[KATARIBE 31685] [HA06N] 小説『時効前・7』

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Date: Sat, 28 Jun 2008 22:44:24 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31685] [HA06N] 小説『時効前・7』
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2008年06月28日:22時44分23秒
Sub:[HA06N]小説『時効前・7』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
何でこうも長くなるんだよ、と、半泣きです。
付き合ってやろーかという方だけ、どうぞということで(滅)
*********************************
小説『時効前・7』
=================
登場人物
--------
 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。幽霊を実体化する異能あり。
 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :ヤク避け相羽の異名を持つ刑事。嫁にはダダ甘だったりする。
 銀鏡 栄(しろみ・さかえ)
     :県警零課の一員。主に戦力勧誘、交渉を請け負う。
 川堀ひとみ(かわほり・−)
     :吹利県警婦警さん。22歳独身彼氏なし。サイコメトリの異能者。


本文
----
 泣き疲れるほど泣いて、そのまま眠った。
 お疲れ、と、小さく呟く声を聞きながら。

 そして。


 朝の五時半に、電話がかかってきた。

              **

 稼業が稼業だけに、無茶苦茶な時間にかかってくる電話には慣れている。夜
中の2時3時にかかった電話に起こされることもある。
 しかし、それにしても、朝の五時半というのは多少なりと癪に障る時間では
ある。仮に切ったとしても、もう一寝入りするには時間が微妙に足りないし、
いつもの時間まで起きるには早すぎる。それに、先日は相羽自身も真帆も、か
なり遅くまで起きていたのだ。
「……もしもし」
 どうしてもぶっきらぼうになる声をひそめて返事をした相羽は、次の言葉で
はっきりと目を覚ました。
『リークされたわ。八坂の名前が今朝の朝刊に出てる』
 時にふてぶてしいほど落ち着いた声が、今日はひどく切羽詰っている。零課
と他の県警の間の橋渡し役も勤める女性の言葉に、相羽は短く問いを投げた。
「第一面に?」
『それは無い。オリンピック様々ってとこかしらね』
 聖火リレーにまつわる様々なデモや騒ぎ。そういう情報に挟まって、この情
報はさほど大きくは出ていないらしい。
『でも、犯人は気がつくわ……ああ全く碌なことしやしない!』
 自明の理であることをことさら言いたくなるほど、銀鏡も苛立っているのだ
ろう。
「それで」
 腕を枕に眠ったままの真帆の頭がもぞりと動く。起こさないように声をひそ
めた相羽に、けれども銀鏡が次に投げかけた言葉は、その気遣いをある意味で
無に帰するようなものだった。
『とにかく、証拠固めは後でもいい。犯人を捕捉することが先決だと思う。だ
から……奥さんを連れてきて下さい』
「……」
 その言葉は、意外なものではなかった。否、予測は充分出来ていた。
 それでも……同時に、腹立たしい言葉ではあった。
『なまじの霊能者だと、話を聞く前に参るくらい、かなりもう悪霊化している
らしい。無事に話を聞くなら、真帆さんの異能が早い……奥さんそこに居ます?』
「居る」
『ちょっと電話代わってもらえます?』
 聞えないように短い言葉を選び、返答をする。それでも真帆はその頃には半
ば起きていた。何度か目をこすり、顔を上げる。
「真帆、銀鏡さんから電話」
「え……あ、はい」
 寝起きは互いに相当に良い。携帯を受け取った時点で、真帆はもうはっきり
と目を覚まし、今まで寝ていたとは思えない口調で話していた。
「はい……うわ、それは……はい、すぐ行きます、あ……しょ……相羽とです
か?」
 はい、わかりました、と見えない相手にお辞儀をして、そして真帆は携帯を
返した。
「すぐ来て欲しいって。尚吾さんと一緒に」
「判った」
 携帯を受け取って、起き上がる。
「時間が無いから、できるだけ早く……って」
 そこまで言って、真帆はふっと泣きそうな顔になった。
「……ごめん、朝ごはん作る時間が無いみたい」 
 家事だけは全て、遺漏なく行う。それは言葉にしないけれども、この手伝い
をはじめる時の約束だった。
 仕事は一ヶ月無いと言われた。それも伝えた。
(……そう)
 ほっとしたように言われた。
 それも一つ約束だった。
 だのに。
「いいよ……それより、無理させて悪いね」 
 伸ばした手が、頭を撫でた。
「無理じゃない、ほんとに……」 

