[KATARIBE 32333] [HA06P]30 分一本勝負『食べ過ぎたので困っている女の中学生が指をぽきぽきと鳴らしている』

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Date: Thu,  1 Apr 2010 00:28:59 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32333] [HA06P]30 分一本勝負『食べ過ぎたので困っている女の中学生が指をぽきぽきと鳴らしている』
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2010年04月01日:00時28分59秒
Sub:[HA06P]30分一本勝負『食べ過ぎたので困っている女の中学生が指をぽきぽきと鳴らしている』:
From:月影れあな


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『食べ過ぎたので困っている女の中学生が指をぽきぽきと鳴らしている』
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本文
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 きっかけは、実に些細なことであった。つまるところ、食事における礼儀の
話だ。
「こんな笑い話がある」
 どんな話の流れだったかは覚えていないが、私はそういう風に切りだして言っ
た。
「中国には、満足してお腹いっぱいになったことを示すために、食事を少し残
す、という風習があるそうだ。
 ある中国人女性と国際結婚した日本人男性が、結婚した時期を皮切りに、ど
んどん太りだした。最初は幸せ太りだろうと見守っていた周囲の人間だが、体
重が100kgを超えるに至って、なにかおかしいと思い、男に訪ねた。
『きみは結婚してから急に太り始めが、いったいどうしたんだい?』
 すると男は困ったように笑って、
『女房が作る食事の量が多くてね。出されたものは食べるのが礼儀だから、無
理にでも食べてるんだけど、最近はもう身が持たないよ』
 つまり、男は食事は残さずに食べるのが礼儀だと思い、出されたものを全て
平らげていたが、女の方はそれを見て夫が満足していないと思い、量を増やし
続けた。結果、夫の食事量は増え続け、体重もどんどん増えていった、という
ことだ」
 少女は軽く首をひねって、こう答えた。
「世の中には変な風習もあるものですね。同じ状況になれば、わたくしも困っ
てしまうでしょうね。家では、出されたものは全て平らげるのが礼儀と躾けら
れましたから」
 この後、はにかむように笑いながら付け加えられたこの一言が無ければ、後
の悲劇は起こらなかったであろう。
「出された食事を残したことが無いのが、わたくしのささやかな自慢ですの」


「ちょっとした悪戯心だろう。そんな風に言われたら、誰だって思うことだ!
つまり、これは必然的な流れであって、私という個人に責任は無い!」
「で?」
 空になり、積み上げられた皿の柱を見て、思う。ああ、そういえばこんな風
景を見たことがある。ドラゴンボール(無印)の悟空の食事風景だ。昔はあの豪
快な食べっぷりに感激し、いつかこれほど自由に食事が出来たらとあこがれた
ものだった。
 しかし、現実は非常なもので、サイヤ人ではない私の胃袋には許容量という
ものがあり、現実にああいった食べ方をすることは不可能。と、今の今まで疑
いもせずそう思っていた。
 そう、今日というこの日までは。
 ああ、この積み上がった皿の山を見ても、いったい誰が信じてくれるだろう
か? つい1時間ほど前まで、この合計14人まで座れる長いテーブルが、たっ
た一人の夕食のために皿で埋め尽くされていたということを!
「つまりこれは偉業なんだよ、ローザ。少年の日に見た夢の欠片さ! 君は怒
るより誇るべきだ。だって、誰にも成し遂げられないことをやり遂げたんだか
ら!」
「言いたいことはそれだけかしら、ユウヤ?」
「ええと……」
「ごちそうさま、おいしかったわ」
 そう言って、彼女は立ちあがる。湧きあがる重圧。この感触を、私は知って
いる。
 かつて、北欧の王とも呼ばれる身の丈3メートル巨大吸血鬼と対面した時に
感じたのと同じものだ。あれは吸血鬼というより、ラオウだった。ぶっちゃけ、
今でもオウガかトロルの仲間だったんじゃないかと疑っているくらいだ。
 これは、圧倒的な存在に対する純粋な恐怖である。本能が、この場から逃げ
ろと叫んでいる。
 状況を冷静に分析する。相手は10歳も年下の、未だ未熟な吸血鬼。しかも、
大量の食事を平らげて、動くのもやっとのハズだ。逃げ足には自信があった、
逃げるだけならどうということは無い、ハズだ。
「おっと、仕事を思い出した。それじゃあ私はこれで」
「あら、食後のレディーの相手を勤めるのも、あなたの仕事でなくて、ユウ
ヤ?」
 影に沈もうとして、押し止められる。足元に絡みついたローザの影が私の影
を浸食したのだ。
 慌てて、身を蝙蝠に変え飛び上がる。そこに飛んできたのは、予期していた
かのような黒い旋風。ローザのマントがあり得ないほど大量の蝙蝠に姿を変え、
私の体を飲みこむ。
「げぐふッ」
 壁に叩きつけられ、そのままマントに戻った蝙蝠に身を縫いつけ、私の力は
マントに接した部分から抜け出ていく。
「ぬおう、なんじゃこりゃあッ!?」
「15年前、生まれたばかりの私には魔王と呼んで憚りないほどの強大な力があ
りました。けれどその力は幼い私には大きすぎて、自らの身を滅ぼしかねない
ものだった……そこで、母様が誂えて下さったのが、そのエナジードレインマ
ントですわ」
「なにその厨二設定、初耳なんですけど! 今考えたでしょ!?」
「食事はおいしかったわ、結夜。けど、あなたには少しレディーに対する配慮
に欠いていると思うの。あなたは知っています? レディーに対する配慮に欠
いた人間の取るべき道を」
「しゃ、謝罪でしょうか、サー」
「惜しいわ、半分合ってる」
 と、豪奢な銀色の神をかき上げて、吸血鬼のお嬢様はのたまった。
「死んで、謝罪ですわ」
 私は死んだ。スイーツ(笑)


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