがたかぶっているのかはっきりと聞き取れる声で話してくれる、対する扶美の声は良く聞き取れない。
(人に文句言うときは元気なんだがねえ………つっても無理か)
 からかいはするが悪意のない明と今では状況が違う。
 そんな悪意というか一方的な敵意を向ける3人組の文句を明はしばらく黙って聞く、最初のほうは感情むき出しでなにが言いたいのかいまいち要領がつかめなかったが、しばらく聞いていると状況がはっきりしてくる。
(つまり………なんだ………ああ馬鹿らし)
 帰っちゃろうかと思うぐらい馬鹿らしい話である、ようは単に嫉妬である、しかも身勝手な。
(文句つけんなら白石君にでもつけた方がよっぽどいいぞ)
 花見のことを思い出しつつ、そんなことを考える、教えてやろうかなどとも思うがさすがにやばそうだと思ってそれは一時据え置く。
(しかし、どうすっかね………こういう時に限って保護者いないしなあ……こんな美味しいシーンにもったいない)
 扶美とは短い付き合いだが、常に護衛というか保護者というか番犬というか、そういう人物がいることは明も良く知っている、が今日に限ってはその人物がいない。
(クラスでもきいときゃよかったな)
 やろーには極力興味ない明はクラスも知らなければ名前も知らない、扶美が呼んでいたことはあるのだがすっかり忘れた。
 なにはともあれいないものはしょうがない今から探しにまわっているわけにも行かない、まだ手は出ていないが正直時間の問題のような気がする。
 さて、ここで選択肢、
 1番ほっとく
 2番見捨てる
 3番僕はなにも見なかった
 ……………………………
(…………4番だな…)
 頑張れ男の子。
(といっても相手がなあ、僕のテリトリーの外と言っても曲がりなりにも女性だしなあ)
 やろーならはり倒して終わりでもいいのだが、
(ああいう性格ねじ曲がったのは女性と認めないと言うのも考え方の一つだけど、あんま手を挙げたくないしな……いっそ藤寺さんでも呼んでこようかな)
 シンプルだが効果的ではある問題は今すぐここに藤寺さんを召喚できるわけじゃないと言うこと。
(その場をしのぐか、誤解をはらすか……後者がベストだろうけど、お嬢ちゃんに期待するのは無理か)
 完全に押し切られている、ちゃんと事情を話して間違いであることがはっきりすれば相手も退くかもしれないがそれができないようだ。不当な弾圧と理不尽な扱いになれている明との差だろう。
(僕にできることはせいぜい場の仕切り直しぐらいか)
 一時的な時間稼ぎにしかならないが気持ちを落ち着かせてきちんと説明をし直す余裕ぐらいは生まれるだろう。
(となるととっとと片づけちゃいますか)
 即断即決、明は一歩下がると軽く息を吸い、さも今来たかのような表情をして顔を出す。
「お嬢ちゃん」
 軽く手を挙げて何気なさそうに明が近づく。
「なーにやってるかな、探したぞ」
 それから今気づいたかのように女生徒たちのほうに軽く目を向け、
「あら、話し中でしたか」
 軽く会釈して平然と近づくと扶美の手を取る。
「すいません、ちと約束事があるので急な用事じゃないのでしたら、これお借りしたいのですけど、よろしいですか?」
 にこにこと人畜無害そうな顔をして明が言う。
「急な用事なら代わってお話お聞きしますけど」
99年06月29日:07時38分26秒
扶美・受難の日 / RWAK
「なんだっけな?なんかひっかかるものがあったような?」
時之明がちらりと見たもの、それは実は3人組のお姉様方(笑) に連行される爾来扶美であった。

なぜ、扶美が連行されたのか。話は朝へと遡る。
朝、姉より少し遅れて登校していると不意に後ろから呼び止められた。
「扶美ちゃん?」
呼び止めたのは忍の姉の優である。
忍の家に遊びに行く真希についていって、何度か会ったことがある。
「ふみ?浅月さんのおねーさん。扶美に何か用ですぅ?」
「あのね、忍がお弁当忘れちゃったの。
 それで今から届けに行くところだったんだけど、扶美ちゃん代わりに忍に届けてもらえる?」
「ふみ?いいですぅ!」
にこにこしながら引き受ける扶美。
そして・・・・・

