軍光一のPBMへの案内状


目次


日刊TRPG総合ニュースメール 語り部日報の短期集中連載として連載された記事です。メイルゲーム/PBM(Play By Mail)などと呼ばれる郵便によるTRPGのようなものの入門記事となっています。

連載筆者のサイト: Antique Library

0.PBMへの案内

PBM(Play by Mail)というものがある。PBMはよく、郵便でするTRPGと説明される。実際、TRPGとの共通点も多い。

その共通点として、参加者は世界を共有する、言葉を使って物語を追体験する、参加者は架空のキャラクターを作ってそれを通じて行動する、ゲームマスマターという審判兼描写役がいることなどがある。

しかし、TRPGを遊んでいる人でも、PBMを知っている人は少ない。更に、知っていたとしてもその知識が古かったり、偏っていたりすることも多い。

適切な案内書がないことが、その原因のひとつではあろう。各PBM会社はスターティングマニュアルや情報誌を発行しているが、 それを読むのはPBMに参加している人間だけである。

そのような背景もあり、非才の身であるが、わたしなりに PBMの入門記事を書いてみたい。

PBM の紹介であると同時に、TRPGを違う視点から見つめなおしてみる機会になるかもしれない。

1.PBMを遊ぶ手順

PBM(Play by Mail)というものをご存知だろうか? PBMはメールゲームとも言われ、郵便を媒体としたゲームの総称である。元来は郵便を使って、将棋やチェスの差し手を送りあうというものだった。

その中で、このたびはTRPGによく似た小説型PBMを紹介しよう。

小説型PBMでは、PBM会社がいわばTRPGでいうところのゲームマスターの役を担当し、ゲームの舞台となる世界やシナリオを提供する。

これに対して参加者はプレイヤーとして、その参加者が自分で使うキャラクターを作成し、このキャラクターを通じて行動する。

具体的に見ていくと、まずキャラクターを登録すると、PBM 会社からそのキャラクターや、他のプレイヤーのキャラクターが登場する小説が郵便で送られてくる。以下この小説のことをリアクションと呼ぶ。なお、形式としては小説のほかに機械処理の数字、漫画などの形式のものもある。

プレイヤーはこのリアクションを読みこみ、キャラクターを取り巻く環境や、キャラクターの状況を把握する。その上で次回キャラクターに取らせたい行動を考える。以下このキャラクターに取らせる行動のことををアクションと呼ぶ。そしてアクションをアクションシートに記入し、PBM会社に郵便で送る。

この際に、他のプレイヤーと郵便などを通じて連絡を取り、意見や情報を交換をしたり、アクションで協力したりもできる。このことは交流と呼ばれる。

PBM会社にはゲームマスターという人物がいる。この人はアクションの判定役兼リアクションのライターである。ゲームマスターはプレイヤーが提出したアクションを受けて、キャラクターの行動を判定し、その結果をリアクションにまとめる。そしてこの作成されたリアクションが、また郵便でプレイヤーの元へと届くことになる。プレイヤーはまたその手元に届いたリアクションを見て、アクションをかける。

基本的にこの「リアクション→アクション」を一サイクルとして、一サイクル一ヶ月、全十サイクル前後を行うのが、今日では主流になっている。

つまり、TRPGで口頭で行っていたことを、郵便で代用したものだとも言える。

郵便を使うため、地方在住でも比較的遊びやすいのが嬉しいところである。

また、その他にTRPGと異なる特徴として、

などがあげられる。

また、これらに派生して様々な差異が存在することになる。次回以降はこれらのことについて見ていきたいと思う。

2.拘束時間を自分で決められるというメリット

PBMは基本的に一ヶ月単位で運営される。この一ヶ月というサイクルは、TRPGメインの人にとっては非常に長く感じるものだ。なにせTRPGではほぼ瞬時にレスポンスが返ってくるのだから。しかし、一ヶ月という長い時間をかけるため、キャラクターに取らせたい行動を考える時間がたっぷりある。

このことから、PBMはTRPGより遊ぶのに必要な時間が少ない、と時々言われる。しかし、わたしにはPBMはTRPGに比べて遊ぶのに必要な時間が少ないとは断言できない。

