TRPGな一言:1998年08月分


目次


1998/08/01:TRPGは内輪で遊ぶゲーム

正直なところ内輪であれば、ゲームで記述されないような常識・物理法則・事実・お約束といった、暗黙の了解を用いいることができます。そして、暗黙の了解があれば、PCの現状やルールで記述されない行動の難易度や行動の結果起きるできごとの予測・得失(つまりリスク計算)などが行えるために、単純な戦闘ゲーム(ふつうのゲームシステムはこれ以上を提供していない……とくに内輪で遊ぶための同人ルールなんかはね)以上の、すぐれて高度なゲームを、ルールで規定されていなくても楽しむことができるわけです。

TRPGは内輪で遊ぶためのゲーム……だよなあというのが、現状の思いです。

しかしまあ、もちっと一般に遊べるようにしたいわけではありますが。

1998/08/02:達成感とバランス

カタルシスというか、プレイヤーにとっての達成感と、ゲームバランスの間の勘案ってのは、色々と難しいなぁ……。うーむ……。

1998/08/03:物語は結果としてできる……のか

TRPGとは、物語が生成されるゲームではあるけど、いまんところ物語をつくるゲームとはいえないわな。少なくともゲーム性をもって物語を構築するというものとは違うわけで……。

そこんところで齟齬が起こるってのは、どうしたもんだろ。

1998/08/04:ひとつのルールでいろんなスタイルが遊べとしまう

ゲームデザイン能力があれば、どのルールでもそのまま色々なプレイスタイルで遊べるように改造するなりしてひとつのルールでも遊べてしまう。ってのが原因なのかな。

どのルールにも向き不向き、やりやすいことと出来ないことなんてのはあるわけだけど……。それを無視してひとつのルール固執することになるってのは。

1998/08/05:ジレンマ構造による最適手段の排除

最適解をゲームマスターが用意した場合。最適行動が読めてしまう場合には、それゲームにならんわけで。三目並べで最適手順を知っている場合と同様に、ゲームでなくて作業にしかならないわけですな。

それを解決しようとしても……。

ゲーム性を創出するための最少の手段だと思われるジレンマ構造、つまりあちらを立てればこちらがたたずといった状況の提供にも、問題はあるしね。完全なるバランスをとって、どの選択をとっても結果が同じであるならば選択に意味はないし、差があるなら最適行動が取りうるわけだし。そもそも最良の手段というものがありえないってのには、達成感との相性の悪さってものもあるしなぁ……。

1998/08/06:TRPGルールのシミュレーション性

TRPGに過度にシミュレーション性を期待すること自体が根本的に間違っているわけだよな。ふつうの人間が手間に思わない程度の手数では、再現性を歌ったところで、プレイヤーに錯覚を感じさせるための道具でしかないわけで。

細かい表現によってそれらしく錯覚させるというのは悪くない手ではあるけど、あくまでゲーム的に簡略化されてゲームバランス的に調整されたものでしかなく、現実の事象、たとえば訓練や経験との関係とか実力の程度とか物理的な限界とかを、正確に表現したようなモノでも何でもないわけで。それがゲーム的なデフォルメってものなわけだ。

……でも、キャラクタープレイの支援としての世界の原理を記述したルールであれば……ゲーム性を無視してやれば、少しは現実(もしくは架空の法則)に忠実に近づけやすくなる……わけだったりするわけかのう。

1998/08/07:経験点は報奨に過ぎない

経験点による成長は、現実的でない、変だ、自然成長ルールと整合していない……うんぬんという話は良くありますが、経験点は人間の成長を表現することを目的としたシステムではありませんよね。基本的に。

しょせんは経験・成長システムなんて達成感を出すためのゲーム上の小道具かつ報奨手段であると割り切ると、分かり易くなるのかも。報奨金とかと同じわけですな。

1998/08/08:ランダムイベント生成による崩壊

ゲームマスターが楽をするためのランダムイベントジェネレータなのだが、シナリオを進行させようとする上では大変にやっかいである。予定外の不利益が発生してゲームが進めなくなってしまうとか(駆けだし相手にワンダリングで敵対的なドラゴンとかね)、逆に遭遇してほしい希現象に出くわせないとか。

別にシナリオにこだわるなよ、ってのがプレイヤーの言い分なのかも知れんが、それではゲームとして用意してきたものがだいなしになるわけで。さらにいえば、ダイス目に翻弄されているだけでは、ゲームマスターとしての楽しみってものもねぇ。翻弄されたあとの回復作業はたしかに挑戦しがいのある課題ではあるけど。

