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Date: Sun, 25 May 2008 01:14:03 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31661] [HA06N] 小説『本の帝国 外伝・独逸語出張版』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20080525011403.557b7e1b.hukira@m6.gyao.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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外伝、といっても他の人が書いているだけです。
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小説『本の帝国 外伝・独逸語出張版』
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登場人物
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高瀬夕樹（たかせ・ゆうき）：http://kataribe.com/HA/06/C/0581/
大学生で歌よみ。詩歌を読むと、怪異がおこる。
関口聡（せきぐち・さとし）：http://kataribe.com/HA/06/C/0533/
周囲安定化能力者。片目は意思と感情を色として見、片耳は異界の音を聞く。
この春より大学生。一人暮らし開始。
ケイト：
蒼雅紫が生み出した毛糸のよく分からない生き物。癒し系。
本編
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聡の部屋の窓から見える空は少し薄紫色に染まり始めていた。部屋の中では
聡と夕樹が卓袱台を挟んでそれぞれ本を読んでいる。卓袱台の真ん中ではケイ
トが手持ちぶさたに腕（らしき部分）をぶらぶらとさせていた。片側には古本
屋の袋があり、その中から何冊かの本が姿を覗かせている。
聡はふと顔を上げた。部屋はいつの間にか暗くなっている。立ち上がると、
照明のスイッチを入れた。夕樹がそれに気づいて本から目を離した。そして、
時計を見る。
「ああ…… もうこんな時間なんだ」
うーん、と大きくのびをした。そのまま首を横にして本棚の方に目をやる。
聡が講義で使っている教科書とかが並んでいた。その中に独和辞典もある。
「ドイツ語ってさ、分かりにくいよねえ」
言われて聡は夕樹を見、それから彼が見ているものを見て納得した。
夕樹も第二外国語はドイツ語を選択している。勿論、二人が同じ講義を取っ
ているというわけではないが。
「うん。格とか全然覚えられないんだよねえ」
「名詞も男性名詞とか女性名詞とかあるし」
聡は大げさに溜息をついた。
「なんで、こんなにややこしい言語をドイツ人は話せるんだ」
それは理不尽な怒りというものである。
「そんなことを言ったら節の順番は変わっても良いとか、「は」と「が」の使
い分けとか日本語も結構ややこしい言語なんだけど」
夕樹の言葉にそうか、と聡が呟いた。
「あとさ」
「ん？」
「ドイツ語って怒っているように聞こえない？」
夕樹に言われて聡は斜め上を向いた。講義で先生がドイツ語を喋るのを思い
出してみる。
「ああ…… うん。確かに勢いがいいよね。口げんかしたら絶対に負けそう」
あはは、と夕樹は笑った。
「巻き舌が入っているからそう聞こえるのかな…… そういえば、ドイツ語の
エルって発音できる？」
夕樹の質問に聡は首を横に振った。
「それ無理。ドイツ人の先生は簡単にやってるけど」
ルルルと二人で何度か言ってみるが、うまく舌が回らずに「ル」の口で空気
が抜けてしまってスーという息の音しかしない。
「舌がつりそう……」
夕樹はそう言って口を大きく開けた。
「単語がなかなか憶えられないんだよね。ぐりゅーねわると、とかおーべる
しゅたいん、とかは憶えられるし、憶えているんだけど」
聡から出てきた言葉に夕樹はぶふっ、と小さく吹いた。どちらも銀河英雄伝
説という小説に出てくる登場人物の名前である。
「みったーまいやーとか、ろいえんたーるとかも」
「そうそう」
聡が笑って頷く。
「でもさ、どれにしても固有名詞だから憶えてても役に立つことはないよね」
「そうなんだよね……」
二人して溜息をつく。それを真似するかのようにケイトも同じようなポーズ
を取った。
時系列と舞台
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2008年５月。本の帝国（聡の部屋）にて。
解説
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得てして趣味から得られる知識は学業には役に立たないもので。
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