リアクションを読みなおし、交流の手紙を書き、交流により手に入れた他のリアクションを読みこみ(註1)、交流して意見交換をしたり作戦会議をし、アクションを書く。これはこれで結構時間がかかる。

ただ、この時間は自分の都合にあわせて使えばいい、ということに注目したい。

つまり、リアクションを読んだり手紙を書いたりするのは、締め切りに間に合えば休日だろうが、ちょっとあいた時間だろうが、はたまた仕事の最中や授業中だろうが(ちょっと問題あるだろう)かまわないということだ。

そういった都合がつけられないのはプライベ(註2)ぐらいのものか? あと、電話での交流も、相手の時間を拘束するという一面を持っている。

またその使う時間の量も、自分自身の都合にあわせて、自己裁量で調節が効く。交流量を加減すればいいのだ。

休みがなかなか他の人とあわなくて、ゲームができないけど、でも遊びたいという人にはちょっとお勧めかもしれない。

註1

PBMでは多くの場合シナリオは一本ではなく、数名から数十名のマスターがそれぞれ受け持った別シナリオを扱っている。それらは世界を共通しており、お互いに影響しあう。なお、この影響しあう度合いが強いことを、専門用語で「リンクが強い」と呼ぶ。

またひとりのマスターが複数のリアクションを書いていることもあり、同じマスターが書いているリアクションは関連性が強いことが多い。

註2

プライベートイベント、というのが正式名称らしい。

土日あたりに公共施設などを使って、実際にプレイヤー同士があって交流をする場所。ただし、ある程度都会でないとやってないし、首都圏のような大きなところでないとあまり参加人数もないようだ。参加すれば楽しいだろうが、参加できないからといってこれといって大問題だとは筆者は思わない。

補足

筆者は交流に対して、「絶対にしなければならないものではない。しかし、するとより楽しくなる」という意見を持っている。また、最近のPBM会社も、多くはこのようなゲームの作り方をしている。

しかし、昔は「とにかく時間と金をかければ面白い」「さまざまなプレイヤーと連絡を競い合い、情報を収集し、分析することによって事件の背後に隠された謎を解こうとしないと楽しめない」という作品が主流だった。そしてこのような傾向のゲームは今もなお残っている。このタイプのゲームに参加するときは、よっぽどの覚悟が必要だろう。

3.なぜ多人数を取り扱えるのか

PBMでは、一般的にひとつのリアクションに20-30人のキャラクターが参加している。

さて、TRPGで一卓に20-30人が参加している光景を想像して欲しい。

おそらくは、テーブルに人はつききれず、ゲームマスターの声もプレイヤーの声もお互いに届かず、参加者全員お互いにお互いがなにをやっているか分からず、ゲームとして崩壊するだろう。たとえそうでなくとも、声と態度の大きい人物に言われるままにダイスを振るだけの単調な作業にしかならないだろう。

これは、TRPGが口頭により進行するゲームだからだ。

PBM では、プレイヤー全員にキャラクターのおかれた状況を説明するものとして小説形式のリアクションが届き、プレイヤー全員がそのリアクションを読む。またプレイヤー同士で手紙を使って交流する。プレイヤー全員がアクションシートにキャラクターにとらせたい行動を書いて郵送し、ゲームマスターが届いたアクションシートを読んでキャラクターの行動を判定する、という形式をとっている。

よって、声が届かなかったり、お互いになにをやっているか分からないということはあまりない。だから、言語能力に問題があったり、郵便事故で郵便が届かなかったりするなどのことがない限り、ゲームが崩壊することはない。むろん、人間の処理能力には限界があるから、あまり大人数だとさばききれないが。

また、声と態度の大きい一握りの人物がはばをきかすということも、あまりない。

なぜなら、PBM ではひとりのキャラクターが一回のアクションでできる行動はひとつだけ、というルールがある。このことは「ダブルアクションの禁止」と呼ばれる。キャラクターに取らせたい複数の行動をアクションとして出すと、全体が不採用というペナルティがある。 また、他のプレイヤーに働きかけて