 一つ一つ、約束を破っている。
(手伝いたいと思っているだけなのに)
 
「……急ご」
「そだね」

           **

「朝からすみませんね」
 一刻を争うとのことで駆けつけた二人を、銀鏡と川堀が迎えた。
「真帆さんは、とにかく座ってて下さい」
「……はい」
「質問は、川堀がします。相羽君は……真帆さんの警護ね」
「はいっ」
「了解」
「じゃあ……川堀、そちらの部屋に、先に入って用意して」
 はい、と頷くと川堀は、小さな箱のようなものを取り出した。
「ええと……ちょっと待っててくださいね、真帆さん」
「え、はい」
「これ、開ける時にちゃんと準備しとくと、閉じる時が一手間だけで済むんで」
「あ、なるほど」
 かたかたと、何やら準備をし始めた川堀の手元を、真帆が面白そうに覗き込
んでいる。その隙に、銀鏡は相羽をじろっと見やった。
「……あのね、相羽君。先に言っとくけど」 
「ん」 
「君がやるのは、被害者に対する尋問だからね?」 
「ええ、了解してますよ」 
 笑顔で軽やかに答えている……筈なのだが。
 が。
「……ねえ、そこで、相手は死んでるから殴るくらいいいよね、とか、怪我さ
せても真帆さんの近くに来たら復活するから構わないかなとか思ってないね?」 
 ……そりゃもうがっつり思っていそうな顔のまま、相羽はにこやかに笑う。
「歪んだ趣向とかはありませんから、キチンと仕事は全うしますよ」 
「…………」
 人選誤ったかな、と、銀鏡はぼやいたが、
「……お手柔らかに」
 とだけ言うと、そのまま部屋を出て行った。


 殺風景なほどに何も無い部屋の中で、川堀が丁寧に箱を開く。と同時に、す
るりと男の姿が現れた。
「……何だって俺が閉じ込められるんだ!」
 怒鳴った男は、けれどもすぐに真帆に気が付いたようだった。してやったり
というのだろうか、厭な笑いがその顔に浮かぶ。
「お前さんか……こりゃあ」
 言いかけた言葉が、ぴたりとそこで止まった。

 真帆の後ろに、相羽が立っている。真帆からは死角のその位置で、ぎろりと
見やる、その目。

 あぐあぐ、と、男が口を無意味に動かした。

「川堀」
「あ、あ……あ、はいっ」
 男の視線を辿って真帆の後ろを見た川堀が、一瞬真っ青になる。小さく飛ん
だ注意の声に、それでもはっとして男のほうへと視線を戻す。
「……質問させて頂きます。犯人逮捕に、貴方の言葉は直接は使えませんが、
犯人を知ることで証拠固めが容易にもなります。お分かりですね?」
「あ、ああ……」
 どう考えても挙動不審な男を見て、真帆が怪訝そうな顔になり、パイプ椅子
に座ったまま、振り返った。
「……?」
「ん?」
 後ろに立っていた相羽は、少し笑って首を傾げた。
「いえ……」
 いつもの表情、いつもの笑顔を返されて、少々不審気なまま、それでも真帆
は前を向く。途端に相羽の背中の後ろから、真っ黒なオーラが立ち上ったよう
に見えたのは……恐らく川堀と被害者こと八坂の、気のせいだけではなかった、
のだろう。


