[KATARIBE 32343] [HA06N] 小説『ぴっ!』(第二稿)

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Date: Thu, 15 Apr 2010 23:48:40 +0900
From: Subject: [KATARIBE 32343] [HA06N] 小説『ぴっ!』(第二稿)
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ゆーふぉです。
先日MLで流したものを、アドバイスを受けて直してみました。

三十分一本勝負
お題「移動の不自由な足をひきずった鳥が突然ぶつかってきた」


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小説『ぴっ!』(第二稿)
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登場人物
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絹雲白華(きぬぐも・はくか):http://kataribe.com/HA/06/C/0842/
            元気少女。ボケ担当。どうやら天狗のハーフ

本編
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 吹利市内、木々は芽吹き、新緑の季節が近づきつつあった。
「ぴゃぁ!」
 そんな中、郊外の住宅地で絹雲白華が珍妙な声を上げたのには理由がある。
 その理由が小さくとも凛々しい音を響かせた。
「……ぴっ!」
 突然頭上に降りかかってきたその物体は、どうやらふっくらとした何かを遠慮
無く白華の頭に付けている。彼女自身はというと、頭上に突然降ってきた災厄が
未だに何か理解していない。
 何かもぞもぞと動いているのは分かる。多分動物。虫……にしては大きいから多
分違う……違って欲しい。ハ虫類とかウロコ系もちょっと……。
 結局堂々巡りの思考のあげく、怖々と手を頭の上に持っていき、そしてふわふ
わの何かを掴み上げると、目の前に持ってきた。
「……えーっと?」
 何かを理解するには少しばかり意味不明な物体である。
 白華は、毛玉っぽい何かから突き出た羽根らしき何かと対面することになっ
た。突き出した羽(?)が実に勇ましくぴこぴこと動いている。黄緑色とも茶色
とも取れる背中(?)と、ベージュのお腹(?)のコントラストが妙に可愛い。
「……ぴっ!」
 どうも向きが違うらしいと分かると、くるりと変えてやる。
 白華の目と、愛らしい何かの目が合った。数秒見つめ合ってようやく鳥だと分
かった。目の周りが真っ白に縁取られているのがまた綺麗である。
「どしたの?」
 聞いても当然誰も答えるわけでもなく。突然降ってきた客人をためつすがめつ
し、鱗に包まれた鳥足を気持ち悪そうに眺めたところで、理由に合点がいった。
 左の方の足が、不思議な方向に曲がっている。
「あらら……足が?」
 血が出ているわけでもなく、折れている風でもなく、指先まで元気に動かして
いるところを見ると、生まれつきらしい。
「……ぴっ!」
 鳥はふっくらした胸をさらに張って、自慢するかのように鳴いた。どうも、枝
か電線か何かを掴み損ねて、白華の頭上に落ちてきたらしい。
「大丈夫? 飛べるかな?」
 そのまま腕を伸ばして、右の手のひらの上に持ち上げてやると、ぱたぱたと器
用に羽根を羽ばたかせると、足が不安定な分のバランスを取り、そして……。
「おーおー、飛んだ飛んだ!」
 街路樹の枝の真ん中辺りに、仲間が居て、ひよひよとなにやらさえずり合って
いる。
 心配した仲間のお礼なのかどうなのか。そうして数匹の鳥たちがひとしきり何
かをささやき合っていた。白華も、嬉しそうにそれを眺めている。自然とほおが
揺るんだ。
 しかし。
『……ぴっ!』
 ふと、全ての鳥が白華を見つめた。
「……を?」
 つぶらな瞳が一斉にこちらを向いている。
「私?」
 つい、っと立ち位置をずらすと、あわせて小鳥たちの首が動いた。
 突然、バランスの悪い――つまり先ほど白華の頭上にいた――鳥が翼を広げる。
「ぴよひ! ひよひよりひよ!」
 器用に片足でバランスを取り、盛んに何かを喚いている。
 そして残りの鳥たちが、それに一斉に答えた。
『……ぴっひ!』
 何かこう、野生の何かが白華の奥で呼び覚まされる。時々呼び出されるそれ
は、いつも彼女に警告していた。
 とはいえ、毎度それが役に立った試しはない。
 なぜなら――
「えっとね。もしかしてね……何か誤解してない?」
 明らかに、視線の固定がヤバい。
 再度移動してみるが、やはりこちらをしっかりと向いている。いや、向いてい
るのではない。
 狙っている。
 ――そう、マズいと思ったときには、既に手遅れである。
 じり、と後ろに下がるのと、鳥たちが翼を大きく大きく広げるのが同時だった。
「なんで! あたしばっかりこんな目に!」
 突っつかれて、蹴爪で引っかかれて、とりあえず色々と後悔し、ああでも可愛
いからいいかなと自虐的に喜び、白華が涙目になって帰宅したのは、それから三
十分後であった。


時系列と舞台
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2010年4月。吹利市内にて。

解説
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中盤の白華が鳥と分からないのに鳥と書いてた部分。
最後の部分の書き足りないところ、その他を修正してみました。

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