対策……もしくは対応としては、壊れてもリカバリーできるようにシナリオを組、ランダムイベントの破壊力を限定するといった準備時点での正攻法があるけど……。それが無理なら、その場でゲーム性を回復させるというマスターの能力を酷使する対策にしたり、壊れたままノリで突っ走って対策を放棄したりするあたりになるのだろうかね。最後のってわりとありがちかも。

1998/08/09:遊ぶ機会がなくてTRPGを離れた人々

高校時代に数回ソードワールドを遊びました。またやりたいけど、なかなか仲間が集まるような時間が作れません。その渇きをリプレイで癒しています。ってな人って、けっこう多いのだよな。

一般のメーリングリストや直メールとかでTRPG.NETってのを見て、なにか書いてくる人のうち、半数くらいはこのパターンだったりして。

やはりこう、遊ぶ機会の問題ってのは難儀よのう。

1998/08/10:世界観のルール的記述

ゲームシステムが世界観を表現するための仕掛けを記述する能力があれば、色々と面白いのでしょう。今の多くのルールでは判定手順なり表なりデータなりで表現しているわけですが、だれしもそこから世界観を読み取れるものでもないみたいで。

そのためにも世界観の正体、その機能というやつを研究しないとなぁ。

……まあ、世界観を表現するためのルールが理解出来なかったり、データから世界観を体感できないという問題はたいして変らんかね。

1998/08/11:汎用ルールは万能ルールではない

汎用ルールを万能ルールとはき違えている人間が多いようである。ってまあ、デザイナー側でもついつい勘違いしちゃうこともあるわけではありますが。

汎用システムにどんなものごとでも再現できるようなゲームシステムを期待するのはあきらかに間違い、過剰期待というべきものですよね。汎用ルールといったところで大半は行為判定ルールの方法を共用する程度のものが多いわけですし。

もしもそうでなく複数の世界・複数のジャンルを記述してデータを共用する能力があったとしても( GURPSみたいにね)、特定の切り口で世界をモデリングしていることには違いないわけで、そのモデリングの方針とそぐわない世界は表現できない、もしくは表現しようとしてもうまく動作しにくい……と。人間レベルの精密戦闘を試行したシステムで超人を表現しようとしたりとかするのは、色々と困難があってあたりまえなわけで。

で……この過剰な期待が汎用ルールの利用において極めて大きな問題を産んでいるのかな。汎用ルールなのだから頑張れば現実を正確に表現できる……と勘違いしてしまうと、現実とずれがあるからどーのとか、向かない世界を表現しようとして失敗するとか、とあるキャラクターが表現できなくて不満だとか。気持ちはわからんでもないけど、汎用という言葉に惑わされすぎなんでないかな……。

1998/08/12:情景描写の資料

体験したことのない情景を適切に描写するためには、体験してみるかその情景について書いたものを読み漁るというのが定番なわけではありますが……。

そのあたりについて、徹底して使いやすくまとめたサプリメントみたいなのがあると便利でしょうねぇ。どー書けばいいのかわからんけど。

1998/08/13:テストの点がだせる能力表記

具体的数値を算出するための判定の問題。

たとえばテストで70点が取れる実力だとして。各問題の正答率が70%として全問題のチェックをするのは、問題数が多ければ悪くない方法です。しかし、一発で点数を出すのはどうするべきかな。

百分率のスキル制であればスキルを得点の基本値として、問題数とスキルの数値から分散だして正規分布っぽくばらつかせるという手もあるけど、ばらつかせるあたりで色々と難儀ですね。全部専用の判定方法と専用の能力表記を用意してあればともかく……。これが2D6の対抗ロールを基本的判定系として採用しているルールなんかだと、ばらつきが大きすぎてますます難儀なんですよねえ。

まあテストの問題の難度とか学力の水準とか色々考えると、点数がすこんと出てくるような方法を考えるのはますます絶望的になるのだけど……。やはりこう、どこかで簡略化するなりせんといかんわけで……。テストの点数を出すことでなにがやりたいのか、という問題になるのかねぇ……。

1998/08/14:冒険記録用紙としてのキャラクターシート

キャラクターシートの冒険の記録用紙としての機能の拡大は面白いかも。まあ、一セッションで一シートを使いつぶすような、プレイレポートシートの変種みたいなものを想定してます。

単なるデータの記載とプレイの円滑化のための必要情報の掲載だけではなく、プレイ中に発生した内容について記載することで、キャラクターの置かれた状況や、出くわしたこと、受けた被害や得た利益を具体的にイメージしやすくするわけです。