 職業は、金融業。というより悪徳金貸しに近い。
「犯人はね、矢部。矢部正信……って奴ですよ」
 それでも相羽を憚ってか、ぎりぎり丁寧語を使いながら、しかし吐き出すよ
うに八坂は言うのだが。
「矢部は、金を返せなかった、ということですか?」
「そのとおり」
「利息が異常に高いということは」
「……あのねえ。3ヶ月後に返せるかどうか当ても無い奴に、利息無しで貸す
ような莫迦が居たら、お目にかかりたいですよ」
 そりゃまあそうかもしれないが、と真帆は思う。それにしても、と。

 矢部という人が金を借りたのは、丁度産まれたばかりの子供に、先天性の病
があったからだと言う。決して治らないわけではない、けれどもやはりまとまっ
た金が要るような、そういう病。
「あのねえ。さっきから聞いてれば俺が非常に悪者みたいですがね」
 パイプ椅子に座って、男は川堀と向かい合う格好になっている。安い折りた
たみ式のテーブルに片肘を置いて、とんとん、と指でその板を叩く。苛つくほ
ど、その音はとととと、と、早くなってくる。川堀の横に座っている真帆と、
その後ろに立つ相羽へ目をやりながら、男は言い募った。
「考えてみなよ。そりゃあ子供を助けたい。尤もだよ。だから俺は焦げ付きそ
うなのを覚悟して金を貸したんですよ?」
 現にそんだけやったんだよ、と言い張るが。
「だけどねえ……そりゃあ矢部が仕事してたのは知ってます。でもね、そうやっ
て金を借りといて、奥さんは家にずーっと居るんだよ?それって変でしょ?そ
ういう場合、やっぱり仕事とかするもんでしょ?」
 子供が生まれて、まだ3ヶ月ちょっとというところだったらしい。そういう
場合、仕事をしていたって育児休暇というものがあるじゃないか、と、真帆は
思ったが、無論言って通じる相手ではない。
「だから俺はね、ちゃあんと仕事を紹介するって言ったんですよ?確かに産後
だからきついだろうし、座って出来て時間給もいい仕事をね?」
「つまり?」
「……座ってお酒入れて、ちょっと機嫌とって笑うくらい楽勝でしょ?」
 ああやっぱし、と、真帆は溜息をついた。川堀は一見平然としたまま、それ
でも肩を少し落とした。
「…………それを、奥さんも、矢部さんも断った、と」
「全く莫迦だよね。だから、俺は言いましたよ。じゃあもっと割のいい仕事が
ありますよと」
「と、言うと?」
 男の口は軽い。何といっても既に死んでいるのだ。
「一日に、まあ2時間くらい俺に付き合いなさいと。ねえ、一日10万だよ?
こんな割のいい仕事断って、それで返せないってんならそりゃあ取り立てます
よね?」

 つまり。
「要は、それが目当てだったんですね」
 極力淡々と言いながら、けれども川堀の表情には隠し切れない嫌悪の念が浮
かんだ。

 せめて、と真帆は思う。
 せめて、彼がその場で見つかっていれば……そしてこのような事情をきちん
と調べられていれば、この矢部、という人の罪状は決して過剰に重くなること
はなかったのではないだろうか、と。
 無論人を一人殺しておいて、軽い罪で済むわけはない。しかし、こんな話を
聞かされ、その上で『もし聞けないなら今すぐ返せ』くらいのことを言われた
としたら。
(計画性全く無しでも、普通……手ぐらい出そうだもの)

「ひどい話でしょう」
 それでも被害者は、堂々と言い切る。
「頭を殴って殴って、俺が死んだ後も何度も何度もだよ?腕は折られるし、膝
も折られるし……普通そこまでやりますかねえ?」
(そこまでしないと、蘇ってまた奥さんを狙いそうだったからじゃない?)
 内心吐き捨てた真帆の顔を見て、男は恨めしそうな目を上げた。