「〜しろ」と命令することも禁じられている。この命令行為のことを命令文と呼び、禁止されている。 もしあなたがPBMに参加していて、このような手紙を受け取ったら、それを一回り大きな封筒に入れて PBM会社に郵送するとよい。来月からその人の姿を見ることはないだろう。

PBM はゲームの運営面でこのような方法を使って、ひとつのリアクションで20-30人のキャラクターが参加することを可能にしている。

次回はシナリオ運営面に注目してみたい。補注:

今回書いたように、PBMには様々なルールやマナーがある。 これらは基本的に、スタートブックに記述してある。

4.PCがその他大勢にならないために問題提示を増やす

PBMでは、一般的にひとつのリアクションに20-30人のキャラクターが参加している。

さて、TRPGで一卓に20-30人が参加している光景を想像して欲しい。

シナリオはファンタジーTRPG典型ゴブリン退治である。村長は村を荒らすゴブリンを退治するために20人の冒険者を雇った。

20人の冒険者はゴブリンの住むダンジョンにもぐりこみ、 5人の戦士はゴブリンを斬り、5人の魔法使いは魔法を使い、5人の僧侶は傷を癒し、 5人の盗賊は罠を解除した。

そしてみごとゴブリンを退治した20人の冒険者は村長から……え? もういい?

そらそうだ。

なぜこれが面白くないか。

プレイヤーキャラクターとは「特別な存在」である。決してモブシーンの群集ではない。 しかし、物語上同じ役割を持つものが5人もいれば、それは立派なモブだ。しかもここまでくれば、20人のモブといってもいい。

なぜこうなるのか。

TRPGのシナリオとは、基本的に「問題解決」の流れを扱っている。なにかしらの解決すべき問題があり、プレイヤーキャラクターはゲームを通じてそれを解決する。そして、TRPGの環境において遊びやすい構図は、その解決すべき問題はひとつ、あるいはひとつの目的達成により複数の問題が解決される、というものだ。

ただし、それでは20-30人のキャラクターはさばけない。

よって、PBM ではひとつのリアクションで、複数の問題解決の流れを扱うのが普通になる。また、キャラクターの役割や職業も、これらに対応して多種多様なものが用意されることが多い。

例えば、ゴブリン退治を扱う場合でも、

このぐらい流れを用意しておけば、20-30人ぐらいはさばけるだろう。

そして、これらの流れは相互に影響しあう。そうすることにより、プレイヤーはより幅が広く、奥深い物語を楽しむことができる。

5.交流により物語を共有する魅力

人間というのは、強い印象を受けたことがあると、そのことを他の人に語りたがるものらしい。それはたとえば旅行の経験であったり、最近読んだ本であったり、スポーツの名場面であったりする。とにかく、それらを他の人に語って感動を分かち合おうとする。

ところが、語ったからといって、相手と感動を分かち合えるとは限らない。もちろんそれは言語表現の面での問題のこともある。とかく、感動して興奮した人の言葉は支離滅裂なものである。その他にも、聞き手の嗜好や知識にも依るところは大きい。

TRPGコンベンションに行ったことがある人は、そこで自分のキャラクターのすごさを熱く語っている人間を見たことがないだろうか? しかしどんなに一生懸命語っても、周囲の人間がそれを理解することはあまり多くない。

なぜ理解できないのか? その原因を、プレイの経験の伝達の方法と、興味の二点から見てみよう。

経験の伝達の方法について考えてみる。TRPGは会話で行うゲームであり、実際に参加してみないとわからない部分が多い。これにより、実際に体験していない人に言葉で説明することが難しくなっている。これは演劇やライブが、ビデオやTVなどで多くを表現できないことに似ているかもしれない。TRPGのセッションの経験は口頭ではなかなかうまく伝えにくいし、リプレイなど文字にしても、実際のプレイの経験の中の多くの要素が抜け落ちてしまう。

この点では PBMでは、ゲームの結果を小説の形にしたものであるリアクションを読んでもらうことにより、ゲームの体験を共有することが極めて容易にできる。プレイヤーに与えられる情報と全く同じ情報を、当事者でない人間もそのまま得ることができるからだ。このため、PBM では交流で、お互いのリアクションのコピーを交換し合うことがよくある。

