[KATARIBE 32258] [HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ4』

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Date: Tue, 11 Aug 2009 19:59:31 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32258] [HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ4』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2009年08月11日:19時59分30秒
Sub:[HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ4』:
From:みぶろ


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掌編群『大水の祓・ログ4』 
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登場人物 
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 鹿神真乃(かがみ・まの)   :宗教結社照真教の教主。身体が弱い。
 ニンギョウ(――)      :秘密結社M∴F∴Cのメンバー。
 当麻漣(たいま・れん)    :フリーの退魔士。真乃に協力する。
 片桐壮平(かたぎり・そうへい):零課の刑事。真乃に関かわる事件を追う。 

日時
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 入り乱れている。おおむね2008年秋から2009年夏まで。

本文 
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<対話>
 いかにも慣れた仕草でポケットから煙草を取り出すのを見つめる。
反対の右腕は殆ど動かないようだった。
 器用に一本押し出して口にくわえるのを見計らって、ライターを
差し出す。
「どうも」
 赤く瞬く。
 お互い言葉にしない沈黙が、今の状況を何より雄弁に語っている。
「教団の追及のほうはな、最低限を除いて一線から退かせるよう上
が働きかけとる」
「穏健ですね」
「下手に動いてこれ以上ミイラを増やすわけにもいかんからのう」


<未来予想図>
「予知能力者には二種類あるということは知っているだろう」
「知ってますとも。当たる奴と外れる奴でしょう」
 ヤンキー座りで床柱の花入れをしげしげと見ながら、漣が返した。茶室の主
人はゆっくりとした所作で棗(なつめ)を取り出す。
「それは能力の多寡だろう。感覚型と運命型のことだよ」
「初めて聞きましたね。教えていただけますか、空穂(うつほ)先生」
「一般的な予知能力者のイメージは感覚型だ。まだ起こっていない事を『知覚
する』能力。感覚そのものが特殊な場合と、能力者を取り巻く時間が特殊な場
合にさらにわけられるが、その分類に大きな意味はない……ぼちぼちできるか
ら座りたまえ」
 空穂先生、と呼ばれた男は茶筅を使いながら続ける。漣は花入れに挿された
異界の花をみるのをやめ、座につく。
「これに対して運命型は何も知覚しない。自分の妄想した未来を実現するだけ
だ。その妄想を予知と呼んでいるにすぎない」
 男は相対して正座する漣の前に茶碗を滑らせた。
「仮にその未来が自分にとって望まないものとしても、『つい』思い描いてし
まうことはあるものだし、ご存知のとおり、予知はコントロールが難しい部類
の能力だからね」
「なるほど、外から見ただけではわからないが、内容は大違い――こいつみた
いに」
 漣は薄茶を飲み干し、片頬を上げながら茶碗を置く。畳の上の楽焼は汗をか
いていた。「アイスティーってありなんすか」
「暑い時分にはうれしいだろう。濃い目に入れて氷に注ぐだけだ。後に残らな
いよう氷の分量を見極めるためになんどか練習が必要だがな」
「形式にとらわれないオモテナシってやつですか」
「邪道な人間には邪道で十分ということだな」


<不死者>
「『死なない』のか『生き返る』のかは、大きな違いだよな。魔術的に生き返
る系のやつは面倒だが、リサーチさえしっかりしていれば簡単だ。まあ、当然
リサーチは難航を極めるがね。――死なない系のやつはさ、消耗戦になるから
嫌なんだが、俺なら確実に止めをさせるんで多分、得意分野と言うべきなんだ
ろうね。で、あんたは――」


<無魂>
 魂がないという状態とはどういうことか。
「なくて困るもんなんじゃろか」
「まあ、無事なら問題はないんですけどね」
「マスターキーをあずかってもらっとるっちゅーことかのう」
「安全といえば安全ですが……まあ」
 歯切れの悪い言葉。
「身体の感覚は変わりませんし、切ったら痛みますし、空腹も感じ
ます。ただ魅了や眷属化などは全く効きません、喰らうべき魂その
ものがここにありませんからね。逆に身体を求める虚ろな霊や澱み
にとっては格好の的ですが」
 だから、件の巫女さんにも魅了されないんですよ、と付け加える
のを聞きながら。
「なるほど」


<異形>
 まるでそれは長い時間水に漂っていたかのように、内にたっぷり
含んだ水で青白く染まっていた。
「聞いとらんぞ……なんじゃあ、こりゃ」
 毒づきながら即座に特殊警防を抜いた。
 そこに居るのは、歪に変形し、四肢の溶け落ちたもはや人の原型
を留めていない『何か』だった。


解説
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対話  ギリちゃん、漣と対話する。
未来予想図 マノマノの能力のひみつ。空穂先生は知り合いのまほーつかい。
不死者 <ニンギョウ>は死なない。
無魂  魅了対策。
異形  実験体が発見された。



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