「私は、被害者なんですよ」
「まったくもって」
 どこまで本音なのか、どこまでが虚勢なのか。判らないのは事実だが、それ
でもこれだけ聞けば、嫌悪感を持つには充分過ぎる。真帆の背中がこわばるの
を見て取ってか、ふっと相羽が口を開いた。
「正しく裁いて欲しいと思うのは間違ってないでしょうが」
「まあ、そうだろうね」
「だとしたら、ね」
 八坂にしても、若い女性に敬語を使うより、いかにも刑事然とした男に話し
かけるほうが楽なのだろう。どんどんと口が達者になっている。
「一件が終わるまで、私はここに『生きている』ことを要求するのは間違えて
いないんじゃあありませんかね」
「それはできかねるね」
「それは話が違うでしょう」
 肩をすくめて言った相羽と同時に、真帆が憤然として口を挟んだ。とん、と、
軽くその肩を叩いて、相羽が言葉を続ける。
「何分、このやり方で得られた情報は、表向きの証拠にはならない。あんたが
『生きている』必要はないでしょ?」
「うわ、きっついね刑事さん」
 言葉とは裏腹に、八坂はにやにやと笑っていた。
「でも、必要がなくても、できるんじゃないですかね」
 にやにやと、過剰なほどに笑いの表情を浮かべた顔の中、目だけは笑うこと
なく真帆をじっと見ている。その居心地の悪さ、気味悪さに、真帆が顔を背け
た時に。
「そちらの人、刑事さんの奥さん?」
「っ?!」
 否定すればいいのか肯定したほうがいいのか。一瞬混乱した、真帆の表情そ
れ自体が返答となったのだろう。八坂はにやりと笑った。
「奥さんが協力してくれれば、助かるんだけどね」
 
「真帆」
 ぴしり、と、声が飛ぶ前に、真帆は首を横に振っていた。
「……そりゃあ、どういうことです?」
 先日に比べ、八坂の言葉は格段に丁寧なものになっている。しかし。
「私は、殺されたんですよ?」
 身を乗り出して言い募る、その表情の……卑しさ。
「もちろん、こちらも知ってます」
「私は、被害者なんですよ?犯人もわかってるんですよ?殺された本人が言う
んだ、これくらい確実なことはないでしょう?」
 繰り返す男に向かって、いっそ冷淡なほどあっさりと、相羽は応じる。
「しかしね、それを実証するための表に出せる証拠がない以上、犯人だと決定
する根拠はない」

 手を握り締めながら、真帆は黙ってそのやり取りを見ている。
 実証するための表に出せる証拠。もし、この八坂という男が生き返り、かつ
自分は一度殺された、相手は矢部という男だ、と、言い切ったとしたら。
 無論証拠にはならない。ならない、が。
(もしもそういう姿が、マスコミによってテレビにでも流されたら)

「つまり俺は泣き寝入り、だと?!」
「その証拠を探し出すのが我々の仕事です」
 悔しそうに、八坂が相羽を見た。

「……俺が生きていたら、相当話は違うだろうにね」
「でしょうね」
 やはり返事は冷淡なまま、相羽は少し肩をすくめる。
「死んでいるから法に守られない」
 ぼそり、と男は呟く。ゆっくりと身体に力が篭るのが判る。
「正義は死んだら消えるってえんなら」
「なら?」
「……なら!」
 次の瞬間、八坂はバネが弾けるように動いた。

