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Date: 11 Nov 2008 16:51:47 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31910] [HA21N] 小説『彼方と言う男』
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小説『彼方と言う男』
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登場人物
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・立川香方
・彼方
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そいつは子供の時分、自分がなんなのか殆悩んだ。咽はいつもカラカラ、何をしていようと収まらな
い得体の知れない衝動。ただ周りと自分が、何か致命的にズレている事だけははっきり分かる。それが
後ろ髪を引っ張られるようなイライラとする感覚と、腹の中を掻き回すクソ忌々しい怖気になって責立
てるんだ。
堪えきれずに、手当たり次第の物に噛み付いた。差し伸べられた手、逃げ惑う足、怒りの顔、何もなけ
りゃ自分の腕に。そうすりゃしばらく落ち着く。ほんのしばらくだけどな。
やがて、少しは考える頭ができてくると少しずつ、周りと自分のズレがなんなのかがうっすら見えて来
た。
詰まる所、平和だったのさ。事もなし、順風満帆とは行かなくとも只々笑顔がそこにある。だが、そい
つはそれを幸せとは感じない、感じる事ができなかった。
そいつはその笑顔にムカついた。自分の存在を否定された気分。笑顔がそいつの中に在る何か大事な理
由を踏みにじられたような、そいつには、自分の咽がカラカラな原因そのものに思えた。はっ…今俺は
思うね、コイツはイカレてるってな。
…俺はどうだろうな、正直分からない。笑って、笑われるのは愉快だがよ。
だがそん時のそいつは本気も本気、大本気と書いて大マジ。確実にその笑顔を敵視していた。殺意だな
。とにかくそいつはそこに無いものを欲しがるのさ。そんで、そこにある全てを欲していなかった。欲
しい物を呼び込む為に、はあらゆる手段でその笑顔を妨害した。初めの頃は子供がやる極普通の悪戯と
変わらない些細なものだった気がするな。まぁ、終わらないライブの様に次第にエスカレートしてった
けど。
とにかく、周りが困り、笑顔が消える様に振る舞い続ける日々が続く。脱走もその一つだ。
そんな状態が何年続いたんだか……11歳位か、右眼が見える様になったのは。それまで右眼って言うモ
ノの感覚、いやそれ以前に自分の右眼が塞がっていた事すら気付いていなかったが、それが突然に開い
たんだ。
正に物の見え方が変わったね。そのまま考え方も変わりゃ良かったんだろうが、そうは行かなかった。
結局その大変化はそいつのカラカラ具合に拍車をかける始末。
この異常に冴える眼を使って自分は何をすれば良い?
平和でド腐れた周りの奴らに必要なモノか?
………“俺”は断じて違うと思ったね。もっと荒ぶれた所で使ってこそだと考えた。
この時点で…いや、端っからかもしれねぇが、“彼方”の人生にケチが付く事になった訳さ。
恫喝だか衝動だか…少ねぇおつむは既にランボーばりにキレてっぱなしだ。
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