[KATARIBE 31696] [HA06P] 二人にとっての家族

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Date: Thu, 24 Jul 2008 00:44:44 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31696] [HA06P] 二人にとっての家族
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[HA06P] 二人にとっての家族
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登場人物
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 トオクさん
 アリスン


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 トオクさん  :「……アリスン……アリスンって、本、なんだよね」
        :>ケメ子ってるアリスンさんに
 アリスン   :「ん? ああ、そうだ」

 とうがらしせんべいをくわえたまま、返事をするアリスン。床に敷いたじゅう
たんに寝転がり、その視線の先の液晶には、ケメコさんシリーズの第三期作品、
「木枯らしのケメコ」が映っていた。返事があったことから、トオクさんは
アリスンの背中に、ベッドに腰掛けながら問いかける。

 トオクさん  :「……本になってる時とか、どういう感じ? ……なんか、
        :イメージ的に、真っ暗で、することなさそうなんだけど」
 アリスン   :「書でいる時か……そうだな、居ながらにして半分眠って
        :いるようなものだな」

 一時停止を押して、振り返るアリスン。髪を振り乱して泣きわめくケメコが、
とたんに黙りこくった。

 アリスン   :「意識はある、だが感情などというものはなく、おぼろげに
        :外の情報が入ってくるくらいだ……だが、大抵は書化した
        :者は極秘の書庫にしまわれるから殆ど外部とは接点を持たない」
 トオクさん  :「……アリスンもずっとそうだったんだ……その、外に出る
        :まで」
 アリスン   :「そうだ……何もなかった、光もなかった……そこに呼ぶ
        :声が聞こえた」

 なぜ、主がそのような問いかけをしたのかはわからない。ただ、疑問に思った
だけなのかもしれない。

 アリスン   :「助けてくれ、と」

[Hisasi]  ぱきん、とおせんべいを割って

 アリスン   :「私は問うた、力が欲しいか? と」
 トオクさん  :「うん……」
 アリスン   :「欲しい、と、答えた。そして契約が成り、私は解放された」

 その口調からは、人喰いの奇書とも呼ばれる彼女の危険さはまったく伝わって
こない。

 トオクさん  :「うん……なんか……こうしてると、やっぱり、アリスンは
        :そんな、危険な……風には思えないな」
 アリスン   :「……それは主だからそう思うのだ」

 アリスンの言葉には、少し安堵の色があった。

 アリスン   :「主も、千沙紀も……私と近しいから」
 トオクさん  :「……そう……なのかな。……私、家だと要らない子だっ
        :たし、学校とかだと、人は、違ってあたり前、って言うよね。
        :コセーテキとか、そんなこと言って」
 アリスン   :「……私は、うまく振舞えない……姉や市原の女達のように」

 独りごちるアリスン。トオクさんも頷く。以前はそうではなかったとはいえ、
上手い振る舞い方を忘れてしまって久しい。

 アリスン   :「私は愚かで……到らなくて……」

 しばし黙って、顔をあげる。

 アリスン   :「姉は愛しているのだ、だが居れば居るほど、私が……どう
        :しようもない駄目な存在に思えてくる」
 トオクさん  :「……私も、そう、だった。比べて、追いつこうとして、
        :すればするほど、難しくなって」
 アリスン   :「……誰も比べてなどいないと、姉はいう。だが、そんな
        :ことはない、皆、心の底で思っている。知らぬ振りをしたっ
        :て、耳に入る」

 皮肉なほどに、アリスンとトオクさんの間には、共通点があるのだった。
違いといえば、姉を愛しているか憎んでいるか。そして、姉から愛されている
か、関心を持たれているかといったところ。

 アリスン   :「善良な振りをしただけの人は嫌いだ、平然と名に知らぬ
        :顔で私を追い詰める」
 トオクさん  :「そうだよね……同じ傷つくのでも、嫌いとか、ちゃんと
        :言われる方が、まだいいよね」
 アリスン   :「そうだ、うわっつらだけ善人の振りをする者など信用でき
        :ない」

 二人は、どこまでも若くて未熟なのかもしれない。ただ純粋で、純粋であり
続けようとして、その純粋さに囚われているのかもしれない。

 トオクさん  :「大切に、しないといけないね……ちゃんと、感情を、
        :見せてくれる人……だから、アリスンも……お姉さんを
        :大事にしないといけないし、私も……友達を、大切にしない
        :とな……」
 アリスン   :「ああ、主は……ちゃんと私にまっすぐな言葉をくれるから」

 すっと近寄って、アリスンは主であるトオクさんを抱きしめる。そのまま、
ベッドに倒れ込んで、まっすぐに瞳を見据えた。

 アリスン   :「私の大切な人だ」

 唇を重ね、しばらくお互いの舌を絡める。もう何度となく交わした、家族と
しての行為。

 トオクさん  :「……アリスンは、ちゃんと聞いてくれるから……私の、
        :しょうもない愚痴も、八つ当たりも……」

 焦点を合わせようとしながら、言葉を紡ぐ。すぐ前方、上にあるアリスンの顔。

 トオクさん  :「怒ってばっかりなのに、ちゃんと、理由わかってくれるし
        :……」
 アリスン   :「ああ、私達はお互いに必要なのだ」
 トオクさん  :「……アリスン、家族は……ずっと、家族、だよね……」
 アリスン   :「……もちろんだ」

 恋人同士なら、いずれ別れることもある。しかし家族は。二人にとっては、
分かたれることのない関係なのだった。
 アリスンは再びトオクさんに口づけて、トオクさんは、身を委ねた。


時系列と舞台
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?日目

解説
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お互いにもっとも好都合な関係。


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Toyolina
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