[KATARIBE 32087] [HA21P] 辿り辿られる足取り

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Date: Mon, 5 Jan 2009 23:55:08 +0900
From: Subject: [KATARIBE 32087] [HA21P] 辿り辿られる足取り
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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[HA21P] 辿り辿られる足取り
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登場人物
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HA21C:Generator:宮島友霞(みやじま・ゆか)[JC][水生成][地味][セミロング]
[黒髪]
    http://kataribe.com/HA/21/C/0113/
HA21C:ワータイガーの刑事さん:古賀猛(こが・たける)[獣人][捜査零課]
[マタタビで酔う]
    http://kataribe.com/HA/21/C/0108/


知らず足取りを辿る
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 21時過ぎ。駅前のファーストフード店。
 その店は二年ほど前に男性の惨殺死体が発見された以外は特に何事も起こっ
ておらず、普段通りの営業を続けていた。

 女子中学生  :(シェークとポテトだけ買って席に座った)
 女子中学生  :「……(なんとはなしに店内を見回す)」

 特に変わった様子があるようにもみられない。こんな時間なのに子連れの
ファミリーがいたりするのも普通。

 彼女の姉が消息を絶ってからもうすぐ二年が経とうとしていた。
 姉は有り体に言えば結構遊んでる女子高生だったので、居なくなって大変ね、
かわいそうにねという周囲の声と、いつかなんか巻き込まれるんじゃないかと
思ってたわ、なんて意見が同じくらい聞かれた。しかし、数日経っても数週間
経っても数ヶ月経っても見つからないともなるとさすがに周囲も押し黙るよう
にはなった。
 警察に捜索願を出してはいるが、いっこうに進展があったわけではない。
 彼女は知るよしもないが、実際に彼女の姉は事件に巻き込まれ、拉致されて
しまって以降消息は知れない。
 彼女がここに塾帰りにわざわざ寄るのだって、よくここにいた、いろんな男と
きてた、なんて話を先輩から聞いたからであって。

 女子中学生  :(ケータイでとある地域系サイトに)

 よくある恋愛相談系の掲示板から新しい店のオープン情報、アバターサービス
なんかがてんこ盛りのサイトに繋ぐ。一時間に一回でも確認が足りない、と
クラスでは言われてしまうから、暇があれば繋ぐようになっていた。

 女子中学生  :(ぽちぽちとミニメールを確認)

 その中に、一通、見慣れないミニメールがあった。
 白衣のメガネアバターから送られてきていた。そのアバターには見覚えがない。
 よくあるイタズラか迷惑メールだと思ったが、一応目を通してから削除しよう
と思った。

 女子中学生  :(メールを読む、のリンクをクリック)

 ミニメールにはこう書かれていた。
『タイトル:こんにちゎ(顔文字) 本文:最近、○○に21時頃よくいるよね?
おれも結構そこ行くから気になってたんだよ。よかったら絡んでくんない?
セットくらい奢るし、その後カラオケとかいこーよ(顔文字略)』

 それだけなら、なんてことはないメールなのだが。
 あったこともない、見知らぬ人間が、なぜ彼女のIDを知り、メールしてきた
のか、が気になった。第一自分の名前(この場合アカウントだが)も名乗って
いない。大抵、自分の名は真っ先に言うものだ。

 女子中学生  :(顔を上げて店内を見回す)

 仮に送った当人が店内にいたとしても、馬脚を現すとは思えないが。
 送信日時は10分前になっていた。ちょうど店に入った頃に送られてきたことに
なる。
 なんだか気味が悪くなって、彼女は立ち上がり、シェークだけ持って店を出た。


辿られていた足取り
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 吹利霞山警察署が、このあたりを管轄している警察署になる。土地柄か、配置
されている人員の数は多い。しかし、受付窓口はおおむね市民に不評だった。
 そんな中、案内プレートを見ている中学生が一人。それもわかりづらく、彼女
も理解出来なかった。

 女子中学生  :(受付で)「すみません……あの、ストーカー相談はどこで
        :受け付けてもらえるんでしょうか」
 受付の人   :「生活安全部になります。そちらの階段を上がって
        :いただいて、二階の右手に窓口がありますから」
 女子中学生  :「はい、ありがとうございます」

 そろそろ改築してほしいと市民ですら思うくらいには古い警察署の建物。
薄暗いし、なにより一階が狭くて満足に窓口も設置出来ない。
 地味な制服ブレザーの女子中学生は言われたとおりに階段を上り、二階へ。

