[KATARIBE 32014] [HA21L] チャットログ『その名を失った日』

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Date: Tue, 23 Dec 2008 00:14:55 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 32014] [HA21L] チャットログ『その名を失った日』
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2008年12月23日:00時14分55秒
Sub:[HA21L] チャットログ『その名を失った日』:
From:久志


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チャットログ『その名を失った日』
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登場人物
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 ベネディクト・ブランケ
    :どこぞの国の商家の坊ちゃんだった様子。灰色の髪に灰色の瞳。
 グスタフ・ブランケ、マリア・ブランケ
    :ベネディクトの両親、ブランケ商会の主。
    :母は美しい黒髪、父は息子と同じ灰色の髪と瞳。
 ヨーゼフ、ティモシー
    :由緒正しき吸血鬼氏族デナーダの若者達。
    :良い生まれの割りに非常に素行が悪く、人を血袋としか見ていない。
 コンスタンツェ・シェーンベルク
    :吸血鬼氏族デナーダの末娘。非常に愛らしく麗しくドS。

過去の出来事
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[Hisasi] #昔の話 
[Hisasi] #ある屋敷にて 

 グスタフ   :「マリア、荷物の準備はいいかい?」 
 マリア    :「ええ、着替えは全てこちらに、他の荷物はこちらに」 
 グスタフ   :「そろそろ、車に運んでもらおう。ベネディクトの準備の
        :ほうを頼むよ」 
 マリア    :「はい、あなた」 

[Hisasi] #荷物運びに来た下男が頭を下げるのに微笑んで応えながら歩く 
[Hisasi] #黒髪をアップにまとめた女性 
[Hisasi] #一室で 
[Hisasi] #広い窓際で、ちょこんと座った灰色の髪の子供 
[Hisasi] #年の頃は一歳半を過ぎたくらい? 

 マリア    :「ベネディクト」 
 ベネディクト :「…………(母の声に反応する)」 

[Hisasi] #だが返事はせずに、灰色の瞳で母親を見上げた 

 マリア    :「ほら、おじいさまのお家にお出かけですよ? さあ、
        :着替えましょうね?」 

[Hisasi] #ちょこんと座ったままの幼児の前に屈んで抱き上げて 

 ヘネ     :「奥様、ぼっちゃまのケープを」 
 マリア    :「ああ、ヘネ。ありがとう、そこにおいて置いて」

[Hisasi] #慣れた手つきでちびっこを着替えさせて頬を撫でて 

 マリア    :「ベネディクト、お母さまの言葉がわかる?」
 ベネディクト :「…………」>無言のまま母の顔を見てる 
 マリア    :「どうして、この子はまだしゃべってくれないのかしら」 
 ヘネ     :「奥様、そんなものですよ。みんなそういいます、まだこ
        :れからですよ」 
 マリア    :「でも、バントさんのお子さんはこの子より後に生まれた
        :のにもうおしゃべりで大変だといっているのに」 
 ヘネ     :「男の子ですし、あちらのお子さんとはまた違いますよ、
        :すぐにやんちゃないたずらっ子になって奥様を困らせます
        :からご心配なさることはありませんよ」 

[Hisasi] #ねぇ、とちびっこの頬を指先でなでて 

 ベネディクト :「……(撫でられてる)」 
 マリア    :「そうかしら……そうだといいんだけど」 

[Hisasi] #小さな靴をはかせて 

 マリア    :「ほら、ベネディクト」 

[Hisasi] #ふわりと、白いケープをかけて 

 ヘネ     :「うん、よくお似合いだこと」 
 マリア    :「ええ、作りがいがあったわ、ねぇ」 

[Hisasi] #母手作りのケープの柔らかい肌触り 
[Hisasi] #その裏地に縫い取られた 
[Hisasi] 『ベネディクト・ブランケ あなたに幸いと希望があらんことを』
    という祈りの言葉

 ベネディクト :「…………」>ケープの生地を撫でている 
 マリア    :「いらっしゃい、お父様が待っているわ」 

[Hisasi] #広げた手 

 ベネディクト :(ん)>その首にしがみつくように 

[Hisasi] #抱き上げられて 

 マリア    :「では、後のことをよろしくね」 
 ヘネ     :「かしこまりました、いってらっしゃいませ。奥様」

[Hisasi] #そして 
[Hisasi] #車に荷物を積みおわり、傍らで待っている男 

 マリア    :「グスタフ、すみません。遅れてしまって」 
 ベネディクト :「…………」>小さい手を父親に伸ばす 
 グスタフ   :「ああ、丁度いいよ。ほら、ベネディクト、馬車に乗るの
        :は初めてだろう?」