次に、興味という点から考えてみる。TRPGでは実のところ、自分が参加していないセッションというのは、さして興味の沸くものではない。それがたとえ自分たちと同じシステムを使っていてもだ。TRPGの楽しみは、自ら主体的に参加するところによるものが大きい。もちろんこれはほかの参加型ゲームも同じようなものだろう。

その点からいうと、PBMも状況は似ている。自分のキャラクターと全く関わりのないリアクションというのは、読んでいてつまらないものだ。 ただ、PBMでは同じリアクションを受け取った人間が、 20-30人とTRPGに比べて比較的多いので、同じ興味を持ってくれる人の数が、ある程度多い。また、リアクションと関連性の強い別のリアクションも存在する。関連性が強いことを専門用語で「リンクが強い」というが、このリンクが強いリアクションは、比較的興味を持って読むことができる。

また、プレイヤーにとって、自分のキャラクターに他の人が関心をもってくれるのは嬉しいものである。比較的興味を持ちやすいキャラクターには、問題解決で同行しているキャラクターや、自分のキャラクターと深い関わりをもっているキャラクターがあげられる。

PBMにおいては、そのような条件の中で、交流相手を取捨選択して交流する。交流は主に手紙が主体となる。手紙とともに場合に応じて、自分の参加しているリアクションや、キャラクターシートのコピーを同封することもある。

このように、体験や感覚を共有しやすくするためには、いくつか条件がある。その条件を押さえつつ、交流の手を広げていくと楽だろう。

6.ジャンル論と、シナリオを自由選択するということ

ジャンルというものがある。ジャンルを辞書で引いてみると、「芸術、特に文芸作品の、形態上の区分」とのっている。もっとも、ジャンルの多くは整理のために便宜上つけられたもので、実際の作品には複雑な要素が絡み合うことが多い。作品の作者も、作品に様々な魅力を織り込もうとするのでなおさらである。

ジャンルに関する論争は、多くは好みの問題のようだ。好みの問題と書くと、どうでもように見えるかもしれない。 しかし、客観的に書かれた、「Aというジャンルの魅力は○○である」という文章を読むのは結構楽しい。また、主観的に書かれた、「わたしはAが好きだ。なぜなら○○〜」 という文章も、客観的な文章とまた切り口が違っていて興味深い。 「Aは絶対だ。これがわからない奴はばかだ」とか、 「Aを面白くないと言うということは、わたしに対する侮辱だ」とか言われると辟易だが。

また、作品の受け手にとって、好みは重要である。時として、「良い作品であることはわかるが、あまり面白くなかった」というケースがある。この場合質はよいのに、好みの問題で娯楽としては成り立っていない。不幸なめぐり合わせとしかいいようがない。このように、娯楽作品の場合、好みは重要となる。

さて、PBM会社の運営する商業PBMでは、シナリオやマスターはひとりではなく、複数であることが普通である。これは大人数の参加者をさばくためだけでなく、様々な好みに応じたゲームを提供するためでもある。

たとえば、戦闘を中心としたアクション活劇。

あるいは、宮廷を舞台とした政治陰謀劇。

もしくは、ほのぼの世界名作劇場。

その他にも、ギャグ百連発など。

これらのジャンルを、シナリオごとに分け、そのジャンルが得意なマスターが担当する。そして、プレイヤーもまたその傾向を取捨選択して、キャラクタ

ーの行き場所を決めることになる。

この選択を間違えると、ひどい目にあうことは確実である。ジャンルが異なると、キャラクターのあり方や、問題解決の方法などに微妙に差異が生じる。そのせいで、プレイヤーのやりたいことはうまくできないし、そのリアクションの雰囲気もくずれたり、ぎくしゃくしたりする。シリアスなシナリオで受けを狙った行動をしても、好評は得られない。逆に、ギャグなシナリオでシリアスな行動をしても、返って笑いの種になることがある。まあ、物事にはめりはりというものが必要なので、必ずしもそうとも限らないが。

