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Date: Sun, 4 Jan 2009 16:15:43 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32078] [HA21P] エピソード『苦い記憶』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20090104071543.CDDF649DB02@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 32078
Web: http://kataribe.com/HA/21/P/
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2009年01月04日:16時15分43秒
Sub:[HA21P]エピソード『苦い記憶』:
From:久志
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エピソード『苦い記憶』
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登場人物
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ウヤダ
:かつて吸血鬼狩り組織エキドナ・ファミリーに居た。
マム・エキドナ
:エキドナ・ファミリーの筆頭。かなりイカれている。
記憶の底
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それは遠い奥底に埋めたはずの苦い記憶。
視界に映ったのは汚れた天井。広いシーツの海の中、ウヤダは目を覚ました。
ウヤダ@少年 :「…………」
ベッドの片隅には使い込まれ、しっかり手入れされた数々の武器が手を伸ば
せばすぐ届く範囲に並べられている。
マムの部屋。
何度となく夜を過ごしたが、一度として慣れたことも心地いいと思ったこと
もない一室。
ウヤダ@少年 :「…………」>体を起こして
裸の体を起こして、つい先日の狩りで追った傷跡をそっと撫でる。まだ体の
どこかが眠っているかのような感覚が残っている。
そしてそれ以上に自分がもう自分ではないような、モノのような不快感。
そして、ウヤダの隣には、全身の皮を剥いで赤黒い筋肉を剥き出しにしたか
のような不気味極まりない肉体が寝入っている。
ウヤダ@少年 :「…………」
全身総毛立つような怖気と胸にこみ上げる吐き気を堪えるように、マムから
目を逸らした。
マム・エキドナ。
ファミリーの筆頭であり、ファミリーの子は全てマムの所有物であり、その
言葉も行動全て子供達にとって抗うことを許さない絶対存在だった。
ファミリーの子供達はマムの子にして夫にして支配する全て。
ウヤダ@少年 :「…………」
マムから離れるように、くるりとシーツに包まって両肩を抱いた。
自分の心を限りなく希薄にし、虚ろな目で窓の向うを眺める。
壊れないように、何も感じないように。
『だって……ファミリーはおかしい……狂ってるよ』
ふと、今はもう居ないマリアの言葉がよぎる。
ウヤダ@少年 :「……」
ファミリーは狂っている。
マムは狂っている。
それはとうにウヤダも気づいていたことだった。
だが。
ウヤダ@少年 :「…………」
シーツに包まったまま、頭を抱えて丸くなる。
何が間違っていたのか?
どうして狂ってしまったのか?
はじまりは一人の女だった。
女は取り立ててなにができるわけでもない、どこにでもいるごくごく普通の
女だった。夫と子とささやかな暮らしを営みながら、小さな幸せを守りながら
慎ましく生きていた。穏やかな生活は、このままずっと続くはずだった……
ウヤダ@少年 :「…………狂わせたのは、吸血鬼共、か?」
そのささやかな生活は一瞬にして奪われたという。
さる、高貴な吸血鬼の遊びか、気まぐれか、そのほんの気まぐれによって。
エキドナ :「……」>眠っている
そして、女は狂った。狂いぬいた果てに……
ウヤダ@少年 :「…………マム」
人の心をなくして、ただ力を求めた。
打ち倒す力を、殺しつくす力を、戦い抜く力を。
だが、女は無力だった、そんな女に声をかけたのは……
外道、狂気、悪魔。
その男を語る者すべてが口にする共通の単語。
ウヤダ@少年 :「…………モロー」
そして、もうひとつ――天才、と。
ステファン・モロー。Dr.モローの通り名で呼ばれる狂気の人体改造医師。
決して表社会にはその姿を見せず、ただ闇から闇で暗躍し、怖気のするような
禁忌の実験と改造を繰り返した悪魔の申し子。
男の生み出された凶悪な化け物達の噂は、まことしやかに語られていた。
ウヤダ@少年 :「…………」
マムは狂っている。
吸血鬼のせいか? モローのせいか?
ロッシを狂わせたのも……力を求めた狂気ゆえに?
人の心を捨て、力を求め、その末に……外道へ堕ちたのは。
シーツに包まったまま、頭を抱える。
どうすればよいのか?
今、マムの胸にナイフを突き立てるべきなのか?
あるいは、その首を切り落として逃げるべきなのか?
自然に手が伸びていた。
その手に取ったナイフはまるで自分の分身のように馴染んでいた。
戦いに続く戦いの果て、実際に手で触れた相手よりもナイフで触れた数の方
が圧倒的に多い。戦うことしか知らない自分に。
静かな寝息。
包帯を取ったマムの全身は生皮を剥いだおぞましい姿そのままで。
ウヤダ@少年 :「マム……」
逆手に持ったナイフ。
息を殺して、その狙いは真っ直ぐに心臓へと。
ウヤダ@少年 :「……っ」
SE :ギィン
ウヤダ@少年 :「……!」
弾きとばされたナイフが床に落ちる。
ウヤダ@少年 :「……う」
頭を鷲掴みにされて、ベッドに押さえつけられた姿を見つめる楽しげな眼。
エキドナ :「骨がある子だね、えぇ?ボウヤ」
ウヤダ@少年 :「がっ……」
ぎしっと頭を掴んだ手に力が篭り、思わず喉から声を絞り出す。
エキドナ :「…………いい子だ、やはりアンタは一番目をかけた甲斐
:のある子だよ、えぇ?ウヤダ」
ウヤダ@少年 :「……ぐっ」
握りつぶされんばかりに掴んだ頭、軋むような音が内から響いた。
エキドナ :「……骨のある子さね、可愛がり甲斐があるよ」
皮を剥いだ筋肉が引きつるように動く。
目元の筋肉が蠢き、おぞましい笑顔と喉の奥から響くような耳障りな笑い声
を立てる。
ウヤダ@少年 :「…………っ」
エキドナ :「いい顔だよ、ボウヤ」
耳元にかかる生暖かい息。赤黒い筋肉を引きつらせて笑う顔。
吐き気のするような、薄気味悪さ。
エキドナ :「ねぇ、ボウヤ」
耳を這う、不気味な感触。
ウヤダ@少年 :「…………」
ぎりっと、歯を噛み締めて。目を閉じた。
時系列と舞台
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遠い過去
解説
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ウヤダの過去。女運が悪いどころの話ではなかった。
http://kataribe.com/IRC/HA21/2008/12/20081213.html#230000
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以上
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