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Date: Wed, 2 Sep 2009 00:02:39 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32263] [HA21N] 掌編群『大水の祓・ログ6』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20090901150239.8A9BD306805@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 32263
Web: http://kataribe.com/HA/21/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/32200/32263.html
2009年09月02日:00時02分39秒
Sub:[HA21N]掌編群『大水の祓・ログ6』 :
From:みぶろ
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掌編群『大水の祓・ログ6』
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登場人物
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鹿神真乃(かがみ・まの) :宗教結社照真教の教主。身体が弱い。
センミツ(――) :秘密結社M∴F∴Cのメンバー。
サンザシ(――) :秘密結社M∴F∴Cのメンバー。
贋金(――) :秘密結社M∴F∴Cのメンバー。
片桐壮平(かたぎり・そうへい):零課の刑事。真乃に関かわる事件を追う。
真越誠太郎(まこし・せいたろう):通報者。
日時
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入り乱れている。おおむね2008年秋から2009年夏まで。
本文
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<サンザシ>
「なんてことしてしまったんだ! 『これ』は真乃じゃない! 真乃なんかじ
ゃない!」
<予感>
片桐の胸ポケットの携帯が震えた。
「はい」
「……突然すみません、真越です」
「ああ、先生さんですか」
電話越しに聞こえる誠太郎の声には、どこか迷いが混ざっている。
「いえ、あの、まるで関係ないことなのかもしれませんが、ちょっと
気になることがありまして」
「ほう、なんでしょう」
今までの経験上、こういった『なんとなく気になる』という連絡
は無視できない。なんとなくという直感は時に、恐ろしいほど的確
に事実をついてくるからだ。
「中嶋さんの描いた、絵のことなんです。女の子の絵で……その、
なんというか」
「…………女の子、ね」
歯切れの悪い言葉、同時に脳裏を掠めた姿に目を細めた。
「どこか、不思議、というか……なんだかうまく言えないんですが、
神々しいような、しかし、どこかに禍々しさがあるような……その、
だからなんだというわけではなくて、ただ……」
「いえ、構いませんて。思ったままのことをおっしゃってくださいよ」
「はい……」
その次に続く言葉を、片桐はどこか予感していた。
「……『水』に関わる何かなのではないか、と」
少女、水、禍々しさ。
連鎖的に繋がる単語。
「詳しく聞かせてくれますか?あと、絵も見せていただきたい」
手にした煙草がじりじりと燃えていく。
「……はい」
「どうも、協力感謝します」
細く伸びた白い煙、赤く燻る火、じわじわと燻りながら灰色に
浸蝕されていく。まるで残り僅かな命を削り落としていくように。
「では、今度はこちらから連絡します。駅前辺りでよろしいですかの?」
「はい、わかりました」
携帯灰皿に捻りこむように煙草を消して、ひとつ、息をつく。
「さて、いくかのう」
ねっとりと熱気の蒸す夕暮れの街に歩き出した。
<異形の図>
白い紙にのたうつように描かれた『それ』は、一言で言うなら
悪夢のような化け物だった。
ただ、その中央に位置する場所には不似合いなほどに可愛らしい
少女の顔が描かれていた。
<センミツ>
「際限のない撤退戦を続けてきた我々です。撤退できる余地が増えたと考えれ
ばいい」
<贋金>
「わたいは『この』カガミさまでもいいと思う。前と同じに優しいよ」
解説
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サンザシ やってしまった。
予感 電話はいつも悪い知らせを告げる。
異形の図 狂人の絵が真実をえぐりだす。
センミツ 静かに狂っている。
贋金 彼女にとって真乃が人間であることは真乃の要件ではない。
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