[KATARIBE 32234] [HA06N] 小説『花華闇の鬼・1』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 12 Apr 2009 00:49:39 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32234] [HA06N] 小説『花華闇の鬼・1』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20090411154939.3E1D849DB02@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 32234

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/32200/32234.html

2009年04月12日:00時49分38秒
Sub:[HA06N]小説『花華闇の鬼・1』:
From:いー・あーる


ちうわけで、いー・あーるです。
こちらの話、書いてみました。

*********************************
小説『花華闇の鬼・1』
=====================
登場人物
--------
 小池国生(こいけ・くにお)
   :小池葬儀社社長。その正体は異界よりきたる白鬼。
 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
   :小池の親友、本宮尚久の三男。小池とは親戚以上に長く深い付き合い。

本文
----

 岡目八目という言葉は、やはりかなり真理である。


 温和。穏やか。
 それが小池社長の基本的第一印象である。妙な言い方だが、大概の人が、そ
う思うのだから『基本的』なのだろう。
 ただ、ついでに言うとそれは、鉄壁の『微笑』を伴っている。無論、怒る、
(というより叱る)ことはあるが、それもまた静かに、声を荒げることもなく
行われるほうが普通である。

 つまり。
 基本的に小池社長の表情の変化というのは判りにくい。
 ……が。

(悩み事でもあるのかな)

 子供時代、いや、赤ん坊の頃からずっと可愛がってくれた相手である。父親
が忙しい時期には、父よりも一緒に居たし、何より、幸久と同じ『視る』異能
を共有している相手である。
 だから。

(なんかあったかな)

 書類を読む顔、指示を出す表情。
 どこと言われると困るのだが。

 だから。
「なんか、あったんすか」
 そろそろ終了時間。皆がざわついている中、こそっと声をかけられて、小池
が目を上げる。不思議そうな顔に、また一段と声を低めて。
「えー……奥さんのことですか」

 奥さん、つまり六華とは……実のところ幸久のほうが付き合いが長い。気が
強くてはっきりとモノを申す、ついでに酒飲みの彼女は、幸久にとっては最も
恋愛からは遠い……ある意味では妹のような感覚の相手である。
(なんかそこらが)
 その、色恋沙汰に縁の全くなさそうな六華が、目の前のごくごく穏やかな紳
士の妻であるというのは、頭では理解しても、なかなか妙なものである。加え
てそれは、小池社長の『本性』にも関わることで。

「……ああ」
 少し驚いたような顔をした小池は、直ぐに穏やかな微笑を浮かべた。静かな、
周囲には聞こえない声で答える。
「ちょっと……妻のことが心配で」

 彼の本性が鬼であること。
 現在の、年を取った姿のほうが『仮』であり、本来は幸久と同じかそれより
若い程度の姿であること、は、ちゃんと幸久も知っている。
 知っては、いる。
 が。

(えーー……)
 
 自分の、親しい叔父のような相手が、自分の飲み友達もしくは妹のような相
手を『妻』と呼ぶのは。
(違和感が……)

「えーあー……ええと、そしたら」
 それでも流石に『岡目八目』である。多少きょどっていようが、こういう場
合には幸久は強い。
「今日は……あとは、俺たちでやっておきます。そんなに難しい仕事も入って
いないし」
 一緒に住みだして、まだ数ヶ月だったと思う。鬼と冬女。どちらもあやかし
で、少なくとも六華には、まともな戸籍も無い。だから結婚式も入籍もあるわ
けは無いけれども。
 何やら言いかけた小池の、言葉を制するように。
「もし何かあったら、連絡しますから。おやっさんは今日はもう、あがって下
さい」
 それでも数瞬、小池は断りそうに見えたが。
「……そう、ですね」
 最後にぽつりと呟くと、手元の書類を丁寧に重ねた。
「そうさせて、頂きましょう」
 呟いた表情が、一瞬曇る。確かに一瞬だけれども、それはもう、明白に。

(あーー)
 なんかどっかで見たぞ、と思ってしまって。
 幸久は一瞬がっくりと疲れる。
(父さん、かよ)

 結婚してから最後まで、愛妻家を貫いた父親と、どこかしら重なって。
 何だか溜息をついた幸久に苦笑しながら、小池は立ち上がった。

「あ……おやっさん」
「はい」
「あの、一体……奥さんは、何が」
 ああ、と、小池は呟いた。
「夢見が、ひどく悪いそうです」
「夢?」

 ええ、と、小池は軽く頷いた。
 その表情は元のとおり、ひどく穏やかなものだった。


時系列
------
 2009年2月中頃。

解説
----
 六華の、夢の話のその一。
 なんとなく……ゆっきーがおたおたしてるのがとても楽しい(ってオイ)
******************************

 てなわけで。
 全然自分のきゃらがいない辺りがアレですね(滝汗)
 一応、久志さんには、前もってチェックしてもらってます。
 有難うございました。

 てなわけで、ではでは。
  


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/32200/32234.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage