[KATARIBE 32352] [HA06N] 小説『サイトォォォォ』

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Date: Tue, 20 Apr 2010 01:48:04 +0900
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[HA06N] 小説『サイトォォォォ』
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登場キャラクター
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 HA06C:NaturalBorn猛禽:箕備瀬梨真(みびぜ・りま)[猛禽][りまりま][リア充]
[北高][北女][実質御羽家の嫁][末っ子][妹]
	http://kataribe.com/HA/06/C/0717/
 HA06C:悪運の強い奴:御羽貞我(おわ・ていが)[オワタ][北高][北メン][役得]
	http://kataribe.com/HA/06/C/0718/


本文
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 四月になって、一緒に大学に通うようになって二週間ほどが過ぎて。少し落
ち着いてきたのが下旬になってからで、ゴールデンウィークが来週に迫ってい
た頃。大学の空気になじめるようになって、帰り道も浮つかずに歩けるように
なってきた。

「バタバタしちゃって、連休とか全然予定入れれなかったね」
「気にしなくていいって。近場でも遊べるところあるしさ」
「探しててくれたの?」
「ん、まあね」

 秀のやつが、と言いかけてなんとなく黙っておくことにした。

「そこ行きたい」
「ん、早いな決断するの」
「うん、ほら、春休みとかちょっと遠出したし、最近地元とかでちゃんと遊ん
でないなって思って」
「確かに……地元でちゃんと遊んでない、りまと」
「でしょ、毎週遠出したりとか出来ないし、そういうのって結構大事だと思うん
だ。なにげない日常が──っていうの」

 少しかしこまって、それでいて得意げな彼女の顔を見て、貞我は頭を軽く撫
でてやる。良いこと言ったつもりなのだろうけど、実際その通りだ。

「こんにちは!」

 そのまま寄り添って、肩を抱こうと、または肩を抱き寄せてもらおうとした
ところで、唐突に背後から声がした。さすがの不意打ちにビックリして、反射
的に振り返る二人。

 仁王立ち、というにはかなり身長と重みが足りていない幼稚園児がそこにい
た。

「リマコこんにちは!」
「え、あ、サイト」
「サイト?」

 下の名前で呼んでる、どういうことだ? 幼稚園児だけど!
 貞我の脳内で一瞬の葛藤があった。少しドロリとした薄暗い色が脳裏に浮かん
だ。

「あ、うん、近所の子なの。斉藤弥太郎っていうんだけど、サイトって呼べっ
ていうから」
「サイトです! で、そっちの人はリマコの彼氏?」

 幼稚園児は直球しか投げてこない。それに思えば、二人でいてそんな風に聞
かれたのは初めてかもしれない。

「うん、彼氏。貞我くんっていうの」
「テーガ? カッコイイ名前だな! よろしくな、テーガ」
「あ、ああよろしく……」

 浸っているところで呼び捨てされたが、幼稚園児なので大目に見ることにし
た。しかし、当の貞我の返事を待たずにサイトと呼ばれ名乗る幼稚園児は梨真に
問いかけていた。

「リマコはデート中?」
「ううん、一緒に帰ってるところ。デートは今度するよ」
「テーガやるじゃん」
「い、いやそれは普通に」
「どこいくんだよリマコ」
「内緒。っていうか決まってるけど、まだ教えてもらってないの。当日のお楽
しみみたいな感じ」
「サプライズだな、テーガやるじゃん」
「い、いやそれは……まあサプライズだけどさ」
「サイトはかずみちゃんとデートしないの?」
「誘ってんだけどあいつ恥ずかしがってさあ」

 また聞いてない。
 幼稚園児とはいえ、なんだかおもしろくないのは確かだ。幼稚園児とはいえ、
この短時間でこれほど振り回されているのだから。それに、相手が幼稚園児と
はいえ、近所の子とはいえ、梨真もあっさり言い過ぎなのでは……と。

「どんな風にデート誘ったの」
「おれんちこいよ!って」
「そしたらなんて?」
「うん、って言ったけどドタキャンされた」
「じゃあ、今度はサイトがかずみちゃんチに行くって言ったら?」
「えー、女の家に行くの?」
「かずみちゃんおとなしいからその方がまだ落ち着けるんじゃないかな」
「テーガどう思う?」
「い、いや……」

 さっき会ったばっかりの幼稚園児と、名前を今聞いたばかりの幼稚園児の人
間関係について相談されても。

「まあ聞いてみるかな、ダメダメってやつだよな」
「ダメもとね」
「ダメポ!」

 いきなり両手を振り上げるサイト。その手はしっかりと梨真のミニスカの裾
にかかっていて。
 人工的な春風にふわりと揺れ上がっていた。

「きゃ、こ、こらバカ何すんの!」
「リマコ今日もパンツエロイな!」
「!?」

 なぜだろう、幾度となくこんな光景に遭遇している気がする……そして今日
も。本人はもちろん、むしろ誰も知るよしはないが、貞我はそんな運命の下に
いるのだった。運命はともかく。

「テーガ見た? ちゃんと見た? 見えるようにやってやったんだぜガッ」

 不意打ちで、脳天にグーが落ちてくるところも、ちゃんと見た。サイトの頭
から湯気とも煙ともつかないものがゆらゆらと漂う幻も見た。

「ば、バカ! 今度やったら怒るって言ったよね!」
「え、うそ怒った? 照れんなよリマコ」
「こ、こら斉藤……サイト!」
「やっべー! テーガ照れんなよ! じゃあなリマコ、サンキューな!」

 頭を抱えて、梨真の後ろに回り込んで、そのままダッシュで逃げ去る。

「もー、ほんとにどうしようもないんだから……」

 左手でスカートの前を押さえて、右手はまだ打ち下ろしの構えのままで、逃
げ去る幼稚園児を目で追っている。
 今度は、本当の春風が吹いて、無防備な後ろ側を浮き上がらせたのだった。


時系列
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 四月中旬

解説
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 HA06lovecome: 二人の出先で男の園児が挨拶する
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