[KATARIBE 31409] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・五回目』

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Date: Sun, 28 Oct 2007 00:25:57 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31409] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・五回目』
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2007年10月28日:00時25分57秒
Sub:[HA06N]小説『夏の木造校舎の怪・五回目』:
From:いー・あーる


というわけで、いー・あーるです。
頑張って書いてます。
後一度で、この話は終わりです。

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小説『夏の木造校舎の怪・五回目』
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登場人物
--------
 相羽真帆(あいば・まほ)
   :
 橋本保鷹(はしもと・やすたか)
   :橋本家四男。ワーモグラな男の子。ぼけぼけだけど頭がいい。
   :同じ塾に通う御羽仁藻とはトップを争う仲。
 御羽仁藻(おわ・にも)
   :御羽貞我の妹。小6。ツンデレブラコン。 
   :同じ塾の橋本保鷹とはトップを争う仲で、コンプレックスを感じている。 

本文
----


 ぎしぎしと鳴る階段を踏んで、上へと登る。
 4階が最上階だと、竹下は言った。
「え……僕、5階まであるのかと思ってた」
「その話を一体、どこで仕入れてきたね」
 面白そうに、そして同時に不思議そうに竹下が保鷹に尋ねる。
「え?……その子達が」
「ああ、なるほどね」
 頷きながら、それでも竹下は首を傾げる。弾みで懐中電灯が揺れ、丸い光が
ふらふらと残像を残しながら跳ねた。
「それが、どうか……?」
「ああ、いやね、ここの校舎で、一度そういう怪談が流行ったことがあるのさ。
あの時は夜になると、生徒達がホントかどうかってやってきてねえ」
 思い出して辟易したような顔になった竹下は、やれやれ、と、息を吐いた。
「まあよく思いつくもんだよね。一階から四階まで、全部の階に人が立ったら、
五階へ行く階段が出てくる、とか」
「へぇ」
 仁藻も、ここまでくると流石に怖さが薄れたらしい。真帆の腕にしっかり掴
まっているのは変わらないが、好奇心一杯の目をきょろきょろと周囲に走らせ
ている。
「他には……何だっけねえ……ああ、踊り場ごとに印をつけながら登ると、最
初は5つ印がつくけど、降りるときには印が4つしかない、とか」
「……へえ……」
「それも一度に何組も試したら、片方は五階にゆけても他の組は五階に行けな
いとか、そりゃあもう幾つも」
「それ……本当なんですか?」
「まさか」
 あっさり言うと、竹下は笑った。
「私はずっとここの警備員をしているけど、ここに五階が出てきたことなんか
無いよ」
「一度も?」
「一度も。どんな上がり方しても」
 話しながら四階に辿りついて、じゃあ、石を、と、真帆が言いかけた時に。
「ああっ!」
「ほんとだっ!」
 小学生二人が騒ぎ出したのを、竹下と真帆は目を丸くして見やった。
「どうしたの?」
「だ、だってほら、上に登る階段がっ!」
 震える手で仁藻が示したのは、今まで登ってきた階段とは逆の側にある、確
かに上に向かう階段だった。おっとりしている割に胆の据わっているらしい保
鷹も、流石に目を丸くしてその階段を見ている。
「…………」
 数秒後。
 竹下が、吹き出した。

「ああ、そういうことかね!」
 その他にも、ああそうか、判ったぞ、等、何やら腑に落ちたことだけは良く
判るのだが、後の三人には、今ひとつその笑いの意味がわからない。きょとん、
として見ていると、竹下はようやく笑いを収めた。
「いやね……うん、そうだよ、お嬢ちゃん。確かに階段はあるし……ああそう
だ、一応はあれも踊り場と言えるのか」
「え?」
「……屋上に出る階段なんだよ」
「え……?」
「だから、長さは今までの半分くらいなんだけど、扉の前に、少し広いところ
があって……ああついでだ。行ってみるかね?」
「あ……あ、ちょっと待って下さい」
「石は、ほら、そこに置いて」
「はいっ」
 手すりの上に、保鷹がそろっと石を置く。
「さあ、じゃあ、幻の五階行きの階段を上がってみるかね」
 楽しそうに、竹下は懐中電灯を振った。


