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Date: Thu, 01 Apr 2010 23:30:48 +0900
From: Subject: [KATARIBE 32334] [HA06N] 小説『ふたを開けると跳ねるような子ヤモリのぬいぐるみが,入っていた』
To: kataribeML <kataribe-ml@trpg.net>
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ゆーふぉです。
三十分一本勝負（http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min）
懲りずにやってみました。
三十分一本勝負 お題「ふたを開けると跳ねるような子ヤモリのぬいぐるみが
入っていた」
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小説『ふたを開けると跳ねるような子ヤモリのぬいぐるみが
入っていた』
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登場人物
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絹雲白華（きぬぐも・はくか）
：元気少女。ボケ担当。http://kataribe.com/HA/06/C/0842/
本編
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安っぽいボール紙で出来た箱の中には、後ろ足で立ち、前足を上げ、今にも
飛びかかりそうな子ヤモリのぬいぐるみ。
センスの悪さが際立つアイテム――の筈であったが、ふたを開けたところで
絹雲白華（きぬぐも・はくか）の手は止まる。
学校帰り、商店街をぶらぶらと歩いているうちに、ふらりと入ったリサイク
ルショップの片隅に、それは置いてあった。
何年も何年も、客が手に取るのを待っていたのだろう。それを証明するかの
ように、中は少しカビくさいような、ホコリっぽいような臭いがする。そもそ
も、灰色の地味なボア生地はさわり心地は良いのだろうが、妙にリアルな模様
まで再現されていた。
そんな不気味な物体に、大きな大きな、セルロイド製の目玉がついていたの
だ。制作した本人はコミカルさを狙って付けたのかも知れないが、冗談のよう
な巨大さがかえって気持ち悪さを引き立てている。一瞬、目があった気がし
て、白華がたじろいだ拍子に、からからと乾いた音を立てて中に入っていた黒
目が動いた。
視線が両目とも明後日の方向を向き、更に怖い物体と化す。
しかし、不思議とそれを棚に戻す気になれず、暫くじっと見つめてから、よ
うやく彼女は口を動かした。
「……か…かわいい……？」
そうして自分でも首をかしげる。
「……かも？」
否。そのぬいぐるみについて百人に聞けば、百人がそう断じるほどの不気味
オーラが漂っている。
白華自身もぬいぐるみ（と呼ぶにはいささか妙な怨念すら感じられる）と目
があった瞬間はそう感じた。しかし、抗いがたい何かが彼女をそこに留めてい
た。
財布の中身と、付いていた値札を確認する。
「……買えちゃう……なあ？」
誰に問いかけるでもなく語尾を疑問形にした時、目の前の子いもりが肯いた
気がした。
「……まさかとは思うけど、変なの付いてないよね？」
ぬいぐるみは、天井と店の出口に向けた視線を動かさない。
白華の思考がぐるぐると回り出す。
夜な夜な動くとか、持つ人が呪われるとか、いやもうそれ以前にこれはキモ
いかも――いやいやでもこー、見つめてると……へんな……かわ……いい？
「うん、きっとかわいい」
一度だけ子いもりと目を合わせると、彼女の足はレジに向いていた。
後日、ぬいぐるみを見る度に、何で買ったのか後悔するのだが、やはり、じ
っと見つめると良いかもしれないと考え直し――
――未だに彼女の枕元の一番良い場所に、子いもりは鎮座している。
時系列と舞台
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2010年4月。商店街にて。
解説
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オチが付かなかったのが悔やまれる……。
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