「何?あのお子様!
 忍様にお弁当手渡ししてる!」
「抜け駆けよ!」
「キィー!許せない!!」
朝錬中堂々と渡したものだから、しっかりと忍FCの方々の顰蹙を買ってしまったのであった(笑)

これがまあ、連行されるに至った経緯である(^^;
99年06月27日:21時12分34秒
変わっていく君と僕 / ジョーカー
 「悪くないだろう?」
 
 誠一郎の後ろから響く。だが鏡に彼は映らない。
 彼は洗面所を出たところの壁に寄り掛かって言葉を繋げる。
  
 「僕の審美眼は確かだよ。それにね…」
 
 くすりと笑って身体を入れ替え洗面所を覗き込む。
 こまちの前の鏡に誠一郎の姿が映る。
 
 「人は変わるよ。身体も変わるし、内面も変わる。昔に比べてこまちが軽く感じたように
 昔なら似合わなかった物が似合うようになる」
 
 鏡に映る表情は微笑、声は至極真剣な物。
 
 「だから試しもしないで決めつけるのはやめよう、こまち。それは損しているのと同じだし
 新しい発見にも出会えない。…少なくとも今回はそうだっただろう?」
 
 誠一郎は笑った。片目を瞑り愛嬌たっぷりに。
 その顔がふいと横を向く。
 
 「聖さんもそう思いませんか?」
 
 誠一郎  こまち、聖に向かって
 
 そですね。もうそろそろで終わるでしょう。巧く行けば見舞いもできるかな?
99年06月27日:18時30分43秒
「鏡のない国のこまち」 / みだれかわ枕
(一人称単数)
 
 
「にゃあ」
「ほらジュリアもそう言ってる」
 
「ね、ねこに分かるもんですか」
 目の前の猫にいってやる。
 そしたらジュリアは不満そうに、
「にゃぁあ」
 と鳴いた。
 
 似合うんだろうか、本当に?
 でも、普段からあたし、Accessoriesって、使わない。
 こんな時に、たまたまつけたって、焼き妬き歯……ん? 違うや、なんていうんだっけ?
 とにかく、似合うわけ、ない……
 
#どうやら『焼き付け刃』と言いたいらしい。
 
 似合うわけ、ないじゃない……
 ――こまちはこういうこと滅多にしない――けどたまには良い物だよ。
 ……本気?
 本気で氷室は、そう言ってるわけ?
 ……
 そうなのかな。
 似合うから、氷室はこんな事、したの?
 ……
 ……
 
「は、はんっ! 似合うわけ、ないじゃない! Do not tease me!(からかわないで!)」
 
 そう叫んで、あたし、部屋を飛び出して……
 ……で、洗面所に駆けてった。
 あたしの部屋、鏡ないもの。
 
 で、鏡の前に立つと。
 ……
 あ、何か自分の顔見るのって、久しぶり。
 歯を磨いたり、髪を梳かしたりって、鏡なくても出来るもんね。
 三つ編みも、長年の経験のおかげで、ばっちり。
 こうやって鏡の前に立つの、必要ないもの。
 着飾る必要、ないんだから。あたし。
 無駄なことは、しない。
 
 鏡の中のあたしは、たしかに桜の小枝を髪に挿していた。
 ……
 うーん。これが氷室のいう、フーリュー?
 似合ってる、のかな、これ……
 首を傾げて、角度を変えてみる。
 また別の角度に。
 Winkなんかもしちゃったりして。
 ……
 悪くない、かな?
 
 
 こまち。
 
 ★ ★ ★
 
 もう少しで花見の後始末、終わりかな。
 このあとは、夏ですか。
 梅雨時にミニイベント起こそうかな。
 
 こまちに北町商店街の福引きが当たるんです。
 映画(あまあまのラブストーリ)ペア一組ご招待券(笑)。
 さあて、誰を誘いましょうか?(にやり)
99年06月27日:00時12分24秒
「…難儀な少女によく似合う」 / ジョーカー
 「似合うんだから良いじゃないか」
 
