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ゲルマン人の誕生の経緯から、ローマとの戦い、そして考古学的知見を駆使して古代ゲルマン人の生活までを扱っている、啓蒙書です。戦後ドイツで、ゲルマン民族にたいする誤解を解くことを目的として書かれた本だそうで、一般向けだから網羅的でやさしくて、かつ冷静な視点で当時の考古学の成果(沼地から発掘された遺骸の研究とか)を生かして書かれています。
副題は『「最初のドイツ人」生と闘いのミステリー』。1977年刊行の佑学社『謎の民族原始ゲルマン人の秘密』の改題改訂版でして、実は私は古いほうしか持ってないのですが、内容はたぶん新版でも本質的には変わらないでしょう。
ゲルマン民族の素性(巨人塚をつくっていた農民と、アーリア遊牧民の混血であること)から書き起こし、ローマとの戦いとその経緯とゲルマン人の実像を生活・習慣・思想などからとか交互に記述しています。
よく知られて居る北欧神話の体系なるものが実際には比較的最近になって組み立てられたものであるとか、蜂蜜酒の作り方などの古代ゲルマン族の生活習慣などについての記述が、大変興味深く読めました。当時の実際の身長、女性の立場、服装や髪型、信仰や住居などにも触れられていて、大変便利です。一般向けの読み物ですから、データを引くのには向いていませんけど……。