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Date: Sat, 1 Nov 2008 01:11:37 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31879] [HA21N] 『或る邂逅・1』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2008年11月01日:01時11分37秒
Sub:[HA21N]『或る邂逅・1』:
From:久志
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『或る邂逅・1』
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登場人物
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ウヤダ
:腕利きのハンター、元吸血鬼狩り組織に身を置いていた。
佐上銀二(さがみ・ぎんじ)
:妖刀を携えた吸血鬼。下賎な氏族の一員。
直感
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夜の吹利繁華街の或る店でその男を見かけた時、佐上銀二は微かな違和感を
感じた。
しかし、その男は決して店の雰囲気から浮いていたわけではない。艶かしい
女達や享楽的な男達が集うこの退廃的な店の空気に自然に溶け込み、傍らの肌
も露な女と談笑しながらグラス酒を呷る姿は堂に入っていて。むしろ、どこか
あどけなさの残る面立ちの銀二のほうが周囲の客層から少し浮いていた。
ブリーチでちりちりになった長い金髪、細い顎に軽薄そうな笑みを浮かべ、
その目はサングラスの奥に隠れて薄暗い店の中では何を映しているのかわから
ない。だらしなく着こんだジーンズと胸元を開けたシャツ、一見細身とも取れ
る体はかといって貧弱というわけではなく、むしろ無駄な箇所を全てナイフで
そぎ落としたかのような印象を受ける。だが、それだけならば街のどこにでも
いる刹那的な遊び人という見方もできるかも知れない。
だが、銀二は常人にはわからない感覚で、この男が只の軽薄な遊び人ではな
いことを本能的に感じ取っていた。
佐上銀二、その正体はクカラチャと呼ばれる下賎な氏族の一員。
夜の世界に生き、人の生血で喉を潤す吸血鬼。
常人では感じ取れない超人的な感覚で、その男から微かに感じる場にそぐわ
ない違和感と、軽薄そうな顔の下に僅かに仄見える静かな水面のような冷徹な
表情、そして銀二の血を湧かせる――獲物を狙う獣を思わせる独特の殺気。
男が何者かは知らない。だが銀二が店を出た男の後を追ったのは、言葉では
説明できない直感だった。
人波に溢れる道を、女と連れ立って歩く男の姿。ふらふらと地に足の着かな
いようでいて、だが道行く他人とは決して体を触れず、よほど注意しなければ
わからないほどに絶妙でかつ慎重な足取り。
そして気づいた、この男の後をつけているのは銀二だけではないことに。
三人の男。いずれも揃って趣味の悪い派手なガラシャツを着こんだ遊び人風
の若者。胡乱な目に野卑な笑みを浮かべて、女と歩く男に視線を向けていた。
この男には何かある。
疑問は確信となって、銀二は足を速めて男の後を追った。
対峙
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「ねぇ、どこに連れてってくれるのかなぁ?」
「うふふ……まだよ」
どこかねっとりとした舌に絡ませるような声がウヤダの耳に響く。
耳元に吹き付けられる吐息は生暖かく、火照っていた。まるで粘りつく軟体
動物のように腕に巻きつくように張り付く体から感じる女の体温とシャツ越し
からでもしっかりと感じ取れる押し付けられた肉感。
普通の男ならば、堪らず吸い寄せられてそのまま堕落し溺れきってしまいそ
うなほどに女は魅力的だった。しかし、それら全てはウヤダにとってはまるで
縁のないものだった。
顔に落ちかかる髪を片手で払いのけながら、女に導かれるまま人気の無い道
へと誘導されていく。
その髪も顔も本当のウヤダの姿とは全く違う。精巧な作りの鬘と一枚皮を貼
り付けた顔は、ぱっと見ただけではとても変装とは思わない。
ウヤダ、それは本名ではなく。
生まれてから名すらつけられず捕食の為だけに生かされていた吸血鬼の贄。
かつて吸血鬼狩りの一員として名を馳せていた強化人間。人としての感情や機
微は極限まで削り落とされ、睡眠欲も性欲も食欲も感じることは無い。
店で、兼ねてから目をつけていた女に接触してから程なく。言葉と体を巧に
使い誘蛾灯に引かれる虫のように、人気の無い場所へと引き込んでいく。
サングラスの奥、冷え切った冷たさを帯びた目がちらと後方を見る。
追跡者は確定三人、これはウヤダにとっては想定内。
だが、問題はあとの一人。
「ところでさあ、さっきの話さあ……」
「うふふ、なあに?」
さり気無く女に違う話題を振りながら、ウヤダは突如乱入した不確定要素の
存在に内心舌打ちした。
ここ数日追っていた、男を惹きこんで『水』を与えて下僕とする怪異の存在。
ようやく尻尾を掴みかけたところで、奇妙な乱入者の出現で対応のパターンを
再度練り直さなければならなくなった。
薄暗い夜に不気味な影を作る、工事途中で放棄された半分鉄骨がむき出しに
なった夜目からだと一見骸骨を思わせる廃ビル。
建設されていたならば、そこは受付のあるロビーであったはずの空間が剥き
出しの土もそのままにぽっかりと広がっている。
一歩、ウヤダが女と共に足を踏み入れたその次の瞬間。影のように追跡して
きた者達が一斉に牙を表した。
目の前に飛び出した一人、飛び無しナイフを手に値踏みするようにウヤダの
つま先から頭の先を舐るように眺めた。そしてすぐ脇に立った一人、両手をポ
ケットに突っ込んだまま威嚇するようにゆらゆらと上体を揺らす。そして三人
目は前方の少し離れた位置で張り付いたような薄笑いを浮かべてウヤダを眺め
ている。
「なんだぁ、お前らよう」
「よう、のこのこついてきやがって、めでてえ野郎だなぁ」
すぐ脇に立った男が馴れ馴れしくウヤダの肩に手を乗せる。
「はっ、まあもう逃がしゃしねえよなぁ」
「くくく、上出来だぜ」
いつの間にかすぐ隣で体を押し付けていた女が目の前に立つ男の元に移動し
ている。
「てめぇら、グルかよっ」
「あはは、バカな男ね」
「まあ、運がなかったなぁ」
後ろで腕組みをしつつ薄笑いを浮かべていた男がしゃがれ声で凄む。
ここまでは、ウヤダの予想道理だった。
だが。
時系列と舞台
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2008年春頃
解説
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銀二とウヤダの出会い、の話。頑張って続ける。
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以上
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