 かたん、と、扉を開けた途端、四人が四人とも目を見張った。正確に言えば
仁藻だけは、目を丸くした直後に真帆の後ろに貼りついたのだが。
「……ってこらこらこら、あんたここで何をしてるんだね」
 屋上。周囲に巡らされた柵のところに、しゃがんでいる少女が居る。暗い中、
手探りで何やら探しているらしいのだが。
「危ないよ。何をしてるんだね」
 呆れたような竹下の声に、少女は顔を上げた。
「…………無くなっちゃったんです」
「って何が?」
「カセットが」
 ぽつぽつと言う少女の髪の毛はふっさりと長く、それをポニーテールにして
後頭部高く結っている。可愛らしい顔立ちの少女は、しょんぼりと首を垂れた。
「カセットって……カセットテープ?」
「今日、貰ったばっかりなのに。せっかく、これ好きな音楽だから聴いてみろっ
て、山根君がくれたのに」
 泣きそうな顔の少女を、四人はしばらく眺めていたが、少女が暗い中、また
探しに戻りそうなのを見て、真帆が慌てて声をかけた。
「それ、ここで落としたの?」
「……判らないんですけど、あたし、ここで貰ったから」
「ああ、それで」
 頷きかけて、真帆は一つ手をぽん、と打った。
「詳しく話して下さいな、その話」
「え?」
「貰った時のこと」
「…………え……」
 

 要するに。
 片思いの彼氏から貰ったテープ、らしいのである。
「で、音楽の趣味が一致したんだね」
「うん……あたし、お母さんが80年代の洋楽が好きで、よく一緒に聞かせて貰っ
てたから、結構話が合って」
「それで、カセットを?」
「うん。そういうの好きなら、多分このテープの曲好きだと思うぞって」
「それ、貰った時、ここに誰か居た?」
「え?……あ、山根君は居たし、あたしも友達と一緒にご飯食べてたから」
 それはあまり推奨されたことではないのだろう。竹下が少々眉をしかめる。
「とすると、貴方がカセット貰ったことを知ってる人、居るのね?」
「うん……うん、ご飯を一緒に食べてた子は」
 それが何か、というように首を傾げる少女を見て……そして真帆と仁藻は顔
を見合わせ、うん、と互いに頷いた。
「山根君って……他に、好きな子居るんじゃないですか?」
 最初に口を開いたのは仁藻のほうだった。少女は首を傾げる。
「……え?」
「あ、いや、山根君『が』じゃなくて、山根君『を』好きな子」
「それは…………」
「いるのね」
 疑問というより確認のような真帆の言葉に、少女はためらったが、ちょっと
頷いた。
「……じゃ、それだ」
「え?」
「多分、その子が……盗ったんだと思う」
「そんなこと無いよ!」
 急に少女は声をあげた。
「だって、その子とあたし、仲良くないもの。あたしその子には言ってないし、
友達だってそんなことわざわざ……」
「……その友達が、ほんとは、その、山根さんって人のこと、好きだったりし
ないですか?」
「え?」
 ちょっと上目遣いにそう言った仁藻の言葉に、少女は今度こそ、目を丸くし
たまま動きを止めた。
「そういうことって……あるものよ。よく」
 真帆の言葉に、少女は何か言い返そうとするように息を大きく吸い……
 ……そしてふっとその息を吐いて、うつむいた。


 その友達に聞き質すべきだ、いやそれは後のほうがいい、貰った男子に連絡
すべきだ、等、色々意見が出尽くしたところで。
「とりあえず、今日は帰りなさい」
 竹下が最終的に主導権をとった。
「まあ、もしその友達が取ったのなら、あんたがテープを無くしたことまでは
その……ええと山根君にばらさないと思うがね。もし、明日、そのことを山根
君が知ってたなら、その仲の悪い子のほうがテープを取ったんだと思うけど」
「……もし、知らなかったら……?」
「友達のほうって可能性も、あるだろうね」
「…………」
 しょんぼり、と、肩を落としてしまった少女を見て、四人が四人とも少々困っ
た顔になったが、
「とにかく、お母さんが心配するから帰りなさい」
 その、竹下の言葉には、少女も頷いた。
「…………帰ります」
 しおしお、と、鞄を持ち上げ、そして少女は足を引きずるように歩き出す。
「あ、ねえ」
「……はい?」
「ちょっとだけ、元気の素」
「え?」
「はい、手を出して」
 言われるままに差し出された手の上に、真帆は、またキャラメルをころん、
と転がした。
「……え?」
「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、元気の素……ね?」
「…………」
 きょとん、としていた少女の顔が、少し笑って……そして急にくしゃんと
崩れた。ぽろぽろ泣き出したのを見て、真帆は勿論、あとの三人もおろおろと
慌てたのだが。
「……はいっ」
 ごしごしと目をこすり、キャラメルの包み紙をはがして口に含む。そして少
女は、にっと笑ってみせた。
「ありがとう……うちに帰ります」

