[KATARIBE 32414] [HA23P]エピソード『旅立ちの夜に』

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Date: Sun, 9 Jan 2011 18:24:03 +0900
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蘇芳(Suo)です。
HA23に参入予定のキャラクターを動かしてみました。

あと、名前だけですが、れあなさんの「五月姫」を勝手にお借りしちゃいまし
たが(一か所だけですが)、大丈夫でしょうか?(汗

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エピソード『旅立ちの夜に』
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登場人物
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木田修二(きだ・しゅうじ):
  アンデッド(リッチの亜種)。自我が曖昧なままバイクで放浪している
  ところをイゾベルらに保護された。
  
「妖婆」イゾベル:
  吸血鬼の魔女。現在はクカラチャ族の協力者でもある(HA22より)。
  
  
登場人物(名前だけ)
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五月姫(さつきひめ):
  帝都守護の任に当たる

木口修也(きぐち・しゅうや):
  故人。1999年末頃に失踪したことになっている。
  木田修二の生前の姿である。
  
フェデリコ・マウロ・イ・ゴヤ、シンシア、クロフォード、佐上銀二:
  クカラチャ族の吸血鬼(HA21より)。

本文
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今を遡ること半年ほど前、2010年の晩夏〜初秋の頃。
吸血鬼の一氏族、クカラチャが所有する隠れ家、そのうちの1つ。
外に通じる出入り口の近くにて。

イゾベル:「行くのかい?」
木田  :「そうすることにした。……婆さん、世話になったよ」

1人は真っ黒いローブのフードを目深に被り、しわがれた声で話す老婆、
もう1人はジーンズとライダージャケットを身に着けた、20代前半くらい
に見える日本人の青年である。

明かりは無く、辺りは暗闇に包まれているが、暗闇でも真昼と変わらず物を
見ることの出来る二人には関係の無い。

ローブを纏った老婆、イゾベルは吸血鬼であり、ジーンズとライダージャケット
の青年、木田修二は魔力で動く屍、リッチの亜種。
いずれも、かつては人間であったが、今は人外の化物となった身である。

イゾベル:「そうかい。……陽の光には気をつけるんだよ」

保護されて間もない頃、木田は話もロクに聞かないまま、真昼間に外に出よう
としたことがあった。
結果、人間に偽装するために纏っていたエクトプラズムが剥がれおち、骸骨の
姿があらわになってしまい、ちょっとした騒動になってしまったのだった。

木田  :「うん。……本当、あの時は焦ったよ。あんなのはもう御免だ」
イゾベル:「そりゃこっちのセリフだよ、全く」

やれやれ、と呆れたようにイゾベルは首を振る。
苦笑すること暫し、ややあって。

木田  :「木口修也、それが、俺の……」

木田修二が動く死体となる以前の名前、それが木口修也と言うらしかった。
けれども、その名も経歴も、今の木田の記憶には無い。
木田の骨からDNAデータを抽出、解析し、調べ上げた末に分かったものだった。
記録によると、横浜辺りで暮らしていたらしいが、1999年末頃に消息を絶ってい
るという。

どの道、今の木田にとってはまったくの赤の他人と同然なのだが、2年前、保護
されるより前の記憶を持たない木田にとっては、自分が何者かを知るためのただ
一つと言っていい手がかりだった。

イゾベル:「らしいね。……けど、今のあんたにとっては、他人みたいなもの
     だろう?」
木田  :「それでも、木口修也がどんな人生を送って、何を切っ掛けに今の
     俺に――動く死体になったのかを知りたいんだ」
イゾベル:「あたしにゃあんたを止める権利は無い。勿論他の誰にもだ。けど
     ね、入れ込みすぎちゃ駄目だよ」
木田  :「…………」
イゾベル:「あんたがどこの誰だかは知らない。……けどね、今のあんたはあ
     たしやフェデリコ、銀二やシンシアにとっては家族みたいなものさ」
木田  :「……ありがとう。婆さん」

イゾベル:「辛気臭い顔をするでないよ。……そうだ、あんたに餞別だ」

ふと思いついたように、イゾベルが呟く。

木田  :「餞別?」
イゾベル:「あんたには、あたしの本当の顔を見せていなかったね」
木田  :「本当の顔……?」

木田は怪訝な顔で、イゾベルを見る。

イゾベル:「さぁ、よくご覧」

目深に下ろしていたフードに手をかけ、一息に外す。
あらわになった顔は、年の頃10代半ばくらい、長い真っ黒の髪に、同じく
真っ黒な瞳の少女だった。

木田  :「え?……えぇ!?」
イゾベル:「まったく、何を驚いてるんだい。いつも見ていただろうに」
木田  :「そ、そんな、だって」
イゾベル:「子供だましの幻術すら見破れなかったなんて、あんたもまだまだ
     だねぇ」
木田  :「…………」
イゾベル:「とにかく、久々に面白いモンが見れたね。やっぱり若い子は見て
     て飽きないねぇ」
木田  :「まったく……」

けらけらと笑う少女を前に、しばし呆れる木田だったが、ややあって。

イゾベル:「さぁ、お行き。あんたの相棒はお待ちかねだよ」
木田  :「ああ」

長く伸びたハンドルと車体の後ろ側にシートを配置された、いわゆるチョッパー
と呼ばれるタイプのバイク。
木田が放散する魔力を原動力として動作し、自我を持たずに放浪していた時に
は既に、このバイクに乗っていたという。

いずれにしても、今の木田にはその記憶すら無い。

イゾベル:「困ったら五月姫という人を頼るんだよ。あんたを最初に見つけた
     のも、その人だ」
     
木田  :「ああ、分かった。……ええと」
イゾベル:「気持ち悪いねぇ、あたしゃ只の婆さんだよ」

年端も行かない少女に対して婆さん呼ばわりしていいのか、とふと逡巡する。
だが、イゾベルはそれを察したのか、苦笑しながら返す。

イゾベル:「さぁ、お行き。良い月が出とるよ。走るには持ってこいの日だろ
     うね」

木田  :「ああ。……それじゃあ、また」

バイクに跨り、背中越しに片手を挙げる。
そのまま、音も無く開いたシャッターを潜り、バイクは外へと走って行く。

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時系列
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2010年晩夏〜初秋、クカラチャの隠れ家にて

解説
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アンデッドのバイク乗り、木田修二。自らの過去を知るための旅に出た。
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以上


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