ここで強調しておきたいのは、このジャンル選択は、プレイヤーの自己責任で行われる、ということだ。リアクションの雰囲気やゲームマスターのマスタリングが自分と合わないと感じたら、文句を言う前にシナリオの移動を考えるべきだろう。

PBM では毎月アクションをかける際に、自由にシナリオを移動できる。これはTRPGのコンベンションなどで、ゲーム中に「やっぱあっちの卓の方が面白そうだから、わたしあっちに行くね」という行動にでるのに近いかもしれない。システムや世界観が共通しているとはいえ、TRPGの常識から見ると、ものすごいことである。

結局、好みの問題については、供給側の PBM会社としては間口を広げて対応するしかない。自由意思で選択するのは、結局はプレイヤーである。だからプレイヤーは自分の好みを知り、やりたいことの目標を持ってキャラクターを作ったり、シナリオを選択すると良いだろう。

7.PBMにかかる費用

PBM会社のPBMは、商売として行なわれている。 つまり、PBMを運営して利潤を上げなければいけない。ルールブックの発行以外には営利の関係しないTRPGとは、事情が違うわけだ。

あなたははじめて PBMのパンフレットを取り寄せた際に、キャラクター登録料や月会費の額を高いと感じるかもしれない。しかし、経費を考えてみると、決してぼったくっているわけでもないのだ。

<参考資料>PBM運営コストの計算

こんな計算もあるが、現状ではどの会社もあまり利益はあがっていないようだ。それでも、ゲームを運営する経費をまかなう程度には利潤をあげている。ゲーム途中に会社がつぶれるとか、注文の品が届かないとか、社長が金を持って逃げるとか、そういう心配はまずないようだ。昔はあったらしいけどね。

それでもやはり高いと感じる人のために、PBM に必要な料金を分析して、その中から削れる項目を探してみることにしよう。

この他、交流費は各人の判断に任せたい。

なお、料金の額は会社によって異なるので、興味を持ったらパンフレットを請求して見比べてみるといいだろう。

ご利用は計画的に。

8.ゲームマスターの代筆や交代と、リアクション執筆遅延

時としてシナリオを移動したわけでもないのに、ゲームマスターが変更することがある。

これはプレイヤー側には非常にデメリットが多い。話の流れがおかしくなったり、話に矛盾が生じたり、キャラクターが別人のように描写されるようになったりする。

ゲームマスターが変更される場合、一時的な「代筆」と以後ずっと新しいゲームマスターが担当しつづける「交代」がある。まれにゲームマスターがいなくなり、シナリオが消滅する場合もある。ひどい話である。

なぜこのようなことが起こるのか?

代筆や交代の最大の理由は、ゲームマスターのリアクション執筆の遅延にある。

リアクション執筆の遅延のことを「遅刻」と呼ぶが、この遅刻が発生するとスケジュールが狂い、遅刻したリアクションは、他のゲームマスターが担当しているリアクションの話の展開から取り残されることになる。また、遅刻はリアクション作成遅延のお知らせの手紙や、リアクション発送の際の速達料金など、PBM会社に金銭的な負担をかける。

このため、会社は一時的な理由で遅刻が起きそうな場合には代筆を立てる。また、そのゲームマスターが、遅刻常習者の場合には、解雇してゲームマスタ

ーを交代するという強硬な措置も採られる。

代筆にしても交代にしても、新しくそのリアクションを担当するゲームマスターには、本当に限られた時間しかない。必然的にその質は著しく落ちる。

内容さえよければ、多少の遅刻は容認するという意見のプレイヤーもいる。しかし、最近の PBM会社は遅刻に対して、極めて厳しい姿勢を採るようになってきている。現在では遅刻したリアクションに対して、代筆や交代が行われる可能性は非常に大きい。

沈みゆく船に乗ることはない。遅刻常習者のゲームマスターはなるべく避けることだ。

9.PBM会社に対する、プレイヤーからのアプローチ

さて、ゲームをしていくうちに、トラブルがあったり要望があったりして、PBM 会社に対してコンタクトをとりたくなることがあるだろう。その場合はどうしたらよいのだろうか?