 笑みを浮かべて彼は言う。
 
 「こまちはこういうこと滅多にしない―」
 
 と言うかしない。
 
 「―けどたまには良い物だよ」
 
 肩に上っているジュリアを掴んで胸元に抱きかかえる。
 
 「取り敢えず否定する前に鏡でも使って確かめてみると良い。よく似合ってるから」
 
 誠一郎に合わせたようにジュリアが鳴く。
 
 「にゃあ」
 
 「ほらジュリアもそう言ってる」
 
 首を掴み、こまちの前に突き出すとジュリアはだらんとしたままで
 
 「にゃあ」
 
 とまた鳴いた。
 
 誠一郎(&ジュリア)  こまちに向かって
 
 どうも巧く繋げられず、短い台詞のやり取りでカバーします。
 すいません。
99年06月26日:03時12分34秒
Op.W:東雲はあかく燃えている / Dr.李
 雀の鳴き声がまばらに聞こえはじめる、ひんやりとした朝もやの中を少女が走る。
 
 ジョギングにしては相当なペースだ。
 少女は、この街の中央を流れる河までくると、一息つくように軽くペースを落とした。
 河原に降りる。
 やや遠目に、元気なお年寄りたちがゲートボールに興じている様子が見える。
 少女は、離れたところで立ち止まり、息を整えた。
 
 しばらく軽く目を閉じ、精神を統一する。
 息を吐きながらゆっくりと瞼を開くと同時に、軽く、流れるように左の正拳を突き出す。
 ついで右の正拳。ゆっくりとリズミカルに、蹴りを放ち、突きを打つ。
 
 一通り型を終えたのだろう、少女は軽く柔軟体操をすると、河原の斜面をジグザグに走りながらまた、来た道を戻りはじめた。
 
 太陽が昇りはじめ、雲を赤く染めつつあった。
99年06月24日:14時31分10秒
明(学校) / 月夢
「ふにゃああああ」
 明はだれていた、休み明けなのだからしょうがないかもしれないがそれにしてもだれていた。
「休みのほうが憑かれた・・・・・もとい疲れたような」
 学校では半分寝倒しているのだからいつものことのような気もするがそれでも普段よりだるそうにする。
「だるいーつかれるーかったるいーじゅぎょうわかんないー」
 最後は関係ない。
「ああああ、ふにゃあああああ」
 端から見てうっとおしいぐらいである。
「ああ、もう・・・なんか冷たいものでも買ってくるか」
 やっぱりけだるそうにふらふらと立ち上がるとやっぱりふらふらと明が歩き出す。ああ、うっとおしい。
「ほっとけ」
 まあほっとくとしても、とにかく教室を出て明は自販機へと歩き出す、いっそこのまま春の風に吹かれてどこか旅に出ようかなどとも思わず考える。
「あーあ、どーすっかね、ほんと屋上でも行こうかなあ・・・」
 やる気のなさを全身で表現しながら明はふらふらふらふらと校舎内を歩いていく、
「ん?あれ?」
 何か視界の片隅に見慣れた存在を見たような気がなきにしもあらず。
「なんだっけな?なんかひっかかるものがあったような?」
 
 
 ということで誰か引っかかってください(笑)。
 
99年06月24日:02時42分11秒
「桜の花は……」 / みだれかわ枕

(三人称単数)
 
 
 桜の花は、こまちの銅色の髪に、意外と似合っていた。
 花びらと髪がとけ込むようになっている。
 
「フーリュー? よくわかんないわ、そういうの」
 ため息を盛大につきながら、こまちは
「なにつけたのよ、あんた」
 彼女には、自分のアクセサリーをその目で確かめるすべがなかった。
 せいぜい手触りを確かめるぐらいである。
「ん……木の枝?」
 そして、柔らかい感触。
「む、虫ッ!? ……じゃないわね。花?」
 ここに至り、こまちの脳裏で、一つの答えが出た。
「フーリューって……あんた、桜の枝、ヘアバンド……かんざし? みたいにヒトの髪にささないでくれる?」
 
 こまちから、誠一郎。
 
 ★ ★ ★
 
 む、難しい展開ッ!(笑)
99年06月23日:02時32分47秒
Op:W「暗雲と光明」/麻摘敬一 / SYN
「なに? 田畑君が怪我を?」
 昼休みの職員室である。
 陸上部顧問、麻摘敬一の前には陸上部の女子、二年生の姿があった。
「ええ。この間の休みの日に自転車でコケたらしいんですよ。そのとき、捻ったらしくて」
 