 恐らく殺された時に着ていたのだろう、上質のセーターに包まれた手が伸び
る。一瞬反応の遅れた真帆の左の手、昨日も握り締めたその手首を、八坂の手
が握り締めた。

「!」
「さあ!」
 犯人を捕まえに……と、多分言いかけたのだろう、八坂の言葉がそこで止まっ
た。
「……ぐううっ」
 真帆の手を握る、その手を更に相羽が掴んでいる。万力のような力で、その
手が八坂の腕を締め上げる。
「う、うあああっ」 
 痛みに耐えかねて、八坂が手を開く。それを確認して、
「川堀」
「はいっ!」
 八坂の手の元から真帆の手を引き抜く。と同時に川堀が、先程から用意して
いた小さな箱を男に押し付ける。
「真帆さん、離れて!」
 その声に、座っていたパイプ椅子を倒す勢いで立ち上がり、そのまま廊下の
ほうに進む。
「卑怯だ……あいつをっ!」
 その声を背中ではじくようにして進む。数歩離れたところで、もう大丈夫で
す、と声がかかった。
「大丈夫です。封じましたから」
 恐る恐る歩を戻し、部屋の中を覗き込んだ真帆に、川堀はにこっと笑って、
手元の箱を示した。

 安堵した顔。そして一瞬後、その身体がかたかたと震えだす。
 止めようとしているのだろう。けれども、意識し、止めようとすればするほ
ど震えは大きくなる。

「……ごめんなさい……」
 肩の上に、相羽は手を置く。家の外では手を握ることも恥ずかしがる真帆が、
全く無反応のまま、ただ震えている。
「…………あやまらなくていい、協力ありがとう」
「……はい」
 
 だから反対したのだ、と、相羽は心中で呟く。
 だから、この仕事を請け負うこと自体。いや、県警零課に関わること自体反
対していたのに、と。
 ……けれども実際、彼女の異能がなければ、この一件の目鼻がつくのは、控
えめに言ってももっと後れたろうとも思う。
 ……けれども。

「……あの!」
 ひくり、と灰色になった顔を振り仰ぐようにして、真帆が声をあげる。
「真帆」
「その……その人、でも、あたしの傍に近づかせたら駄目です」
 判っていることだ。そして同時に、こちらが判っているということを、真帆
自身も知っている。だというのに、そのことを必死になって繰り返す。それだ
け動転しているということなのだろう。
「真帆」
 抱き締めてやりたいのを堪えて、両手で肩をぽん、と撫でる。
「……もう、この件にこれ以上関わらなくていい」
「…………」
「……いいから」
 屋根の上で日向ぼっこしながら眠る猫に、以前彼女は自身を例えたことがあ
る。そういう一般人代表なのだ、と、自嘲交じりに。
 その屋根の上から飛び降りたこの猫を、これ以上地上に置いておきたくない。
これ以上辛いものを見せたくはない。
「あとは、我々の仕事だから、ね」
「…………はい」
 がっくりと肩を落として呟くように答えた声に、もう一度だけぽん、と、肩
を叩くと、相羽は川堀のほうを向いた。
「矢部のほうに付く。川堀はそれの始末を」
「はい」
 それだけ言い置くと、部屋から半ば走り出てゆく。それを見送ってから、真
帆は細い声で尋ねた。
「その人……そこから、出られないんですよね?」
「もちろんです」
 鼻息荒く、川堀が頷く。
「こうしとけば大丈夫。後はいざとなったら……どっかに頼んで無理矢理成仏
させるって方法もあるんですから」
 だから安心してください、と、言いかけた言葉を、やっぱり細々とした声が
さえぎった。
「…………自分で殺したい、んだろうなって……その気ばかり、満々だから」
 落とした肩が川堀にすら哀れに見える。
「真帆さん……」
「気をつけて、下さい」
「ええ、無論です。だから」
 真帆さんはもう、安心して下さい、と続けようとした川堀の言葉がそこで止
まった。軽く腕にかけた手からほんの少し、けれど確かな違和感が伝わってく
る。
「真帆さん」
「え?」
 ちょっと驚いたような声を他所に、川堀は手を伸ばした。きょとんとする真
帆の額に手を伸ばす。
「真帆さん、熱あるんじゃないですか?」
「……え?」

時系列
------
 2008年4月〜5月

解説
----
 八坂との対決。
*********************************************

 てなもんで。
 であであ。
 
 


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