具体的に目に見える形で記録していくことによって、数値や口頭の表現だけでは理解できない・理解しずらい現在のPCの状況について明確化できるかも、というのを期待しとります。これは具体的表現を持つゲームシステムであればあまり問題ないわけだけど、抽象度が高い場合には、参加者によって確定された状況表現を文書としてなりなんなりの形で固定するのは有用ではなかろうかというわけです。

問題は、プレイ中に記録作業が入ることでテンポが悪くなったり集中できなくなるという可能性ですね。そのあたりは分量とのバランスかな。

1998/08/15:初心者向けのTRPGの難しさ

ゲームとしてはなにができるのか良くわからなくてゲームにならない。創作としては思い通りに行かないので不満が溜まる。ルールが多いととっつきづらい。時間がかかるのでたいへんだし、やってみて面白くなければ不幸じゃないかということで遊んでみない。

……ってわけでまあ、ほんとの意味で初心者向けのTRPGってのは、なかなか難しいねぇ。

1998/08/16:ゲームマスターの楽しみは

ゲームを構築するのを楽しむというゲームマスターのスタイルでは、どっちかってとゲームを楽しむよりも反応を楽しむという感じになっちゃうこともあるわけで。これだとゲームマスターは狭い意味でのゲームはしていない、ということになるのかも知れない。

……ゲームを楽しむプレイヤーとゲームを提供するゲームマスターって構図だと、楽しみかたも必要になる素養も別物になってしまい、ゲームマスターとプレイヤーの乖離ってのが起こりやすいのかもねぇ。などと考えてみたりもしないではない。

1998/08/17:戦闘オプションを工夫するゲーム

スカッと敵を倒すために、事前に徹底して工夫するゲーム……としてTRPGに必要なのは、ルール的複雑さ……になるのかなぁ。結局。

工夫した、異常に偏った能力を駆使して、敵をごつんと倒してしまうようなものを想定してます。当然ですが、逆にこちらも弱点を突かれるとあっけなく終わるというかんじで。

これが楽しめるようにするには、情報収集で敵の弱点や得意とする対抗方法などを調査しておき、それに対抗できるような計画を準備・開発して、練りにねって対処するわけでしょうか。

ゲームマスター側が工夫を凝らしてゲームとしてシナリオ・ダンジョンを構築し、手加減なしの全力でPCをたたきつぶそうとする……ようなゲームは、こういうものをやりたいんだろうか。

弱点を見いだす部分までゲームとして、敵側が徹底して情報を隠そうとするならゲームとして成立しそうですが……そのためには、情報収集の筋道をゲームマスター提供するようなものでなくて、能動的に……たとえば威力偵察とかで分かるとかいったようなものを、ルール上公正に処理してもらわんと面白くないのかな。とすれば、ゲームの運営管理者と敵は分離したほうがよいような気がする……うーむ、それってPC対立ゲームとして整理したほうが良いのかな。

1998/08/18:ルールの差異をプレイスタイルが隠す

ルールが違ったら遊びかたが違うべき……なのだろうけど。ルールごとの差違が、プレイスタイルで覆い隠されてしまいがちなのがTRPGの強みかつ問題ではありますね……。

1998/08/19:行動結果の時間的変容

行動の結果として社会的・物理的影響を表現できたとしても。時間とともにその成果が変化してしまう――たとえば風化してなくなったり、記憶からなくなったりする――ような時間的変化を、ルールでどう記述したものか。時間を単位時間で区切って各単位時間ごとに処理するか、一定単位時間でさっくりと変ってしまう事にするか。他に手はあるのかな?

どちらにせよ、ルールにおける時間の取り扱いというものは、色々と頭の痛いところですね。

1998/08/20:キャラクター性を組み立てるための道具

キャラクター性を組み立てるための道具としてのキャラクターの個性のルール表現について。

キャラクターの価値観も考慮した、行動の利害得失をプレイヤーが検討できるようなデータを提供し、最終的に利害得失のとんとんな選択肢が並立したときにはキャラクターの価値観を推定してプレイヤーが選ぶことができるようにするといいのかなぁと思ってるわけですが……。

キャラクターの直感的な把握と自在な運用を求める人には限界の設定が不満になり、ゲーム的処理や自分の知識を前提として行動する人には抽象化による精細さの不足が不満になり……とならんでもないのだよな。

1998/08/21:冒険の成果としての人間関係のルール的記述

現在ルール的にはあまり表現されていないような冒険による利益というか権益としての、コネのような過去の人間関係などについても、しっかりとルール的に記載して冒険の評価として呈示すれば、ゲーム的トリックである経験値による評価は不要になるのではなかろうか。冒険で得た利益という意味では、こっちのほうが意味があるし、天井ができにくいし。