〈まいったな……〉
 大会は、来週の日曜だ。
 問題の田畑君――田畑葉子という――は一年生。スポーツ栄えし西中よりきたる短距離走の選手。
 大会と言っても、一年生にとっては高校へ上がってすぐである。中学の時の記録と大した違いが出るわけでもないので、勝ちを狙いに行く部門でもない。大体、“顔合わせ”といった面が強い。
 件の田畑女史、煌輝西高校陸上部、女子短距離走の選手なのだが、まぁ……補欠選手とどっこいのタイムである。それに、すでに述べたように、今大会で好成績を出しても、誉れにはならない。どうせ秋の大会ではどうなるかわからないし、一般的に見ても“中学生の時の貯金”としか見られないだろう。
 
「…………」
 しばし沈思黙考する麻摘。
〈森野若葉君って中学二年の時に、うち(陸上部女子短距離走)のトップクラスのタイム、出してたよな? ……非公式だけど〉
 不意に思い浮かぶ少女の顔。
〈一年のブランク……っても、田畑君よりは速そうだよな? 怪我も完治してるみたいだし〉
 漫画的に描写するなら『頭の上に豆電球が灯った』というシーンだろう。
 麻摘に田畑葉子のことを報告しに来た部員はイヤ〜な予感がした。
 何せ相手は『最終教師の弟子』といわれる男だ。本人は気付いて無くとも、突拍子もないことを思いつくことがある。
――難しい顔をして考えこんでいた顧問が、だんだんと明るい表情へ変わってゆく――
〈また、妙なこと考えたのかなぁ〉
 という感想を抱いても、しかたのないことであろう。
 
「うん、わかった。田畑君が怪我ならしょうがない。代わりの選手は僕が考えておくから、田畑君には早く怪我を治すように言っておいてくれ」
 わりとヤバイモノを目撃していた女子部員は一礼して立ち去ろうとした。そこへまた麻摘の声が掛かり、足を止める。
「え〜っと、それから……浅月君に来るようにいっておいてくれないか? やり投げの浅月君ね」
 
 不幸にも二つの指令を受け取らされた女子部員、2−Aへ向かう廊下を歩きながら麻摘の言葉に引っかかりを感じていた。
 何故、“補欠から繰り上げる”ではなくて“代わりの選手は”“考えておく”という言い方をしたのだろう?
〈……まさか、人さらい?!〉
 さすがに馬鹿げた発想だと思ったのだろう。軽く頭を振り、現実世界に戻ったフリをする。
 もう2−Aに着いてしまった。
「忍〜、麻摘先生が職員室で『話がある』っていってたよ〜」
 次は、田畑葉子か……
麻摘より、忍へ
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 さて、花見が一応、公式的には終わったことになっているんで、とりあえず作戦展開。
 花見の日以降の話です。大体火曜日か、水曜日。都合によりけり、ですね。
 
 えーっと、麻摘先生が忍に言うことは以下の通りです。
 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  以上をふまえて、森野若葉に今大会への参加を要請してきて欲しい。
 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 ここまで忍が知っていることにしてかまいません。すぐさま若葉へのアクションに入っていいです。
 若葉の専門としていた競技は、短・中距離(100〜400m)だそうです。
 
 なお、本作戦に関しては題名の頭に「Op:W」と入れておいてください。
「Operation WAKABA」の略です(笑)
99年06月23日:02時02分34秒
家達家、花見の夜 /斜六 / SYN
 静月と若葉を森野家に送り届けたのちのこと。
 誰もいない家へ帰り、今日撮った数少ないフィルムを現像して、風呂へ入り、夕食を適当に作り、それを食べ、その片づけをしてしまうと、やることが無くなった。
 斜六は部屋のベッドに寝転がり、昔撮ったネガを眺めている。それに写っているのは色の反転した森野若葉。小さく写るゼッケンは二年生のものだ。
 しばしその姿勢のまま斜六は動かなかった。
 ふと、追憶にひたっている自分に気付き、苦笑しながらネガをファイルに戻す。
「なにを今さら……」
 斜六の部屋の明かりが落ちた。
斜六、部屋にて
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 たいしたかきこみじゃぁありゃぁせん。
 でも、いちおう伏線のつもり。
 んでもって因縁ロールします。
「感情:若葉に対する思いやり:中級」を心力で。(コロコロ)……4つ。
 現在、ときP:25 失恋ゲージ:58。
99年06月22日:22時45分20秒
天羅万象掛け合い:暴走編 LOG 015 / sf
 天羅万象掛け合い:暴走編 LOG 015として1999年05月17日から1999年06月21日までのログを切り出しました。
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