[Hisasi] #ちょいちょいと手をつまんで 

 御者     :「旦那様、奥様、はようお乗りくださいなー」 
 グスタフ   :「ああ、ほら、いこうマリア」 
 マリア    :「ええ」 
 ベネディクト :「…………」 

[Hisasi] #ふと、空を見上げる幼児 
[Hisasi] #広い広い青い空 
[Hisasi] #だが、その後、彼がもう一度広い青空を見るのに十年以上先に
     なるとは、思いもしなかった 
[Hisasi] #長い道のり 
[Hisasi] #初めて揺られる馬車の振動 
[Hisasi] #だが、程なく 
[Hisasi] #母親の腕に抱かれた幼子は眠りにつく 
[Hisasi] #眠りに落ちる直前に見た 
[Hisasi] #同じ灰色の髪に口髭の父親の微笑みと、頬をなぜる黒髪の母親の瞳

 ベネディクト :「……(すぅ)」 
 マリア    :「眠ってしまったのね」 
 グスタフ   :「そうだね、まだ道は長い。ゆっくり寝かせてあげよう」 

[Hisasi] #しかし、その平穏な時間が破られるのは一瞬だった。 


その身に降りかかった悲劇
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[Hisasi] #叩きつけられるような衝撃で、彼は目を覚ました 

 ベネディクト :「…………(うぁ)」 

[Hisasi] #つい先程まで、揺られていた母の膝ではなく 

 ベネディクト :「……」<顔をあげて 

[Hisasi] #倒れていたのは、地面。目の前には横転した馬車

 ベネディクト :「……!?」 

[Hisasi] #あたりを見回す 
[Hisasi] #外は闇 
[Hisasi] #横転した車の脇に何かが転がっている。
[Hisasi] #腕 

 ベネディクト :「!」 

[Hisasi] #御者の 
[Hisasi] #だが、その腕はピクリとも動かない 

 ベネディクト :「…………!」>見回す、父と母の姿を探して

 ヨーゼフ   :「ほぉう、子供か」 
 ベネディクト :「!」 

[Hisasi] #びくりとして振り向く 

 ヨーゼフ   :「狐狩りのついでに、面白いものを見かけたものだね」 

[Hisasi] #銀色の髪の青年、その腕に抱えられていたのは 
[Hisasi] #青ざめた顔の母親 

 ベネディクト :「……あ」 
 ティモシー  :「なんだ、ご婦人はお前か……しょうがない」 

[Hisasi] #また声がする 

 ベネディクト :「……っ」 

[Hisasi] #その先 

 ティモシー  :「……しかし、哀れなものだね」 

[Hisasi] #その腕に 
[Hisasi] #こめかみから血を溢れさせて虚ろな目をした父親が 

 ベネディクト :「……!」 
 ヨーゼフ   :「そうだね、まったく憐れな存在だ……」 

[Hisasi] #母親の首筋に舌を這わせつつ、首筋に軽く牙を突きたてた

 マリア    :(びくん) 

[Hisasi] #顔が歪む 
[Hisasi] #小さな悲鳴を上げながら 
[Hisasi] #母親の顔から血の気が引いていく 

 ベネディクト :「……!」 

[Hisasi] #何が起こっているのか、彼にはわからなかった 

 ティモシー  :「ああ、血潮が……いけないね」 

[Hisasi] #こめかみから溢れる血をそっと撫でて、首筋に牙を立てる 

 ゲオルグ   :(かくかくと、体を震わせて) 

[Hisasi] #父親と母親が、父親だったものと母親だったものに変わっていく 

 ベネディクト :「…………あ」 

[Hisasi] #何者なのか、何がおこったのか、幼い子にはわからない 
[Hisasi] #だが、それはとてもとても恐ろしいものだというのは 
[Hisasi] #本能的に察していた 

 ヨーゼフ   :「失礼、ご婦人」>恭しく動かなくなったマリアの体を
        :横たえて 
 ティモシー  :(その隣に動かなくなったゲオルグを並べて) 
 声      :「ずるいわにいさま達、私も一緒に遊びたかったのに」 