たとえば、会費を払ったのに正しく会費納入が行われていない、といった金銭トラブル。届くはずの郵便物が規定の期日までに届かない場合。また、ルールの記述があいまいで、ルールについて質問があるとき。

そんな時は、各会社のサポート係に電話するとよい。

また、FAXや E-mailで質問を受け付けている会社もある。電話がつながりにくいときは、こちらを利用してみるのもいいだろう。

また、リアクションの内容に関しては、ゲームマスターに対して、アクションに添えて私信として、感想や要望などを送るのもひとつの手だろう。名前や一人称のケアレスミスなどもこの方法で直してもらえる。

ただし、ゲームマスターから手紙の形式で返事が帰ってくることはない。ゲームマスターのコメント欄で、一言二言返答があるときもあるが、それもあまり多くはない。私信の内容をリアクションに反映させることこそが、ゲームマスターにとって最大の返事だろう。

それから、アクション封筒などに用意してあるアンケートを、きちんと記入して送ろう。 PBM会社だって面白いものを作りたい、あなたに楽しんで欲しいと思っているだろう。そしてそのための情報を常に欲しているはずだ。

それでも、どうしてもゲームがつまらない。肌に合わない。あるいはゲームマスターとうまくいかない、ということがある。

最終的には、つまらないならやめれば良い。電子掲示板でくだを巻くよりも、月会費の納入を止めてしまう方がよっぽど有効だ。また、現在自分のキャラクターの参加しているシナリオが面白くない、あるいはゲームマスターとうまがあわないという場合もある。その時は、交流者からもらったリアクションのシナリオのほうが面白く、そちらのゲームマスターが自分にあっていると思ったら、そちらに移動するのも手だ。

逆に今のシナリオが面白い、あるいは他にも面白そうなシナリオがある場合は、金と時間に余裕があればキャラクターを追加するのもいいだろう。同じリアクションに複数のキャラクターをいれると、同じリアクションが複数来て邪魔くさい。気に入ったゲームマスターの他のシナリオ、あるいは他のゲームマスターの気に入ったシナリオにキャラクターを参加させることをお勧めする。

とにかく、どうするか決めるのは あなた なのだ。

10.あとがき

さて、本連載もこれで終わり。一休みである。

振返ってみると、こうネガティブともポジティブともつかないことを、つらつらと書いてきた。 なんだかPBMを薦めているのか、止めているのかわからない文章になってしまったかもしれない。

ただ、わたし個人に関していうと、やはりPBMは面白いし魅力的だと思う。

その理由としては、

などがあげられる。

もちろんこれはわたしの私的な見解であり、別の人は別の魅力を見出していることだろう。

PBM では、ひとつのゲームにたくさんの人が参加している。そのひとりひとりが、自分なりの魅力を PBMに見出しているのだろう。 様々な人間がいて、様々なプレイスタイルがあり、様々なアプローチがある。だからこそ面白いのだ。

ただし、人間のやることだから、相性はある。嗜好や能力の問題もある。人間の問題もある。だからその対処法を色々と書いてみた。

本連載の内容は、わたしの個人的な経験と、電子掲示板上のやり取りなどを通じて培った知識を動員して書いた。 世間にはPBMの入門書は見当たらない中、試行錯誤で書くしかなく、非常に苦労した。本連載が読者のなんらかの肥やしとなれば、これ幸いである。

最後に、参考として各PBM会社のHPのURLを載せておく。

(株)テラネッツ
http://www.terranetz.com/
(株)M2
http://www.m-2.org/
(有)エーアイ・スクウェア
http://www.aisquare.co.jp/
(有)P.A.S.
http://www.pasweb.to/
(有)エルスウェア
http://www.elseware.co.jp/
(有)ホビー・データ
http://www.hobby-data.com/

参考文献(連載全体に関して)

ゆうせぶん 『ネットゲームがよくわかる本』
角川スニーカー・G文庫 1994年

ホームページ

郵便遊戯資料編纂室
http://www.medias.ne.jp/~manase/
EXPLORER-BBS
http://www.sumire.sakura.ne.jp/~ex/

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