TRPG.NET > 書籍情報 > 読書案内 > 1998年 > 01月 >
副題として解明された凍結ミイラの謎、とあります。アルプスで発見された氷河のなかに閉じ込められていた遺体の発見と調査の記録です。アイスマン、もしくはエッツイ(Otzi)の名で呼ばれてる人です。
5000年前の死体が氷河から出てきたところが偶然にも発見され、さまざまな誤解をへて考古学研究のもとに送られるまでの過程は、未知の存在を発見した時の人々の対応を考えるうえで大変興味深いものでした。このぶんだと、たとえ人間型宇宙人の焼死体が発見されたとしても、発見者は殺人だと思い警察に連絡、警察は素早く急行して鑑識作業を行いつつ遺体を収容して、法医学者が調査することになるのでしょう。そして死体が宇宙人であることを理解する頃にはトップ屋たちが多数駆けつけ、いいかげんな証言をもとに想像力を働かせて、突飛で事実とはかけ離れたセンセーショナルな報道を開始しているにちがいありません。
とまあ、いきなりあまりTRPGむけっぽく無いものですが……。GURPSの石器時代サプリメントなら、この本の内容、そのまま活用できるかも知れません。
私は後半で断片的に示された、放牧民の生活について関心を持ちました。発見された遺体は旅装そのままで氷のなかに保存されていますので、当時の一般的な外出の姿を推定できるのが面白いところです。おき火をもち歩いていたあたりを見ると、火口箱よりもおき火を保存してもち歩くほうが良いよなあ、たしかに……と古典的ダンジョン行の装備のことを思い出せたりしました。
また、この遺体から推測された死の状況は、平和でも安全でもない過去の時代の生活に思いをめぐらせるきっかけとなってくれました。ちょっとしたことで普通の農民が山賊に化け、いつもの生活がおわりを告げる。そんなことはむかしは良くあったことなんですね。