[KATARIBE 31407] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・四回目』

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Date: Sat, 27 Oct 2007 00:14:21 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31407] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・四回目』
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2007年10月27日:00時14分20秒
Sub:[HA06N]小説『夏の木造校舎の怪・四回目』:
From:いー・あーる


てなわけで、いー・あーるです。
とりあえず、進めます。
……うん、まあ、大概読む人は、この話のオチ判ってると思うけど。

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小説『夏の木造校舎の怪・四回目』
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登場人物
--------
 相羽真帆(あいば・まほ)
   :
 橋本保鷹(はしもと・やすたか)
   :橋本家四男。ワーモグラな男の子。ぼけぼけだけど頭がいい。
   :同じ塾に通う御羽仁藻とはトップを争う仲。
 御羽仁藻(おわ・にも)
   :御羽貞我の妹。小6。ツンデレブラコン。 
   :同じ塾の橋本保鷹とはトップを争う仲で、コンプレックスを感じている。 

本文
----
 一段一段と、階段を登る。
 ぎし、ぎし、と、四人それぞれに足元の板が鳴る。
「……あれ?」
 踊り場を越えた辺りで、真帆は首を傾げた。
「どうしたね」
「あの音聞こえませんか?」
 どん、どん、と、間遠に響く音。丁度扉を叩くような。
「……おや?」
「え……」
 保鷹が足を速め、仁藻のほうは逆に真帆にしがみつく。それでも数歩程度の
ずれで、四人はそれぞれ三階に辿りついた。
 どん、どん、と、やはり音がする。
「電気ついてませんよね」
「ああ……何だろうね一体」
 何となく、竹下の懐中電灯を中心に、四人が寄り添うようにして廊下をゆっ
くりと進む。教室の廊下を一つ、また一つ、と越して、五つ目の扉……つまり
3つめの教室の前に来た時に。
「あ、ここだよ」
 仁藻がすっかり後ろにへばりついてしまった真帆は、保鷹の声にそろそろと
近寄った。
「……これ、扉が外から締められてる」
「え」
 二つの引き戸の、重なる中央部分。そこに真鍮の棒状のねじ棒が嵌っている。
「……これ、鍵なんですか?」
「ああ……そうか、古い鍵だから、仁藻ちゃん達は知らないかもね」
 言ってみたが、しかし真帆も言いながら首を傾げた。
「確かに……これ、鍵のついている向きが中と外で逆だと思う」
「逆って?」
「確かに」
 竹下が覗き込んだ。
「扉は、中から閉めて、外の人を締め出すものだよね。だから本当は、このね
じは教室側になきゃいけないんだよ」
「でも、なんで鍵があるんですか?」
「多分……体育の着替えとかの為、じゃなかった、かな……」
 そう言われると、真帆としても考え込んでしまう。
「…………鍵、そういえばあったような無かったよな、窓だけだったような」
 ぼそぼそ言っている間、何故か中はしんとしていたが、この時唐突に、また
どん、と、音がした。
「そこ、誰か居るなら開けてよ!」
「わ」
「あ、ちょっと待って、すぐ開けるから!」
「今は叩いちゃいかんよ。引っ張ってもいかんよ!」
 真帆と竹下が口々に声をかけ、鍵を引き抜く。どうやら実際に、真鍮の棒の
部分だけを外から突っ込んだらしく、何だか変な具合にひっかかってしまって
おり、多少の手間はかかったが、がちゃがちゃと何度か抜き差ししているうち
に、棒は抜けた。
「取れた!」
