[KATARIBE 31443] [HA06N] 小説『カモさんこちら』

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Date: Wed, 5 Dec 2007 01:29:53 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31443] [HA06N] 小説『カモさんこちら』
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2007年12月05日:01時29分50秒
Sub:[HA06N]小説『カモさんこちら』:
From:久志


 久志です。
先輩、真帆さんのお誕生日プレゼントを買うの図。

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小説『カモさんこちら』
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登場人物
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :ヤク避け相羽の異名を持つ刑事。嫁にはダダ甘だったりする。
 お店の人
     :カモを見つけてやる気満々

カモ来店
--------

 まともに買い物に出る、というのも随分久しぶりのことのような気がする。
 無論、今まで私物を買うのに何度となくショッピング街に足を運んだことは
ある。仕事用のスーツや靴などは消耗品と変わらず大抵は数着をまとめ買いで
済ませているし、普段着も仕事で着つぶしたワイシャツやスラックスなどをそ
のまま流用している為、まともに何かを買うために出かけるというのは新鮮だ。

「さて……やっぱり、ここらかねえ」
 足を向けたのは、平日でも人の入りが多い近鉄吹利ショッピングセンター。
 何度か足を運んだことはあるが、いつも立ち寄るスーツ売り場を素通りして
エレベータへと向かう。

 普段ならばまず訪れない婦人小物売り場、専門店が立ち並び、ショーウィン
ドーには薄布を張り巡らせた中にオブジェのように飾られたアクセサリーが並
んでいる。

「ふぅん……」

 何気なくのぞいたショーウィンドーの指輪を眺める。
 シンプルなホワイトゴールドのリングに花びらをかたどるように填められた
石が照明できらきらと光っている。

「結構綺麗なもんだね」
 真帆の指にはまってる図を想像しつつ、値札を見る。
「……なるほど」
 勢いで買うには少々値の張る代物だった。

「どうしたもんかね、まあ……虎穴に入らずば、か」
 とりえあず、まず行動。
 女性向け宝石売り場、普通ならば男性一人では少し躊躇しそうなものだが、
まるで意に介さず堂々と足を踏み入れる。

「いらっしゃいませ」
 相羽より4・5歳ほど年配と思われる女性店員がにこやかに会釈で出迎える。
「何をお探しですか? プレゼントでしょうか?」
「ああ、ちょっと贈り物でね、少し見させてもらうよ」
「かしこまりました、どうぞ、ごゆっくりご覧になってください」
 いかにも慣れた仕草といわんばかりに、軽く片手を挙げて鷹揚に応じる姿を
見て女性店員の目がかすかに光った。

 これは、買う。

「……ふむ」
 足を止め、腕組みをして、ショーウィンドーに飾られた様々な品を見据える。

 網目を思わせるようなゴールドのデザインリング。
 丸みを帯びた緩やかなラインのプラチナリング。
 シンプルなデザインに一つだけはまったダイヤモンド。

(石つきはちょっとねえ、でも……この一つはまった奴なら、でも、水仕事と
か多いし、つけたりはずしたりだからもっとシンプルでも?)
 腕組みをしたまま眉間に立てじわを寄せてしばし考え込む。

 手を開いて、握って。
 真帆の指。
 きっちり爪が切ってあって、すらっとしているわけではないが、ほこほこと
暖かくて、毎日しっかり家事をやってるのに荒れたところを見たことがない。

(指太さは……うん、7号で……ああ、そういえば編み物してる棒が当たると
こはちょっとつるつるしてて、握った時の肌の感触がちょっと柔らかくて、
あれだね、子供の手みたいな……)
 何度も真帆の手をイメージしつつ、目の前のショーウィンドーに飾られたリ
ングと重ね合わせて、思案する。
(やっぱりシンプルで飽きの来ない……飾りはあんまりないほうがいいね。
それに毎日つけるとなると、プラチナがいいかなあ……)
 視線をさまよわせつつ、だんだん目測がつき始めた頃。

「なにかよいものは見つかりましたか?」
 ここぞ、と。タイミングを見計らって女性店員が声をかける。
「ん、ああ……なんとなくね」
「どなたかにプレゼントでしょうか?」
「うん、妻にね」
 あっさりと答える。
「そうでしたか、奥様のお誕生日かお二人の結婚記念日の贈り物か何かで?」
「誕生日でね、ちょっとリングを贈ろうかと思って」
「すると、結婚指輪とは別でというイメージでしょうか」
「うーん、実を言うと俺ら結婚指輪を買ってなくてね。でもやっぱり指輪はプ
レゼントしておこうかなって」
 きらり、と。
 店員の目が光った。
「そうでね、では毎日お召しになれるような品を、と」
「うん、シンプルで飾りはあまりなくていいから、素材は……やっぱりプラチ
ナかなあ」
「では、こちらのデザインなどはいかがでしょう?」
 あらかじめ用意してありましたといわんばかりの手際のよさでショーウィン
ドーの鍵を開けて、相羽の目の前にリングを見せる。

 独特な曲線と、どこか柔らかそうな印象を受ける丸みを帯びたデザインのシ
ンプルなプラチナリング。

「へぇ」
「いかがでしょう、こちらの品ならば。シンプルですし、毎日お付けになって
も飽きの来ないデザインかと思います。奥様もお気に召すかと思いますが」
「うん、いいね……ちょっと見てもいい?」
「はい、どうぞ。お手にとって」
「ありがと」
 すすめられた指輪を手にとって。
 丸みを帯びたフォルムは、冷たい金属の質感でありながらどこか暖かそうに
も見えて。

「ふぅん……いいね」
「ええ、こちらはとても人気のあるデザインでして。このリングを結婚指輪に
するという方もたくさんいらっしゃるんですよ」
「……へぇ」
「折角のご機会ですし、日頃支えてくださっている奥様への感謝の気持ちを込
めて、お考えになってはいかがでしょう?」
「ふむ」
「物で気持ちは表せませんが、相手を想って感謝する気持ちは込められます」
「……ふむ」
「よろしかったら、イニシャル刻印などもいたしますが。いかがでしょう?」
「そう……だねえ」

 しばし停止。

「これ、七号サイズみせてくれる?」
「はい、かしこまりました」


時系列
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 2007年10月半ば
解説
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 真帆の誕生日に向けて、プレゼントを見に行く相羽。つーかカモ。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上


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