1998/08/22コンセプトは読み取れるのか

ルールブックを読んでコンセプトを読み込める人間なんてのは、ルールを理解できる人間のうちのごく一部に過ぎない。そしてルールを理解できる人間でさえ、実はけっこう少なかったり……。

なんて考えてるとどうしようもないので、読みやすいルール、分かり易いルール、使いやすいルールの書きかたをなんとかするしかないわな。

1998/08/23:特定状況専業サプリメント

チャットでもでましたけど、たとえば夜間襲撃サプリメントとかいって夜間襲撃の全貌とゲームマスター・プレイヤー双方のノウハウ、シナリオとか道具類とかをまとめたような、特定状況についての突っ込んだサプリメントなんかあると楽しそうですね。

1998/08/24:PCのもつ問題解決の機能

問題解決としてキャラクターの持つ機能(プリーストの治癒呪文とか、シーフの鍵開けとかに代表さけれるけど)を期待していると、プレイヤーがその機能を使わなかったり使うことを思いつかなかったりした場合に悲しいことになる。……というのは古典的問題ではありますが……。

役割分担ってプレイヤー間の分担に役にたつけど、マスターサイドで誘導するとプレイヤーの考える余地もなくなるのだよなあ。だからといってPCの機能を使わないで進められるようにするのは本末転倒だしね。

1998/08/25:PCの過去の現在への関与

PCの全人格的データやら過去の経緯やら所持品やら人間関係やらを、きっちと記述していたら、それは読み切れない・使い切れないものになりますよね。しかし、過去の記録というかPCの生きたあかしとしての、過去の記録ってのは、できればゲームデータとして保持したいわけで。

そこでまあ、一般には過去のできごとを経験値なり報酬なりとして抽象化して表現しているわけですが……他にも手はないものかな。

たとえば、シナリオごとに関係する側面だけを切り出して、そのシナリオでの使用できる能力を全能力の一側面だけに限ってしまうとか。切り出されたもの以外については、どうしても必要になったらヒーローポイントみたいなものを使用して取り寄せることができる……とするとかね。

1998/08/26:プレイヤーによる課題構築

プレイヤーが課題を組み立ててPCが頑張ってこなす……というプレイヤーによるシナリオの構築ってのを、もちっとうまくゲームとして取り入れることができるようにならないかなぁ。

1998/08/27:相対評価と絶対的効果のすれちがい

いまさらながら、相対評価に基づく戦闘……というか対抗判定をメインに置いたシステムにとって、絶対的な具体的結果を出すというのは色々とやっかいだなぁ。と再認識させられとります。

1998/08/28:世界設定の使い捨て

多次元解釈なりで使い捨てできる設定ってのは、楽でいいよな。たしかに。はなやかーにぶっ壊すってのは、たまにやるとスカッとするのかも知れん。

1998/08/29:世界設定の共有困難

世界設定の共有、という問題はややこしいね。ゲームシステム上で有効な部分だけ考えるというものにすれば明確でわりと共有しやすいんだけど……実際には、ねぇ……。

不足部分を知識や推定で補ったり、自分の常識をもとにルールを追加したりとしていくと、どんどん共有できなくなったゃう。しかし、だからといって、それをしないわけにもいかない。ソードワールドの雑談所のほうで問題になっているのは、そのあいまいな部分の共有についてなのかな。

うーむ、いっそどのみち共有できないものであるという全体に立って、スコンと解決できるような世界設定なりルールを用意してしまう……ってのはこの場合には解決策にはならんか。

1998/08/30:イニシアチブとは先制攻撃権に有らず

イニシアチブを握るとは決して先制攻撃ができるというものではなく、場の主導権を握り、自分の行動の自由度を確保して敵の行動の自由度を狭め、結果として不利な状況にもっていくということだそうで。

……が、イニシアチブルールというと先攻・後攻を決めるルールであるという勘違いというか、誤認ができてますよね。私も昔そうだったけど。ターン制であればまあ、それも悪くない(先に攻撃したほうがゲームシステム上有利になる)ことは多いけど。ほかにももっと面白い手はあるとは思う。

1998/08/31:専用判定の重要性

汎用判定一本槍のTRPGの時代というものがあった。しかし、今後は明確な努力目標と予測可能性に支持されたリスクの検討という選択肢を提供するための、シチェーション別のルールを明確に提供するゲームの重要性を意識すべきではなかろうか。

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