[Hisasi] #ちょんと、出てきたのは銀髪の少女 

 ヨーゼフ   :「コンスタンツェ、なんだ、お屋敷で待っていろといった
        :のに」 

[Toyolina] #きゃっきゃ 

 ティモシー  :「お前のことはおじさまから人一倍気を使うように言い付
        :かってるんだ、勝手に後をついてきてはいけないよ?」 

 コンスタンツェ:「だって、退屈だったのだもの。にいさま達ばかり楽しそ
        :うに遊んでらっしゃるんだもの」 

[Hisasi] #そして、ちら、と 

 ベネディクト :「…………」
        :>泥に汚れたケープを羽織ったまま、その場にぺしゃんと
        :座っている 
 ヨーゼフ   :「その子かい?まだ幼いね、大した血の量じゃない。飲ん
        :でみたいのかい?」 
 ティモシー  :「だめだよ、お前にはもっと見目麗しいのを探してあげるよ」 
 コンスタンツェ:「……」>話を聞かずにのすのすと、歩み寄る 
 ベネディクト :「…………」>ぢっと見上げてる、無言で 
 コンスタンツェ:「…………ふぅん」 

[Hisasi] #年の頃でいうと4・5歳くらいのドS娘 
[Hisasi] #彼女の氏族は成長します 
[Hisasi] #じっと見下ろす目、 

 ヨーゼフ   :「おやめ、コンスタンツェ。お前にはそんな薄汚い子の血
        :は口に会わないよ」 
 ティモシー  :「そうだよ、放っておけばいいさ。直に森の住人が綺麗に
        :片付けてくれるさ」 
 コンスタンツェ:「……」>話も聞かずに屈んで、顔を覗き込む 
 ベネディクト :「…………っ」 

[Hisasi] #覗き込む目 
[Hisasi] #血のように赤い瞳 

 コンスタンツェ:「……(無造作に手を伸ばす)」 

[Hisasi] #まるで珍しい虫を見つけた子供のように 
[Hisasi] #手加減無しにむぎゅっとチビのほおをつねります 

 ベネディクト :「っ」 
 ベネディクト :「…………」<ぎゅっとしたまま泣かない 
 コンスタンツェ:「……ふぅん」 

[Hisasi] #ほおつねったまま 

 ヨーゼフ   :「どうしたんだい」 
 ティモシー  :「ほら、そんな汚いものにさわってはいけないよ」 
 コンスタンツェ:「……」>うにうにうにうにとほおをつまんだまま遠慮な
        :しにゆさぶる 
 ベネディクト :(うぅ) 

[Hisasi] #ゆさゆさゆさゆさ 
[Hisasi] #でも泣かない 
[Hisasi] #小さくてもやはりSです 
[Toyolina] まったくですね^^ 

 コンスタンツェ:「ねえ、にいさま」 
 ヨーゼフ   :「なんだい?」 
 ティモシー  :「ほら、帰ろう。コンスタンツェ」 
 コンスタンツェ:「これ、連れて帰るわ」 

[Hisasi] #ほおつまんだまんま 

 ヨーゼフ   :「え?」 
 ティモシー  :「何を言っているんだい」 
 コンスタンツェ:「連れてかえるの(うにー)」 
 ベネディクト :(うーー) 

[Hisasi] #ほおつままれたまま 

 コンスタンツェ:「いいでしょう? ダメなんて言わないわにいさまたちは。
        :おじさまには私からお願いするわ」 

[Hisasi] #手を離して、猫の子をつかむように 
[Hisasi] #首をわしづかみにしてぶらーんと 

 ベネディクト :「……(ぢたばた)」 

[Hisasi] #暴れるちびっこはなす術もなく 

 ベネディクト :「……ぁ」 

[Hisasi] #目の前には 
[Hisasi] #動かなくなった父親と母親の姿 

 ベネディクト :「……」>もがく 
 ヨーゼフ   :「……しょうがないなあ」 
 ティモシー  :「……言い出すと聞かないのだから」 
 コンスタンツェ:「ありがとう、にいさまたち! うふふ、おもしろくなり
        :そう」 