 古賀     :「フンフンフーン♪」

 上がったはいいが廊下は長く続いていた。迷いそうで困っていたところに、
ちょうど紙コップを持ったスーツの男がやってきた。
 彼女は知るよしもないが、この男は古賀猛という。コンビを組んでいる上司、
片桐巡査長に頼まれて買ってきていたのだった。

 女子中学生  :「あ、あの、すみません」

 女子中学生  :「せ、生活安全部、ってどっちですか?」
 古賀     :「ん、生活安全部?……ああ、それならそこの角を右に曲がっ
        :た部屋がそうだけど、何か用かな?」
 女子中学生  :「……えっと……ストーカー、で、相談したくて……」
 古賀     :「とりあえず案内するよ。俺も生活案全部なんだけど、
        :こういうことは女性の職員の方がいいかな?」
 女子中学生  :「あ、いえ、まだそんなひどいわけじゃないんで……大丈夫
        :です」
 古賀     :「そうか。じゃ、向こうで話聞くよ。立ち話も何だしさ」

 相手が学生だからか、それとも元々気さくなのか。どちらかというと後者だ
ろう。

 古賀     :「このコーヒー届けたら話聞くからさ、5分くらい待ってて
        :くれないかな?」
 女子中学生  :「あ、はい。じゃ、ここにいます」

 言われたとおりに、 女子中学生  は廊下で待っているつもりのようだ。

 古賀     :「あ、生活安全部の部屋にソファーがあるからそっち座って
        :なよ。一応、ちょっとは暖房も効いてるしさ」
 女子中学生  :「あ、はい」

 私服警官が戻ってきたときには、ただケータイをいじっているだけだった。
 特に楽しいわけでもないのだろうか、今時の子はわからん。などと考えながら、
古賀はまた気さくに声をかける。

 古賀     :「ゴメン、お待たせー。……んじゃ、あっちで話聞くよ」
 女子中学生  :「はい、お願いします」

 部屋のすみ、パーティションで区切られた辺りを指し二人は移動した。

 女子中学生  :(ケータイの画面を見せる)
        :「これなんですけど……ケータイのメール、っていうか
        :サイトのミニメなんですけど……」
 古賀     :「んー……これは?」

 女子中学生曰く、マクドでポテト食べてたら初めてきたミニメが気になった。
とのことだった。

 古賀     :「うーん……」
 女子中学生  :「……知ってる人とかだったらいいんですけど、全然しら
        :ない人がなんでこんなミニメしてくるのかなって思って……」
 古賀     :「間違いメールか、迷惑メールの類かな?一斉送信される
        :迷惑メールだと、こういうタイプの文章は多いけど……」
 女子中学生  :「……やっぱ、これくらいだったらそういう風に考えた方が
        :いいですか?」

 ケータイ事情にさほど詳しいわけではない古賀にとっては、ただの迷惑メール
に思えたが、彼女は不安そうにしていた。

 女子中学生  :「……一昨年、なんですけど……その、姉が行方不明に
        :なってて、それで、よくきてたらしいんです。駅前のマクド」
 古賀     :「その可能性もあるけれど、でもやっぱり心配だよね。
        :……よかったらそれ、もうちょっと見せてもらっても良い
        :かな?」
 女子中学生  :「あ、はい……」

 そのメールだけはなにやら奇妙な感触があった。何が、かはまだわからない
が、他のメールとは何か違う。

 古賀     :「……うーん」

 顔をしかめる古賀。

 古賀     :「確かに、これは……」

 古賀の獣のカンが告げていた。何かが違う。よくよく確認してみると、そも
そも、他のメールには21時頃マクドにいる、と言及したもの、されたものがない。
また、こっそりブクマから見た彼女の日記サイトも同様だ。
 実際に目で、21時頃マクドによくいることを見、確認した上で送ってきている。
つまり女子中学生は一方的に観察され、行動をある程度把握されているようだ。

 古賀     :「……このメール、君がマクドに居たときに丁度送られて
        :来た訳だよね」
 女子中学生  :「そうです。頼んで、席座ったときにちょうど来てた感じ」
 古賀     :「だとすると……まぁ、偶然の一致っていうのももしか
        :したらあるのかもしれないけれど、そうじゃない可能性の
        :方が高くなる」

