[KATARIBE 31915] [HA06N]秀松の心、2008年11月某日

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Date: 15 Nov 2008 05:02:49 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31915] [HA06N]秀松の心、2008年11月某日
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登場人物
・浦島秀松:シューマツ。太極拳部所属の中学生。
・乙卯:ウサ耳小学生



…最初にトリちゃんをトリちゃんとして意識したのはいつだっただろう。

一年の五月の初め頃。まだクラスにほんの少し他人行儀な雰囲気が残っていた。その中で、皆と仲の良
い女子が一人だけ居るのに気付いた。皆の話を良く聞き、良く気がつく。「優しい子」、最初の印象は
そんな感じだったと思う。

六月を過ぎると、クラスも打ち解けて幾つかのグループの様な物ができて来た。仲の良い友達の集まり
と言うヤツかな。でも、その子はそう言う輪には入っていなかった。別に違和感がある訳じゃない。話
しかけられれば気さくに応対して、笑いも起きる。でも、その子が輪に入っていった事は一度も無かっ
た。

それからかなり経って、二学期に入ってすぐ位かな。変化があったのは。弦音がその子に話しかけてい
た。それが一番の切欠だったんだと思う。皆がトリちゃんに集まり始める。俺もその中に居た。きっと
老婆心かなにかがあったのかな、最初は正秋をくっ付けようとしてみたりしたっけ。

彼女も皆と仲良くなれたのかなって、安心した。でも、実際は違ったんだ。ある日の部活帰り、彼女か
ら電話がきた。正直驚いたよ、確かに番号とアドレスを交換したけど、今までかかって来た事は一度も
無い。

いつもの調子で電話に出た。でも、それはとても深刻な電話だった。トリちゃんは苦しみながら助けを
求めている。

−−−その日から、トリちゃんの存在は俺の中でだんだん大きくなっていく。


壱耶さんから聞いた話。それでトリちゃんが輪に入ろうとしなかった理由が分かった気がした。「彼女
の中には蟲が居る、敵意を向けられると腹を食い破って出てくる」……。グループの友達は仲がいい。
でも、仲が良い分喧嘩をする事も良くある。そんな一時の感情の波でも、トリちゃんは死んでしまうと
聞かされた。

知ってしまった以上トリちゃんを放っておく気にはなれない。そんなのは許せない。なんとかなると思
っていた。

…トリちゃんと話して、それが勘違いだと思い知らされた。良い方向に考えていくだけじゃダメだって
、生きるか死ぬかの戦いなんだって……。そう言われた時、それが理解できなくて彼女にヒドい態度を
とってしまった気がする

「俺はトリちゃんの為になにができるだろう」

戦いだと言うなら、俺もその戦いに赴いて一緒に戦おう。それが悩んで出た最初の答えだった。

それをトリちゃんに言うと、彼女は首を傾げながらも「はい」と言ってくれた。…正直呆れられていた
とは思う。その時、なんでか知らないけど涙まで流したしね

それからも色々あった。トリちゃんの家族にあったり、弦音が取り憑かれちゃったり、マチャアキが怪
我したり。トリちゃんが仙に告白したり、弦音がトリちゃんに告白したり。ほとんど毎日、てんやわん
や。


そのなかでトリちゃんの相談に乗ってみたり、少し肩を押してみたりした。あくまでトリちゃんが自分
で選択するように。しばらくはそれで大体うまくい行ってた。でも、少しずつ何かがずれていく。何か
がつっかえてる、うまく流れてくれない。それが皆の負担になっていってるのが見えて、少し憤りを覚
えた。

…結局、それが自分自身だったて気付くのにこんなに時間が掛かった。

俺はトリちゃんが歩いて行く方向に付いていっただけ。だから、目を離したら一人で歩いて行ってしま
うのは当然の事だって、気付くのが遅かった。

…そして、トリちゃんは自分で自分の顔を、焼いてしまった。

それを最初に報されたメールに、「自分で焼いた」なんて一言も書かれていたかった。だけど、そう直
感的に思った。攻撃なんてされていたら顔を焼かれるどころか死んでいる。それにトリちゃんは少し危
なっかしく見えるけど、それがほとんど演技だと言う事も何となく分かっている。でも、それは理由に
はならない。

本当は知っていた。久住先輩は切欠に過ぎない。もっと前から原因はあった。小さなものが少しずつた
まっている事。

俺にはまだトリちゃんを分かっていなかった。俺の歩みが遅れたら、待ってくれるとばかり思っていた
から。



俺はもう嫌だ。トリちゃんが遠くに行ってしまうのは。もうこれ以上離れたら追いつけなくなる…離れ
たくない。…離したくない。だから俺は、彼女に告白したんだ。カノジョの手を握る為に。握って引き
止める事も、引っ張る事もできる様に。


正直、彼女が本当に好いてくれてるのか分からない。でも、彼女は言葉こそ無いけど、受け入れてくれ
た。そして信じて良いのかとも言った。

俺はまだ、トリちゃんの何も分かっていない。言葉通りまだ何も知らない。でも、俺は信じているから
。絶対裏切らないから。俺は「信じて」と言った。


…トリちゃんを離したくない。彼女が望むなら恋人でも、盾でも、剣にもなる。そう決めた。

秀松:「…」

卯:「秀松さん?秀松さーん!」

秀松:「…あ。何だい卯」

卯:「秀松さん、怖い顔です」

秀松:「んー?そうかな?あはは」

卯:「あれぇ?いつものポケッとした秀松さんです…」

秀松:「あはは、そんなにポケッとしてる?俺」


…まだ何もしてない。始まったばかり。




・時系列
 11月某日。

・解説
 以上が秀松のです。独善的でしょうか。今回の事は皆が必要以上に臆病になった結果だと僕は思って
います。真心だっぜ。トリの目は治るのかなぁ。蟲はどうなるのかぁ。

・送信者
 アルカ
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