[KATARIBE 32350] [HA06N] 小説『喧嘩の後で』

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Date: Mon, 19 Apr 2010 23:59:52 +0900
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ゆーふぉです。

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小説『喧嘩の後で』
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登場人物
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香坂小雪(こうさか・こゆき)http://kataribe.com/HA/06/C/0849/
             :山猫温泉女将。

斎藤さん:事務員

本編
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 喧嘩の理由など、まったく些細なことであった。
 どちらかが謝ってしまえば済むことなのであるが、どうしても謝る気になれな
い時もある。
 強情と言ってしまえばそれまでだが、いつもなら謝ってくれるだろう、という
甘えも確かにあった。別に嫌いなわけではない、下に見ているわけでもない、そ
ういう信頼があるのに、そこに肩すかしを食らわされたような気がする。
 それが余計に腹立たしく感じられて、自分からは謝れなかった。
 わがままだというのも分かっている。自分にも非があるのも十分過ぎる程分
かっている。それでも謝って欲しいと思っている自分が居た。

「私だってね……」
 珍しくふくれっ面をして、香坂小雪は事務室にいた。機嫌が悪いときはその場
で決着を付けてしまうのがいつもの彼女であるが、どうも上手くいかなかったら
しい。さりとて、書類仕事を疎かにするわけでもなく、異様な早さで仕事は片付
けられていった。
 斎藤は当然ながら触らぬ神に祟りなしと、知らぬ存ぜぬを通している。
 その間にも加速度的に小雪の機嫌は悪くなっていった。
 いつもいつも、彼女の手際についてこれないのはあいつの方が悪い。どんくさ
いのだあいつは。そう、悪いのは向こう。そうだ悪いに違いない。今回だってそ
うだ。だから、だから私は謝りに来るのを待ってるのだ。
 たまにこちらが悪いときもあるかも知れないけど。でも、いつもなら……。
「そうよ、あいつが悪いのよっ!」
 乱暴に机から立ち上がる。椅子が抗議の悲鳴を上げた。
「休憩入ります!」
 それだけ斎藤に告げると、小雪は事務室を後にする。
「……なんで……私がっ!」

 自分自身の、真っ赤になった顔に彼女は気づいていなかった。
 結局の所、謝りに行かないといけないのは小雪である。そんなことは分かって
いた。馬鹿でも分かるのに、どうしてこんなに躊躇しているのか、そんな自分に
腹を立てて、それでも理性が謝れと絶叫している。
 違う、謝るんじゃない、とりあえず話し合えばいいんだ、話し合いに行くだけ
だ。と言い訳ばかりが頭に浮かぶ。
「仕方ないじゃないの!」
 誰に言うでもなく、いらいらを言葉に出し、そうして葛藤を奥に押し込んでし
まう。

 それからようやく、喧嘩の相手が居る扉へと手をかけた。

時系列と舞台
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2010年4月。生駒山、山猫温泉。

解説
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お題:親友と喧嘩したので困ってしまう

らぶこめって難しいです。

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