 古賀     :「……ふぅむ」

 古賀     :「他に、最近、誰かに見られている感じがするとか、そう
        :いうのは無かったかな?」
 女子中学生  :「さっきもちょっと言いましたけど……そのマクド、姉が
        :よく行ってて、それで最後にそこ行くって連絡があった
        :ところなんで……見られてる、ですか? そういうのは
        :あんまりないんですけど……あ」

 ちょっと違うかもしれませんが、と前置きして少女は続けた。

 女子中学生  :「一回、姉のPCにメールきてて、変なメールだったんです
        :けど、返信しました。先月くらいですけど」

 女子中学生  :「なんか、サークルかなんかに全然こないね、どうしたの?
        :みたいな感じのメールだったんで……待ってると悪いかなっ
        :て思って返事したんです。私の名前で」
 古賀     :「ふぅむ……」
 女子中学生  :「でも、それくらいです。別に、学校終わったら塾行って、
        :で、マクド行って帰ってるだけです」

 女子中学生  :「……姉みたいに遊んだりとかはしてないですし」
 古賀     :「なるほど……ところで、そのサークルの名前とかわかる
        :かな?出来ればその、お姉さんのPCのメールだっけ?見せて
        :貰えれば何かわかるかもしれないけれど、お姉さんには許可
        :とれるかな?」

 一瞬の沈黙の後、少女は落ち着いた口調で話しだした。

 女子中学生  :「……許可はたぶん要らないです。行方不明なの、今も
        :だし……たぶんもう、死んじゃってるとかだって思って
        :ますから」

 女子中学生  :「ノートPCだし、持ってきたらみれます」
 古賀     :「行方不明……?捜索願は出ているのかい?それに、もう
        :……って……」
 女子中学生  :「だって一昨年の話ですし……全然、見つかる気配もないっ
        :ていう話なんで……そう思わないと、やってらんないです」

 女子中学生は慣れた風に笑顔を作って見せた。

 古賀     :「一昨年……そうか、悪かったよ」

 古賀     :「とりあえず、そのノートPC見せて貰えるかな?……どうも、
        :何かひっかかるところがあるんだ」
 女子中学生  :「いえ。慣れてますから……ただ、姉もなんていうか……
        :あんまり素行がいいってわけじゃなかったし。わかりました。
        :時間作ってもらえたら、持ってきます」
 古賀     :「ふーむ……出来るだけ早いほうが良かったら今日でも
        :良いけど、どうする?急いだ方がいいよね」
 女子中学生  :(ちょっと考える)「今日はちょっと、親がいるんで……
        :難しいかも。明日はどっちも居ないんで、明日お願いして
        :いいですか?」
 古賀     :「親御さんにもお話しておいた方がいいかもしれないけれど、
        :そうじゃないんだね。……分かった。なら明日、午前中で
        :良いかな?午後からちと別件で仕事が入っちゃってるんだけど」
 女子中学生  :「わかりました。じゃ、早い目に持ってきます。たぶん、
        :ちょっとくらいだったら家になくてもばれないし」

 古賀     :「そうか。とりあえず連絡先を聞いても良いかな?」
 女子中学生  :(ケータイの画面見せる)「はい。あ、名前、友霞っていいます。
        :宮島友霞」
 古賀     :「ふむふむ……(書き書き」

 古賀     :「そうだ、それからこっちの連絡先も必要だね」

 古賀     :「生活安全課の古賀って言って貰えれば取り次いでもらえる
        :と思うから」
 友霞     :「あ、教えてください。……わかりました。生活安全課の、
        :古賀、さんですね」
 古賀     :「うん、古賀猛ってね。……それじゃあ、また明日、待っ
        :てるから」
 友霞     :「……はい、それじゃ、また明日、お願いします(立ち上がっ
        :てぴょこんとおじぎ)」
 古賀     :「ああ、気をつけて帰るんだよ」
 友霞     :「はい。ありがとうございます、古賀さん」

 先ほど廊下で会った時と比べても、幾分表情が和らいでいるように思えた。

 古賀     :「何か少しでも怪しいと思ったときにはすぐに連絡するよ
        :うに。非番のときでも俺に取り次いでもらえるようにする
        :から」
 友霞     :「はい、わかりました。それじゃ、また明日」

 退出して行く友霞を見送りながら、古賀は独りごちていた。

 古賀     :「……嫌な『臭い』がするな」


時系列と舞台
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2009年初旬。

解説
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2年後(ということになった)

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Toyolina
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