[KATARIBE 32255] [HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ3』

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Date: Fri,  7 Aug 2009 00:36:33 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32255] [HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ3』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2009年08月07日:00時36分33秒
Sub:[HA21N] 掌編群:『大水の祓・ログ3』 :
From:みぶろ


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掌編群『大水の祓・ログ2』 
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登場人物 
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 鹿神真乃(かがみ・まの)   :宗教結社照真教の教主。身体が弱い。
 ニンギョウ(――)      :秘密結社M∴F∴Cのメンバー。
 当麻漣(たいま・れん)    :フリーの退魔士。真乃に協力する。
 片桐壮平(かたぎり・そうへい):零課の刑事。真乃に関かわる事件を追う。 

日時
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 入り乱れている。おおむね2008年秋から2009年夏まで。

本文 
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<夢鏡>
 霞川に増水。インドの話が新聞に大きく載る日。子どもたちが6人溺れる。
信者さんの子どもなの。助けられるよ、センミツ。


<廃人>
 じっと一点を見つめる目。
 あれから中嶋の目に正気の光が戻ることはなく、見舞いに訪れた
誠太郎の顔を見ることも、医師の問いかけに答えることもなかった。
「こんにちは、中嶋さん」
 返答はない。だがそれでも、まだ死んでいないことを確かめる
ように、誠太郎は声をかける。
 虚空を見つめる目。
 そして、時折、右手が痙攣するように動く。
 まるで何かをつかもうとするように。
「……どうぞ、中嶋さん」
 中嶋の胸に布をかけ、右手にインクを含ませた綿を握らせる。
傍らに置かれたスタンドに紙を挟んで固定し、適度に角度をつける。
 まるで水を得た魚のように、白い紙の上をのたくるように動く手。
おどろおどろしく描き出される黒インクの跡は、子供の落書きの
ようでありながら、どこか魂を揺さぶる『何か』があった。
 彼がまだ生かされている理由。それは彼が生み出す絵に価値が
あるからだ。

 のたうつような黒で描かれた絵は、一人の少女の姿を描いていた。


<霊威>
「この方の娘さんを家に帰しなさい」
 苦情が、増えた。以前はほとんど認めていなかった出家修行を奨励するよう
になってからだ。いつもなら、センミツが口八丁で追い返す(もしくは入信さ
せる)のだが、あいにく対行政調略で不在だった。
「本当に信仰しているなら、一旦家に帰したところで問題ないだろう。それと
も帰せないわけがあるのか。誘拐で告訴するぞ」
 元警官というその男は、入信者の伯父のようだった。口下手な<護法>がと
めるのも聞かず、奥へ向かっていく。
 ふいに、男が立ち尽くす。そこは、本殿だった。
 藤色の袴に翔鶴の打ち掛け。泉のような瞳。

「会う人ごとに疑う人生だったのですね」

 後ろにいる<護法>ですら膝が砕けそうな声だった。本殿の信者たちはみな
平伏している。
 凄みが、でた。楽屋でこそボケてはいたが、元々儀式のときなどのカリスマ
性には定評があった真乃だった。しかしいまや、神々しさに僅かな魔性が混じ
り、真乃に魅了されない人はいない。

「今を限りに終わりにしましょう」


<ミイラ取り>
 人並みはずれた、とは「ヒト」を踏み外しかけた者であるという。
「それで、連れ戻してくると言ったきり」
「はい……」
 片手で手帳を持ち、半ば予想していた通りの返答を書き留める。
「でも、あの人に限って、そんな怪しげな者達に騙されたりしません。
どう考えてもおかしいんです」
「どうか、落ち着いて。事実だけを話してくれませんかの」
「……おかしいんです、絶対」
 あの教団が今どんな状況に陥っているか、片桐も把握しかねている。

 わかることと言えば、もはやこの一件は普通の「ヒト」の手に
負えるものではなく、放っておけば取り返しのつかない破綻が訪れ
るということだけだった。


<右手>
 漣の右手は動かなくなってきた。皮膚の下を長虫がはいずるように、ときど
きひくついた。霊視できる者には、水死体の手のように見えたであろう。


<点火>
「白神さん、巫女が水を飲みました」


<追ヶ淵>
 三人で行って、帰ってこられるのは一人。
「アタシが行くよ」<鈍器>が言った。
「当麻の話じゃ、そこには『ヌシ』ってのがいるんでしょ。じゃあアタシが適任でしょ」


解説
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夢鏡  予知夢。
廃人  この世を見ていない。
霊威  カガミさまの威容。
ミイラ取り 調査中。
右手  代償。
点火  終焉の始まり。
追ヶ淵 水のありか。



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