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Date: Sun, 18 Nov 2007 01:49:53 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31429] [HA06N] 小説『 2007 年のプレゼント・上』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200711171649.BAA52210@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 31429
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31400/31429.html
2007年11月18日:01時49分53秒
Sub:[HA06N]小説『2007年のプレゼント・上』:
From:いー・あーる
というわけで、相羽風邪のせいで(あれ?)
先手はこちらから!<おい
というわけで、この話です。
ちょっと短めですが、一つにすると長すぎるということで。
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小説『2007年のプレゼント・上』
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登場人物
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相羽真帆(あいば・まほ)
:自称小市民。多少毒舌。幽霊を実体化する異能あり。
相羽尚吾(あいば・しょうご)
:吹利県警刑事課巡査。真帆にはめっさ甘い。
本文
----
今まで一度たりとも、県警の女の子にプレゼントあげたことなんかない、と。
そういう風に聴いたことがある。
「ほら、全員にあげるか、全員にあげないかの二択しかないし」
それはそうなんだけど。
「だって、際限ないじゃん、そんなの」
確かにそれはそうだ、とは思う。結構県警って女性多いし、そりゃ全員に、
とかやってたら大変かも……と思っていたら。
「俺、もらう方がすきだし」
「…………」
ああやっぱり、と思うのが半分。でも……
「…………そうやってきっと色々貰ったんだね」
貰っていたのは知っているし判っている。とってももてる人で、今だってバ
レンタインのチョコレートは大きな紙袋に一杯貰ってくる。確かにあれに一件
一件お返しするのは大変だし、貰うばっかりになっているのは判る、けど。
「……まあ、おやつとかはよくもらってた」
この人がお返しをしないのは知っている。
だけど、お返しを欲しい人は、本当に一杯いた、と思う。お返しを、と露骨
に言わなくても。
それに、お返しが無くてもあげたい人は一杯居たんじゃないかと思う。
それっておやつや和菓子で……終わっていたのかな。
「…………それで済んでたのかな」
何となく……そっぽ向いてしまってそう言うと、尚吾さんはちょっと黙った。
「……そんだけ」
そして何となく、居心地悪げな声が聞こえた。
自分でも間違えているなと思う。尚吾さんが何を貰おうが、それこそこの人
の勝手なんだし、人に何かあげたことは無いって言うんだから、それは安心し
ていいんだし……って安心するほうがおかしいのかもしれないけど。
「……真帆?」
「…………」
何となく、引っ込みがつかないというか、何となく座りが悪いというか、横
を向いてたのだけれど。
ふわん、と、頭の上に手が乗っかった。
「……あたしが、ふうん、それ良かったね、もっともらえたらよかったねって、
言ったらよかったんですか」
「……それもやだ」
じゃ、どうしろって言うのだ、と、正直思ったけど……思った途端目頭が熱
くなって。
「おいで」
言葉と同時に、ぎゅっと……抱き締められた。
「…………尚吾さん、時々ひどいよ……」
「うん……」
「……そんなの、知りたくないのに」
何人にもてた、とか。何人と付き合ったとか。
今、一番大事なのは真帆だ、とこの人は言う。何度も言う。それを疑うこと
はもう無いし、それに疑う理由も全然無い。
だけど、出会う前。
その時に、何人も何人もの女性と付き合っていたのを知ってる。どういう付
き合いだったのかについても……多少は。
その人達から、何を貰ったんだろうって……考えると。
ふわり、と、手が頭を撫でる。
「悪かった」
大きく吐いた息と一緒に、その声が耳元で聞こえた。
**
後から考えたら、確かにその週、尚吾さんは妙に嬉しそうにしていたと思う。
時折カレンダーを見てはにこにこしていたし、指を折るようにして勘定してい
るのも、何度か見たし。
(どうしたの?)
(ううん、別に)
別に、ほんとそれだけだったから……あんまり気にとめてなかったんだけど。
その日、尚吾さんは割と早めに帰って来た。
「お帰りなさい、早かっ……」
「ただいま」
言い終わる前に、ふわあっと腕が伸びて、視野が濃い灰色一色になった。
「……え、あのえと……?」
「誕生日、おめでと」
「あ…………」
そういえば、と……実際このところ、尚吾さんの休みが結構色々動いてたの
で……その時あたしも、ようやく思い出した。
思い出して。
(あ、でも……あんましありがたくない、かも)
年齢的に、誕生日を忘れたいこともある……とか思ったけど。
でも、何だかそんなことを横において、あんまり嬉しそうにそう言ってくれ
るから。
誕生日を、あたし以上に喜んでいてくれるから。
「……有難うございます」
それだけで何だか、身体の中からほっこりと嬉しくなった。
でも。
ついつい……というかこれは思い出さざるを得ない。
尚吾さんの誕生日。この人は仕事で、帰ってくるのも遅くなって……確か、
朝、出てゆくときにお誕生日おめでとうと言い損ねたら、帰って来たのは夜中
を過ぎてたんだっけ。
「……や、でも、今年はあたしも、殆ど何もしなかったからっ」
「いいよ、いつも一杯もらってるから」
何にもしてないよ、と、言いたかったけど。
だけど……何だか抱き締められている腕から……上手くいえないけど、あた
し本人以上に喜んでいる気配が伝わってきて、それ以上何も言えなくなってし
まった。
「あの……ごはん、出来てるよ」
「うん」
こく、と、頷く動きと一緒に、ようやく尚吾さんは手を緩めた。
見上げた顔は……本当に本当に、嬉しそうだった。
時系列
------
2007年11月8日
解説
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そろそろ忘れても構わない、真帆の誕生日の風景。
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てなもんです。
であであ。
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