[KATARIBE 32274] [PW01N]小説『セロガ族の創世神話』

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Date: Fri, 9 Oct 2009 00:17:17 +0900
From: Subject: [KATARIBE 32274] [PW01N]小説『セロガ族の創世神話』
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蘇芳です。
世界の成り立ちについてふと思いついたので、書いてみました。

ちなみに、これはセロガ族に語り継がれる創世神話ということで、別の一族では
まったく違う創世神話が伝えられているのかもしれません。

小説『セロガ族の創世神話』
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本文
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 遠い昔、世界には昼も夜も無く、ただ、乾いた大地だけが横たわっていた。

 時折、乾いた大地には、どこか別の場所から様々な物が流れてきたが、流れ
着いた物達は、誰に使われることも求められることも無く、ただ、乾いた大地
の上に存在し続けるだけだった。

 大地は自らの孤独を嘆き悲しみ、大きな慟哭の声を上げ続けたが、大地の嘆
きに応える者は世界のどこにもいなかった。

あるとき、乾いた大地に一人の男が流れ着いた。

男ははじめ、意識を失っていたが、大地が慟哭する声に目を覚ました。

 男は、乾いた大地の嘆き声に応えるために大声を張り上げたが、大地は男の
声に気付かず、嘆き続けた。

自らの声を大地に届けるために、男は声の届く場所まで旅をすることに決めた。

 旅の途中、窪地を歩いているとき、男は足元に透き通ったガラスの水盆が落
ちているのに気付き、拾い上げた。

 男が水盆を掲げると、水盆は目覚めて器の中から澄んだ水を止めどなく流れ
出させた。

 ガラスの水盆は母親のような優しげな声で男に語りかけ、自分と一緒になろ
うと提案した。

 男は旅を止め、ガラスの水盆と共に暮らそうと思ったが、大地が再び嘆き声
を上げたので旅を続けようと思い、水盆を旅に誘った。

 しかし水盆は自分の居た場所から離れるのを嫌がったため、男は一人で旅を
再会することになったが、別れ際、「母性」の感情に目覚めた水盆は、止めど
なく溢れる水で男が旅を続けられるようにすることを約束した。

 水盆から出た水は、見る間に窪地から溢れ、大地の裂け目を伝って低地に集
まった。

 男は高台に上り、水盆と暮らした窪地と窪地に繋がる大地の裂け目、そして
今や満々と水を湛える低地を振り返り、窪地を湖、大地の裂け目を河、深く水
を湛える広大な低地を海と名付けた。

 再び旅路に就いた男は、今度は黄金で出来た天球儀を見つけた。
 
 男は天球儀に、一緒に旅をしようと語りかけたが、「羞恥」の感情が起こっ
た天球儀は男の手から離れ、空高く飛び飛び上がり、それきり降りてこなくな
った。

 すると、太陽と月、そして数え切れないほどの星が空に現れた。

 天球儀は男の話も聞かずに逃げたことを詫び、昼は太陽で、夜は月で男の旅
路を照らすことを約束した。

 太陽と月の光は、男の進むべき道を指し示した。

 男は太陽と月が示す道を辿り、その途中で更に幾つかの道具を目覚めさせな
がら歩んでいった。

 やがて男は、後に世界の中心と呼ばれる場所に辿り着いた。
 
 男が世界の中心へと辿り着く頃には、大地は水と緑に覆われ、かつての乾い
た無残な姿ではなくなっていたが、慟哭の声は止むことはなかった。
 
 大地の慟哭を鎮めるため、男は幾度も呼ばわった。
 
 幾度目かの呼びかけが届いたのか、不意に、大地の嘆きの声が止み、辺り一
帯をかつてないほどの穏やかな静寂が満ちた。

 果たすべき役目を果たした男は疲れ果て、その場に倒れ込むように眠りに就
いた。

 どのくらい時間が経ったのか、男が目を覚ましたとき、男は自分すぐ側に一
人の女が佇んでいた。

 どこから来たのかと問う男に、しかし女は困ったように微笑むだけで、何も
答えなかった。

 男は女に、自分と一緒に暮らしてくれないかと問いかけた。
 
 女は男の提案を受け入れた。
 
 こうしてようやく、この世界は完成したのだった。
 
 
            ――癒し手の民、セロガ族に伝わる創世の神話より

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あとがき:

セロガ族に伝わる創世神話ということで書いてみましたが、もしかしたら他の
一族にも似たような話はあるかもしれませんね。

とりあえず、こんな感じで。 


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