 じゃ、と、少女が屋上を出て、階段を下りてゆく音を聴きながら、真帆達三
人は竹下を待ってしばらくそこに佇んだ。ついでだからね、カセットがあるか
ないか一応は見ておこうじゃないか、と、竹下は懐中電灯を持って屋上を見回っ
ている。
「あの人、大丈夫かなあ」
「まあ……そういうことはよくあるって言うから」
「そう、なんですか?」
 仁藻に訊かれて、真帆はちょっと詰まった。確かに相羽に惚れた相手はそれ
こそ山程居たのだろうが、自分の友人にはそういう相手は居ない。
「……そういう風に、聴いたことはある、かな?」
「ふぅん」
 それ以上の突っ込みが無かったのには、真帆もちょっとだけほっとした。


「さて、やっぱり無いね」
 懐中電灯を振り回しながら、竹下が戻ってくる。
「やっぱり、ですか……」
「まあ、そんなもんだろうね」
 ふう、と、竹下は息を吐いたが、
「ああ、そうだ。ここにも石を置いてっちゃどうだろう?」
 と、保鷹に声をかけた。
「あ、そうします……ここは、ここでいいかな」
 扉を開けてすぐ、のところにこん、と石を置くのを見て、竹下は笑った。
「君は結構人がいいね」
「そう、ですか?」
「探さなくてもいいところに置いてるからね」
 そうかなあ、と、保鷹は不思議そうに置いた石を眺め、それがおかしい、と、
竹下がくつくつ笑う。
「さ、それじゃ帰るかね」
「はい。有難うございました」
「いやいや。丁度良かったよ」
 竹下は辟易したような顔になった。
「あんなに居るかね。残って色々やってる生徒が」
 やれやれ、と、肩をすくめる様子に、真帆がくすくすと笑った。


 玄関までは送るよ、と、竹下は言った。
「有難うございました」
「ああ、でも、私はまた、この中を見て歩くから、門までは三人で行ってもら
えるかね」
「それはもう、勿論です」
 三人にしてみれば、もう充分にしてもらっているのだ。
「本当に有難うございました」
「おじさんが居てくれなかったら、僕ら、真っ暗な中を歩くとこでした」
 小学生二人が口々にそう言っては頭を下げるのを、竹下は目を細めて見てい
たが、不意に手を打った。
「そういえば、あとから来るのは……男ばっかかね?何人くらい?」
「四人、だと思います。男だけです」
「ふぅん」
 懐中電灯を持った手と逆の手で、竹下が顎をさする。その仕草に、真帆は目
を一度しばたいた。
「……あの、竹下さん」
「ん?」
「あの、とりたてて脅す必要は、無いと思いますよ?」
「おや」
「多分あの四人、仁藻ちゃんよりも度胸無いでしょうから……下手に竹下さん
が脅したら、本気で泣いちゃいますよ」
「ああ……そうかもしれないね」
 ふむ、と、竹下は撫でていた顎から手を離した。
「まあ、とりたてて何かってのは無しにしようか」
「ええ。ここを歩いてるだけで充分怖がると思いますから」
「それはそうだろう」
 くつり、と、竹下は笑った。
「まあ……気をつけてお帰り」
「はいっ。有難うございました」
 元気のいい声に、竹下はやっぱり嬉しそうに目を細めて、うんうんと頷いた。
「気をつけてね」
「はいっ」



 そして、門を出て、真帆は二人と別れた。
「あたしが一緒だってばれないほうがいいでしょ?」
「それは……そうですね」
「でも」
「こういうのは秘密。……ね?」
「……はい」
 ちょっと躊躇したが、仁藻も真帆の表情を見てにこっと笑った。
「そしたらここで、別々に戻ろう?あたしは先に行くから。二人は……そう、
5歩くらい離れて歩いてね?」
「はい」
「真帆さん……有難うございました」
 ぺこん、と、大きく頭を下げる仁藻と、それに一緒になって頭を下げた保鷹
に、真帆は手を大きく振った。
「何もしてないよ……後は気をつけてね」
「はいっ」


 そして、帰って来た二人を迎えた四人の声を背中に聞いて……そして真帆は
少し笑った。
(さて、腹ペコな面々が待ってるわね……急がないと)
 早足に、それでも仁藻の『こんどはあんたたちの番でしょ!』という声だけ
はしっかりと確認して。
 そして、真帆は足を緩めることなく家へと向かった。
 
時系列
------
 2007年9月上旬

本文
----
 お化け校舎の四階と屋上。そして脱出。
*************************************

 てなもんです。
 ……しかしここまで、見直しほぼ全く無し。
 ええんかそれで己!<全く良くないです

 とりあえず。最後に一つ書きます。
 であであ。
 
 



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