 真帆の肩越しに覗き込んでいた仁藻が声を上げた途端、がたぴしと音をたて
て扉が開いた。
「うわあ、助かった!」
 少しかすれ気味の声をあげたのは、白いカッターシャツに黒っぽいズボン、
夏用制服らしき服装の少年だった。
「どうしたんかね」
「……クラスの奴に、閉じ込められちゃって」
 小柄で細い少年は、額に浮かんだ汗を掌で拭いながら、ぶすっと呟いた。
「この鍵は?」
「あ、この教室の鍵、前から壊れてたんだけど……それをそいつらが外から差
し込んじゃったもんだから」
「……電気つけなかったんですか?」
「点かなかったんだよ」
 恐る恐る尋ねた少女に、少年は溜息をつくように言った。
「それにしても、暑かったろう」
「暑いのはまだ、我慢できたけど……喉が渇いて」
 ああ、だから、と、真帆は頷いた。
「だから、扉を叩くだけだったんですね?」
「……はい」
 確かに少年の声は、かなりかすれている。
「水……」
 と言っても、流石に真帆もそれらしいものは持っていない。ジュースか何か
買っておけばよかったな、と呟きかけた時に。
「はい」
「え」
 肩にかけたカバンから、小さなペットボトルを引っ張り出して、保鷹が少年
に差し出した。
「今日、持ってたんだけど飲まなかったから」
「え、いいの?」
「うん、全部でもどうぞ」
「ありがとう!」
 きりきり、と、蓋を開けて、少年は半分を一気に飲み干した。傾けたボトル
を元に戻して、ぷはあ、と、大きく息を吐く。
「旨そうに飲むねえ」
 感心したように言う竹下に、少年は唇を舐めながら笑った。
「さて……と」
 懐中電灯ごと、竹下が立ち上がる。
「そろそろ私らは次の階に行くかね?」
「あ、はい」
 後の三人が立ち上がったのを見て、少年もまた、ペットボトルを片手に持っ
たまま立ち上がった。
「そう言えば、何でここに君らが来てるの?」
 水を飲んで、本当に人心地がついたのだろう。少年は不思議そうに仁藻と保
鷹を見た。
「小学生だよね?」
「……あ、あのっ」
「ここがお化け校舎って言われてるらしくて……同じ塾の子達に行けって言わ
れたらしくて」
 先程竹下にした説明を、真帆は繰り返す。あちこち抜けているわけだが、そ
れでも少年はある程度納得したらしかった。
「なんかなあ……お化け校舎ってのもアレだけど、それっていじめじゃないか」
 現に今まで苛められていた(と言って嘘ではないだろう)少年の言葉だけに、
えらく重みがある。全くです、と、四人が頷いた。
「それで……あんたはもう帰るかね?」
「うん、帰るけど、その前に、ちょっと教科書持って帰る用意して帰ります」
 少年は少し恥ずかしそうに笑った。
「閉じ込められたら、なんかもう開けてくれーばっかで、帰る用意してなかっ
た」
「気持ちは判るよ」
 竹下も苦笑した。
「じゃあね、もう電気は消してるし、下の扉も一応閉めてあるけど、鍵はかかっ
てないから」
「はい」
「私はね、この三人と一緒に上まで行って、それから下に行くから。扉は開けっ
放しにはしないでおくれね」
「あ、はい」
 少年は頷くと、保鷹に向かって確認するように首をかしげ、保鷹が頷くのを
見て、ペットボトルに口をつけた。ぐいぐい、と、やはりまだ喉が渇いてたの
だろう、あっというまに空にして。
「……ありがとう」
 飲み干した、その勢いのまま、ぺこり、と、頭を下げた。


「さて、石は置いたかね」
 鞄、鞄、と、また教室に逆戻りした少年と別れて、また四人は階段に足をか
ける。窓からの空はすっかり暗くなって、その分竹下の持つ懐中電灯の灯りが
くっきりとした楕円を描く。
「あ、置きました」
「さて、じゃあ、あと一階だ」
 何だかとても面白そうに竹下は言い、そしてまた、三人の後ろから、懐中電
灯を照らした。

時系列
------
 2007年9月上旬

本文
----
 お化け校舎の3階。どんどん、と響く音とその音の正体。
*************************************

 てなもんです。
 であであ。
 
 



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