[Hisasi] #ぶんぶんと掴んだ腕をふりまわす 

 ベネディクト :(うぅあぁ) 

[Hisasi] #悲鳴もあげずになす術もなく振り回される 
[Hisasi] #しょうがないなあと肩をすくめて歩き出す青年に続いて

 ベネディクト :「………あ」 

[Hisasi] #首根っこをつかまれたまま、 
[Hisasi] #父と母が遠ざかっていく 

 コンスタンツェ:「飼ってあげるわ、血袋。うふふ……楽しみね」
 ベネディクト :「………うぁ」 

[Hisasi] #伸ばした手は虚しく 
[Hisasi] #森の中へと 
[Hisasi] #消えていった 
[Hisasi] いうまでもなくウヤダさんの過去です 
[Hisasi] そしてウヤダさん、黒髪でマリアが弱点ですよ 
[Toyolina] 黒髪かつお母さん 
[Hisasi] 本人はさっぱり覚えてないけど、どこかで黒髪でマリアを覚えている 
[Hisasi] だからファミリーで黒髪のマリアに大変優しかったんだ 
[Hisasi] (そのせいでレニーにぬっころされました) 


届かぬ呼び声
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[Hisasi] #冷たい石畳 
[Hisasi] #横たわった小さな体 
[Hisasi] #白いケープの襟を寄せて、小さく身を震わせて 
[Hisasi] #幼児はゆっくり体を起こした 

 ベネディクト :「…………」 

[Hisasi] #一歳半過ぎくらいの小さな男の子 
[Hisasi] #見回しても、そこは見覚えのない暗い石造りの牢 

 ベネディクト :「…………」>ぺた、と。床に手を触れる 

[Hisasi] #冷たい 
[Hisasi] #固くて、しんと染み入るほどに冷たい石の手触り 
[Hisasi] #顔を上げて 
[Hisasi] #はるか上、小さな窓から月明かりが差し込んでいる 
[Hisasi] #背後には、鉄格子のはまり、闇に続くような暗い通路が延びている

 ベネディクト :「…………」>見回す 

[Hisasi] #誰もいない、薄暗い通路の向うは吸い込まれそうなほどの闇 
[Hisasi] #小さな窓から差し込むかすかな光だけが、 

 ベネディクト :「……」>何かをしゃべろうとした 

[Hisasi] #呼ぼうとした 

 ベネディクト :「…………」>うつむく 

[Hisasi] #ほんのついこないだまで 

 #マリア   :「ほら、ベネディクト。ママと呼んで頂戴?ねぇ」
        :>小さな手をつまんで 
 #グスタフ  :「そんなにすぐには言えないさ、ほら、パパだよ」
        :>抱き上げたまま頬を寄せて 

[Hisasi] #黒髪の母、自分と同じ灰色の髪、瞳、口髭の父 
[Hisasi] #暖かな腕の中で 
[Hisasi] #まどろんでいたはずだった 

 ベネディクト :「…………」>口を開きかけて 

 #ティモシー :「……しかし、哀れなものだね」 
 #ヨーゼフ  :「そうだね、まったく憐れな存在だ……」 

[Hisasi] #母の首に牙を立てた 
[Hisasi] #血塗れた父の首から血を啜った 
[Hisasi] #顔を引きつらせて、目を剥いて、青ざめていく顔 

 ベネディクト :「…………」>かたかた震えて 

[Hisasi] #薄ら笑いを浮かべた、銀髪の少女が 

 #コンスタンツェ:「これ、連れて帰るわ」 

 ベネディクト :「……うぅ」 

[Hisasi] #ぎゅっと握ったケープの裾 
[Hisasi] #母がかけてくれた、柔らかい手触りの 

 ベネディクト :「……う……あ」 
 ベネディクト :「……Mutti 」 

[Hisasi] #初めて呟いた言葉に答えるものはいない 

 ベネディクト :「……Mutti 、Vati ……Mutti!Mutti!」

[Hisasi] #暗い石牢の中 
[Hisasi] #誰も聞くことのない呼びかけと押し殺した泣き声が響いた 


時系列と舞台
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 百年以上前。
解説
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 ウヤダ、その真の名を失った日のこと。
 http://kataribe.com/IRC/KA-06/2008/12/20081206.html#000000
 http://kataribe.com/IRC/HA21/2008/12/20081222.html#230000
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上



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